■ 大画面競争は108V型で今年もシャープ。年内に82V型追加
市販化された一枚パネルの液晶ディスプレイ製品で世界最大なのはシャープの108V型の「LB-1085」。日本では昨年6月にオープンプライス(約1,100万円)で発売され、新宿ピカデリー劇場などに導入。今も引き合いが強い製品とのことだが、一方で「もう少し小さい製品があれば……」という問い合わせも多いという。
だが、1枚パネルで下のサイズとなると、シャープとしては65V型になってしまう。日本メーカーではソニーが70V型を持っているため、シャープは「70V型を上回りながらも100V型以下の製品を導入したい」と考えていたようだ。そこで今回登場したのが、82V型の「LC-82MX1U」である。
108V型と同様、テレビではなくチューナの無いディスプレイだが、業務用とエンスー系ホームユーザーをターゲットとしており、価格は未定だが108V型の1,100万円よりはだいぶ安価になるとみられる。
パネル世代は最新の物で、亀山第二工場で製造される第8世代10bit ASV/ブラックパネルを採用。解像度は1,920×1,080ドット。応答速度は公称4ms。120Hzの倍速駆動技術も搭載される。業務用途を想定してDVI-Iコネクタを装備するが、民生用途への対応にも配慮し最新世代のHDMI端子も実装される。 ■ 実売25万円の低価格フルHD対応DLPプロジェクタ
「液晶のシャープ」と謳う同社だが、フロントプロジェクタはずっとDLP方式を採用してきた。エプソン、パナソニック、三洋などの液晶陣営がフルHDモデルの低価格を一昨年辺りから急速に進めてきたのに対し、コアとなるDMDパネルをテキサス・インスツルメンツ(TI)が独占的に製造するDLP方式は、この低価格化の波に乗りきることが出来なかった。そんな事情から最近のDLPプロジェクタのホームシアター機は「DLP画質を好むマニア向け」という位置付けになりつつあった。 こんな状況を打開するためなのか、シャープは今年のCESでフルHD対応DLPプロジェクタ「XV-Z15000」を発表した。価格は未定だが、想定市場価格は3,000ドル、安価な量販店では2,500ドルになる見込みだという。日本円にして約25万円で、フルHD対応DLPフロントプロジェクタとして破格に安い。フルHD対応DLPプロジェクタの価格破壊が北米から展開しそうだ。
採用パネルは0.65V型、1080pの単板式。パネル世代は資料にも記載されておらず、Darkchip3世代かは不明。公称最大輝度は1,600ルーメン。ホームシアター機としてはかなり明るく、非暗室でも利用できるようにという配慮だ。絶対輝度が高いこともあって、動的アイリス機構を組み合わせることでダイナミックコントラストは3万:1を達成する。カラーホイールは6セグメント(RGBRGB)の6倍速タイプ。投射レンズのスペックは今のところ未公開だが、ズームとフォーカスは手動調整式。レンズシフトは搭載しない。この辺りはコスト削減の結果という感じだ。レンズの口径もそのため小さいが、実際の投射映像を近寄って見た限りではフォーカス斑はほとんど感じられず。なかなか優秀だ。
レンズシフトがない代わりに、XV-Z15000自身が設置傾斜を把握して自動的にデジタル台形補正を実行する機能を備えている。デジタルなので画質劣化があるが、逆に設置状態が傾斜していないかを測定する目的でこの機能を活用することも出来る。HDMIはVer1.3対応でCEC対応、1080/24p、x.v.Colorにも対応する。なお、HDMI端子は2系統備える。 ユニークなのはプロジェクタ製品としては非常に珍しい表示遅延を低減させた「Vyper Drive Circuitry」を搭載している点。最近のテレビ製品で採用例が多くなったゲームモードに相当するもので、映像エンジンの処理をバイパスしてパススルー表示している。北米での発売は3月を予定。日本での発売の予定は今のところ無いというが、コストパフォーマンスは相当高いため、日本での発売を望む声も盛り上がりそうだ。
■ 米国でもAQUOSとBlu-rayが一緒に……だけど!? 日本では香取慎吾と吉永小百合のCMが印象的な、BDレコーダ内蔵型AQUOS「DX1」シリーズ。北米市場でも“一緒になりました”と言うが、“一緒になり方”が少し違っている。北米モデルの「BD80U」シリーズは、ブルーレイの録画機能がカットされており、“AQUOSとBDプレーヤーが一緒になりました”状態だ。理由は北米市場では放送を録画する文化が根付いてないからなのだとか。 シリーズは全てフルHD対応で、52V型の「LC-52BD80U」、46V型の「LC-46BD80U」、42V型の「LC-42BD80U」、37V型の「LC-37BD60U」、32V型の「LC-32BD60U」 がラインナップされる。42V型以上は120Hz倍速駆動に対応した10bit駆動パネルを採用。Deep Colorにも対応する。価格は未定だが、42V型以下が1月、46V型以上が2月より発売される予定だ。
■ ビクター、スーパースリムな型液晶テレビ 液晶テレビの過酷な価格競争を避けるビクターは、“特別な付加価値”を与えた製品を投入していく。そのコンセプトの象徴として披露したのが42V型で、チューナ別体型の超薄型液晶テレビ「LT-42WX70」。最大の特徴は色域としてHDTV規格(sRGBと同等)カバー率100%を実現しているだけでなく、AdobeRGBのカバー率も96%になっている点。カラーモードとしてAdobeRGBを明示的に設定することで、AdobeRGB色域での表示が可能となる。
AdobeRGBはデジタル一眼レフカメラやハイエンドビデオカメラなどで使用できる色域モードで、ハイビジョン放送用に採用されているsRGB相当のITU-R BT.709よりも表現色を拡張している。sRGBと同じRGB各8bit階調をより広い色範囲にマッピングするので、グラデーション表現などで疑似輪郭が発生する可能性もあるが、実写映像ではあまりそういったことが目立たない。 問題なのは、AdobeRGBで撮影した写真や映像は、sRGBモードしか持たない表示機器では彩度が高く、逆に不自然に表示されてしまうこと。「LT-42WX70」は民生向けテレビとしては珍しくAdobeRGBモードを搭載することで、そうしたデータも自然に表示できるという特徴を備えている。
表示映像を見たが、緑方向の表現が非常に豊かになり、赤色表現に鋭さが増す。暗部の階調表現にも色味が強まるため、映像の全体的な空気感にも深みが増した感じになる。ネイティブコントラストは4,000:1、ダイナミックコントラストは50,000:1を謳っており、実際、コントラスト感も素晴らしい。120Hzの倍速駆動モードも備えているので動画表示時の残像低減にもぬかりはなく、液晶テレビとしてのポテンシャルも必要十分だ。
LT-42WX70では「薄型軽量」という特徴も強く訴えられている。厚さはスタンド無しで約1.5インチ(42.5mm)。重さもスタンドなしで12.1kgと、サイズを考えると軽い。しかし、バックライトはLED方式ではなく、一般的なCCFLを採用している。これは昨年のレポートでも紹介したが、拡散板を工夫することで厚みを徹底的に抑え、実現したものだ。
なお、LT-42WX70にはチューナが搭載されておらず、HDMI端子を4系統装備。テレビとして使うためには各国用のチューナボックスとHDMIで接続する必要がある。ビクターでは「販売形態は様々な方法が想定される」としており、ディスプレイ部単体での販売や、チューナボックスとのセット販売を想定。BDプレーヤー/レコーダ機能を備えたボックスも検討されているようだ。北米市場向けには「TU-CX100」という別体型のチューナが計画中。
世界戦略製品でもあり、100V~240Vの電源に対応、映像信号もNTSC/PALにも対応している。日本での発売も計画中とのことで、日本では特にハイエンドな映像マニア、写真愛好家、プロフェッショナルデザイナー向けの製品として訴求されそうだ。価格、発売時期とも未定。現状の完成度の高さから察するに、2009年内の発売を予定していると思われる。解像度は1,920×1,080ドット。画面サイズは今のところ42V型のみだ。“ディスプレイ製品”として強く訴求するのであれば4K2Kモデル、逆にフルHDに解像度を据え置いてサイズを32V型程度にとどめたパーソナル用途向けのモデルも欲しいところだ。
■ 厚さ7mm。マグネット貼り付け可能な超薄型液晶TV 液晶テレビの新しいスタイル提案に注力するビクターは、もう一つユニークなプロトタイプを発表した。厚さわずか7mmの液晶テレビだ。4辺から導光させて液晶パネルに照射させるLEDエッジバックライトシステムを採用し、LT-42WX70よりも拡散/反射の光学系を最適化。駆動基板の薄型化も推し進め、最薄部7mmを達成した32型液晶TVも登場した。市販製品とプロトタイプを比較するのはナンセンスだが、2008年秋に登場したほぼ同方式のソニー「KDL-40ZX1」の9.9mmよりも薄い。
ボディの軽量化にも配慮し、5kgを実現。同サイズの現行の液晶テレビの半分以下の重さだ。この軽量さを同社では“性能”と捉え、新しいテレビの設置スタイルを提案した。それが、試作機の背面に薄型の永久磁石を複数個取り付け、鉄板を入れた壁に貼り付けるというものだ。 これまで「壁掛けテレビ」というキーワードは存在しても、実際に設置する際には壁への補強が必要で、それなりの厚みを持った固定用の金具フレームを組み合わせる必要もあった。そのため、テレビそのものの厚みが10cm前後だったとしても、金具分の厚みが付加され、設置状態では20~30cmも壁から突き出ることもある。 磁石での貼り付け方式ならば、鉄板を壁に固定できさえすれば壁補強もいらず、カレンダーや絵画を壁に掛けるような感覚で設置できる。もしかすると、冷蔵庫に貼り付けることだって可能かもしれない。転落防止への対策など、検討すべき要素は多そうだが、是非とも実現化して欲しい“性能”だ。
ここまでの薄さなので、テレビとして製品化する場合はチューナは別体型になる見込みだ。今回の展示でも映像出力は別体のインターフェースボックスと有線接続となっていた。
□2009 International CESのホームページ
(2009年1月10日) [Reported by トライゼット西川善司]
AV Watch編集部 |
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