■ 見た目は同じ、でも中身が違う 先月24日に発表されたかと思うと、1週間後には発売という猛ダッシュな展開を見せた、東芝「RD-XS41」。その前に発売された「RD-XS31」とほぼ同じデザインながら、中身はまったくの別物であるという。 新しいアーキテクチャの名前は、「RDエンジン」。エンコーダやデコーダ、CPU、グラフィックプロセッサなどが一新され、操作のレスポンスが大幅に向上したという。従来のレスポンスもそれほど重たいとは思わないが、開発陣には「まだまだ」ということだったのであろう。 さらにMPEGエンコーダやフィルター類も見直され、さらなる画質の向上が図られたという。また特徴として、録画中にも高速ダビングが可能になるという「マルチ操作」は、こまめにメディアへの書き出しを行なうユーザーにはありがたい機能だ。そうなんだよね、従来のRDは「録画チャンス命」の設計だったので、録画中はなんにもやらせてくれなかったのである。 また別の発表では、搭載された160GBのHDDはMaxtorの家電用HDD「Quick VIEW」であるという。どうでもいいがMaxtorってマックストアって読むのか。10年ぐらいずっとマクスターだと思ってたヨ。 ハードウェア、そしてソフトウェアでも大きく見直しが計られたRD-XS41。その実力をさっそく検証してみよう。
■ 上品で高級感のあるデザイン 既にXS31でそのデザインは発表済みなのだが、Zooma!では取り上げていなかった。ここではXS40以前のデザインと比較しながら、XS41のルックスを見ていこう。 XS40以前のXSシリーズは、ハイエンド志向のXシリーズに比べるとコストダウンの影響が濃く、あまりカッコイイデザインとは言えなかった。だが31/41で採用された新デザインは、なかなか高級感がある。もっともXS41は実売で15万円弱と、それほど安いモデルではないので、値段相応という見方もできる。 前面はミラー張りでボタン類はなく、動作確認用のLEDや時間表示、ドライブベイ、外部入力端子などがある。XS41では新たにDV端子が設けられ、DVカメラからの録画ができるようになっているので、あとで試してみよう。
操作ボタンは前面上部に一列に並んでおり、本体操作がしやすい。ただ実際には、それほど本体で操作しなければならないということもないので、あくまでもデザイン的なアクセントという意味合いが強い。 DVDドライブはXS31から松下電器製ではなく、自社開発のDVD-R/RW/RAMドライブに変更されている。さらにXS41では記録速度がアップして、DVD-R 4倍速、DVD-RW 2倍速、DVD-RAM 2倍速となっている(XS31ではDVD-R/RWが等速)。 背面に回ってみよう。出力2系統に入力3系統、映像ではコンポーネント出力とD1/D2出力が、音声は光出力がある。端子類で新たに設けられたものはなく、背面だけ見ると従来モデルと区別が付かないほどだ。
■ 予約システムは微妙に進化!? では機能をいろいろ試してみよう。ざっと設定を見た限り、ソフトウェアも見直されたとはいえ、GUIまで変わってしまったわけではない。操作手順などは従来どおりだ。 目に付くところでは、再生DNRの機能が増え、「3D-DNR」、「モスキートNR」、「ブロックNR」の3つとなった。一方録画DNRは「強」、「弱」、「切」の3段階と変わりない。3次元Y/C分離は搭載しているが、ゴーストリダクションはない。
今回DNRの見直しが行なわれたせいか、DNRを使った再生品質はかなり向上している。プログレッシブ対応しているところもポイントだろうが、全体的に映像がなめらかで、肌の表現もかなり綺麗だ。またMPEG特有の、映像内の部分的なディレイ、例えば顔の動きに対して目玉があとから付いてくるみたいな動きは感じられない。 再生機能では、番組再生中にピクチャサーチボタンを押すと、音声付きで1.5倍速再生ができるようになった。ただこれは早送りに音声が付いている、という程度のもので、再生音はかなり細かくぶつ切りになったように聞こえ、通常の視聴に使うのは辛いかもしれない。 さらに再生中に左右の方向キーを押すと、その番組の1/20時間分だけジャンプする機能がある。なんで1/20なのか微妙なところだが、ようするにボタン20回押すと、番組の頭から終わりまでがざっと確認できるわけだ。再放送を録画してこれ見たっけな? ってチェックしたり、今回あのタレント出てるかな? といったチェックなど、いろいろ使えるだろう。 このあたり、特に「この機能が付きましたぁ」と自慢げな感じではなく、リモコンのボタンを見ながらこれ押すとどうなるのかなとやってみたら、だいたい予想通りに動くといった具合になっている。いい機械とはそういうものだ。
【RD-X3】 【RD-XS40】 【RD-XS30】 【RD-X2】 【RD-X1】
続いて予約機能を見てみよう。本体とリモコンだけでは相変わらずGコードだが、本体をネットワークに接続しておけば、番組名を直接ネットから拾ってくるようになった。例えばGコードで番組予約すると、局や録画時間は入力されるが、番組名までは入力されない。ここまでは、従来どおり。 だが、「録るナビ」で予約番組を選んでクイックメニューから「番組情報取得」を選ぶと、XS41が直接番組情報サイトへ行って番組名を取得する。また、ここで取得してなくても、予約録画終了後に自動入力されるのだが、どうせなら予約した瞬間に自動的にやって欲しいものだ。 さらに、RD得意の「ネットdeナビ」では、Gコードを入力して「変換」ボタンを押すと、自動的にiEPGサイトへアクセスして該当する番組情報をゲットしてくれる「Gコード一発変換」機能が付いた。まあ便利方向へ向かって着実に一歩ずつ進んできてるんだろうなぁという気はするが、ネットに繋がるPCがあってiEPGを使わず、わざわざGコードを入力する状況ってどんなんだろうと考えると、なーんかビミョーって感じがする。
■ 機能充実の編集機能
たとえファイナライズされていても、その内容をHDDにコピーし、編集することができる。DVD-Rを使うメリットはないが、DVD-RWにとりあえずビデオモードで書いておき、時間があるときに再編集してもう一度同じメディアに書き戻す、ということも可能だ。PCではすでにこれを可能にしたソフトはいくつかあるが、レコーダレベルでここまでできる機種はない。
またビデオモードの強化機能として、録画した番組内のシーンをメニュー背景として登録しておけるようになった。これは「見るナビ」のクイックメニューから登録を行なう。RDは機能がどんどん追加されるのはいいが、次第に「見るナビ」のクイックメニューに多くの負担がかかってきているように思う。もう少し機能を「編集ナビ」のほうへ振り分けてもいいのではないかという気がする。
次に一部のユーザーの間で待たれていたと思われる、DV編集機能について触れてみよう。DVカメラを本体の端子に接続すると、自動的にDV連動録画画面が起動する。チャプタ分割の設定を行なって次へ進むと、もう録画画面である。 ここで録画ボタンを押すといきなり録画が始まっちゃうので、事前に取り込みたいところの頭出しをしておき、そこで一時停止しておく必要がある。録画ボタンを押すと、録画とDVカメラのテープ再生が自動的に始まり、取り込みが行なわれる。
DVソースの編集は、基本的には録画番組編集と同じである。チャプタを区切ってプレイリストを作っていけばいい。だがビデオ編集は、素早いレスポンスが重要となる。XS41では全体のレスポンスが上がっているので、リモコンを使って作業してもいいのだが、ここはやはりPCからRDをコントロールできるネットdeナビの「リモコン」機能が便利だ。
編集リモコンのマウス操作は「ネットdeナビ」の設定画面からカスタマイズできる。また設定サンプルとして3種類のプリセットが選べるようになっている。マウスのカスタマイズで攻めるのもいいだろうが、右手にマウス、左手にリモコンを持って操作してみたら、結構効率的に編集できた。
■ 総論
今回はハードウェアアーキテクチャを大幅に見直したこともあって、予約録画中に高速ダビングなどが可能になったことは、変革の第一歩だ。現状ではすべてのことが可能なわけではないが、様々な制限は物理的に不可能なことを除いて徐々に取り除かれていくことだろう。レコーダのマルチプロセス化は、今後のトレンドとなりそうだ。 またビデオモードのDVDからHDDの無劣化書き戻し機能は、今まではPCの十八番であったものだが、ついにレコーダでも可能になった。XS41で記録されたメディアに限られるが、ついにここまで来たかと感慨深い。 画質に関しては、今のところ数あるレコーダの中ではもっとも満足できるものだ。特にスーパーされた文字の美しさは、注目に値する。これだけでも十分市場に訴求できるだろう。 今後の課題は、本体だけでEPGなりiEPGが使える番組予約システムの導入だろう。Gコードも未だ役に立つシステムではあるが、いかにも旧態然とした仕組みだ。やはり番組表を見ながら予約できるに越したことはない。現状のPCを繋いでのiEPGも役には立つが、やはりそれは拡張機能の1つであり、本筋とは言えない。 また予約とは反対に、PCを使った編集機能の充実は歓迎すべき傾向だが、それはPCとテレビ画面が見比べられる位置関係にあるときに限られる。突き詰めて考えれば、PCの画面上に映像が出たり、編集ナビ画面が出たりといった方向が理想だろう。 機能を積めば、またそれなりの課題が出てくる。そう考えるとHDDレコーダというのは、永遠に完成することのない製品なのではないかとすら思える。しかしAV機器のIT化によって、その進化はもはや義務づけられたと言ってもいい。
今回、1つの世代交代を向かえたRD-XS41。ルックスとクオリティ、両方を兼ね備えた本機は、今もっとも充実したレコーダと言えるだろう。あとはこれをマニア受けだけでなく、本当に「誰でも簡単に使える」と言い切れるだけのインターフェイスにすべく大鉈を振るえるかどうか。RDの未来は、そのあたりにかかっているのではないだろうか。
□東芝のホームページ
(2003年10月15日)
[Reported by 小寺信良]
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