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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第66回:誰でも使えるHDDレコーダ
〜SANYOが作るとこうなる「VZ-HD1G」〜


■ 実はSANYOすごいんです

 実はつい最近知ったのだが、SANYOに対するちまたの人々の認識というのは、どーも今ひとつB級というか二流メーカー、という感じらしい。しかしその実態は、地道にOEMで他メーカーを根底で支え、自社製品はどことなくユニーク。押さえるところはしっかり押さえ、それ以外のところで大冒険なメーカーなのである。

 例えば電話機では「テブラコードるす」を定着させ、feel H"対応端末1番乗りで量販店に大行列を作らせた。白物家電ではプールの浄化システムを応用して、洗剤のいらない洗濯機を作って洗剤メーカーから睨まれたり、電子レンジで焦げ目を付けたり、冷蔵庫でドア開けても冷気が逃げない「クールカーテン」で奥様方に大ブレイク中なのである。デジカメでは、スチルカメラなのにミョーに動画に強いモデルを連発したりしている。そうだ、そういえばみんな気軽に「デジカメ」とか口走っているが、「デジカメ」ってのは三洋電機の登録商標なのだぞ、どうだまいったかまいったと言え言ってオネガイ。

 そんなSANYOから、AV業界へ向けてのあらたな刺客、VHSとHDDのハイブリッドレコーダーが登場した。「W CRUISER(ダブルクルーザー) VZ-HD1G」がそれである。W CRUISERとはSANYOのハイブリッド機に付けられる名称で、ほかに同シリーズとしてVHSとDVDの一体型デッキもある。SANYOのVHSを有名にしたのが、映像は倍速でも音はピッチを変えずに再生するという「時短プレイ」の存在だが、VZ-HD1GはHDD録画したものでもこの時短プレイが可能になっており、そのあたりにSANYOのこだわりが垣間見える製品だ。

 では早速その使い勝手をチェックしてみよう。なお今回お借りしたものはまだ最終製品版ではなく、仕様などが変更される可能性もあるので、あらかじめご了承頂きたい。


■ シンプルなディスプレイ

 まずはいつものように外観からチェックだ。フロントパネルで特徴的なのが、ラックマウント機器を思い起こさせるような、両側の出っ張ったミミ。この先端にスイッチがあり、左が電源、右がビデオとHDDの切り換えスイッチだ。

 パネル下半分がミラーになっており、ディスプレイと操作ボタン類がここに集約されている。高級感もないが安っぽくもないという、中庸路線のデザインだ。本体のボタンはストロークは短いものの、クリック感が大きく、押しやすい。もっとも家庭で使う分には、本体ボタンはそれほど押す機会がないかもしれないが。

特徴的な両サイドのでっぱり。中央部にボタンが埋め込まれている ボタン類は標準的なサイズ。クリック感が大きく、押しやすい

 ミラー内のディスプレイは非常に簡素化されたもの。基本的なステータスは、FL管表示の小さなアイコンと7セグメント4桁の数字で表示する。ビデオ出力側にオーバーレイされる表示でもステータスは確認できるので、本体表示はそれほど力を入れていない感じだ。

 操作ボタン上部には「MULTI INDICATOR」と銘打たれた小さな表示窓がある。ここは常時「HDD」というブルーの表示があるが、ここは変化しない。インジケータはその下にある数個のLEDだ。ここでHDDの使用量を表示するとともに、HDDからVHSにコピーする「簡単ダビング」機能の使用中にはLEDが流れるように点灯する。まあ確かにMULTIといえばMULTIだが、上のブルー表示がニギヤカシ以上の意味がなかったのはいささか拍子抜けだ。

本体表示はシンプル。基本的なことがわかればいいというレベル MULTI INDICATORのLED点灯時。VHSへのダビング中に流れるように表示される

 背面パネルのほうも、至ってシンプル。ファンの取り付け方なんかはまだ試作機っぽいが、まあこんなもんだと言われればこんなもんかという雰囲気もある。入出力はRF入力とスルーのほか、コンポジット出力1系統、入力2系統(1つは前面)という、VHS的に見れば平均的なI/Oである。Sビデオの入出力はない。

まだ試作っぽい背面パネル。ステッカーにはMADE IN THAILANDの文字が シンプルな入出力。まさに現状のVHSデッキとのリプレース向き




■ 操作性は独特だが快適

 SANYOのビデオを特徴付けているのが、リモコンだ。ビデオ操作とメニュー操作をジョイスティックで行なうようになっており、この操作感を覚えるまで若干とまどうかもしれない。メニュー操作はこのジョイスティックのおかげで素早く行なうことができるのだが、「決定」はジョイスティックを垂直に押し込んでクリックすることになる。この動作時に力を入れすぎると、くにっっとジョイスティックが倒れてしまって違う操作になりがちだ。

ジョイスティックによる特徴的なビデオ操作部 カバー内にはGコード関係の機能とHDD録画コントロールがある

 搭載されたHDDは40GBで、録画モードはSP、LP、EPの3種類。ビットレートなどは、記録がVBRであること以外公開されていないが、資料によるとSPモードで約10時間、LPモードで約20時間、EPモードで約40時間となっており、ちょうど倍々となっている。他社の例から想像すると、ビットレートはそれぞれ8Mbps、4Mbps、2Mbpsあたりだろう。

 画質の面では、ビデオ出力がコンポジットしかないこともあって、輪郭部分のキレは全体的に甘い。それでも画質モード間の差は、割と正直にビットレートの差が画面に現われる。EPモードでは、カット替わりにブロックノイズが見られることがあるし、動きのない部分では不自然に映像が動かない部分が出る。それからLP、SPとビットレートが上がっていくに従って、それらの不自然さが緩和されていく。ただし、今回試用したのは最終製品版ではないため、製品では改善されている可能性はある。

 もっとも本機には、HDDがいっぱいになっても録画履歴の古い順から自動上書きする機能もあるので、無理にEPモードでHDD容量を節約する必要性はあまりないかもしれない。録画ファイルをいちいち消す手間がないので、ユーザーは何も考えずにただ番組を見るだけでいいというのは楽ちんだ。

 それぞれの画質に関しては、本機では映像をデジタル的に取り出す手段がないので、各モードでのスナップショットを掲載しておく。

 TVチューナの性能評価を同時にするため、RF入力からの録画を行なった。

 素材にはカノープス株式会社の、プロ向け高画質動画素材集「CREATIVECAST Professional」をDVテープに書き出して使用した。

 そのDVテープをDVデッキ「ソニー WV-DR5」で再生し、内蔵のRFコンバータで2chのTV信号として出力。それを録画し、コンポジット映像端子経由でPCで静止画キャプチャした。

 下の各サムネイルは、上の画像の赤枠内を拡大したもの。各画像をクリックすると640×480ドット(JPEG)による全体表示を行なう。

【SPモード】
【LPモード】
【EPモード】
【SPモード】
【LPモード】
【EPモード】
【SPモード】
【LPモード】
【EPモード】

 また同機には、スリップ再生を行なうための常時記録領域を設定することができる。常時記録を行なっていると、放送中の番組であっても約5秒程度リアルタイムからは遅れて出力される。したがってチャンネルの変更も、リモコンのボタンを押してから5秒後に画面が切り替わるというレスポンスになる。

スリップ再生中に録画ボタンを押すと現われるダイアログ

 面白いのはスリップ再生しながらマニュアルで録画を開始したときで、今までスリップ再生してきたバッファ分もそのとき保存することができる。バッファ分は別ファイルとなってしまうが、結果的には時間を遡ってレコーディングすることと同じとなり、とにかく「見逃さない」ということを重視した機能だ。

 SANYOのビデオデッキの特徴である時短プレイも、HDDで可能。ただしVHSでは2倍速のところ、HDDでは1.5倍速と、若干遅めになっている。また時短プレイのモードも2つあり、通常の時短プレイのほかに「フルボイス時短プレイ」が搭載された。これは音声再生速度の可変幅を1〜1.5倍にすることで、セリフの聞き漏らしをほぼ100%なくすことができるモードだ。

 実際にHDDで時短プレイを行なったみた。VHSでの時短プレイで見られた映像のジャギーが見られず、早回しとは思えないなめらかさ。IフレームとPフレームだけを再生しているそうだが、なかなか優れた技術だ。音声のほうもVHSでの2倍速と違って1.5倍速なので、早くて聞き取れないという感じはない。「フルボイス時短プレイ」なら、かなりセリフの詰まった部分も途中で切れることなく聞くことができた。

 録画の停止は、メニュー操作するつもりでうっかり停止しないよう(同じジョイスティックを使うからね)、別の録画停止ボタンがリモコン内に作られている。このあたり、人間のミスしそうなところを避けるよう、よく考えられている。



■ メニュー操作はシンプル

 メニューの表示は、リモコンの「メニュー」ボタンを押すだけだが、本体がHDDモードになっているかテープモードになっているかで機能が違う。HDDモードではHDD関係のメニュー表示が、テープモードになっているときは予約リストとベーシックな本体設定メニューが現われる。実際の運用ではほとんどHDDモードのままで使用すると思うのだが、よく使う予約リストの確認や修正がテープモードへ切り換えなければ行なえないというのはちょっと面倒。HDDモードからでも予約リストに飛べるようにしてほしかった。

HDDモードでのメニュー表示。ここではHDD録画動作に関する機能のみ テープモードでのメニュー表示。番組予約設定などはこちらにある

 録画した番組を見るには、サムネイルで一覧表示される「録画リスト」を使う。ここで番組を選択し、「道具箱」ボタンを押すと、その番組に対するさまざまな設定を行なうことができる。

 道具箱の「編集再生」機能は、録画した番組をGOP単位で編集する機能だ。例えばCMをカットしてVHSにダビングする、といったことができる。ただこの機能、再生範囲を決めるためのビデオコントロールが若干やりにくい。というのも、この機能内での再生ではIフレームしか再生されないため、再生に対するカンがつかみにくいのだ。通常再生でもスロー再生のような気がしてしまい、ここぞというところでうまく止められないのである。他社の同機能に比べると、ざっくりカットしてぱぱっとダビング、という割とおおざっぱな使い方になるだろう。

録画リスト表示。サムネイルの変更なども可能だ 簡易的ながらもクリップの編集も行なえる



■ 総論

 HDDによるTV録画機は、さまざまなスタイルのものが存在する。PCそのものを利用するタイプ、PCのテクノロジーを使ってスタンドアロンで動くタイプ、デッキタイプの家電製品などだ。もともとHDDがPC用のデバイスであることから、例えTV録画機であっても、その根底にはある程度PCアーキテクチャに対する理解力みたいなものが要求されてきた。

 しかしVZ-HD1Gに感じたのは、「PCもわかってるユーザー」ではなく、そういう知識がない人たち、あるいはTV録画に対してむちゃむちゃ気合い入れているわけではない人たちのためのHDDレコーダー、という方向性だ。操作は易しいが、HDD録画のメリットを捨て去るのではなく、おいしいところはしっかり残している。このあたりの中庸な狙いこそが、いかにもSANYO製品らしい。

 さてこのW CRUISER VZ-HD1Gは7月5日発売予定、予想価格は7万円前後と見られている。VHSとHDのハイブリッド機としてはPanasonicやVictorの陰に隠れて今ひとつ地味だが、潤沢に流通し始めれば量販店やディスカウントショップ店頭での値引率はちょっと期待できそうだ。

 VHSを全廃するわけではないが現状のテープ録画からもう一歩踏み出したいユーザーに、HDD録画入門機としてちょうどいい価格と機能と言えるだろう。


□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0206news-j/0613-1.html
□製品情報
http://www.digital-sanyo.com/VTR/vzhd1g/vzhd1g.html
□関連記事
【6月13日】三洋電機、時短プレイ搭載のHDD一体型HiFi-VHSレコーダ
―音声付き1.5倍速の「スーパー追いつき再生」が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020613/sanyo.htm
【5月22日】第60回:あらゆる放送が録画可能なPanasonic NV-HVH1
〜 VHSとHDDの二刀流ははたして便利なのか? 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020522/zooma60.htm
【1月24日】三洋、「時短プレイ」搭載のVHS/DVDコンボデッキ
―音声をゆっくりにする「ゆっくりモード」も搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020124/sanyo.htm
【2001年9月26日】ビクター、40GB HDD搭載HDD/S-VHSハイブリッドレコーダ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010926/victor2.htm
【2001年11月5日】東芝、10万円を切るHDDとVHS Hi-Fiの複合レコーダ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011105/toshiba.htm

(2002年7月3日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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