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第29回:大画面☆マニア in CES 2004 その1
~ フラットディスプレイの大型化競争が加熱 ~
80インチ/1080pのPDP、57インチ/1080pの液晶TV


 今年のCESは、ホットな大画面ネタで満ちあふれている。特に壮絶な戦いを繰り広げている韓国メーカー同士の争いが熱い。

 大画面☆マニアCES 2004は2回に分けてお送りする予定だが、今回はPDPと液晶TVを中心に紹介する。

■ LG電子ブース~大画面メーカー2大巨頭の1つ

 LG電子は、家電メーカー米Zenithを買収した親会社であり、これまではLG電子製品を北米市場ではZenithブランドで販売してきた経緯がある。このマーケットスキームを今年から方向転換し、Zenithブランドは「メインストリーム向け」という位置づけにして、先進的なハイエンド製品には親会社の「LG」ブランドを割り当てていくという。

・1080pリアル表示可能なPDPが登場

 PDP製品の最上位クラスに、リアル1080p解像度(1,920×1,080ドット)モデルを追加した。

71インチモデル 76インチモデル

【主な仕様】
71インチモデル
型番未定
76インチモデル
型番未定
解像度1,920×1,080ドット
輝度900cd/m2800cd/m2
コントラスト1,500:11,000:1
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
1,684×83×1,000mm1,794×81×1,061mm
 そのサイズはついに70インチの大台に乗り、71インチと76インチ。「現在のPDP製品のドットピッチをそのままに1080p化するとこうならざるを得ない」という見方もある。

 しかし、やっと1080pリアル対応PDPが登場してくるということ、70インチオーバーのPDPが製品化されるということを、大画面ファンとしては純粋に喜びたいと思う。

 表示されていた映像のクオリティが低いため、画質に関してコメントしづらいが、スペック通りのコントラスト性能は達成されているようで、明るい方向のダイナミックレンジは取れている。

 両製品共に重量は現時点では非公開だが、LG製同系列製品の50インチモデルが約44kg、60インチモデルが70kgであることを考えると、80kg以上になることは確実で、「壁掛けテレビ」的な運用はかなり困難だろうと推察される。

 価格は未定としながらも、71インチモデルが3万ドル以上、76インチモデルが3万5,000ドル以上になるという。発売時期も公式には未定としているが、遅くとも2004年内には販売を開始する方針とのこと。いずれにせよ、インチ単価では50インチ以下のPDPのレートからは逸脱しているので、一般ユーザーからは縁遠い存在になりそうだ。

・ 1080pリアル対応液晶TVが55インチに

DU-55LZ20

 液晶TVの最大サイズが、去年同時期と比較して3インチ更新。今年のLG電子の液晶TVラインナップの最大サイズは55インチとなった。解像度はもちろん1,920×1,080ドットで1080pリアル対応。

 昨年の52インチモデルはいかにも試作品といった、手作り感の漂うものであったが、今年のこの55インチモデルは筐体デザインもしっかりしており、型番も決定している。日本勢の動向を確認した上で迅速に出荷できる体制を整えているという。

 パネルはLGとフィリップスの合弁会社、LGフィリップス開発のものを採用。液晶素子は横電界IPS方式であり、視野角は前後左右176度を達成する。この他の基本スペックは以下のようになる

【主な仕様】
55インチ液晶
「HDTV DU-55LZ20」
解像度1,920×1,080ドット
輝度550cd/m2
コントラスト500:1
外形寸法非公開

 NTSC/ATSC/QAMチューナを内蔵し、これらを任意の組み合わせでPicture in Picture(PinP)表示させることが可能。3-2プルダウンのプログレッシブ化エンジンも内蔵する。スピーカーは15W+15Wの比較的パワフルなユニットをフレーム左右に配置。DVI端子などのPC入力はもちろん、HDMI入力、S映像などのビデオ入力端子なども取りそろえる。

 展示機の画質に関しては、まずまずといったところで、暗部階調にもうちょっとリニア感が欲しい気はするが、明るい環境下でこれだけの明るさで見えるのは立派。リアプロHDTVとは違った光量パワーは確かに実感できる。

 発売時期は最速で2004年中盤ごろ、価格は「同サイズPDPの1.5倍程度を目標にしたい」と話していた。


■ サムスンブース ~大画面“世界一”は今年もサムスンが独占~

 今年もサムスンブースは「世界一」キーワードが、ブース内の各セクションに掲げられており、「世界一」製品の前には常に黒山の人だかり。来場者のウケは上々のようだ。

・世界最大の80インチ1080pリアル対応PDP
  ~画面サイズはフロントプロジェクタの守備範囲を浸食!?

80インチPDP 「HPP807」

 来場者の注目をもっとも集めていたのがこの「世界最大のPDP」。画面サイズはついに80インチを達成。その大きさたるや、もはやフロントプロジェクタのスクリーンといった趣で、自発光のディスプレイデバイスとはにわかには信じがたい。

 表示画面だけでも横約180cm、縦約100cmある。画面の大きい自発光ディスプレイであれば、屋外ディスプレイとして利用されているLEDディスプレイなどもあるわけだが、これがそれらと決定的に違うのは、圧倒的な解像度。1,920×1,080ドットのフルHDTV解像度性能を実現しており、「ただでかい」だけとは違う。


【主な仕様】
80インチPDP
「HPP807」
解像度1,920×1,080ドット
輝度1,000cd/m2
コントラスト2,000:1
外形寸法非公開

 ATSC/NTSC/AQMチューナを内蔵。映像エンジンとしては、サムスン独自の信号処理ロジック「DNIe」(Digital Natural Image Engine)を搭載する。

 展示されていた周囲の照明の影響もあり、画質は評価できないが、解像感は高くスペック通りの明るさは確かに実感できた。

 画面サイズもビックなら、重さもヘビー級。100kg近くはありそうで「壁掛け」できるレベルを超えている。パネルそのものの奥行きはそれほどないものの、転倒防止のために台座部分が大きく、設置面積は結構大きい。

 こちらもただのコンセプトモデルではなく実際の発売に向けて開発が続けられる見込みで、発売は2004年末から2005年初頭を予定している。価格は「競合メーカーの動向をふまえた上で決定したい」とし、現時点では「想像すらできない」とのこと。

 同時に70インチモデルもラインナップされ、こちらは早くも2004年の春には市場投入される見込みだ。

□関連記事
【1月9日】Samsung、世界最大80インチのフルHD対応PDPを開発
-ガラス基板1枚から40インチ4面取りの生産技術も確保
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040109/samsung.htm

・液晶TVがPDPサイズを超える?
 ~世界最大サイズの57インチ液晶HDTV

57インチ液晶HDTV「LTP578W」

 サムスンは、液晶TVにおいても「世界最大サイズ」の称号を獲得した。その大きさは57インチで、LG電子の55インチを2インチほど上回る。

 解像度は1080pリアル、すなわち1,920×1,080ドットのリアルHDTVスペック。公称応答速度は8ms。TN方式の液晶パネルにおいて、もっとも応答速度が遅くなるのは中間色階調表示エリアが激しく移動するシーンだが、本パネルではそういった映像でもブレをほとんど感じさせることなく表示できるという。


【主な仕様】
57インチ液晶HDTV
「LTP578W」
解像度1,920×1,080ドット
輝度600cd/m2
コントラスト1,000:1
外形寸法非公開


 高画質化ロジックとしてこちらもDNIeエンジンを搭載。NTSC/ATSCマルチチューナ構成でPinP表示に対応する。左右フレームにはステレオスピーカーを内蔵し、サウンド出力はSRSの「TruSurroundXT」によるバーチャル5.1ch出力が可能。

 コントラストのはっきりした映像ではメリハリの効いた表現が実感でき、スペック値(1,000:1)のコントラスト性能は手応えとして実感できた。発売時期は未定としながらも「年内には発売したい」とコメント。価格はこちらも「全く想像が付かない」とのこと。

46インチ液晶HDTV 「LTP468W」

 なお、1080pリアル対応液晶TVは、57インチモデルの他、46インチモデルがラインナップされ、2004年はこちらを主力製品として市場投入していく。こちらは2004年6月には店頭に並ぶ予定。

 ただし、価格については現時点では未定とし、競合メーカーの同クラス製品(シャープのAQUOSを指していると推察される)の動向を見てから決定したい、とのこと。

【主な仕様】
46インチ液晶HDTV
「LTP468W」
解像度1,920×1,080ドット
輝度500cd/m2
コントラスト非公開
外形寸法非公開


 密でクリスピーな映像表現はなかなかのもの。前世代と比べるとサムスンの液晶TVの表示品質は随分向上したものだ。

 ところで、40インチクラスで1080pリアル解像度対応液晶TVは現時点ではサムスンとシャープからしかでていない。それだけにこの直接対決は消費者側からも熱い視線が注がれることになる。



■ シャープが45インチ1080pリアル液晶TVを発表

45型液晶HDTV
AQUOS LC-45G

 「液晶のシャープ」は「最大サイズ戦争には関心がない」とのことで、「多くのユーザーに現実的な価格で現実的な画面サイズにて最高画質を届けたい」というスタンスで2004年を戦っていくという。

 そんなコンセプトを具現化したのが今回発表された45インチの1080pリアル対応液晶TV「LC-45Gシリーズ」のAQUOSだ。なお、日本家電メーカー勢としては、1080p(1,920×1,080ドット)解像度パネルを採用した初の40インチオーバーの液晶TVということになる。

 詳細なスペックは展示会場では明らかにされていないが、今年中盤までには発売が開始される見込みとのこと。

 この製品は先頃、本格稼働がアナウンスされた大画面液晶TV製造に特化したシャープ亀山工場で生産されることになっている。その価格が気になるところだが、この点について質問したところ「価格は現時点では明らかにできないが、現行AQUOSの37インチモデルの価格と比較して、消費者が納得できるものにする」との回答が得られた。

 この回答は、同時に韓国勢の一連の競合製品に対して勝算があること暗に秘めている。韓国勢も注目するAQUOS45インチモデルは、とにもかくにも、オーバー40インチの1080pリアル対応液晶TVの1つの基準になることは間違いない。

 LC-45Gシリーズは、同一パネルを使用しながらも、いくつかの製品バリエーションに分かれてラインナップされることが決定しており、北米市場では以下のような構成になる(日本では変わる可能性が高いとのこと)。

  • LC-45GD1U
     スピーカーユニットが下に付く。インターフェイス、信号処理ボックス外付け。本体色チタニウム系
  • LC-45GD2U
    未定
  • LC-45GD3U
     スピーカーユニットが下に付く。インターフェイス・信号処理機能を内蔵。本体色シルバー系
  • LC-45GD4U
     スピーカーユニットが左右に付く。インターフェイス・信号処理機能を内蔵。本体色シルバー系

 スピーカーユニットは、同社ではお馴染みの1ビットデジタルアンプで駆動される。ユニークなのはPCカードスロットも実装される点で、ストレージ系カードに記録された静止画(JPEG)、動画(MPEG-4/ASF)の再生機能が搭載されるという。映像入力端子はHDCP-DVIをはじめ、一般的なものの他、北米市場版はHDMI端子が実装される(日本版で搭載されるかは未定)。

□関連記事
【1月8日】シャープ、今夏にフルHD対応45型液晶テレビを投入
-2004年年頭会見。AV機器は2桁成長の見込み
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040108/sharp.htm

□2004 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2003年1月15日】【大マ】冬のラスベガスに大画面の明日を見た!!
~ 大画面マニア in CES 2003 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030115/dg15.htm

(2004年1月9日)

[Reported by トライゼット西川善司]


= 西川善司 =  遊びに行った先の友人宅のテレビですら調整し始めるほどの真性の大画面マニア。映画DVDのタイトル所持数は500を超えるほどの映画マニアでもある。現在愛用のプロジェクタはビクターDLA-G10と東芝TDP-MT8J。夢は三板式DLPの導入。
 本誌ではInternational CES 2004をレポート。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化している。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。



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AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp

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