■ キャプチャカード市場を牽引した「MTVシリーズ」 キャプチャカード市場が盛り上がりはじめた2001年。カノープスは、ハードウェアエンコーダ搭載機の「MTV1000」で、他を圧倒する高画質と安定性を提示し、翌年の「MTV2000」など以降リリースされる新製品で高い人気を誇った。 しかし、最新モデルのツインチューナモデル「MTV3000W」では、高価格であることや、ツインチューナによる裏番組視聴というフィーチャにさほど興味が集まらなかったのか、市場的には苦戦。前モデルの「MTV2000」が一番バランスの取れた製品だったという声も聞かれる。 MTV2000も、2002年のリリース当時としては破格の64,800円という価格ではあったが、他社に先駆けて3D Y/C分離チップや、TBC、ゴーストリデューサなどを搭載して話題を呼んだ。そういえば、MTV2000以前ではパソコンの世界では、「3D Y/C回路」とか「TBC」などの言葉が出てくることは、ほとんど無かったような気がする。最近では各社のキャプチャカードをはじめ、テレビパソコンのニュースリリースにもこの種の単語が躍っており、そうした意味でもMTV2000の市場に与えたインパクトの大きさを感じる。
もっとも高画質の追求は「MTV3000W」でひと段落したようで、カノープスも最近では、DivX Proコーデックをバンドルした「MTV FXシリーズ」などの高圧縮/低ビットレートフォーマットへの対応を進めている。MTV FXでは、MPEG-2でキャプチャ中に同時にDivXに変換する「X-TransCoder」を搭載した。 これは、MPEG-2での番組録画と同時に、DivXへのトランスコードを開始し、録画後には、MPEG-2とDivXの2つのファイルが出来ているというもの。例えば、重要な番組であればMPEG-2で保存してDVD化するが、あまり重要でなければ、とりあえずDivXでファイルだけ持っていて、HDDの容量をセーブする。このFXシリーズに搭載された、X-TransCoderやDivX Proコーデックを従来のMTVシリーズのユーザー向けに単品販売したのが「X Pack」だ。 今回、そのX Packがバージョンアップされ「X Pack 2」として11月下旬より発売される。従来のDivXへのトランスコード機能に加え、新たにWindows Media Video形式でのバックグラウンドトランスコードに対応。同社によると「ユーザーの要求が非常に多かった」という。また、DivXのトランスコード機能も強化されており、新たに2Passエンコードにも対応した。 MPEG-2の高画質化競争もひと段落したということもあり、こうしたMPEG-4系の低ビットレートフォーマットへの対応は業界的なトレンドといもいえる。X Pack 2の価格は3,800円。「MTV FXシリーズ」、「MTU2400 FX/QSTV10」、「MTV/MTU X Pack」のユーザーには、1,980円でのアップグレード版の提供を行なう予定だ。 また、MTV3000Wからテレビチューナをシングルにした「MTV2000 Plus」も9月より、3,000台限定で販売されていたが、今回「限定解除」された。今回はMTV2000 PlusとX Pack 2を組合わせてテストしてみる。 ■ DivXの2Passエンコードに対応
X Pack 2は、コントロールソフトのFEATHER-X、DivX Proコーデック、X-TransCoder2などから構成されるソフトウェア。対応OSはWindows 2000/XP。最大の特徴は、バッチエンコーダのX-TransCoderがバージョン2となり、Windows Media Videoに対応したことだ。 Celeron 1.7GHz搭載のパソコンにインストールして利用してみたが、FEATHERの操作など、通常の録画再生などは非常に快適に行なえ、特に気になるようなところもない。FEATHERシリーズもかなり成熟したと感じられる。 DivXやWMVへのエンコードは、キャプチャしたMPEG-2をベースに行なわれる。DivX/WMVへの変換は、録画開始と同時のエンコードと、録画終了時からのエンコード開始が選択できる。また、録画終了後も、FEATHERが新しい録画を開始した際や、再生中などにはトランスコードを行なわないように設定できる。
X-TransCoder2では、DivX/WMVともに、高画質2/高画質1/普通/長時間1/長時間2の5つのプリセットモードとマニュアルモードが用意される。DivXコーデックのバージョンは5.1。従来のX Packと同様に、InterVideo MP3 Encoderを搭載しているため、オーディオも最高48kHz/320kbpsまでのMP3を選択できる。 DivXエンコードでは、新たに2Passエンコードにも対応したのも特徴だ。最初に、MPEG-2の映像を解析してから変換をするため時間はかかるが、より高品質なエンコードが行なえるため、低容量で高画質を求めるユーザーには重宝するだろう。 なお、X-TransCoder2のプリセットモードでは基本的に解像度はソースサイズのままで、ビットレートのみ変更される。720×480ドット/5MbpsのMPEG-2ファイルをCBRでエンコードする場合は、3Mbps(高画質2)/2Mbps(高画質1)/1.5Mbps(普通)/1Mbps(長時間1)/500kbps(長時間2)となった。さらに、DivX設定画面から[高度な設定を表示する]チェックボックスをONにすると、解像度変更やインターレース解除などの詳細設定が行なえる。
なお、WMAでもデフォルト設定では、解像度の変更を行なわず、ソースサイズのままの解像度で出力され、モードの違いはビットレートのみとなっている。オーディオはWMAで、WMA9 Professionalも選択可能だ。
■ WMVのエンコード時間はDivXの2倍強 MTV2000 Plusで録画した720×480ドット/5MbpsのMPEG-2ファイル(5分10秒/196MB)の変換時間は以下の通り。WMVへの変換時間はDivXの2倍強かかり、変換時間には差がある。
CPU:Pentium 4 1.6GHz メモリ:512MB(DDR2100) HDD:40GB(Seagate Barracuda ATA IV/7,200rpm)
変換後のファイルの概要】
なお、動作保証外となるが、XviDなどの外部コーデックも選択できる。DivXとは違って、InterVideo MP3 Encoderなどは使えないが、外部コーデック用のバッチエンコーダとしてX-TransCoder2を利用することも可能だ。 また、MPEGカット編集ソフトの「MpegCraft LE」も付属する。GOP単位のみならず、フレーム単位での編集が行なえる。GOP単位の編集であれば、再エンコードを行なわないため、CMカットなどには非常に便利なソフトだ。 従来のX Packに付属(ノンサポート扱い)していた「Canopus MPEG カッター」よりも高機能で、X-TransCoder2をバッチエンコードツールとして使えば、かなり利用用途が増えると言えそうだ。DivX Proコーデック付属の3,800円のバッチエンコーダと考えてもかなりお買い得と言えるだろう。
■ 利用スタイルにあわせたコーデック選択 とりあえず、価格もDivXエンコーダのライセンスが付いて3,800円と安いので、MTVユーザーにはかなりお買い得なパッケージということは間違いないだろう。問題は、使用時にWMVとDivXのどちらを選ぶのかということ。Windows Media Videoの方がDivXより2倍以上のエンコード時間がかかるため、長時間の番組録画を行なうユーザーであれば、DivXのほうが実用的と言えるだろう。 ただし、WMVは無償で入手できるムービー メーカー 2 をはじめとし、多くの編集ソフトが正式に対応している。その点はWMVのアドバンテージと言えるだろう。 とはいえ、録画直後にエンコードを行なわないのであれば、録りためたMPEG-2をMpegCraft LEで編集し、一気にバッチエンコードすればいい。また、DivXの場合、DVDプレーヤーなどの出力機器も対応製品が多くリリースされているが、WMVではほとんどない。 結局、手持ちの機器や、エンコード時間と編集の容易さなどを秤にかけて、どのような録画スタイルを選択するかということになるだろう。WMV対応はうれしい改善と同時に、ユーザーにとっては「どちらでエンコードするか」という悩みの種が増えた、ともいえるかもしれない。 □カノープスのホームページ (2003年11月6日)
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