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第30回:2001楽器フェアに見るDTM最新動向 Part1


~ ハードウエア編:GSとXGの互換音源、ほか ~



 10月18日(木)~21日(日)の4日間、池袋サンシャインシティーで「2001楽器フェア」が開催された。この楽器フェアは2年に一度開催されるイベントで、音楽好き、楽器好きの人なら誰でも参加できるお祭り的なものだ。楽器フェアというくらいなので、集まっている楽器のジャンルもさまざま。そのジャンルによって会場が4つに分かれ、今年は計181社が出展した。

 もちろん、ここには新製品の展示も数多くあり、この場で初めて発表された製品も少なくない。すでに、いくつかの製品についてはAV Watchのニュース記事として扱われている。

 Digital Audio Laboratoryでは、それらの詳細、またそこで扱われなかった製品も含め、2回に分けて2001楽器フェアで公開された新製品をレポートする。


 私自身が楽器フェアに行ったのは初日の18日。ウィークデーでありながらも、14時過ぎに着いたときには、結構な人数が集まっており、にぎわっていた。会場のフロア構成は以下の通り。

展示ホールAギター&ベース、アンプ、ドラム&パーカッション
展示ホールBギター&ベース、管楽器、弦楽器
展示ホールCピアノ、オルガン、管楽器、ドラム&パーカッション、アクセサリ、楽譜
展示ホールDデジタル楽器、コンピュータミュージック、レコーディング機器、DJ機器、音楽雑誌

 できれば、全フロアを見て回りたかったのだが、結局A、B、Cの各会場はほとんど見ることができず、展示ホールDに4時間近くいることになった。

 展示ホールDにブースを出していたのは、ヤマハ、ローランド、コルグ、ティアック、カシオ、アカイ、ミディア……など計43の企業、団体。ざっと見て回っただけでも、見ごたえもあるし、新製品もいろいろある。

 実は、14時過ぎからローランドのプレス向け発表会があるので、これに合わせて会場に向かった。この発表会ではRoland、BOSSそしてEDIROLの3ブランドでさまざまな製品が発表され、その目玉として置かれていたのがEDIROLのソフトウェア群だった。

 これらEDIROLブランドの製品については、次回のPart2でヤマハのソフトウェアとともに紹介する予定だ。


■ GSとXGの乗り入れ製品の発表

 さて、このローランドの発表会で資料は用意されていなかったものの、1つ大きな発表が行なわれた。それはRoland/EDIROLのGSとヤマハのXGの相互乗り入れ製品の第一弾である。

 すでに1月16日、ローランドとヤマハは「MIDIのさらなる普及を目指してMIDIデータの互換性を高める相互協力について両社が基本合意」という発表を共同で行ない、GMレベル2を積極推進するとともにGSとXGの相互乗り入れを行なうことを明言していた。それから10カ月経過し、ようやく具体的な製品として登場したのだ。

 実は、今回のローランドの発表に先立つ10月16日にヤマハが「XGlite Ver2.0」という規格を打ち出している。これは正にほかの規格の音源との互換性を高める目的で制定したもので、音色数359、ドラムセット11を持ち、リバーブ、コーラスのエフェクトなどを搭載した規格となっている。

 ローランド側はそのXGlite Ver2.0に対応した音源をリリースした。具体的にいうとDTM用の音源である「SD-90」および、エレクトリックピアノの「HPi-5」の2つ。

ローランドの新音源「SD-90」 XGligte Ver2.0対応のエレピアノによる実演 SD-90には「XGligte」のロゴがしっかり入っていた

「SD-90」のエディットソフトにも「XG」の文字が

 このうち「HPi-5」は、今回発表されたRolandの新製品であるが、「SD-90」は以前にもレポートした製品で、11月発売の製品である。以前の発表資料には「XGlite Ver2.0」への対応については書かれていなかったし、その発表会の際に撮影したボディーにはXGのロゴは無かった。しかし。今回会場に置かれていたSD-90にはXGliteというロゴがしっかり入っていた。

 また、SD-90の設定ユーティリティソフトにもGSとともにXGliteのロゴが表示されていることがわかる。

 一方のヤマハ側の対応はというと、とくに新しい音源の発表というものはなかったが、現行機種である「MU2000」および「MU1000」の今後製造される製品がGS対応になるとのことであった。会場に置いてあったMU2000にも確かにGSのロゴが入っており、これで両社から出揃ったということになる。

 気になるのは既存のMU1000およびMU2000のユーザーへの対応だが、これはファームウェアでアップデートできるとのことだ。

ヤマハの「MU2000」にもGSロゴがついている

 ところで、最近のGS音源やXG音源を使っている方ならご存知かもしれないが、こうしたGSとXGの乗り入れというのは初めて実現したというほどのものではない。XG音源は最初に登場したMU80のときからTG-300Bモードという実はGS互換のモードがあり、利用することができた。またGS音源側もマニュアルには記載されていないが、最近の音源はすべてXGリセットというMIDIのコマンドが送られてくるとXGモードになるように作られている。

 とはいえ、これで正式にそれぞれが乗り入れることになったし、それに合わせて音色パラメータなどのチューニングも施され、よりよい形での連携が可能になったのも事実である。

 なお、古い音源などでこうしたモードが使えない場合のために、今後データコンバータも無償で公開されるとのこと。これはGMレベル2、GS、XGをそれぞれコンバートできるようになるソフトである。


■ ヤマハ、コルグはUSB機器をリリース

 さて、今回のGSロゴの入ったMU2000よりも目立っていたのがヤマハが参考出品の形で展示していたソフトとハード。ソフトは「SOL(SEQUENCER OBJECT LINKING)」というMIDI&オーディオ対応のシーケンスソフトであるが、これについてはEDIROLのソフトと一緒にPart2で紹介する。

ヤマハ「UW10」。廉価なUSBオーディオインターフェイス

 ハードの方は「UW10」という製品。すでにUW500というUSBオーディオ製品をリリースしているが、これはその下に位置付けられるものであり、USBバスパワード方式のオーディオインターフェイスである。

 端子を見ると光デジタル入出力とRCAのアナログ入出力を装備しており、サンプリングビット数は16ビット、サンプリングレートは32/44.1/48kHzから選択できるようになっている。ただし、入力に関してはデジタルかアナログ化のいずれかで行なうため、どちらを利用するか設定しなくてはならない。

 もちろん、Windows、Macintoshの双方で利用でき、添付ソフトとしては波形エディタである「TWE plus」およびソフトシンセの「S-YXG50」がハイブリッドで用意される。発売は年内の予定で、価格は1万円台前半になる見込みだ。

 もう1つUSB機器を展示していたのがコルグ。こちらは単なるオーディオインターフェイスではなく、小型ながら単体で動作するレコーディング機器である。

コルグはUSB接続のマルチトラックレコーダ「PANDORA PXR4」を出品

 「PANDORA PXR4」という名前のこの機材は、124×110×34mm(幅×奥行き×高さ)で重量256g(電池含まず、電池はアルカリ単三乾電池を使用、動作時間約2時間)というコンパクトなサイズでありながら液晶パネルと5つのフェーダーも備えた本格的なレコーディング機器。

 最大同時再生4トラック、最大同時録音2トラック、各トラックにつき8つのバーチャル・トラックを装備し、トータル32トラックを使用可能だ。

 パンチ・イン/アウト、バウンスはもちろん、コピー、ペースト、タイム・エクスパンジョン、コンプレッションなどが装備される。また計99ポイントのマーク設定が可能であるなど、小さいながらもなかなかの機能・性能を持っている。

 では、そのレコーディングしたデータはどう記録されるかというと、これはスマートメディアが使えるようになっており、ここに記録される。音質によって記録時間は異なり、添付の16MBのスマートメディアに1トラック記録するには、最高音質のハイクォリティでは約11分、スタンダードでは約16分、エコノミーでは約33分となる。

 またUSBでPCと接続することにより、各種データをPCにバックアップしたり、完成した曲をPANDRA PXR4本体上でステレオMPEGフォーマット(MP2)のソングファイルとして作成し、PC上で再生させることも可能。ただし、これをUSBオーディオインターフェイスとして利用することはできないようだ。対応しているOSはWindows Me/2000、Mac OS 9.04以降となっている。


■ Logic用フィジカルコントローラでProToolsを追撃

Logic 5

 今回の楽器フェアでもう1つ目立ったブースがあった。それはドイツのemagicやNativeInstrumentsの国内代理店であるミディアのブースだ。

 emagicといえばMacintosh、Windowsで動作する高性能MIDI&オーディオ・シーケンスソフト「Logic」のメーカー。今回その最新バージョンである「Logic 5」をリリースし、さらにLogic専用のフィジカルコントローラ「Logic Control」、およびその拡張ユニット「Logic Control-XT」を発表した。

 LogicはCubaseと並び、歴史あるシーケンスソフトであり、プロユーザーも多く用いているソフト。しかし、レコーディングスタジオではDigidesignの「ProTools」が圧倒的なシェアを占めている。その背景に、ProToolsには高価ながらもDSP内蔵のオーディオインターフェイスや、数多くのフェーダーを持ったフィジカルコントローラが用意されていることあるのだが、emagicは今回のLogic ControlでProToolsを追撃する考えのようだ。

オートフェーダ採用の「Logic Control」

 このLogic Controlは32bit解像度を持つLogic 5のフェーダー群を32bitの解像度で直結制御するというもの。9本(うち1本はマスター)のPenny & Gile製100mmロングストロークのモーター制御/タッチセンシティブ対応のオートフェーダーの採用により、実際の操作感も非常によかった。

 ロケーションのコントロール用にはジョグ/スクラブ・ダイアルが搭載されており、ここには4段階でスピードを変えられるシャトル・モードも採用されている。もしフェーダーの数が足りない場合にはLogic Control-XTをカスケード接続して使うということになる。

 ちなみに、このLogic Controlの製造はこうしたコンソールメーカーとして有名な米Mackieが行なう。国内での出荷は2002年1月7日、価格はまだ未定ではあるが、米国での価格がLogic Controlが1,299ドル、Logic Control XTが1,129ドルであり、これとほとんど変わらない価格で発売するという。

 もう1つミディアブースで新たに登場たのがNativeInstrumentsのソフトシンセ「FM7」だ。FM7については、少し前からアナウンスされていたが、実際の展示はこれがはじめて。FM7とはFM音源をソフトウェア的にシミュレーションするソフトであり、WindowsおよびMacintoshのハイブリッドとなっている。

往年のシンセ「DX7」をエミュレートするVSTプラグインの「FM7」

 スタンドアロンでも動作するほかVSTインストゥルメントのプラグインとしても動作するのだが、この画面、見る人が見れば何を意味するのかすぐにわかるだろう。そう、名前こそFM7となっているが、これはまさにヤマハの往年の名機「DX7」のエミュレーターなのだ。デザイン的にもそっくりだが、サウンドもまさにDX7そのもの。とくにエレピの音色やブラスの音色は特徴的。こちらも間もなくの発売予定だ。


■ M-AudioやFOSTEXも新製品を投入

 オーディオインターフェイスメーカーとして、今非常に人気の高い「M-Audio」も新製品をズラリと揃えていた。

M-Audioの「DELTA410」と「DELTA R-BUS」

 具体的には24bit/96kHzのアナログ2In 8Out+S/PDIF I/Oを持った「DELTA410」、TDIFを備えたデジタルカード「DELTA TDIF」と、R-BUSを備えたデジタルカード「DELTA R-BUS」、また24bit/96kHz対応DAWである「DELTA OMNI STUDIO 66」、8系統のアサイナブルコントローラ/USB MIDIインターフェース搭載したフルサイズ25Key MIDIキーボード「Oxygen 8」などだ。

 また、FOSTEXは低価格なHDD対応のDAWを展示し注目を集めていた。とくに8トラックを持つ「VFO8s」は、HDD別売モデルなら標準価格が39,800円。HDDは、3.5インチのE-IDE対応であれば、たいていのドライブが利用できるとのことだから、非常に安上がり。しかもSCSI端子も標準で装備しているので、外部にCD-Rドライブを接続すれば即オーディオCDを作成することができる。また、その上位機種であり16トラックを持つ「VF160」もHDDを内蔵しないモデルならば74,800円という低価格になっている。

8トラックレコーダの「VFO8s」と16トラックの「VF160」

 そのほか、気になったところでは、ティアックが正式に「GigaSampler」、「GigaStudio」の販売元になり、その製品を展示していた。

 GigaSampler、GigaStudioは米NemeSys Music Technologyが開発したWindows用のサンプラーで、世界的にも非常に話題になっている製品。先日米国のTASCAM(ティアックのアメリカ法人)がNemeSysを買収した結果、国内での販売元がこれまでのクリプトン・フューチャー・メディアからティアックへ移った。

 これまでハードにおいては、PC向けの製品をいろいろと揃えてきていたティアックが、強力なソフトを手にしたことにより、今後どのような展開をするのかが非常に楽しみである。

 以上、個人的に気になった製品を中心に紹介してみたが、Part2ではローランド、ヤマハの新ソフトについて詳しく紹介する。


□2001楽器フェアのホームページ
http://www.musicfair.gr.jp/
□関連記事
【10月18日】音楽、DTM機材などのイベント「2001楽器フェア」が開幕
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011018/mifair.htm

(2001年10月22日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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