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第111回:「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」
スペシャル・エクステンデッド・エディション

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 究極の名にふさわしい4枚組み特別版

「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」
スペシャル・エクステンデッド・エディション
価格:9,800円
発売日:2003年12月3日
品番:PCBH-50063
仕様:片面2層4枚
本編収録時間:約214分
画面(本編):スコープサイズ(スクイーズ)
音声:英語(ドルビーデジタルEX)
   英語(DTS-ESディスクリート)
   日本語(ドルビーデジタルEX)
字幕:日本語/英語/日本語吹替
発売元:日本ヘラルド映画
販売元:ポニーキャニオン
 今年もロード・オブ・ザ・リングの特別版「スペシャル・エクステンデッド・エディション」が発売された。第1部「旅の仲間」でも完成度が高かったため、今回も発売を楽しみにしていた人が多いと思う。

 発売までの流れをおさらいすると、まず、10月1日に「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 コレクターズ・エディション」(以下、通常版)が発売。2月公開の劇場版をDVD化したもので、本編ディスク1枚、特典ディスク1枚で構成された一般的なDVDパッケージだ。劇場版の話題性を考えれば、十分に魅力のある商品といえる。

 その通常版に約43分の追加シーンを盛り込み、2枚組みに再編集したのが、今回紹介する「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 スペシャル・エクステンデッド・エディション」(以下、特別版)。さらに特典ディスクも2枚とし、片面2層計4枚組みというマニア度の高いパッケージとなっている。価格は通常版の4,700円に対し、ほぼ2倍にあたる9,800円だ。

 通常版(2枚組み)→特別版(4枚組み)という流れは2002年の第1部「旅の仲間」のDVD化から試された手法で、本編ディスクを2枚組みに変更したことについては、作品のファンはもちろん、DVDファンからも支持された。というのも、本編を2枚組みとすることで、通常版を超える画質が期待できるからだ。通常版第2部の本編収録時間は約214分。120分前後が多い洋画において、かなり長めの作品といって良い。2枚組みにしたことよる画質面への効果も高いだろう。

 通常版と特別版の関係はほかのDVDタイトルでは見られないユニークな関係だ。ほぼ同じ内容のタイトルを数カ月内に2度にわたって発売するという強気の戦略は、全世界的な販売が見込めるこのシリーズならではのものだろう。



■ ただでさえ長いのに新たに43分追加

 第1部の特別版に引き続き、パッケージ外装には皮装丁風の重厚なものを採用。エンボス加工された書体や文様も作品世界にマッチしており、コレクターにはうれしい配慮だろう。唯一、背表紙にあるヘラルドのマークが浮いているが。また、デザインは第1部特別版と統一がとれており、並べても違和感がない。

 付属のブックレットによると、特別版には14の追加エピソードが加えられている。さらに、通常版のエピソードを再編集したものが18。時間にして43分が新たに追加された。追加エピソードには、200カットのVFXや新たにレコーディングされた音楽も含まれる。

 追加シーンはそれぞれが興味深く、原作ファンならどれもが重要な場面だろう。たとえば、第1部で死んだボロミアとその弟、ファラミアのエピソードでは、これまで画面に出てこなかったゴンドールの様子が描かれる。第2部は原作と異なる構成だったためか、中つ国全体の状況があまり説明されなかった。ロードムービーだった第1部ならともかく、第2部は複数のストーリーが交わる歴史物語だ。もう1つの重要な勢力の存在がクローズアップされることで、戦記としての幅が増したと思う。さらに、ゴンドールでは第3部で重要な役どころとなるファラミアたちの父、デネソールも登場し、新作への期待も高まる。

 また、随所に追加されたメリーとピピンによるショートコントも、原作を読んだ方ならニヤリとできるエピソードばかり。こうした追加シーンにより、より原作に近い特別版ならではの重厚な物語になった。

 第1部の特別版でも感じたことだが、原作が長大なため、劇場公開作とは別の特別版が存在するのは必然だと思う。もちろん、通常版でもすばらしい編集で話をつなげているが、原作ファンにはディテール面で物足りないのも確か。「劇場版」→「通常版」→「特別版」→「次回作公開」の流れは、当初から企画の骨子だったのもしれない。それにしても同じ作品で2つのパッケージを年内に発売するとは、膨大な原作ファンの数あってのこと。ほかの作品では考えられない力技といえる。


■ 最高レベルの画質と音質

 DVD BitRate Viewer 1.4でみた本編ディスク1の平均ビットレートは7.61Mbps、ディスク2のビットレートは6.92bps。通常版が5.26Mbpsなので、やはり2枚に分けたことによる画質の向上が期待できる。

 実は、第2部の通常版はそれほど低画質ではわけではない。エンコード技術が向上したためか、解像感、階調性については、第1部より満足できるクオリティだった。夜間撮影でのノイズや色の薄さには多少閉口したものの、第2部通常版の予想以上の画質に「9,800円も出して特別版を買うことはないか」と自分に言い聞かせていた。

 しかし、特別版を見て驚いた。シャープでノイズが少なく、現在のDVDのクオリティとしては最高レベルの画質といっていい。特にワイドショットでの遠景では、輪郭の確かさや色のり、階調性の面で通常版に大きく差をつけている。この作品では、ロケ地のニュージーランドの美しい風景やモブ(群集)シーンなど、情報量の多いワイドショットが頻繁に見られる。画質面では、特別版の方がかなり有利だろう。

本編ディスク1の平均ビットレート
本編ディスク2の平均ビットレート

 また通常版に比べ、髪の毛やひげ、衣服や甲冑、武器などの質感がリアルだ。甲冑や武器に見られる細かい文様がより鮮明に読み取れる。「ファンタジーではなく戦争ドキュメンタリーのつもりで撮った」とピーター・ジャクソンが語っているように、第2部は徹底したリアル志向の作品となっている。ディテールがはっきりすることによって、物語をよりリアルに感じることができるだろう。

 音声はドルビーデジタルEXとDTS-ES(ディスクリート)を選べる豪華仕様。さらに日本語吹替までもがドルビーデジタルEXだ。ドルビーデジタルEXのみの通常版でも相当迫力があったが、DTS-ESは衣擦れや足音、打撃音や風切り音などが生々しくなり、臨場感が増している。ほぼ全編がアフレコというセリフについても、明瞭度が増した印象だ。


■ 映画製作に興味があるなら必見の特典

 特典内容は第1部に続き豪勢だ。まず、本編ディスクにはコメンタリーが4トラックも入っている。それぞれの内容は、1.監督&脚本(3名)、2.デザイン(7名)、3.製作&ポスト・プロダクション(15名)、4.キャスト(16名)という組み合わせ。出演者が多いため解説が途切れることはなく、聞いていて飽きない。

 計2枚の特典ディスクには、1枚あたり3時間ずつ、あわせて6時間の解説が収録されている。内容は、原作、脚本、デザイン、撮影、視覚効果、編集、音楽、サウンド・デザイン、プレミアの模様といった具合に分かれており、製作から公開までの流れを追って説明。特別版のために収録されたもので、解説内容は細部にわたる。完全主義者のピーター・ジャクソンをはじめ、全てのスタッフが原作に敬意を払い、情熱を持って仕事に当たる姿に感動した。特にWETAスタッフの「金は要らない。それよりも納期が心配」というコメントが印象的だ

 もちろん、アカデミー視覚効果賞の原動力となったCGキャラクター、ゴラムについての解説も用意されている。CG技術もすごいが、実写俳優とのからみを演じたアンディ・サーキスの演技もすごい。当初、ゴラムの声優としてだけ参加するはずだったアンディは、結局、全身タイツ姿でセット内を跳ね回ることに。アニメーターはアンディを消した上で、ほとんど同じ動きのゴラムを構築したという。

 ヘルム峡谷で使われたソフト「マッシブ」についても詳しい解説がある。群集による合戦シーンを自動生成するシステムで、ソフト内のキャラクターそれぞれが自立思考を持ち、敵を確認後、攻撃や防御を勝手に行なうというものだ。同じフィールドに数万のキャラクターを生成でき、それぞれが設定された目的をもって動く。このシステムがあってこそ、映画史上最大規模といえるヘルム峡谷の戦いが再現できたという。

 そのほかにも大量のデザイン画や写真集を収録。また、AVファンなら「サウンド・デモンストレーション」も試してほしい。ヘルム峡谷における一連のシーケンスの音素材をセリフ、足音、矢柄、打撃音、BGMなど8つのトラックに分離し、トラックごとに聞き分けることができる。すべてドルビーデジタルで収録されており、トラックによってはリアサラウンドのチェックに有効なものもある。この作品は音響効果でもアカデミー賞を受賞しており、音質や臨場感、強弱のテンポがすばらしい。

 なお、特別版の特典は通常版には入っておらず、通常版の特典も特別版には含まれていない。通常版の特典は米WBTVなどで放映されたドキュメンタリーものが中心で、特別版ほど濃い内容は聞けなかった。ほかにも予告編、TVスポット、特別版の告知など、ありきたりなものが多い。ショーン・アスティン(サム役)が監督した短編映画「The Long and Short of it」がショーンファンにとっては目玉なのだが……。


■ このディスクを見ずしてDVDを語るなかれ

 特別版の画質・音質のクオリティは総じて高い。9,800円という価格は通常版の倍になるものの、大画面・大音響で鑑賞する環境のある方なら、元は十分に取れると思う。最近はコントラスト高めで黒側を不自然に落としているタイトルが多いが、特別版ではそうした傾向も見られない。フィルムらしい画質を正攻法で再現しているので、リファレンスディスクとしても活用できるだろう。DTS 96/24を除けば、音声もDVDビデオとしては現在最高のフォーマットだ。

 少し気になったのは、第3部公開後に「3部作セットのトリロジーがでやしないか?」ということ。勝手に推測すると、「通常版」→「特別版」→「お買い得・通常版トリロジー」という流れはありそう。9,800円×3の「特別版トリロジー」はさすがにどうかと思うが、しかし、全世界での勢いを見ると、さらに追加シーンを加えた「究極版トリロジー」もありえるかも……。

(C)MMII New Line Productions, Inc. (C)MMIII New Line Home Entertainment, Inc. The Lord of the Rings, The Two Towers, and the names of the characters, events, items and places therein, are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc. All Rights Reserved

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□ポニーキャニオンのホームページ
http://www.ponycanyon.co.jp/
□公式サイト
http://www.lotr.jp/
□製品情報
http://www.ponycanyon.co.jp/wtne/dvd/031203lord.html
□関連情報
【6月20日】DVD「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」を10月1日発売
-約40分の未公開シーンを追加した4枚組みの特別版は12月発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030620/pony.htm
【2002年12月10日】【DVD】第63回:通常版とは中身も外見も大違い!!
「ロード・オブ・ザ・リング スペシャル・エクステンデッド・エディション」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021210/buydvd63.htm

(2003年12月10日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]



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