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第123回:Inter BEE 2003で見かけたDTM関連製品


プロオーディオ部門の様子

 11月19日~21日の3日間、千葉県の幕張メッセでInter BEE 2003(2003国際放送機器展)が開催された。例年通り、会場は映像・放送関連機材、出版・パブリシティ、プロオーディオの3つの分かれている。

 今回はプロオーディオ部門で展示されていたものを中心に、DTM、デジタルレコーディング関連の新製品についてレポートする。

 楽器フェアが10月24日に開催されたばかりなので、新製品はあまり期待していなかったが、会場を回ってみると初めて目にする製品も多かった。YAMAHA、Roland/EDIROLなどの楽器系メーカーについては、楽器フェアで発表済みの製品のみだったが、海外製品の輸入代理店や外資系メーカーなどでは新製品を投入していた。彼らの目は日本の楽器フェアというよりも、2004年1月に米国で開催されるWinter NAMMを向いているためなのかもしれない。

 また、初めて目にするものが多かった背景には、楽器フェアとは異なる企業がブースを出していたというのも1つの理由だ。



■ HookUpはSound Forge最新版を出品

 今回、積極的に新製品を発表していたのはHookUp。ハード、ソフトともにいろいろな製品が登場していた。まずハイエンド系でいうと、以前このコラムで取り上げたLynxTwoの姉妹品「AES16」。

 24bit/192kHz対応で、16IN/16OUT装備で全チャンネルともAES/EBUに対応した完全に業務用のオーディオインターフェイス。製品にはケーブル類もすべて同梱されている。AD/DAが搭載されていないため、LynxTwoよりも低価格で、店頭予想価格は13万円前後。発売は11月末の予定。

AES16 INDIGO

 オーディオインターフェイスとしては、コンシューマ向けの製品も3つ同時にリリースされている。いずれもECHO DIGITAL AUDIOのPCカード製品で「INDIGOシリーズ」というもの。INDIGO-djはその名前からも想像できるようにDJ向けの製品で、24bit/96kHzで2系統の出力を装備している。その片方にはヘッドフォンプリアンプを使うことが可能となっており、そちらでキューミックスを、もう片方でハウスミックスができる設計だ。ただし、入力端子は装備されていない。INDIGO-iiもINDIGO-djと同様にマスター出力とヘッドフォン出力を装備したものだが、こちらは両出力ともに同じ内容となる1系統のモデル。その分、価格も安めに設定されている。

 そしてもう1つがINDIGO-io。これは24bit/96kHzでの入出力を装備したDAW向けの製品となっている。いずれも1/8インチの端子=ミニジャックとなっているが、INDIGO-djおよびINDIGO-ioではRCAまたは1/4インチに変換するケーブルが同梱されている。価格はいずれもオープンプライスで、INDIGO-djとINDIGO-ioは店頭予想価格が29,800円、INDIGO-iiは19,800円。

ReMOTE 25 Audio

 もう1つ目立っていたのは、NovationのUSB/MIDIコントローラ「ReMOTE 25 Audio」。これはすでに発売されているReMOTE 25にオーディオ入出力を装備したもの。とはいえ、実際にモノを見てみるとReMOTE 25と比較して、さらに数多くのパラメータが用意されており、圧倒されるほど。アサイン可能な20個のポット、4個のロータリーエンコーダ、9本のスライダーなどが搭載されている。

 またオーディオについてはUSB 1.1ベースなので、2IN/2OUT、24bit/48kHzまでの対応だ。気になる価格のほうは、やはりオープンプライスながら、店頭予想価格が98,000円程度とかなり高価。その分、付加価値を出そうと年末ごろにはファームウェアのアップグレードによって、これ自体がシンセサイザーとして機能するようになるとのこと。内蔵のDSPパワーで実現するそうだが、性能は同社のK-Stationと同程度となっている。

Sound Forge 7.0

 ソフトウェアで展示されていたのは、Sonic FoundryからSONY PICTURES DIGITALに開発・発売元が移った波形編集ソフト「Sound Forge」の最新版7.0。海外ではすでに9月末から発売されていたが、国内では延期につぐ延期で、発売は12月中旬から下旬頃になる模様。

 といっても、これは代理店であるHookUp側の問題ではなく、開発元の戦略による。というのは、海外ものはすべてSONYロゴになっているが、日本国内ではSONYロゴではなくSONY PICTURES DIGITAL NETWORKSロゴを使うということになり、ソフトそのものに手を入れているからだ。また、CD制作ソフト「CD ARCHITECT 5.0」の他に、さらにノイズリダクションソフトの「Noise Reduction 2.0」もバンドルされているので、これ1つでさまざまな処理ができる。価格は59,800円。

□HookUpのホームページ
http://www.hookup.co.jp/


■ 8inのUSBインターフェイスを展示したエレクトリ

Lexicon Omega Studio

 会場内で目新しかったのが、エレクトリの「Lexicon Omega Studio」という製品。プロ用のリバーブメーカーとして有名なLexiconが開発した、USB 1.1のオーディオインターフェイスだ。

 スペック的には+48Vのファンタム電源にも対応した端子を含む8つのアナログ入力があり、そのうち4つを同時にレコーディングできるというもの。サンプリングレートは44.1kHzか48kHzで、24bit。また出力は1/4TRSでのステレオ出力とヘッドフォン出力、MIDIの入出力も1系統装備しているほか、S/PDIFコアキシャルの入出力も1系統装備している。

 また、このOmega StudioにはソフトとしてCakewalkのPro Tracks Plusというものがバンドルされている。見た目にはSONARそっくりのものだが、32トラックまでという制限があるようだ。そして、Lexiconの製品だけあって、Lexicon Pantheon Reverbというプラグインも同梱されている。これはまさにLexiconの音がするリバーブで、さまざまなプリセットが用意されているので、即利用可能。

 実は、まもなくEDIROLが発売するSONAR3にも同じものがバンドルされている。Lexicon Omega Studioの発売日はまだはっきりしていないが、来春までには発売するとのこと。価格は67,500円が予定されている。

□エレクトリのホームページ
http://www.electori.co.jp/


■ Media IntegrationはOSCarのソフトシンセをデモ

 Media Integrationのブースでデモをしていたのは、イギリスのアナログシンセの名器OSCarを再現したというGMedia Musicのソフトシンセ、ImpOSCar。2オシレータで、4音ポリ。オリジナルのOSCar本体のデータを、MIDI Sysexで受信可能というのも特徴。500以上のプリセット音が用意されており、その中にはUltravoxのBilly CurrieやStevie Wonder、Jean Michel Jarreのサウンドなども含まれている。対応しているのはWindows用のVSTインストゥルメントとMac OS 9のインストゥルメント、そしてMac OS XのAudioUnitsだ。発売は年末から来年初旬の予定で、価格は未定。

ImpOSCar MOBILE I/O ULN-2

 もう1つ、同社で展示していたのは、従来からあった、FireWire対応のオーディオインターフェイス「MOBILE I/O ULN-2」および2882+DSP用のプラグインエフェクト。これらにはDSPが搭載されていたが、ミキサー用としてはパワーが余っているため、それを利用してエフェクトとして利用する。EQやコンプレッサとともに、ミッドサイドのレコーディングをステレオにデコードするMSデコーダなどがあり、Macintoshを介してダウンロードして利用できるようになっている。

□Media Integrationのホームページ
http://www.miroc.co.jp/


■ MIDIA、Native Instrumentsソフトシンセ「INTAKT」を発表

INTAKT

 MIDIAが、今回新たに発表したのはNative Instrumentsのソフトシンセサイザー「INTAKT」。ループ素材の再生やループコントロールに専門特化して設計されたサンプラー。テンポ変更やピッチ変更をリアルタイムに処理することができるため、CubaseやLogicユーザーが利用することで、ACID的な利用が可能だ。

 また、このエンジンにはREAKTORやKONTAKTで定評のあるグラニュラーシンセシス方式が利用されているので、高音質のまま変更が可能。WindowsおよびMac OS Xのハイブリッドで、11月27日発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格が29,800円の見込み。

□MIDIAのホームページ
http://www.midia.co.jp/


■ WeveLabのDPP対応をアピールしたSteinberg

WaveLabでDPPフォーマットが出力可能に

 Steinberg JapanはCubase SX 2.0の発売についてアナウンスしているが、今回はInter BEEということで「Nuendo」と「WaveLab」の展示。ここでの新機能はWaveLabでのDDPフォーマットの書き出し。

 DDPフォーマットとはマスタリングしたCDをプレス工場に出す際に用いるフォーマットの1つ。PQコードを含めた状態で、Sadie、Sonic Solutionsなどにオーディオデータを渡すことを可能としたものだ。これを利用するにはWaveLabにオプションのDDP Solutionを追加インストールすることで実現できる。Spectral Designの開発によるものだが、発売や価格などは明らかになっていない。

□Steinberg Japanのホームページ
http://japan.steinberg.net/


■ Adobe版Cool Editは「Auditon」という名でデビュー

 High Resolutionは10月25日に発売された「Ableton Live 3」の展示を行なっていた。LiveはDJシーンで活躍しているシーケンスソフトで、グルーブクリップを組み合わせることで、リアルタイムに音楽を作り出せる。今回のLive 3ではそのリアルタイム機能をさらに向上させ、演奏しながらフレーズの音程や音量を変化させたり、エフェクトパラメータのモジュレーション、ビートのスクランブルミックス、LFOやステップシーケンスの作成までが可能。

 もう1つ取り上げたい会社がAdobe。なぜAdobeと思う方もいるかもしれないが、Adobeは今年5月にSyntrillium Softwareから波形編集ソフトのCool Editを買い取っており、それが「Audition」という名前で発売されていたからだ。このソフト、機能的にはCool Edit Pro 2.1とまったく同じもので、ロゴがSyntrillium SoftwareからAdobeに変わっただけのようだ。

Ableton Live 3 Audition

 したがって、Windowsのみで動作し、現在のところMac OSへの移植などについては未定。また日本語環境で問題なく動作するものの、ソフト自体は英語版のままで日本語化はされていない。ただし、日本語の簡単なリファレンスマニュアルは付属しているという。価格はオープンプライスだが、Adobe Storeでの直販価格は38,000円となっている。

□アドビシステムズホームページ
http://www.adobe.co.jp/
□関連記事
【8月7日】アドビ、2層DVDのオーサリングが可能な「Encore DVD」など
-「After Effects 6.0」や「Audition」も発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030807/adobe2.htm


□Inter BEE 2003のホームページ
http://bee.jesa.or.jp/

(2003年11月25日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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