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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第71回:録画家電から画像管理端末に
~今度のDMR-HS2はナニゲに便利~


■ 留守録は家電に限る?

 先週は3泊4日で沖縄に行って来たわけだが(詳しくは前回参照)、そういった旅行や出張で留守にするときにちょっと困るのが、テレビの録画だ。普段筆者用の録画は、自作機 + カノープス MTV1000で行なっているわけだが、まったく無人となる家の中で自作パソコンがずーっと通電しているのってやっぱり不安である。じゃあメーカー製なら安心かってーとそういう問題でもなくて。

 いや人が見てればさ、パソコンって調子悪くなる前兆がわかるでしょ。ファン音がおかしいとか妙に筐体が熱いとかいろいろと。でも無人になっちゃってる間にそのような予兆をほっとらかしにしておくと火災の危険もあり、単に録画に失敗する以上の心配を残したまま出かけることになる。

 そういう事態になって初めて、やっぱ家電ベースの録画機っていいなぁと思うわけだ。どう考えても筆者自作PCよりは安全だし。そんな時にタイミングよくブツを手配してくるのがWatch編集部のいいところで、実はPanasonicの新HDD・DVD-RAM/Rのハイブリッドレコーダ「DMR-HS2」を旅行期間中ずーっとお借りすることができた。おかげで安心して録画を任せて旅行に行ってくることができたし、録画の成果もバッチリ。

 さて今回のお題であるDMR-HS2、8月1日発売ですでに電車の中吊りなどでも広告展開されており、ご存じの方も多いだろう。2001年12月に発売になった「DMR-HS1」の後継機種にあたる。廉価モデルというわけではないので、削られた機能はほとんどないにもかかわらず、標準価格で65,000円も下がって135,000円となっている。ぐぐっと買いやすくなったDVDとHDDのハイブリッドレコーダ、その実力を検証してみよう。


■ コンパクトにまとまったボディ

 まず箱から取り出してみて驚いたのは、前モデルのHS1に比べてボディがかなり小さくなっている点だ。レコーダでありながら、ボディの厚みはそこらへんのDVDプレーヤーよりも薄型。HS1のようなAVアンプ並みにどどでーんとあるという感じはない。カタログによると41mm低いことになる。いや41mmってあーた4cmぐらいだよ。それってすごくない? 高さ4cm低いってのは、見た目がものすごくスマート。奥行きも45mm短いが、ファンを外出ししてボディを短くしているので、カタログ値よりもさらに5cmぐらい短く感じる。この工夫で、機能の凝縮感を演出している。

ぐぐっと小型化されたDMR-HS2 トレーは丸みを帯びたデザイン

 DVD-RAMのトレーを出してみると、DVDレコーダ「DMR-E30」と同じ角の丸い新デザインとなっている。このあたりの配慮も家電ならでは。リテールのDVD-RAM/Rドライブにも採用されたら結構いいと思うので、ちょっと期待したいところ。

 フロントパネルは、おなじみのミラー張り。そこで目につくのは、前面左のPCカードスロットだ。デジタルカメラのメモリをPCカードアダプタに入れてここに挿すと、画像の吸い上げやスライドショー表示ができる。また右側に目を移すと、HS1で目立っていたタイムワープロ―ラがなくなり、操作系がシンプルにまとめられた。あのローラは結構高級感があったのだが、コストと実用性を天秤で考えると、まあ省略するという判断はアリだろう。

レコーダには珍しくPCカードスロットを装備 コンパクトになったぶん凝縮感がすごい背面端子群

 背面に回ると、サイズが小さくなったぶん端子類がギッチリ。ファンの出っ張りが気になるといえば気になるが、実際にはケーブル類の飛び出し分相当なので、設置スペースとして最初からこの分を考慮すれば問題ないだろう。

 今回大幅なコストダウンに貢献したであろう部分は、リモコンだ。従来機ではGコード予約の際にリモコンのディスプレイで入力を確認できたわけだが、HS2のリモコンは液晶表示が省略された。入力データの確認は、テレビ画面上にオーバーレイされる表示で確認することになる。U.I.的にはそれでも特に問題はないと思う。逆にお年寄りにとっては、リモコン上の小さくて暗い表示よりも、大きなテレビ画面上で数字を確認した方が使いやすいという一面もあるだろう。

液晶画面が省略されたリモコン 予約情報などは画面上で確認する


■ 若干向上した録画・編集機能

 では次に録画機能を見てみよう。ハードウェア的には、デジタル3次元Y/C分離、デジタル3次元ノイズリダクションなどはHS1からそのまま引き継がれている。各録画モードもメディアに対する収録時間が同じなので、ビットレートも同じだ。したがって画質に関しては、前モデルと相当と考えていいだろう。画質に関しては、いつものように編集部がサンプルを作ってくれたので、参考にして頂きたい。

【サンプル動画】

 素材にはカノープス株式会社の、プロ向け高画質動画素材集「CREATIVECAST Professional」をDVテープに書き出して使用。なお、サンプル版なので、画面右端にロゴが焼きこまれている。

 そのDVテープをDVデッキ「ソニー WV-DR5」で再生し、内蔵のRFコンバータで2chのTV信号として出力。それを内蔵HDDに記録した後、DVD-Rに記録した。

 なお、サムネイルは「PowerDVD XP」で再生し静止画キャプチャを行ない作成した。その際、EP、LPは他のモードと記録解像度が異なるため、全モードとも800×600ドットで再生し条件を揃えた。下の各サムネイルは、左の画像の赤枠内を拡大したもの。各モードの画像をクリックすると再生が始まる。

(c)CREATIVECAST Professional

【MPEG-2形式】
EP
(352×240ドット)
音声:DD(256kbps)

ep.mpg(5.96MB)
【MPEG-2形式】
LP
(352×480ドット)
音声:DD(256kbps)

lp.mpg(8.53MB)
【MPEG-2形式】
SP
(704×480ドット)
音声:DD(256kbps)

sp.mpg(15.6MB)
【MPEG-2形式】
XP
(704×480ドット)
音声:DD(256kbps)

xp.mpg(25.4MB)
【MPEG-2形式】
XP
(704×480ドット)
音声:L-PCM

xplpcm.mpg(22.4MB)
【MPEG-2形式】
XP(DV入力)
(704×480ドット)
音声:L-PCM

xpdv.mpg(25.1MB)

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

初期設定でオーディオモードをあらかじめ決めておく

 録画での変更点といえば、最高画質のXPモードでのみ、音声がリニアPCMで収録が可能になった点があげられる。今までDVD系録画デッキで音声のリニアPCM記録ができたのは、東芝の「RD-X1」と「RD-X2」だけだったので、そこと肩を並べた。ただしHS2の場合は、初期設定でXP録画時のオーディオをリニアPCMに固定する方式なので、予約時にオーディオモードを選択できるRDシリーズとはちょっと考え方が異なる。

 保存機能での強化点といえば、プログラム分割機能が付いたのが実用的。例えば長時間の映画をXPモード + リニアPCMで録画した場合、DVD-RAM片面には入らない。そういうときに番組を2分割して、DVD-RAMの両面に記録することができるようになった。

 また不要部分を削除する「部分消去」もなかなか使いやすい。不要部分のイン点とアウト点を決めて、その間を消去できる。RDシリーズの編集機能のように必要部分を抜き出してリストを作っていくのとは逆に、不要部分を順に消していった残りが必要部分である、という消去法的考え方だ。

 大部分の人はCMカットに使う程度だろうから、この方法のほうがわかりやすいと感じるだろう。ただジョグのようなアナログ制御のインターフェイスがないので、リモコンのボタンだけで編集ポイントを見つけるのには、なかなか苦労する人もいることだろう。

画質を落とさずに番組を2分割できる 部分削除機能は、いらない部分を範囲指定する


■ デジタル画像を一元管理

 インターフェイス周りの新機能としては、PCカードスロットの搭載が珍しい。要するにデジタルカメラの画像を吸い出すのに、もっともレガシーでユニバーサルなインターフェイスを持たせたということだ。

 PCカードアダプタを使ってデジタルカメラのメモリを挿すと、サムネイル表示のブラウザが使えるほか、スライドショーとして画像1枚ずつを順に表示するという機能が使える。またメモリ内の画像を吸い上げて、HDDやDVDに保存することもできる。従来はパソコンでしかできなかったこれらのことが、家電ベースでできるというところにメリットを見いだす人も多いだろう。

デジタルカメラの画像表示や管理が可能 サムネイルが表示される「アルバム表示」機能

 今のところは取り込むだけだが、今後PCカードスロットなんてところをもっといじっていくと、面白くなると思う。例えば録画した番組をMPEG-2からMPEG-4に変換してSDカードに記録、ケータイで見られるとかいうところまでできれば、ケータイWatchの法林さんとか大喜びするハズなのである。

 それはそれとして、JPEGの画像なんていくら集めても4.7GBにまでならんだろ、というツッコミが聞こえてきそうだ。しかしHS2では静止画だけでなく、DVカメラの自動取り込み機能も搭載している。ここでピンと来る人もいると思うが、DVカメラで撮れる動画と静止画を1枚のDVDメディアで保存することができるのである。しかもパソコンを経由せずに、だ。DV録画機能はHS1からあったのだが、前回はテストしてなかったのでちょっと試してみよう。

DVからの映像取り込みはケーブル接続だけでOK

 DVカメラとHS2をIEEE 1394ケーブルで接続し「DV入力時同録画」機能を選ぶと、カメラ側のテープ再生がポーズ状態になる。「録画開始」を選ぶとテープとHDDがシンクロして、再生と録画が始まる。リモコンで停止ボタンを押すか、カメラ側の再生を止めると、録画が停止する。やってることは非常にシンプルだ。取り込んだ映像は、テレビの録画と同じくMPEG-2になっているので、番組の時とおなじように部分削除機能が使える。ちょっとした簡易編集までリモコンでできてしまうわけだ。パソコンを使わないカメラユーザーにとっては、ある意味「デジタル映像タンク」とも呼ぶべき機能を持つHS2は、ありがたい存在なのではないだろうか。



■ 総論

 これから夏休みシーズンを迎えて、1週間ほど田舎に帰省するという人も多いことだろう。そんなときにパソコンの電源はみんな切って行くだろうが、VHSデッキの電源までわざわざ切っていく人はほとんどいない。無人で自動実行させて安心できるのは、やはり家電なのである。

 HS2は、DVDとHDDのハイブリッドレコーダとしてはHS1から目立った進化がないので、多くの人は価格面でしかメリットを感じないかもしれない。しかしデジタルカメラやDVカメラの画像をまとめて取り込んで管理できる点などは、記録型DVDというものをいかに有効に使って貰えるかという点で、なかなか知恵を絞っており、地味ながらもある意味「パソコンキラー」の一品ということができるだろう。

 ネットではすでに9万円台前半の値付けをしているショップも多数あり、かなり買いやすくなっている。実は前モデルのHS1も同じぐらいの値段になっちゃってるので悩みどころだが、個人的に買うならまあリニアPCM記録とスタイルのスマートさで、HS2のほうか。

 ただこの原稿を書いている8月5日現在では、編集系のバグのため、どうやら多くのショップで商品が回収されており、今すぐに購入は難しいようだ。パナソニックではスバヤクこのような告知を出して、内部ソフトウェアの交換作業を行なっている。まあこの手のレコーダは機能的に複雑なのでチェックが完全にできなかったということだろうが、早めに対応がなされ、またきちんと告知も行なわれたため、おおごとにはならずに済みそうだ。

 筆者が大手量販店に問い合わせたところ、お盆過ぎには再入荷の見通しとのこと。あーきっとHS2関係部署の皆さんのお盆休みがこの一撃で消滅かと。気の毒になぁ。


□松下電器のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn020710-1/jn020710-1.html
□製品情報
http://www.panasonic.co.jp/products/video/digital/hs2/
□関連記事
【7月10日】松下、135,000円のHDD内蔵DVDレコーダ「DMR-HS2」
―HS1から約3割廉価、リニアPCM記録にも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020710/pana.htm
【6月19日】 【EZ】第64回:出た!待望のエントリーモデル
~ HDD&DVDビデオレコーダ「東芝 RD-X2」~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020619/zooma64.htm
【2001年12月26日】 【EZ】第41回:管理機能充実のハイブリッドレコーダ
~ 東芝はRD-X1で信頼回復なるか! ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011226/zooma41.htm
【2001年11月14日】 【EZ】第35回:これが究極のハイブリッドDVDレコーダー!?
~できることいろいろ、HDD+DVD搭載「DMR-HS1」を試す~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011114/zooma35.htm
【2001年5月30日】【EZ】第12回:テレビキャプチャカードの最高峰「カノープス MTV1000」
~ カノープスこだわりの画質を検証する ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010530/zooma12.htm

(2002年8月7日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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