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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第128回:世界初、SDカード記録のMPEG-2ビデオムーピー
~ D-snap「SV-AV100」がやってきた! ~


■ SDマルチカメラの進化型

 Panasonicが新D-snapのラインナップを一気に4種類に拡張するというニュースは、先月の最もホットなニュースの1つであった。実機は既に「WPC EXPO 2003」で一般に公開されたので、触ってみた方もあるだろう。そしていよいよそのうちの2機種、「SV-AS10」(店頭予想価格3万円前後)と「SV-AV100」(同10万円前後)が今週末、発売される。

 今年4月に米国で開催された放送機材ショー「NAB2003」で、PanasonicはSDメモリー記録型報道用カムコーダを発表した。SDカードに録画するプロ用カメラである。そのときにSDカード記録の民生機の予定もあるという話だったのだが、MPEG-2記録のビデオムービー、D-snap SV-AV100はコンセプト的にもソレであると考えて良さそうだ。

 D-snapは、このElectric Zooma!でも初号機から取り上げてきた。「SDマルチカメラ」という名が示すとおり、とにかくSDカードでできることをいっぱいいっぱい詰め込んだという製品であった。しかし、「カメラ」と呼ぶには、映像部分のクオリティがもう一歩であったことは否めない。

 だがAS10では静止画機能重視、反対にAV100では動画機能重視と、それぞれの機能に特化することで、性格がはっきりした。今回のZooma!では、世界初SDカード記録のMPEG-2ビデオムービー、AV100を使ってみよう。


■ コンパクトだが重厚な作り

 まず外観から見てみよう。写真でみると普通のビデオカメラっぽく見えるが、実際の大きさはタバコの箱ぐらい。機能的にはD-snapの中でも特にビデオカメラ寄りに作られており、MPEG-2ビデオ、MPEG-4ビデオ、静止画撮影に絞られている。ボイスレコーディングや音楽再生機能はない。

ムービーカメラにしては破格にコンパクトなボディ 液晶ヒンジは後方に付けられている

 液晶のヒンジがボディ後方に付けられており、撮影時には通常のビデオカメラのようにフレキシブルに角度が変えられるモニタとして機能するほか、ビューワーモードではボディを横向きにしたまま使用できるのが特徴。

 レンズ部は、光学10倍ズームで、電子式手ぶれ補正を備える。焦点距離は35mm換算で43.7から437mmと、多少Wide端が不足気味。最近のビデオカメラでは、CCDの小型につられてどんどんWide端が不足する傾向が進行している。その中ではこのサイズながら健闘しているほうだろう。

 CCDは1/6インチ68万画素で、有効画素数は34万画素。他のD-snapと違うのは、AV100はあくまでもムービーカメラであるという位置づけであるため、ビデオカメラタイプのCCDを採用している。従って静止画はVGAサイズ止まりとなる。

 ボディ前面のカバー内には端子類があり、AV IN/OUT、USB2.0端子、DCコネクタがある。液晶モニタを開けると、メニュー操作やモード切替などのボタン類がある。縦横どちらむきでも使えるように、ボタン類は斜めに配置されているのが印象的だ。ボディ底面にはSDカードスロットがある。

前面上部カバー内にはAV IN/OUTとUSB2.0端子 同下部にはDCコネクタがある メニューボタン類は斜めに配置されている

 背面に回ってみよう。ここはビデオカメラとしてオーソドックスなスイッチがまとめられている。赤いポッチがレコーディングボタン、その横にはズームレバーがある。その下が電源のスライドスイッチ、撮影モードのAUTOとマニュアルの切り替え、一番下はクレードルと接続するためのコネクタがある。ここは頻繁に開くため、前面のようなはめ込み式ゴムカバーではなく、バネで跳ね上がる樹脂製カバーがついている。

背面はカメラ関係のボタンが集中する クレードル接続端子は簡単に開くようになっている

 バッテリはボディの逆サイドに張り付くように装着する。バッテリ持続時間は、MPEG-2動画撮影の連続使用時で約60分。一日かけての撮影では心許ないが、製品の性格上、ちょっとしたレジャーやイベントの撮影ということになるだろう。

 クレードルには、本体を横向きに乗せる。これはクレードルに乗せたままビューワースタイルで使うことを想定した結果だろう。クレードルには電源端子とAV IN/OUTがあるだけで、USBなどはクレードル使用時も本体に直接接続することになる。

クレードル背面。電源端子とAV IN/OUTのみで、意外にシンプル クレードル装着状態。このままビデオ鑑賞ができる


■ さて、肝心の画質は?

 では実際に撮影してみよう。MPEG-2、MPEG-4、静止画が撮れるが、やはり注目されるのはMPEG-2録画だろう。これがビデオと遜色ないことがわかれば、DVカメラ終焉のマイルストーンとなるはずである。

 電源を入れると、撮影可能状態になるまで実測で6秒ちょっとかかる。メモリを使っているにしては、若干スローモーだ。あっそうだまず撮影する前に、録画容量を調べておこう。MPEG-2録画、MPEG-4録画それぞれのモードで撮影可能時間は以下のとおりだ。

【512MB SDカード使用時の録画時間と画像サンプル】
フォーマット モード 解像度
(ドット)
fps 録画時間 サンプル画像
MPEG-2 ファイン 704×480 30 約10分
mp2fine.mpg
(4.8MB)
ノーマル 352×480 30 約20分
mp2nom.mpg
(2.3MB)
MPEG-4 スーパーF 320×240 15 約1時間
superf.asf
(1.5MB)
ファイン 12 約2時間20分
fine.asf
(730KB)
ノーマル 176×144 12 約3時間30分
normal.asf
(542KB)
エコノミー 6 約10時間10分
economy.asf
(189KB)
JPEG
(静止画)
ファイン 640×480 約3,520枚
ez15.jpg
ノーマル 約7,040枚
ez16.jpg

動画サンプルの再生は、再生環境やビデオカード、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。
 気持ちとしてはMPEG-2のファインで常時撮りたいところだが、現時点での最大容量512MBのSDカードをもってしても、たったの10分しか撮れないというのも衝撃的な事実だ。かといってMPEG-4を使ってしまっては、わざわざAV100を使う意味がない。せっかくならMPEG-2録画にこだわるべきだろう。

 それぞれのモードの画質に関しては、サンプルを見て頂ければだいたい感じはつかめると思う。ここではMPEG-2ファインモードに限っての感想を述べるとしよう。いろいろ撮ってみたが、アップめの絵柄では問題ないものの、広い絵が苦手のようだ。細かいディテールがなくなってしまい、ちょっと荒っぽい映像になってしまう。アップだと画面全体の情報が少なくなるため、その分画質が上がるようだ。

Wide端で撮影。木の細かいディテールが潰れている そのまま光学10倍ズーム。ディテールの潰れは軽減されている アップなら結構細かいディテールも拾える

 またラティチュードが狭く、逆光めの撮影では、逆光補正を入れないとうまく撮れないだろう。色味に関しては、発色はいいほうだが、細かい階調をぶっ飛ばしてるような印象がある。

ゲインを葉っぱに合わせると、暗部が潰れてしまう 発色は強いが、階調はおおざっぱ

 カメラとしてみれば、ただの四角い箱なので、それほど持ちやすいわけではない。ただ非常に軽量なので、取り回しは楽。

 ただ、同じモードで撮り続けるのであれば問題ないが、途中で設定を変えるとなると問題アリだ。というのも、ムービースタイルでは操作ボタンが液晶の後ろ側にあるので、手探りではとても操作できるものではない。かといって液晶の角度を変えてしまっては、せっかく決めたアングルを見ながら設定の変更ができない。

【撮影モード一覧】
プログラムAEモード
オート
スポーツ
ポートレート
ローライト
スポットライト
サーフ&スノー

 液晶とボディの間の隙間からボタンが見えなくもないが、ちょっと薄暗いところでは見えなくなってしまう。それしか実装の方法がなかったのはわかるのだが、もうちょっとなんとかする必要はあるだろう。

 またムービースタイルでは、十字ボタンが斜めになっているのも設定しづらい。メニューの動きとボタンの角度が微妙に合わないのである。うーん、なかなか「二兎を追う者は一兎をも得ず」という感じがする。

 ほとんどの撮影はオートでOKだろうが、マニュアル撮影ではホワイトバランス設定、フォーカス、露出が決められる。プログラムAEもあるので、それらを併用することで幅広い撮影条件に合わせられるだろう。

 ホワイトバランスや露出の追従性は問題ないようだ。ただオートフォーカスだけは被写体が細かったり小さかったりするとうまく働かないので、マニュアルに切り替えなけれならないシーンもあった。被写界深度は深めだが、遠景はそれなりにボケる。ただボケ足がなんだか二重になったみたいというかレジが合ってないだけみたいな感じなので、そこはあまり期待しない方がいいだろう。

オートでもほとんどのシーンで問題なく撮れる。edit.mpg(MPEG-2形式26.2MB) 遠景にフォーカスが合ってしまうので、マニュアルフォーカスで撮影


■ 限られた再生環境

 せっかくだから再生のことにも触れておこう。本体ではサムネイルの選択で狙ったファイルの再生ができるが、それ以外にもプレイリストを作って連続再生させることもできる。もちろん本体の小さいボタンでやることなので、それほど細かい編集のようなことができるわけではないが、ある程度ざっくりリストを作って、それをVHSにダビングするという使い方もあるだろう。

撮った映像はサムネイル表示される 本体でプレイリストが作成可能

 一方PCで映像を管理するには、同梱の「MediaStage」というソフトを使用する。管理するだけでなく、簡単な編集機能も持っているので、不要部分の削除なども可能だ。

 ただAV100で撮影したMPEG-2の動画は独自形式で管理されており、原則的にはMediaStage以外のソフトで見ることはできない。MediaStageも基本的には管理ソフトに過ぎないので、最終的には写真のようにファイルがそこにあるだけだ。それから何かになるといった具体的なソリューションが、このソフトにはないのである。

映像管理ツールの「MediaStage」 クリップごとの簡易編集はできるが……

MPEG-2からMPEG-4への変換機能もある

 一方MPEG-4は、一般的なASFファイルとなり、ユーザーが自由に扱える。MPEG-2からMPEG-4への変換機能も備えているのだが、今ひとつ何に使うのか目的がない。AV100で撮影されたMPEG-2ファイルの拡張子は「MOD」となっているが、これを「MPG」とかに変えれば、一応他のソフトでも扱えるようにはなる。無理矢理の打開策であるが、ここまで「出口なし」の状態に囲い込む意味がどこにあるのか、理解に苦しむ。

 SDカード付きDIGA、E200HやE100Hを使えば、AV100で撮影した「映像」をHDDやDVD-RAMに保存できるとマニュアルには記載がある。しかしそこからはMPEG-2でもOKなのかという情報は読み取れない。


■ 総論

 鳴り物入りで登場したAV100は、画質面でかなり健闘しているとは思うが、さすがにまだちょっとDVカメラに取って代わるまでは行かない感じだ。もちろん小さいということで、携帯性の良さというメリットはある。惜しいのは、512MBものSDカードでも、VGAサイズでたった10分しか撮れないという点だろう。ビデオカメラに取って代わるには、せめてVGA画質で20~30分は撮りたいところだ。

 ビデオカメラもあんまり小さすぎても持ちにくい。もう少し大きくてもホールドしやすい形だったり、光学系がしっかりしていたり、SDカードがデュアルスロットだったりといったモデルが今後続くようであれば、面白い展開になるだろう。

 あと足りないのは、撮ったあとどうするかのソリューションだ。ケータイのムービーのように、誰かに見せたら終わりでいいという意見もあるかもしれないが、現状では本体そのものを持ち歩くか、ASFにしてメール添付ぐらいしか、他人に見せる手段がない。せっかくMPEG-2で撮ったのならば、DVDに書き出せるルートも欲しいところだ。要するに、「落ち」が欲しいのである。もしかしたらDIGAがあれば何とかなるのかもしれないが、PCだけでもどうにかなる世界があってもいいと思う。

 AV100は、全体として初代機なりのこなれ不足はあるものの、メモリーベースのビデオカメラの現実性を製品レベルで証明して見せた。同じくSDカードの動画カメラがSANYOからも発表されている。こちらはMPEG-4でVGAサイズを撮るということで、容量的にも期待できそうだ。

 DVカメラも最近は値下げ傾向が激しいが、手軽な動画記録という分野でメモリーベースのビデオカメラが台頭してくれば、いずれDVカメラとの棲み分けが問題になってくるだろう。そのときにメモリカメラの進化はどういった方向が正しいのか、とりあえずはAV100がそのたたき台となることだろう。

□松下電器のホームページ
http://matsushita.co.jp/
□製品紹介
http://panasonic.jp/d-snap/av100/index.html
□ニュースりリース
http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030911-5/jn030911-5.html
□関連記事
【9月11日】松下、小型動画カメラ「D-snap」シリーズを一新
-MPEG-2録画の上位モデルなど4モデルを投入
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030911/pana2.htm
【9月11日】松下、MPEG-2対応光学10倍ズーム搭載D-snap「SV-AV100」
-512MB SDカードを同梱。電子式手ぶれ補正も装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030911/pana3.htm

(2003年10月8日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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