■ やっぱりビデオカメラがすごい
今年のZooma!もまた、CESのレポートで年を開けることになった。CES 2009開催前日となる本日7日は、大手メーカーのプレスカンファレンスが目白押しである。中でもソニーは、プレゼン用会議室ではなく展示ブースそのものを使ってカンファレンスを行なうのが通例となっている。したがって他メーカーと違って、報道関係者は一般来場者よりも一日早く、実機に触ることができる。 昨年はビデオカメラもデジカメもハイビジョンが熱い年だったが、今年もどうやらビデオカメラの勢いは止まらないようである。今年のソニーは、米国向けにハンディカムシリーズを13モデル投入する。+2モデルは、あとのお楽しみだ。
ではハイエンドの方から新ラインナップの特徴を順に見ていこう。
■ HDD型ハイビジョンハンディカム
HDD型ハンディカムに、新たにXRシリーズがお目見えした。新シリーズのポイントは大きく4つ。新型CMOSセンサー「Exmor R」、画像処理エンジン「BIONZ」のグレードアップ、ハイエンドモデルで好評の「Gレンズ」搭載、超ワイドレンジの光学手ぶれ補正だ。 Exmor Rは、昨年6月に技術発表された裏面照射型CMOSイメージセンサーが、ついに商品化されたもので、従来比約2倍の感度と低ノイズを実現している。画素配列はクリアビッド配列で、総画素数は約663万画素(1/2.88型)。1,200万画素の静止画撮影も可能となっている。 新BIONZはリアルタイムの画像解析スピードを大幅にアップし、逆光補正が必要なシーンをカメラ側で判別して、自動的に逆光補正をONにする。顔検出をベースにするだけでなく、物質や風景などでも逆光補正が必要かどうかが判断できるという。 またその補正も、背景を完全に飛ばしてしまうのではなく、明るい部分も階調を残しつつ補正できる。明るくするというよりも、ガンマをいじるといった感じの補正のように感じる。従来ビデオカメラには逆光補正機能が付いていても、なかなかシーンに応じて意識的にON/OFFできる人は少なかっただろう。これからは、ユーザーがまったく意識せずに適正な補正が得られるようになる。 Gレンズは、同社デジタル一眼レフのαでも高級レンズとして知られるシリーズだが、過去ビデオカメラにも「HDR-FX1000」などのハイエンドモデルに搭載されてきた。そのGレンズが、XRシリーズに搭載されている。画角は35mm換算でワイド端が約43mm。 また地味ながらも特筆すべき点は、ついにハイエンド以外のハイビジョンカムコーダで初めて、6枚羽根の虹彩絞りを搭載した。これまでビデオカメラは、動的に絞りを動かす必要があるため、構造が簡単な2枚羽根の絞りを採用してきた。しかしこれは絞りの形が菱形になってしまうため、背景のボケの形がみんな菱形になって汚いという欠点があった。SD時代にはある程度許されても、ハイビジョン解像度では辛い絵になり、ビデオカメラ業界全体の大きな課題であった。 それをいち早くソニーが解決してのけた。個人的には光学機器専門メーカーのキヤノンが最初に解決するのではと思っていたのだが、ソニーがそこに注力していたとは予想外だった。これは実写が楽しみである。 ちなみにこの6枚羽根は低トルクで動かすため独自の動作方式となっており、ソニーの特許だそうである。他社は正攻法で頑張るか別の方法を考えなければならなくなった点で、また一つハードルが上がったと言える。 超ワイド手ぶれ補正は、従来の手ぶれ補正と違い、ワイド端でも大きな可変範囲を光学補正で可能にしたという点で、これも画期的である。一般的には手ぶれ補正は、テレ端の方が激しいはずとして、ワイド端よりもテレ端に重点が置かれていた。しかし今回の手ぶれ補正は、ワイド端で撮影しながら歩いても、まるでステディカムで撮影したかのようなスタビライズ効果が得られる。これもまた実写が楽しみだ。 気になるラインナップは4モデルで、すべて今年2月の発売を予定している。上記の機能が全部入っているのは上位2モデルのHDR-XR520Vと500Vで、違いはHDD容量のみ。520Vが240GB、500Vが120GBとなっており、価格はそれぞれ、1,500ドルと1,300ドル。 HDR-XR200Vは120GB HDD搭載モデル、XR100は80GB HDD搭載モデルで、超ワイド手ぶれ補正のみ搭載。価格はそれぞれ1,000ドル、750ドルとなっている。 またXRシリーズ全モデルの共通スペックとして、GPSユニットを内蔵し、地図サービスと連動可能。またデジカメで好評だったスマイルシャッターも搭載している。
■ カラバリと超小型化、売れ線のメモリ内蔵モデル
「HDR-CX100」は上位モデルのようなスペシャルな機能はないが、コンパクトな横型にまとめたハイビジョンカムコーダ。サイズはこれまでのCXシリーズよりも小さく、デザイン的にはグリップ部が全体を包み込むような円筒形なのが特徴。シルバー、ブルー、レッドの3色がある。内蔵メモリは8GBで、メモリースティックPRO Duoにも対応する。これもスマイルシャッター搭載で、静止画は最大4メガピクセルとなっている。レンズはツァイス バリオテッサーの光学10倍ズーム。 発売時期は今年3月となっており、価格は600ドル。ブース内でも別格扱いとなっており、米国向けとしてはこの春一押しのモデルのようだ。
■ SDモデルも充実 米国およびワールドワイドでは、依然SDモデルも人気が高い。人気が高いと言うよりも、所得層によってはそれしか買えないという事情もあり、価格バリエーションが多いのがこのクラスの特徴だ。 HDD記録型として2月に登場するのが、DCR-SR87/67/47の3モデル。HDDのほか、メモリースティックPRO Duo記録にも対応する。撮像素子はCCDで、SR87のみ1Mピクセルクラスを搭載している。HDD容量と価格は下記の通り。なおSR47のみ、3色のカラーバリエーションがある。
もう一つのDVDドライブ「VRD-P1」は、ビデオカメラのUSBに直結し、バスパワーで動くライター。今回発売されたSDのSRシリーズ、SXシリーズ6モデルに対応する。
軽くテレビ局の中継みたいな事ができるわけだ。通信距離は約90m。子供相手というよりも、WEB向け動画コンテンツ制作のような、やや本格的なスタイルでの使用を想定しているのかもしれない。
■ WEB向けハイビジョンカメラ登場
レンズは光学5倍ズームで、F3.3。画角は4:3撮影時が35mm換算で38~190mm、16:9撮影時が41~203mm。5Mピクセルの静止画も撮影可能だ。撮像素子は1/2.5インチのCMOSで、映像圧縮はH.264メインプロファイルとなっている。
ここまでなら、台湾メーカーなどが出しているMPEG-4カメラと大差ないが、ここからが面白い。本体内にPMB(Picture Motion Browser) Portableを内蔵しており、PCに接続するとカメラ本体内からこのソフトウェアが自動で起動する。PCは利用するが、インストールレスで動画をYoutubeにアップロードできるわけだ。最近Youtubeはハイビジョンに対応して話題になったばかりだが、それをより加速する製品が早くも登場したわけである。
「MHS-PM1」は、スペックはCM1と同じだが、縦型でカメラが縦方向に回転して自分撮りも可能な、WEBカムスタイル。こちらは4月発売で、価格は170ドル。
画質的には期待できないということで日本での発売予定はないというが、2万円でハイビジョンスペックというのは、デジカメがハイビジョン動画記録を積むのとは違ったインパクトがある。ある意味ビデオカメラ業界における「UMPC」のようなものかもしれない。ネットへのアップが前提のカムコーダというのは、そろそろ日本でも面白さがわかる人たちが現われてもいい頃ではないかと思う。実際にどういうものなのか、帰国してからゆっくり試してみたい。
□International CESのホームページ(英文)
(2009年1月8日)
[Reported by 小寺信良]
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