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パナソニック、消費電力1/3のプラズマ「NeoPDPeco」を開発
-8.8mm厚の50型。消費電力半減のNeoLCDeco


超薄型8.8mmを実現した50v型NeoPDPeco
1月8日発表


 パナソニック株式会社は、超高効率の薄型ディスプレイパネルとして、PDPの「NeoPDPeco」と、液晶パネルの「NeoLCDeco」を開発したと発表した。今後、1年以内に同パネルを搭載した薄型テレビを商品化することになる。

パナソニック AVCネットワークス社・森田研副社長

 1月8日、大阪府茨木市のパナソニックプラズマディスプレイ茨木工場で開いた説明会で、パナソニック AVCネットワークス社上席副社長の森田研常務役員は、「NeoPDPecoは、昨年発表したNeoPDPを進化させたもの。エコロジーと高画質を実現した次世代のパネル」と位置づけた。

 NeoPDPecoは、従来の3分の1の消費電力を実現する高効率化を達成するとともに、同じ消費電力の場合には発光効率を3倍にできる42v型PDPと、同様の技術を採用しながら、8.8mmのCDケース並の超薄型を実現した50v型PDPの2種類が発表された。どちらも解像度は1,920×1,080ドット。動画解像度は1080本を実現した。

50型のNeoPDPeco。CDケース並という8.8mmの薄さを実現した 42v型。消費電力は従来の3分の1になる

 「昨年発表したNeoPDPは、2007年比で2倍の発光効率を実現したが、NeoPDPecoでは、これを3倍に進化させた。パナソニックのNeoPDP技術と、パイオニアのKUROの技術を融合したことで生まれた新技術であり、環境にやさしい、人にやさしい、人に使いやすいという当社のテレビづくりのコンセプトを加速することができる」(パナソニックAVCネットワークス社映像・ディスプレイデバイス事業グループ主席技監の佐藤陽一氏)とする。

消費電力を同じにしながら輝度を3倍に高めるという設定も可能

 NeoPDPecoは、放電効果を高める新材料の開発、放電領域を拡大する電極構造を持った新セル構造、高効率駆動で電力損失を半減する新省電力駆動を採用。RおよびGの蛍光体を一新することで蛍光体発光を向上させたほか、新ダイナミックブラックレイヤーによって、電子源を多く発生させることで放電効率を向上させることに成功した。また、セル内のガス活性化を高める新放電ガスを使用することも、放電効率の向上につながっているという。

 新省電力駆動では、低電圧化を可能にした新材料や新構造の採用、映像シーンに応じて発光制御を可能にし、電力損失を削減する適応型高効率駆動、さらに映像シーンに応じた書き込み制御によりアドレス電力を削減する省電力アルゴリズムを採用した。

 「年間消費電力量は60Wの電球2個分以下になる。環境に優しいパネルといえる」(佐藤氏)という。また、「パネルの消費電力が下がるということは、電源まわりの部品のコストを引き下げることができ、放熱板やファンを不要とするなど、部品の削減にもつながる。結果として、テレビのコスト引き下げにも大きく寄与することになる。薄型テレビ市場全体では、年率25%程度の価格下落となっているが、新パネルを採用したテレビは、それに十分対応できるコスト削減効果がある」(森田AVCネットワークス社副社長)とし、同パネルを採用したテレビの価格競争力の強化につながることを示した。

 さらに、「大画面になればなるほど、高効率化のメリットが出る。42v型という小さいサイズで高効率化を実現しており、これを大画面へ応用することは容易。積極的に広げていきたい」(佐藤氏)という。

 一方、動画解像度で世界最高となる1080本を実現しながら、8.8mmの薄さを実現した50v型のPDPは、新たな高速駆動技術の採用に加えて、動き適用型ベクトル予測機能、短残光蛍光体材料を採用しているのが特徴。  「PDPは、自発光型であることから動画に強いという強みがあるが、今回のフル動画解像度の実現により、動画性能を高め、見やすくしている。これまで以上に、人にやさしいテレビを実現できる」(佐藤氏)とした。

動画解像度1080本を実現する パナソニックとバイオニアの技術を融合して実現した

 省電力化の実現により、部品点数を約3割削減したほか、低電圧駆動による部品の小型化、集積化、放熱技術および強度設計の最適化により、背面スペースを35%削減するといった効果も出ている。また、8.8mmのコンパクト設計により、ワイヤレスHD伝送システムとの組み合わせで、レイアウトフリーな環境でのハイビジョン視聴が可能になるという。

 NeoPDPecoは、PDPで提携関係にある日立製作所やパイオニアにも供給する予定で、テレビとしてのセット工程で、それぞれのメーカーごとの差異が出ることになるという。


■ NeoLCDeco

高画質、高効率を実現した37v液晶パネルのNeoLCDeco

 液晶パネルのNeoLCDecoは、パナソニックのパネル駆動技術と、IPSアルファならではの高透過率、高視野角パネルの技術およびノウハウを融合して開発したものだとする。

 高速駆動技術により、液晶パネルが不得手とする動画解像度で1,000本を実現。LEDバックライトの採用とともに、パナソニック独自の液晶AI技術を採用したバックライト局所制御技術により、2008年モデルに比べて、消費電力を約2分の1とした。

 「バックライト局所制御技術は、独自のアルゴリズムによるもので、エリアごとの明るさを検出し、バックライト輝度を制御。電力ロスを最小限に抑えることができる」(パナソニック AVCネットワークス社映像・ディスプレイデバイス事業グループLCDテレビビジネスユニット長の奥嶋康久氏)という。

 また、画素分割が不要というIPSアルファパネルの特徴を生かし、広視野角を実現するとともに、トランジスタが1個で配線が少なく、透過率が高いという特徴をさらに進化。透過率は他の方式に比べて1.8倍、現行IPSアルファパネルに比べても1.1倍を実現している。コントラスト比は100万:1を実現した。

パナソニックの技術とIPSアルファの技術の融合 1000本の動画解像度を実現している

 高速駆動技術では、動きベクトル性能を向上し、中間フレームの精度を高めた「新フレームクリエーション」と、映像の動きに適応してバックライトを細かく制御する「新モーションフォーカス」によって構成。「PDPに迫る動画解像度を実現した」(奥嶋氏)という。

会見に出席した左からAVCネットワークス社・森田研副社長、AVCネットワークス社映像・ディスプレイデバイス事業グループ主席技監の佐藤陽一氏、AVCネットワークス社映像・ディスプレイデバイス事業グループLCDテレビビジネスユニット長の奥嶋康久氏

 さらに、37型フルハイビジョン液晶テレビては、世界最小となる90kWh/年の消費電力量を実現。「年間消費電力は60W電球1個分に過ぎない」(奥嶋氏)としている。

 LEDバックライトを採用していることでコストの上昇も指摘されるが、「IPSアルファパネルの高透過率の特徴を活かすことで、LEDの数を少なくする技術を開発できるだろう。これがコスト削減につながる」などとしたほか、「今後、より小さいサイズのパネルにも展開していくことになる」とした。

 なお、今回発表したNeoPDPecoおよびNeoLCDecoは、今後1年以内に同社の薄型テレビに搭載されることになりそうだ。

 同社では、具体的な商品の投入時期やラインアップなどについては言及していないが、森田AVCネットワークス社副社長は、「当社の技術発表は、商品化を前提としたものであり、いずれも1年から2年以内で商品化している。約1年が商品化の目安であり、それなりの期間内で商品化したい」とした。

 さらに森田上席副社長は、記者団の質問に答え、「2008年の薄型テレビ市場は、台数ベースで、上期が前年同期比140~150%で推移したが、下期は伸び率が鈍化しており、通期では130%弱ぐらいの成長率になるだろう。2009年は、110~120%で推移すると見ており、2桁成長は維持する。日本国内は、10%前後の成長率となるだろう」と予測。

 また、今年5月に稼働を予定している尼崎プラズマ第5工場は、「第1期の設備は当初の計画通り導入するが、それをフル稼働するかどうかは別の問題。需要動向を見ながら、立ち上げ時の生産数量を決定したい」とした。

 尼崎プラズマ第5工場は、3期に分けて生産設備を導入する計画で、第1期の設備は、フル稼働時の42型換算で月産100万台の約3分の1の生産設備にあたる。同工場で生産されるパネルは、42型で10面取りが可能となっている。今年夏以降、新工場で生産されたパネルを搭載したプラズマテレビが投入されることになる。

 さらに、同社では、2010年にも、液晶パネル生産のIPSアルファの姫路工場を新たに稼働させる計画だが、同工場についても、尼崎プラズマ第5工場同様に、第1期の生産設備は当初計画通りの規模で導入するものの、立ち上げ時の生産台数に関しては、そのときの需要動向を見て決定する考えを示した。

□パナソニックのホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□ニュースリリース(超・高効率 薄型ディスプレイパネルの開発について)
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090108-2/jn090108-2.html
□ニュースリリース(「高効率42v型PDP」と「高画質・超薄型50v型PDP」を開発)
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090108-3/jn090108-3.html
□ニュースリリース(高画質・高効率 37v型液晶ディスプレイを開発)
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn090108-4/jn090108-4.html
□関連記事
【2008年8月31日】IFA 2008【松下編】「NeoPDP」や新フルHDプロジェクタ
-「AE3000」10月発売。倍速駆動/コントラスト6万:1
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080831/ifa09.htm
【2008年4月15日】「Display 2008」開幕。ソニーの0.3mm有機ELパネルなど
-150型プラズマやビクターの3D技術など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080416/display1.htm

(2009年1月8日)

[Reported by 大河原克行]


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