どちらかといえば初心者層の開拓に力を入れていた松下電器のレコーダ戦略だが、今夏投入の「DMR-E100H」と「DMR-E200H」では、録画ファン向けのマニアックな機能を売りとしている。 具体的には、DVD-Rの4倍速記録対応DVD-RAM/Rドライブ、アナログBSチューナ、地上波EPG(E200Hのみ)などの採用で、中でも注目されるのが、民生用レコーダ初の「MPEG4同時録画」だろう。MPEG-2とともに作成されたMPEG-4は、一旦HDDに保存される。その後、SDメモリーカード(MMCも可)やDVD-RAMにコピーできるという仕組みだ。 SDメモリーカードにコピーした映像は、「D-Snap(SV-AV30)」や、SDカードスロットを備えた携帯電話などで視聴が可能。録画番組を外へ持ち出せることに、大きなメリットを感じる人も多いだろう。正式対応を謳う機種はまだ少ないが(対応機種一覧)、同社では「連携可能な機器を順次増やしていく」とコメントしており、今後の展開にも期待がかかる。 「夏DIGA」のうち、先行発売されるDMR-E100Hを借用できたので、今回はMPEG-4同時録画を中心に紹介する。
■ MPEG-2レコーダとしては従来通りの機能 E100Hは「DMR-E90H」の後継に位置付けられており、E90Hからは120GB HDD、BSアナログチューナ、PCカードスロット、DV入力端子、リモコンの形状などを継承。「DMR-E80H」からは、DVDオーディオ再生機能(ただし2chのみ)、DVD-Rへの無劣化ダビング、音声付き早見再生を受け継いでいる。 ハイブリッドレコーダとしてのトピックは、DVD-Rの4倍速記録に対応したこと。DVD-Rへは無劣化ダビング(高速ダビング)も可能なので、番組を外部メディアに残しておきたいライブラリ派にはうれしい機能アップだ。ただし、DVD-RAMは従来通り2倍速となっている。 SPで録画した約1時間の番組をダビングしたところ、DVD-RAMは約13分、4倍速記録対応のDVD-Rは約7分43秒で完了。DVD-Rの場合、ダビング後にファイナライズ作業を行なうが、約1分35秒で終了した。
MPEG-2での録画機能は、E80HやE90Hをほぼ踏襲している。インターフェイスは比較的とっつきやすく、初めてディスクレコーダを購入する層でも、すぐに基本機能を使いこなせるだろう。
録画モードはXP、SP、LP、EPの4種類。他機種のような細かいビットレートの指定は不可能だが、ディスクの残り容量からビットレートを自動設定するFRモード、音声のPCM記録(XPのみ)といった、最近のDIGAシリーズの特徴は継承している。また、DVD-RAM/Rへの直接記録にも対応し、HDDとDVD-RAMにまたがって録画する「リリーフ録画」も利用できる。 予約方法はGコードと日時・曜日指定の2種類。予約録画は1カ月32番組まで対応。別売になるものの、携帯電話などから予約ができるブロードバンドレシーバー(DYNET2)も利用できる。 編集機能は「部分消去」と「番組分割」を搭載。操作性は従来機通りで、リモコンにはこの種の作業で良く使うコマ送りボタンも実装している。ライバル機よりもプレビュー画面が大きく、作業も比較的快適だ。
タイトル入力は相変わらずリモコンからとなるが、テンキーを使った携帯電話風の入力にも対応。なお、ブロードバンドレシーバーがあれば、番組名の自動取得も可能になる。
■ 意外とシンプルな操作性の「MPEG4同時記録」 MPEG-4は通常のMPEG-2と同時に作成され、HDDに自動保存される。MPEG-2を中心に使っていて、HDD以外へMPEG-4ダビングを行なわない限りは、利用者がMPEG-4の存在を意識することはない。 MPEG-4の録画モードは「スーパーファイン」、「ファイン」、「ノーマル」、「エコノミー」の4種類で、切り替えは「初期設定」→「ディスク」→「MPEG4録画」→「MPEG4録画モード」で行なう。設定したモードが、すべての番組録画に反映される仕組みだ。ここで「切」を選べば、MPEG4同時録画をキャンセルできる。 通常の録画・再生においてMPEG-4が前面に出てこないのは、操作の煩雑化を避けた結果だろう。しかし、予約番組ことに同時録画のON/OFFやモードの選択ができれば、使い勝手もより向上すると感じた。また、古くなったMPEG-4ファイルを自動削除する機能や、MPEG-2の削除に連動して消去される仕組みも欲しい。サイズが小さいとはいえ、MPEG-4データがどんどんたまっていくのは精神衛生上よろしくない。 MPEG-4の視聴は、リモコンの「機能選択」→「SD動画(MPEG4)」で可能。ただし、画面いっぱいに引き伸ばせないので、実用性はそれほどない。もっとも、E100Hでの視聴はMPEG-2で行なえばいいので、あくまでもダビング前の確認用として設けられた機能なのだろう。 同時録画されたMPEG-4は約10分単位で分割され、タイトル名は「MOL001」、「MOL002」といった具合にE100Hが勝手に付けてしまう。MPEG-2のタイトル名は一切反映されない。プレビューで内容の確認はできるものの、ファイルが軽い割にはプレビュー表示が遅く、イライラしてしまった。 なお、MPEG-4の部分削除、分割は不可能。タイトルのリネームと、プログラムの削除のみ可能だ。
MPEG-4は、SDメモリーカードに加え、DVD-RAMへもダビングできる。MPEG-2と同時録画された約10分のMPEG-4(スーパーファイン、54.5MB)の場合、SDメモリーカードへは約50秒でコピーを完了した。ただし、PCカードにはMPEG-4ダビングできず、従来通りPCカードスロットは静止画専用のインターフェイスとなっている。 また、後からMPEG-2をMPEG-4へ変換することも可能だが、HDD→SDメモリーカードへのダビングに限られる。MPEG-4の画質指定は、ダビング設定の前に「初期設定」→「ディスク」→「MPEG4録画」→「MPEG4録画モード」で任意のモードを設定する必要があり、少し面倒だ。なお、変換ダビングには必ず実時間かかる。 ダビング先がDVD-RAMの場合、MPEG-2→MPEG-4変換ダビングには対応していない。また、SDメモリーカードおよびDVD-RAM→HDDへのMPEG-4ダビングは、高速ダビングのみ可能となっている。 作成されるMPEG-4は、解像度320×240/176×144ドット、フレームレート最大15fpsのASF形式で、音声はG.726。いくつかのコーデックを自動ダウンロードすれば、Windows Media Player 9で再生が可能だった。 MPEG-4記録に関しては、既存のインターフェイスに無理やりねじ込まれた印象。洗練の余地がまだ残されていると感じた。しかし「録画後に変換」や「追いかけながら変換」するのではなく、同時に記録するのがポイント。そのため、実用性はこれまでになく高い。ネットワーク配信などには対応していないが、MPEG-4対応機器の所有者なら利用して損はないだろう。 そのほかダビング関連では、DVD-R作成時に、サムネイル付きのメニュー画面を作れるようになった。Dreamや従来のDIGAではリスト表示だけだったので、ライブラリ作成派にはうれしい変更だ。
■ XP、SPの画質に不満はなし
画質モードは「ノーマル」、「ソフト」、「ファイン」、「シネマ」を用意。さらに、コントラスト、ブライトネス、シャープネス、カラー(色の濃さ)、ガンマを個別に調整可能な「ユーザー」も選択できる。ノイズリダクションも充実しており、「3次元NR」、「ブロックNR」、「モスキートNR」を自動で適用する「MPEG-DNR」を設定可能。ユーザーモードのみ、それぞれのノイズリダクションを個別に適用できる。 録画画質は、従来シリーズとほぼ変わらない印象。XPはオンエア時と変化が感じられず、SPは動きの激しいシーンで若干ノイズが気になるものの、実用度は高い。ただし、GRTを搭載していないので、受信環境によっては物足りなさを感じるかもしれない。
■ GRTと地上波EPGが不必要なら強力な選択肢に
夏DIGAの購入予定者にとって、最も気になるのが上位機種のE200Hとの差だろう。発売日はE100Hが8月1日、E200Hが9月1日を予定。7月31日現在、大手量販店での予約価格はE100Hが128,000円、E200Hが168,000円。価格差は4万円となっている。 E200Hのみの機能は、地上波EPG、GRT、ジョグシャトルリモコンなど。さらに、E200HはHDDが160GBとなり、ブロードバンドレシーバーも内蔵。DVDオーディオもマルチチャンネル出力に対応する。これらが不要だという方ならE100Hでも不満はないはずだ。
□松下電器のホームページ (2003年7月31日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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