「ブランドを変えるほどの大進化」を遂げた新VIERAとは -デジタルAVCマーケティング本部・西口本部長に聞く |
3日に発表されたVIERA 3シリーズ13機種 | 発表会にはCMキャラクターの小雪さんと綾瀬はるかさんも登場した |
■ 第5の波「使うテレビ」へ
--今回の新製品では、「新・ビエラ宣言」を打ち出し、同時に、キャッチフレーズに「美しさの向こうへ」という言葉を使っています。この意味はどう捉えればいいですか。
デジタルAVCマーケティング本部・西口史郎本部長 |
西口氏(以下敬称略):今回の新VIERAでは、商品が完成してからマーケティングコンセプトを考えたのではなく、先にコンセプトが決まり、そこに向けて商品の完成度を高めていったものです。そのゴールとなったコンセプトが、「美しさの向こうへ」という言葉に集約されます。
では、「美しさの向こうへ」とは何か。それは、画質の競争、パネルの薄さの競争といったメーカー主導、技術先行の要素だけではなく、その向こう側にある要素をユーザーに感じてもらいたいということなんです。画質の美しさ、薄型化による美しさは当然。今回の新VIERAは、さらに、その向こう側にあるテレビの進化を感じ、想像していただきたいと思っています。
--「美しさの向こう」にあるものとはなんでしょうか。
新VIERA発表会で表示された「第5の波」を予測するスライド |
西口:これまでのテレビの歴史を振り返えると、第1の波が白黒テレビ、第2の波がカラーテレビ、第3の波が大画面テレビ。そして、第4の波が薄型テレビあるいはデジタルテレビとすれば、第5の波は「使うテレビ」ということになります。パナソニックでは2006年にリンク機能を業界で初めて搭載し、さらに2007年4月からは、「これから第5の波という、大きなうねりがやってくる」といったお話しをしてきました。
第5の波となる「使うテレビ」とは“つながるテレビ”いわば、リンク型テレビへの進化であり、画質競争、薄さ競争に明け暮れたテレビそのものが、大きくフェーズチェンジすることになる転換点ともいえます。デジタルネットワーク時代は、様々な機器が家のなかでネットワーク化されるだけでなく、高速ネットワーク社会と融合することで、新たなサービスや機能が生み出されます。それらを活用する使うテレビは、放送受信機という域を超え、コミュニケーションインターフェイスとして生活の中心に位置付けられる。新VIERAは、その新時代の先頭を切り拓いていくものになると考えています。
最厚部でも24.7mm(46型は49mm)という薄さを実現したZシリーズ。別筐体のチューナとディスプレイを、WirelessHD対応ユニット(別売)で無線接続する新機能が多いモデルだ |
--テレビのフェーズチェンジとする今回の新VIERAは、どのぐらい進化した商品だと自己評価していますか。
西口:誤解を恐れずに言えば、商品ブランドを変更するぐらいの進化を新VIERAに込めました。もちろん、VIERAというサブブランドは変更しません(笑)。ただ、これまでにも、テレビの変化が訪れるのにあわせて、パナソニックはテレビのサブブランドを変更してきた経緯があります。それぐらいの大きな進化が、今回の新VIERAにはあると考えています。
2011年7月の地上デジタル放送への完全移行に向けて、6,000万台の買い換え需要が想定されます。2011年以降の地デジの利用環境を考えると、使うテレビとしての要素がますます重要になってくる。その時代が訪れても、安心して利用していただけるだけの「使う」機能を搭載し、しかも、これを17インチのエントリーモデルから、103インチの大画面モデルに至るまでのすべての商品で実現した。テレビによって、生活自体を変えていく。新しい映像生活を創造してきたVIERAが、さらに生活を変える。それが、今回の新VIERAに込めたメッセージです。
ビエラ、「美しさ」の向こうへ……がキャッチコピー | 大きな機能向上をアピールした「新・ビエラ宣言」 | ネットワーク上の動画やSDカード内の動画などを表示できるコミュニケーションインターフェースへ |
--使うテレビを、リンク型テレビと表現する理由はなんですか。
VシリーズのYouTube表示画面 |
西口:受動的な視聴環境であり、一方向であったテレビが、使うテレビへと変化し、能動的な商品へと進化する。それを実現するためには、様々な機器やサービスを実現するネットワーク機能、リンク機能が不可欠となります。
ネットワーク機能のひとつは、IPネットワークです。IPネットワークによって実現するアクトビラビデオ・フルでは、映画や海外ドラマなどを家にいながら簡単にレンタルし、ビデオ・オン・デマンドで楽しめる。今回の新製品では全3シリーズすべてが、これに対応しています。NHKオンデマンドやTSUTAYA TVでも、オンラインによって、いつでもコンテンツを楽しむことができます。また、YouTubeをテレビのリモコン操作だけで簡単に楽しむことができるという新たな提案も、新VIERAでは実現しています。
2つめはSDカードネットワーク。ここでは、SDハイビジョンムービーや、デジタルカメラのLUMIXで撮影した映像を、VIERAに標準搭載されたSDカードスロットにSDを差し込むだけで再生できますし、当社FAXの「おたっくす」でも、送信されてきたデータをSDカードに保存し、VIERAの大画面で映し出して確認することもできます。不要なプリントを減らすことができる「プチエコ」も実現できます。
これまでのVIERA LINKを実現してきたHDMIネットワークを含め、こうした複数のネットワーク機能の強化によって、リンク機能が広がりを見せています。
■ HDMIリンク機能は新たな次元へ
--競合他社もリンク機能には力を入れています。パナソニックのリンク機能の優位性はどこにありますか。
西口:これはリンク機能の○×表を作れば一目瞭然です。パナソニックの薄型テレビでは、すべてのインチサイズのテレビで、SDカードによる動画/静止画の再生が可能になりますし、YouTubeを見ることができるのも当社だけの機能です。また、CATVのセットトップボックスとのリンク機能を実現しているのも当社ならではの機能です。この分野で5割以上のシェアを持っている強みが発揮されています。
それに、当社の「どこでもドアホン」と接続して訪問者の映像をVIERAに映し出したり、各所に設置したセンサーカメラと繋げば、不審者に反応してVIERAの画面に、映像で知らせるといったセキュリティ分野におけるリンクも実現している。これは商品構成という観点から、他社にはできないものだといえます。リンク機能の開発に関しては、当社社長の大坪(文雄氏)が語るように、「入り交じり」によるグループ全体をあげたモノづくり体制の確立が、成果に繋がっています。事業部門を超えた技術者の人事交流が進んでいますし、リンクに関するプロジェクトチームによる商品化も進んでいます。
社名変更、ブランド統一によって、会社の風土改革が促進され、これもリンク機能の進化に寄与している。VIERAとドアホンの連携も、AVC社とPCC(パナソニックコミュニケーションズ)によるプロジェクトチームによって実現したものです。
さらに、リンク機能を活かしながら、エコの観点からも進化を果たしました。ひとつは、「こまめにオフ」機能で、VIERAの視聴状況に応じて、使用していないDIGAやラックシアターの電源を自動的にオフします。また、ECOスタンバイ機能では、VIERAの電源がオフになると、DIGAの電源自動オフに加え、DIGAの待機電力を最小にすることもできます。家庭用電力に占める待機時消費電力は家庭における電気使用量の7.3%に達します。そのうち、AV機器の待機電力が占める割合は32%となり、AV機器は知らないうちに無駄に電力を使っていたともいえます。「ビエラにリンク」によって、省エネまで実現できるようになる。昨年までのリンク機能に比べると、今年のリンク機能は新たな次元に入ったといえます。
実は、あまり目立っていないのですが、こうしたリンク型テレビへの進化を実現する上で、極めて重要な商品があるのです。
「どこでもドアホン」と接続すれば、屋内外に設置したセンサーカメラの映像をVIERAからチェックできる
--それはなんですか。
VIERAと共に、リビング向けAV用PLCアダプタとして発表された「PL-LS14」と「PL-LS11」 |
西口:HD-PLCです。これまではパソコンのブロードバンドネットワーク用途に販売していたのですが、第2世代の技術へと進化したことで、最大実効速度が向上し、ノイズの影響を少なくし、IPネットワークで送受信されるハイビジョン画像を、ストレスのない環境で利用できるようになった。LANケーブルをテレビにつなぎにくい環境にあっても、電力線を利用してテレビのネットワーク環境を実現するHD-PLCは、リンク型テレビを販売する際に、重要な商品となるのは間違いありません。
地域専門店では、これを説明しながらメリットを訴求できると思うのですが、量販店では、薄型テレビの横にHD-PLCを展示し、販売していだたける環境を、早急に作ることが大切だと思います。また、我々もいかにHD-PLCの認知を高めるか、そのメリットを訴求していくかが大切だと考えています。
一方で、リモコンの進化もこれからの課題です。数多くのリンク機能を利用する際にも、シンプルに操作できるという環境を維持していかなくてはなりません。オンスクリーンでのメニューを採用すると、キーの数は少なくなりますが、リモコンからのダイレクトでの操作がしにくくなる。リモコンの改善は、毎日が試行錯誤の繰り返しです。
■ 新パネルの採用で「美しさの進化」も
--今回の新VIERAでは、「使うテレビへの進化」、「リンク型テレビとしてのコンセプト」が前面に出ていますが、昨年発表した技術を盛り込んだ「ネオ・プラズマパネル」など、新たなパネルも搭載していますね。
西口:もちろん、「美しさの進化」という点でも、他社には負けません。新VIERAの高画質は、パネル技術、回路技術、そして、プロセスおよびモノづくり技術の三位一体によって支えられています。42インチ以上の大画面テレビに搭載したネオ・プラズマバネルは、電極幅を広げた新開発の電極構造によって、放電領域を拡大。放電ガスや蛍光体を一新することで、2007年モデルと比較して、発光効率を約2倍に高めたました。この高い発光効率によって、超薄型化、高画質化、大幅な低消費電力化を実現しています。
また、1080本という高い動画解像度によって、速い動きも細部までくっきりと映し出すことができます。一方、37インチ以下の薄型テレビに採用している液晶パネルは、倍速駆動に加え、動き部分にフォーカスした独自のバックライト制御技術により、900本の動画解像度を実現しています。プラズマテレビでは静止画並の動画解像度を実現、液晶テレビでは従来のフルハイビジョンのプラズマテレビと同等の動画解像度を実現したといえます。
さらに、臨場感を実現する世界最高の40,000:1のハイコントラストをプラズマテレビで実現。液晶テレビでもWコントラストAI機能を大幅に進化させ、バックライト制御を従来の9分の1から、16分の1にまで高めることで、20,000:1相当のコントラストを実現しています。こうしたVIERAならではのブラックボックス技術によって、「美しさ」も大きく進化しています。
ネオ・プラズマパネルの概要 | 動画解像度1,080本を実現した | 発表会では動画解像度900本以上の従来モデル「TH-50PZ800」と、新モデル「TH-P50G1」の残像感を比較するデモも用意された |
--2月3日に行われた新商品発表会見では、プレゼンテーションの一部に「家族が還る、日本のリビング」という言葉を入れていましたね。
西口:2008年1月に米ラスベガスで開催されたCESで、当社専務の坂本(俊弘氏)が、「デジタルハーツ(囲炉裏)」という言葉を提唱しました。これを日本語に置き換えたのが、このメッセージとなります。リンク型テレビによって、生活が変わる。その実現要素のひとつとして、家族全員がリビングに集まって、テレビを見ながらコミュニケーションをすることができる。そんな生活ができるようにしたい。家族の絆を強めることができるという点でも、新VIERAの役割があると考えています。これも、新VIERAが実現する「美しさの向こう」にある要素のひとつだといえます。
□パナソニックのホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□「Zシリーズ」のニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090203-1/jn090203-1.html
□「Vシリーズ」のニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090203-2/jn090203-2.html
□「Gシリーズ」のニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090203-3/jn090203-3.html
□「AV用PLCアダプター」のニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090203-6/jn090203-6.html
□VIERAのホームページ
http://viera.jp/
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-発光効率2倍のネオ・プラズマ。「新・ビエラ宣言」
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-8.8mm厚の50型。消費電力半減のNeoLCDecoも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20090108/pana1.htm
(2009年2月6日)
= 大河原克行 = (おおかわら かつゆき) |
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊ビジネスアスキー(アスキー・メディアワークス)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社)など |
[Reported by 大河原克行]
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