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第334回:RolandがUSBオーディオI/Fなどの新製品を発表
~ シンセサイザ「JUNOシリーズ」や、小太鼓のV音源も ~



発表会の様子

 7月9日、Rolandが記者発表会を開催し、USBオーディオインターフェイス「UA-25」の後継機種、「UA-25EX」のほか、シンセサイザキーボードやドラム関連などの製品を発表した。そこで、今回はこれら新製品についてレポートしていこう。


■ 高音質化したUSBオーディオ「UA-25EX」

 今回の発表会のトップバッターとなったのがUSB 1.1ベースのオーディオインターフェイス「UA-25EX」(7月18日発売、オープン価格で実売予想価格が25,000円前後)。現行製品であるUA-25の後継モデルで、見た目にはフロントパネルの色がちょっと変更になっただけのようにも見えるが、中の回路を全面的に設計しなおし、高音質化を徹底するとともに、新たな機能も搭載している。


UA-25EX

 スペック的にはUSB 1.1であることからUA-25と同様、最高24bit/96kHzまでの対応で、24bit/96kHzでの使用時には再生のみか、録音のみという制限を受ける。また、従来も突発的な大音量に対応するためのリミッターが搭載されていたが、UA-25EXではそれに加え、アナログコンプレッサーも追加されている。これにより、アナログレコードやアナログテープなどの素材を取り込む際、痩せた音を、割れることなく大きな音量に仕上げることができるほか、ギターなどの楽器用、ボーカル用としても大きな威力を発揮することができる。またコンプレッサというと、通常、スレッショルド、レシオ、アタック、ディレイなどのパラメータの設定が必要で、使い方が難しいが、UA-25EXでは誰もが簡単に使えるよう、基本的にツマミひとつで調整できるようになっている。

 リアパネルにはリミッターと切り替えるためのスイッチが用意されているが、よくみるとCOMP1、COMP2という2種類が用意されている。これはアタックを切り替えるスイッチとなっており、ボーカル用、楽器用などとして使い分けができるようになっている。最近はDAWのプラグインとして搭載されているものも含め、デジタルのコンプレッサが主流になっているが、アナログ回路を使うことで、温かみのあるサウンド作りができるのを大きな売りにしている。

 一方、これまでオーディオインターフェイスなどではほとんど見かけなかったスイッチとして、GROUND LIFTというものが追加されている。これはD.I.(ダイレクトボックス)などでよく見かけるスイッチであるが、グラウンド信号のループを切断して、ハムノイズなどを避けることができる機能だ。通常、シャーシ部分がアース=グラウンドになっていていることで、電圧を安定させることができるが、ひとつの機材に複数の入力や出力を接続すると、グラウンド信号がループし、ブーンといったノイズが乗ってしまうケースがある。とくにUSBを使ってPCと接続した場合に、発生する可能性が高いのだが、GROUND LIFTスイッチをLIFTにすることで、回路上のグランウンドを、シャーシなどから切り離すことができ、ループを避けることができるのだ。通常は、ここをつないだNORの設定にしておくのがいいが、ステージなどでノイズが乗って困る際、これを使うと、一気に解決するといったケースがあるのだ。

バンドルソフトにはSONAR 6 LEも含まれている

 このUA-25EXにはDAWであるCakewalkのSONAR 6 LEとソフトシンセのD-Pro LE、パターンエディタやグルーブエディタなどの機能を統合した音楽制作ツール、Project5 LEの3つをパックにしたCakewalk Production Plus Packに加え、R-09HRにもバンドルされているオーディオ波形編集ソフトのAudio Creator LEもバンドルされている。

 このUA-25EXにSONAR 7 STUDIO EDITIONをセットにした製品、SONAR 7 POWER STUDIO 25EXも新たにリリースされた(8月末発売、オープン価格で実売予想価格が60,000円前後)。これも現行のSONAR 7 POWER STUDIO 25の後継で、UA-25をUA-25EXに置き換えたというものではあるが、これにはUA-25EX単体にバンドルされているCakewalk Production Plus PackやAudio Creator LEはバンドルされていない。

 SONAR 6 LEは不要でも、ほかのソフトは欲しいという人も少なくないはずだ。そのため、実売価格5万円強のSONAR 7 STUDIO EDITION単体と組み合わせて購入するというのも手だが、どうしても割高にはなってしまう。また、POWER STUDIOの大きなメリットは通常のSTUDIO EDITIONにはなく、上位バージョンのPRODUCER EDITIONにのみ用意されているV-Vocal機能が搭載されていること。ちょっと悩ましいところではあるが、SONAR 7 POWER STUDIO 25EXを購入するほうが得策のようではある。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/UA-25EX/index.html


■ 「JUNOシリーズ」のステージ向けモデル

JUNO-STAGE

 続いて登場したのがJUNOシリーズの新モデル、JUNO-STAGEだ(7月末発売、オープン価格で実売予想価格が145,000円前後)。そのネーミングからも想像できるように、ライブステージでの使用に特化した76鍵のシンセサイザキーボードだ。配色はアナログ時代の往年のJUNOシリーズのものを踏襲したデザインで、現行のJUNO-DやJUNO-Gと並ぶ新しいモデルという位置づけだ。

 新開発のおもり付き76鍵キーボードを装備したことで、ピアノ風とまではいえないものの、ややキータッチの重いキーボードで、演奏表現がしやすくなっている。また88鍵ステレオ・マルチサンプリングによるピアノ音色、エレクトリック・ピアノ、オルガン、クラビなどキーボード系の音色が充実している。また音源スペック的には最大同時発音数が128、パート数16で、プリセットのパッチが1,027音色+GM2の256音色、またリズムセットは32+9(GM2)のほか、パフォーマンスで利用する64音色用意されている。

 そのほか大きな特徴としては、リアにコンデンサマイクに対応するファンタム電源搭載のXLR/TRSコンボジャックが用意されており、これで歌うことも可能になっている。その際、専用のリバーブも用意されているので、完全にボーカル用として利用できる。また、このマイク端子を利用したボコーダ機能も搭載されているため、さらに幅広い使い方ができそうだ。

 一方、JUNO-STAGEには本体パネル上面にUSBメモリ専用の端子が用意されている。USBメモリにWAV、MP3、AIFFといったオーディオデータを入れておけば、それらを再生することが可能。また、MIDIファイルがあれば、JUNO-STAGEのシーケンサとして機能させることも可能だ。さらに、本体パネル上面にはEXT INPUT端子というアナログのステレオミニの入力端子もある。つまり、iPodなどを接続して、それを演奏させることもできる。この際、エフェクトをかけることも可能になっており、センターキャンセルを有効にするとボーカルなどセンターに定位している音を消すことができるため、いわゆるマイナスワン演奏が可能になる。もうひとつユニークな点としてあげられるのが、クリックアウト端子というものを装備していること。MIDIファイルなどを演奏する際、出力とは別に、ここを通じて、ドラマーなどにクリックを送ることができるのだ。

 なお、JUNO-STAGEもUSB経由でPCと連携できることから、SONAR 6 LEがバンドルされている。


コンデンサマイク対応でファンタム電源搭載のXLR/TRSコンボジャックを装備 本体パネル上面のUSB端子

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/JUNO-STAGE/index.html


■ 小太鼓のV音源「RMP-12」

 次に登場したのが、またちょっと変わった楽器だ。そうマーチングなどに使える小太鼓のV音源「RMP-12」(8月末発売、オープン価格で実売予想価格が80,000円前後)だ。Rolandが特許を持つエレクトリックドラムのメッシュ・ヘッド。これを利用したV-DrumでRolandはエレクトリックドラム市場で大きなシェアをとってきたわけだが、そのメッシュヘッドを単体の小太鼓に採用したのがRMP-12なのだ。RMPシリーズとしてこれまでもRMP-5などが存在していたが、パーカッションというよりも小太鼓というデザインスタイルにするとともに、より簡単な操作にしたことで、学校などでの使用も広がるかもしれない。


RMP-12

 機能的には、V-Drumでも採用されていたリズム・コーチ機能により、正確なリズムを演奏する練習もできる。また、別売のマーチング・キャリア・アタッチメントも用意しており、鼓笛隊の姿も今後変わってくるかもしれない!?ただし、重量は単3アルカリ電池6本込みで3.7kgとホンモノの小太鼓と比較するとちょっと重い。また、アルカリ電池を使用した場合で、連続使用時間は約8時間となっている。

□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/RMP-12/index.html


■ V-DRUMの音源「TD-20」用拡張ボードも

 ドラム関連ではV-DRUMの音源部分であるTD-20を機能拡張するためのTDW-20というエクスパンション・ボードも登場した(8月末発売、オープン価格で実売予想価格が40,000円前後)。拡張ボードという非常に地味な製品の割りに、かなり時間をかけて、説明、デモ演奏をしていたのが印象的ではあった。それだけ、Rolandが自信を持って完成させたということのようで、音色数の増加というだけでなく、表現力の向上や音作りのためのエディタの強化、ユーザーインターフェイスの完了などを実現している。

 なかでも面白いのはV-Editという音色エディット機能。TD-20にもある機能だが、これが大幅に強化されているのだ。たとえばキック、スネア、タムではマイク・ポジションのパラメータが、インサイド、アウトサイドで2つずつ追加されており、マイクをどこに設置するかによる音の違いを出せるようになっている。またキックではマイクサイズを変更することもでき、ラージサイズを選択するとアタックの低域成分を増強したより重いキックの音が出せるといった具合。また、キックを踏むと通常タムやスネアが共鳴する。そうした音が、まさにアコースティックドラム特有の音とされていたわけだが、TDW-20では、そうしたシミュレーションまでできるようになっているため、かなり凝った音作りが楽しめそうだ。

TDW-20 V-Edit機能

TD-12KVSBK/WHは3シンバル構成に

 そのほか、V-Drumシリーズの上位機種であるTD-12KVSBK(黒モデル)、TD-12KVSWH(白モデル)のそれぞれにVシンバルであるCY-12R/Cが1つ追加され、3シンバル構成になった(すでに発売済、オープン価格で実売予想価格が350,000円前後)。ここに搭載されているTD-20はあくまでも通常のTD-20であり、TDW-20は搭載されていない。

 以上、Rolandの新製品を紹介してきたが、後日、UA-25EXはさらに細かくチェックしていく予定だ。


□製品情報(TDW-20)
http://www.roland.co.jp/products/jp/TDW-20/index.html
□製品情報(TD-12KVSBK/WH)
http://www.roland.co.jp/products/jp/TD-12KV/index.html


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□新製品一覧
http://www.roland.co.jp/products/LIMS.html
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(2008年7月14日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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