■ USBヘッドフォンのパイオニアが放つ第2弾! 世の中にUSBオーディオデバイスは数々あれど、意外と少ないのが「USBヘッドフォン」。「本格的にパソコンで音楽を聞きたい」という人があまり多くないということなのだろうか。IP電話やボイスチャット用のUSBヘッドセットなどはたくさん出ているのだけれど……。
本格的なヘッドフォンメーカーで唯一USBヘッドフォンを出しているのがオーディオテクニカ。昨年4月にリリースした「ATC-HA4USB」は、この市場のパイオニアとも言える製品だ。そんな同社が新たに発表したのが「ATC-HA7USB」。新機能としては、ハウジングに音量調節ボタンやミュートボタンを搭載したことで、単体で音量調整ができるようになっている。 「ATC-HA4USB」も実売1万円と、PC周辺機器としては高価な部類だったが、「ATC-HA7USB」は実売25,000円弱と、さらにグレードアップ。しかし、本体の音質や質感も、大幅にグレードアップしている模様だ。 ■ ハウジングを大型化し、本体でボリュームコントロールが可能に パッケージは、ATC-HA4USBのブリスターパックとは異なり、紙パッケージを採用。中身は本体と説明書だけというシンプルなものだ。 ケーブルはUSBのみで、通常のヘッドフォンで見られるステレオミニなどは備えていない。ドライバユニットの口径は従来モデルの40mmから、53mmに大型化している。ハウジング内にD/Aアンプを内蔵。また、ハウジング脇にボリュームボタンと、ミュートボタンを装備し、本体のみでボリューム操作が行なえる。 同社のヘッドフォンの多くで採用されている3D方式のウイングサポートも装備し、無調整で頭部をサポート。圧迫感のない装着感が得られるという。重量は315g。 USBのケーブル長は2mで、インピーダンスは64Ω、再生周波数帯域は20~20kHz、出力音圧レベルは100dB/mW。最大出力レベルは30mW×2ch(1kHz、デジタル0dB出力時)。電源はUSBバスパワー供給となっている。
■ 装着感/音質ともに良好 USBオーディオデバイス一体型のヘッドフォンのため、通常のヘッドフォンについているヘッドフォンプラグは存在せず、入力端子はUSB端子のみ。USBバスパワーで駆動するため、ACアダプタなどの外部電源も不要となっている。使い勝手的には、ヘッドフォンプラグがUSB端子になった以外は、普通のヘッドフォンと同じといってもいいだろう。
ということで、パソコンとUSB接続するだけで、特にドライバなどをインストールしなくてもよく、簡単に利用できる。対応OSは、Windows 98 SE/Me/2000/XPのほか、iMac、iBook、Power Mac G3/G4/G5、PowerBook G3/G4シリーズなどもサポートする。ただし、Mac OS X以降ではヘッドフォンの音量調節、ミュートボタンが利用できない。 外装は樹脂製で、ブラックとシルバーのツートンカラーとなっている。試用機では、ハウジングに小さなバリが2箇所ほどあったのがやや気になった。 早速装着してみると、イヤーパッドはソフトレザー製で、柔らかい肌触りで気持ちよい。また、3Dウィングサポートは、頭頂部を2枚のウィングで抑えるのだが、圧迫感がほとんどないにもかかわらず、しっかりサポートしてくれる。側圧も強くなく装着感は、25,000円のヘッドフォンらしく非常に良好だ。 まずは、USBオーディオ化による大きなメリットとも言えるノイズの減少についてテストした。自作PCのマザーボード内蔵サウンド(Sigmatel Audio/AC97)に、ソニーのヘッドフォン「MDR-CD480(実売5,000円程度)」を利用すると、無音時でもある程度のヒスノイズが感じられる。しかし、「ATC-HA7USB」に変えるとほとんどノイズを感じることはない。 ATC-HA7USBでは、パソコンのオーディオデータをデジタル伝送し、ヘッドフォン内部のDAアンプで、DA変換してユニットを駆動するため、パソコン内部のノイズを影響を受けないことが大きな要因だと思われる。特に音の隙間の多い音楽では最大限に能力を発揮する。6弦バリトン・ギターによるギターソロアルバム「One Quiet Night/Pat Metheny」では、再生機器が原因と思われるノイズは皆無となり、パソコンでも非常に良好な再生環境を構築できる。 自作PCとThinkPad X31(SoundMAX DigitalAudio)と比較すると、ThinkPadのほうがアナログ音声出力のクオリティはかなり高いようで、ヒスノイズは減少する。それでもATC-HA7USBと比較すると、無音時のヒスノイズは感じられる。 音楽を聴いてみても、再生帯域も広く、全域でバランスがとれており、クセや色味のない素直な音作りといえそうだ。弦のかすれや、ホールの音場感などの微妙なニュアンスの再現力も高く、5,000円クラスの密閉型ヘッドフォンであるソニー「MDR-CD480」と比較すると、情報量が遥かに豊かで、音場の再現性も格段に上。セパレーションも優秀だ。2クラスくらい上のヘッドフォンと感じる。 また、128kbpsのMP3とWAVの質感の違いもそのまま再生するので、128kbpsのMP3をライブラリのメインにしている筆者にとっては、少し頭の痛いところだ。特にアコーステイック系のソースでは、顕著に情報量の差が感じられる。総じてヘッドフォンとしての性能はかなり高いといえる。 メーカー製PCでもマルチメディアに特化したパソコンでもなければ、かなりおざなりにされがちなサウンド周辺だけに、ほとんどのパソコンユーザーでは、かなりの音質向上が期待できるだろう。 ドルビーヘッドフォンなど、DVDなどのサラウンド音声に特化した機能は搭載していないので、基本的にはステレオソース用だが、再生クオリティも高く、再生レンジも広いので、DVD視聴でも低音の量感などをかなり感じることができる。 なお、USB出力で気になるのは、高負荷時の音声の途切れについて。モバイルPentium M 1.3GHz搭載のThinkaPad X31で、Photoshop 7.01を利用して数十枚のファイルをバッチ処理するときなどは若干音が途切れることがあったが、通常のパソコン操作で問題が出たことは無かった。最近のパソコンであれば特に問題はないとだろう。 問題は、USB出力に対応していないソフトとの連携ぐらいだろうか。例えばキャプチャカードの録画ソフトでは、USBオーディオ非対応のソフトなどがあるので、そうしたソフトを利用するのであれば注意が必要だ。 ■ ヘッドフォンでパソコンの音楽を楽しみたければ買い 機能的にはシンプルなヘッドフォンで、ボリュームがついて、USB接続となったほかは、他のヘッドフォンと大きく変わっているところなどはない。再生音質も良好でとにかくパソコンで、音楽を簡単に高音質に楽しみたいというユーザーにとっては最適だ。
また、最近では5.1chスピーカーを持ったヘッドフォンなども製品化されているが、5.1ch入力を利用するなど、接続はかなり面倒。こうした市場からもUSB化の要望というのは確実に出ていると思われる。そうした意味では、リスニング用途でUSBヘッドフォンが重用されるシーンが、今後増えていくだろう。 DVD視聴用のサラウンド再生機能なども望みたいところだが、最近はWinDVDなどのDVDプレーヤーソフトで、ドルビーヘッドフォンに対応しているので、余計な回路を省いて、「とにかく高音質なステレオ音楽再生を」という本機のコンセプトは正しいように思える。 実売25,000円と高価に感じるかもしれないが、パソコンで高音質再生を実現するには、かなり上位のオーディオカードや、外付けサウンドユニットなどを利用していない限り、これ以上の再生性能というのは得がたい。 例えば、クリエイティブのAudigy2シリーズや、M-AUDIOのDELTAなどのサウンドカードや、あるいは外付けのUSBオーディオデバイスなりを購入して、さらにヘッドフォンを買うというのはそれなりの出費となる。ヘッドフォンでの音楽鑑賞がメインのユーザーであれば、かなり有力な候補に入る製品であることは間違いない。 □オーディオテクニカのホームページ (2003年10月24日)
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