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ついに出たiPodキラー
液晶リモコン派垂涎のHDDプレーヤー
iRiver 「iHP-100」
発売日:7月上旬発売
販売価格:49,800円


■ ついに出た液晶リモコン標準搭載HDDオーディオプレーヤー

 iPodの一人勝ち状態に、唯一の対抗馬といえるのがクリエイティブのZenシリーズ。こんな図式が今までのHDDオーディオプレーヤー市場といえるのでは無いだろうか? そのほかにも、東芝のGIGABEATや旧ソニックブルーのRioRiot、動画再生も可能なArchosのJukebox Multimedia 20などもあるにはあるが、先述の2社が相次いで新製品を投入しているのと比較して、既に時代遅れな感は否めない。

 そんな停滞基調のHDDオーディオプレーヤー市場だが、4月にアナウンスされ、個人的に待ちわびていた製品がようやく登場した。それが今回レビューするiRiverの「iHP-100」だ。この製品の登場を待っていたのにはわけがある。それは「液晶リモコン」を装備しているということ。

 以前iPodのレビューでも書いたが、個人的には「リモコンでアルバム間移動ができない」ことが、iPodに対する唯一の大きな不満と言える。iHP-100は、その液晶リモコンを備えており、しかもWMA対応や光デジタル入出力、FMチューナ内蔵と、iPodにはない数々の機能を搭載している。

 サイズ的にも1.8インチHDDの採用により、外形寸法は60×19×105mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約160gと、iPodの61.8×15.7×103.5mm/158gにかなり近づいている。2.5インチHDD搭載のZenの75.9×24.5×112.6mm/約268gと比較するとかなり小さく軽い。iPodと向こうを張って競えるライバルの登場といえそうだ。

 HDD容量は10GBと最新のHDDプレーヤーにしてはやや少なめだが、必要十分といったところ。価格は実売で約49,800円と、iPod 15GBの47,800円に比較して、やや高めの価格設定となっている。


■ デザインはイマイチ? 質感は良好

 パッケージは非常に小型で、専用のキャリングケースや、リモコン、ヘッドフォン、ACアダプタなどが同梱される。

小型のパッケージに収められている

 本体は60×19×105mm/約160gと小型軽量。デザイン的には、センターのやや出っ張ったMENU/NAVIボタンがアクセントとなっている。シルバーとグレーのツートンカラーを基調としたデザインはやや鈍重にも感じるが、本体の質感は高く、見た目よりは軽く感じる。

 左側面に録音ボタンとマイク、右側面に再生、停止、モードボタン、ホールドボタンを備え、基本操作をNAVI/MENUボタンで行なって、「決定」操作を側面のボタンで行なうというボタンレイアウトになっている。考え方は非常にわかりやすいので、慣れれば操作にそう迷うことは無いだろう。

 また、上面には光デジタル(丸型)/アナログ兼用の入/出力をそれぞれ1系統備え、MDやCDなどからのダイレクトキャプチャが行なえるのも本機の大きな特徴だ。


液晶は8ライン表示対応の160×128ドット 左側面にマイクと録音ボタンを装備 右側面に再生、停止、モードボタン、ホールドボタンを備えている

上面に光デジタル/アナログ兼用入/出力、ヘッドフォン出力を装備 本体下面にUSB端子とAC端子を装備 同梱品

初代iPodとの比較

【第3世代iPod(15GB)との比較】
  iHP-100 第3世代iPod
M8946J/A
HDD 10GB 15GB
対応フォーマット MP3
WAV
WMA
ASF
AAC(Macのみ)
MP3
Audible(Macのみ)
AIFF(Macのみ)
WAV
液晶ディスプレイ 160×128ドット 160×128ドット
PCインターフェイス USB 2.0 IEEE 1394
USB 2.0
連続再生時間 約16時間 約8時間
満充電時間 約3時間 約3時間
リモコン 付属(液晶有り) 付属(液晶無し)
ドック 付属
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
60×19×105mm 61.8×15.7×103.5mm
重量(電池含む) 160g 158g
実売価格(7月11日現在) 49,800円 47,800円


■ 操作性はまずまず。USBストレージとしてオーディオデータを転送可能

Windows上からリムーバブルドライブとして認識される。右クリックメニューから曲情報DBを作成可能

 パソコンとの連携はUSB 2.0経由で行なう。Windows XP/2000では、普通にリムーバブルストレージとして認識される。パソコンへの転送は通常のリムーバブルストレージと同様に、ドラッグ&ドロップするだけと非常に簡単。1,100曲/5.12GBのオーディオデータの転送時間は約11分30秒とかなり速い。

 iPodを含め、HDDオーディオプレーヤーは基本的に専用ソフトからしかプレーヤーにデータ転送が行なえない、というのが一般的なだけに、この使い勝手のよさは他のプレーヤーに比べて大きなアドバンテージといえる。転送速度も非常に高速だ。

 なお、購入層を上級ユーザーと見積もっているのか、取扱説明書には、データ転送方法は記載されていないので、USBストレージの何たるかを知らないユーザーはおそらく戸惑うだろう。また、MusicMatchなどのソフトウェアがバンドルされているのだが、その辺りについても一切言及は無い。

 本体の基本操作はセンターの「NAVI/MENUボタン」と、側面の再生、停止、モードボタンを利用する。

 表示画面は「NAVI/MENUボタン」を長押しすることで、ナビゲーション画面とメニュー設定が切り替え可能。また、ナビゲーション設定画面は、ID3Tagの音楽情報を利用したモード(音楽情報ナビ)、フォルダ階層をそのまま表示するモード(フォルダモード)の2種類が用意されている。

音楽情報ナビ
アーティスト/アルバム/曲名/ジャンル/フォルダ表示の5つの画面が切り替えられる
フォルダモード。音楽情報DBを使っていない場合、もしくはMP3以外のWMAやWAVEなどを利用する際はこちらのモードで操作を行なう

 音楽情報ナビでは、ID3Tagの情報を読み取り、アーティストやアルバム名、ジャンル、曲名ごとに表示できるというもの。ジャンルやアーティストで絞り込んで曲を探せるのでかなり便利だ。この音楽情報ナビはMP3のみで利用可能となっており、利用するには、iHP-100に音楽情報のデータベースを持っている必要がある。

音楽情報ナビのアーティスト別表示。日本語表示も可能。液晶が8ライン表示のため、情報量はかなり多い 音楽情報ナビのアルバム別表示 音楽情報ナビのジャンル別表示

iHP-100 Mangaer ProgramでDBを更新する。Windows上でiHPを選択、右クリックメニューから[Update DB Menu]を選ぶと更新が行なわれる

 そのデータベースを作るのが、専用ユーティリティのiHP-100 Mangaer Program。同ソフトをインストールし、iHPを接続した際に、リムーバブルディスクのiHPを選択。右クリックメニューでUpdate DB Filesを選択することでDBの更新が行なえる。DBの作成は1,100曲/5.12GBで1分30秒程度とかなり高速だ。

 また、フォルダ階層をそのまま表示するフォルダモードを選択した場合は、iHP-100にコピーしたフォルダ階層のまま、ディレクトリを辿って選曲が可能。例えばアーティスト、アルバム単位で元データを作っているユーザーにとっては、こちらも使い勝手は悪くないので、WMAやWAVEのユーザーも戸惑うことは無いだろう。


再生表示画面

 NAVI/MENUボタンのクリックで、再生表示画面と、ナビゲーション画面が切り替え可能で、再生画面で左右にNAVI/MENUボタンを倒すと曲送りや戻し、上下でボリュームの上げ下げが行なえる。また、ナビゲーション画面では、上下左右でフォルダやアルバム階層の移動などができる。つい、NAVI/MENUボタンのクリックで「再生」といきたくなるが、NAVI/MENUボタンは、モード変更ボタンとなっており、再生/停止は、本体脇の再生/停止ボタンを利用する。慣れるまではやや戸惑うが、そんなに複雑な操作体系ではないので、感覚さえつかめればなかなか使いやすい。

 操作性は満足いくものだが、オーディオファイルの管理に一点だけ大きな不満がある。それは、MP3ファイルのアルバム曲順を決定する際にID3Tagのトラック情報を読まずに、ファイル名の数字/アルファベット順で再生されてしまうこと。そのため、アルバムをCDの順番で通して聞こうとするとファイル名を[01(曲名)]のように作り込んでおかないといけない。

 iPodでは、ID3Tagのトラック情報を見てアルバムの曲順を決定しているため、iPodユーザーの多くはID3Tag情報をきちんと入力したデータを持っていると思う。ID3Tagのトラック情報さえ読んでくれれば、移行にあたって何の障害もなくなるわけで、iPodのユーザーを取り込むという意味でも、iRiverにとって決してマイナスでは無いと思うのだが……。もっともiRiverは、シリコンオーディオプレーヤーの「iFP-190TC」でもID3Tagをサポートしながら、ID3Tagのトラック順での表示はできなかったので、何か考えがあるのかもしれないが……。



■ 液晶リモコンはHDDオーディオプレーヤー史上最高の出来

リモコン

 操作体系がわかったところで、本機の最大のセールスポイントとも言える液晶リモコンを見てみる。液晶は4ライン表示が可能で、操作ボタンは、再生/一時停止、停止の2つのボタンを液晶右脇に装備するほか、リモコン上部に本体ボタンと同一名の「NAVI/MENU」ジョグレバーと、録音設定ジョグレバー、ボリューム/モードレバーを装備する。

 アルバム間移動は、NAVI/MENUレバーのクリックでナビゲーション画面に切り替えて、クリックしながら左右することでアルバム階層の移動などが行なえる。多くのHDDプレーヤーでリモコン操作出来なかったアルバム間移動ができただけでもちょっと感激してしまったが、液晶は4ライン表示なのでディレクトリ構造などもわかりやすく、使いやすい。

リモコン上部にNAVI/MENUレバーを装備。本体のNAVI/MENUボタンと同様の操作が行なえる ボリュームやホールドボタンを下部に装備。クリップはやや大きめだ 4ライン表示に対応

 このリモコンでほぼ全ての操作が行なえるというのも大きな特徴だ。ボリュームの上下や、FMチューナ機能、ライン録音のほか、例えば、ビープ音の設定やスクロール速度の変更、録音ビットレートやファイル形式の設定など多くの細かい機能設定ができる。クリップが若干大きめな気もするが、大きさもまずまず手ごろで、リモコンの機能としてはほぼ完璧といえる。

 オーディオプレーヤーのおまけで付けてみました的な位置づけでなく、製品の企画段階からきちんと考えて作られている印象だ。個人的にも“これぞ待ち望んでいたリモコン”といえる。


■ 光デジタル入力装備。音質は良好

 また、光デジタル入出力も備え、CDからの直接MP3録音やWAV録音が行なえる。録音はRECボタンを1度押すとスタンバイ状態になり、ライン/マイク/光の3つの入力系統の選択と、MP3(32~320kbps/44.1kHz)とWAV(44.1kHz)の設定が行なえ、もう1度RECボタンを押すと録音を開始する。レベル設定が行なえないのが残念なところだが、録音品質は高く、オーディオプレーヤーのおまけ機能としては非常によく出来ている。なお、曲間を検知して自動曲分割といった機能は備えていない。

 また、内蔵マイクによる録音も行なえるので、ボイスレコーダとしても利用可能だ。FMチューナも備えているが、ラジオ放送の直接録音は行なえない。

 FMチューナを利用するには、音楽データを再生中に、再生ボタンを長押しすることでモード変更できる。逆に、音楽を再生していないと、FMチューナのために、いちいち音楽を再生する羽目になるので、この辺りもう少しスマートなモード切替が行なえると良かったと思う。

付属のヘッドフォン

 付属のイヤフォンは、分解能は高く無いが、中域のしっかりしたバランスのいい音作り。本体の音質も良好で、非常にニュートラルでバランスがいい。分解能も高くキレのいい音で、初代iPodよりは艶っぽさもあり、個人的にはiHPの方が好印象だった。また、6種類のEQや、BASS/TREBLE BOOSTも備えている。

 光デジタル出力も可能となっており、出力クオリティも高い。AVアンプなどと光接続し、オーディオジュークボックスとして利用しても十分なクオリティと感じた。なお、光出力設定は、モード設定の[Control]で[OPTICAL OUT]をONにしてから再起動する必要がある。

 再生時間はカタログスペックで16時間。実際の使用は、10時間強の再生で4目盛りの最後の1目盛りとなったが、ほぼカタログスペックに近い再生時間が期待できそうだ。iPodの8時間に比べるとほぼ倍の駆動時間というのはかなりアピールポイント。充電時間は3時間。ただし、充電はUSB 2.0では行なえず、ACアダプタ経由となる。

 気になったところは、先述のMP3のID3Tagトラック情報を使えない点と、本体側でデータの削除ができないということ。オーディオデータはまだいいが、レコーダ機能を使ってHDDがフルになった時に、録音ミスしたファイルを本体だけで消すことが出来ない。常にパソコンで消さないといけないというのはやや面倒だ。また、プレイリスト再生機能が無いというのも、プレイリスト派にとってはつらいだろう。

 この辺りは今後のファームアップなどで対応を期待したい。製品発表時には、Mac OS対応やOggVorbisのサポートなども予告しているので、ファームアップデートによる機能追加もそれなりに期待できそうだ。



■ まとめ

 基本機能はiPodに比類する、あるいは超えている部分もかなりある。HDDが1.8型でサイズ的にも直接競合するということで、HDDオーディオプレーヤー市場に初めて現れたiPodの強力なライバルといえそうだ。

 iPodに勝っている点としては、まず液晶リモコンによる操作性の高さ。特に電車通勤者などにとってはかなり重宝するだろう。また、再生時間が2倍の16時間という点もかなり大きなセールスポイントだ。そのほかにも、FMチューナや光デジタルでの録音/再生機能、ボイスレコーディング機能など多くの特徴的な機能を搭載しており、機能の有無でいったら圧勝といってもいい。

 iPodとの比較で気になるところは、デザイン、価格、HDD容量。デザインについては好みにもよるだろうが、個人的にはiPodの圧勝。自発光のタッチパネルなどのギミックの魅力や、トータルなデザインの完成度はiPodの方が高い。とはいえ、普段カバンやポケットから出すのはもっぱらリモコンなので、別にあまり気にならないといえるかもしれない。

 一方、価格は新宿の量販店でiHP-100が49,800円、iPod 15GBが47,800円。ポイント還元率が低いiPodと比較すると、トータルでは安くなるだろうが、15GB容量のiPodより高い表示価格というのは、心情的に踏み切れない部分もある。同様に10GBというHDD容量についても、大容量を求めるユーザーにはやや物足りないといえる。

 とはいえ、HDDオーディオプレーヤーとしての完成度は文句なしに高い。HDDプレーヤー業界の流れとしては、マイクロソフトの提唱するMedia2Goのような、映像も扱えるマルチメディアデバイス志向を強めているように感じるが、iHP-100は、HDDオーディオプレーヤーの完成形とは言わないが、かなり近いものを見せてくれているように思う。こうした強力な競合製品が出てくることで、iPod/アップルの取り組みも変わってくるというもの。アップル側の応戦にも期待したいところだ。

 個人的には容量は10GBで満足なので、ID3Tagのトラック情報に対応していれば即買いだったのに…… といったところ。初回プレミアム価格が落ち着いて、やや安くなったら買ってしまうかもしれない。“液晶リモコン派”はとにかく触ってみることをお勧めする。

□NHJのホームページ
http://www.nhjapan.com/
□iRiverのホームページ
http://www.iriverjapan.com/
□製品情報
http://www.iriverjapan.com/product.php?product=iHP-100
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(2003年7月11日)

[usuda@impress.co.jp]


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