■ DivX対応低価格ポータブルAVプレーヤー登場 昨年はソニーの「PCVA-HVP20」、ARCHOSの「Cinema To GO(AV320)」などの製品が発売され、一部で盛り上がりを見せたポータブルビデオプレーヤー。今年もMicrosoftの提唱するWindows PMC対応機の発売が予定されており、年末に向けて盛り上がりが予想される。 また、大手メーカーだけでなく、今までオーディオプレーヤーを開発していたようなアジアの中小メーカーもビデオにシフトしているようで、CeBIT 2004の会場でもポータブルビデオプレーヤーをちらほら見かけた。とはいえ、既に持ち歩くスタイルが定着しているオーディオプレーヤーに比べ、ポータブルビデオプレーヤーは市民権を得ているとはいいがたく、まだまだマニア向けのニッチな市場。 しかし、RWCが発表した「Arex PocketMX」は、実売価格2万円と低価格ながら、DivXの再生に対応するという魅力的な製品。メディアはHDDではなく、SDメモリーカード/MMC。実際に利用する際に、128~256MB程度のSDメモリーカードを購入することを考えても実売価格は3万円程度と値ごろ感がある。 メモリカード採用のポータブルビデオプレーヤーは古くは「MT-AV1」があり、またカメラとしても利用できるということで毛色は違うが、松下のD-snapなどもある。しかし、これだけ低価格なプレーヤーは無く、また、DivXの認証を取得しているというのもなかなかポイントが高い。早速RWCからお借りして試用した。 ■ 比較的小型な本体
本体のほか、ヘッドフォンや28MBのMMCカードなどが同梱される。 本体の外形寸法は112×29.6×75.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は125g(本体のみ)。それほど大きくは無いが、電源が単3電池4本のため、電池を内蔵して手に持ってみるとやや重く感じる。シャツの胸ポケットには収まらない大きさ/重さだ。 本体上部にSD/MMCスロットやUSB、外部電源入力を装備。左側面にイヤフォンジャックと電源スイッチと輝度調整ボタン、右側面にもイヤフォンジャックを備えるほか、ボリュームコントロールボタンを搭載する 前面には2.5型の液晶ディスプレイを装備。再生、早送り/戻しボタンと、丸型のファンクションキー、MENUボタンを備えている。CPUにはMotorolaのDragon Ball i.MXを採用。背面には単3電池4本を収納、約10時間の使用が可能。 付属のMMCカードは28MBとあまり見かけない容量のもので、付属のDivXエンコードソフト「ZFLICKS」が収録されている。
■ 操作性は良好だが、対応プロファイルはやや寂しい
PocketMXのベースとなってるのは、米HandHeld Entertainmentの「ZVUE」。パソコンで作成したDivXファイルをSD/MMCカード経由で読み込めるほか、USB 1.1経由で本体のSD/MMCに転送できる。USBでの転送時には、本体のMENUから[USB Connect]を選択すると、パソコンからUSBストレージとして認識され、データの転送が行なえる。 転送後の基本操作はファンクションキーで、ファイルを選択し、再生するだけのシンプルなもの。DivXのほか、MP3やJPEGファイルの再生にも対応している。 対応するDivXファイルはHandheldプロファイルのみ。Handheldプロファイルの対応解像度は176×128/176×96ドット、ビットレートは128kbps。音声はMPEG-1 Layer 2とMP3に対応する。 Handheld以外の、HomeTheaterプロファイルで作成したDivXファイル(640×480ドット 1000kbps/128kbps 29.97fps)や、Portable ProfileのDivX(352×256ドット 600kbps/64kbps 29.97fps)を再生しようとしたところ、[Unsupported format or resolution]との警告メッセージが表示され、再生できなかった。
DivX変換ソフトとしてVirtualDubをベースにした「ZFLICKS」をバンドル。メニュー言語が英語となっており、初心者には敷居の高いソフトに感じるが、2ステップでHandheldプロファイルのDivXファイルが作成できる。 多くのDivXユーザーは、VGAやQVGA程度のファイルを利用していて、Handheldプロファイル相当の低解像度のファイルで利用している人は少ないだろう。そうしたユーザーは、さらに再エンコードをかけてPocketMX用のDivXを作成しなければいけないわけで、面倒に感じる。 画質については、解像度が低いのでさほど期待していなかったが、それなりに見られるという印象。液晶の視野角もやや狭く、動きのある場面では液晶に起因するジャギーも感じられるが、テレビ番組や映画を見ても、何が写っているのかわからなくなるような破綻は無い。しかし、解像度が低いのでソースをかなり選ぶ。特に、映画の字幕を読むのはかなりきつい。
再生操作はシンプルで、ファイルを選択するだけで再生が開始される。早送り/戻しボタンで、2倍速程度の早送りが行なえるが、戻しボタンではファイルの先頭まで戻ってしまうのがわかりにくいが、それ以外に戸惑うようなところは無いだろう。再生中にファンクションキーの下を押すことで、A-Bリピート再生も可能だ。 MP3の再生にも対応しており、128/160kbps(CBR)のMP3ファイルを再生してみたが、特に問題なく再生できた。再生時には、ファイル名のほかサンプリング周波数やビットレートを表示する再生画面に切り替わる。 JPEGファイルの再生も可能。2,590×1,920ドットのJPEGファイルも表示できたが、高解像度になるとジャギーが目立つた。 なお、日本語表示には対応していないため、日本語ファイルを転送すると[???]と表示されてしまう。
■ 機能と価格のバランスをどう見るか 機能はシンプルだが、何より低価格が魅力的な製品。しかし、多くのDivXユーザーがすでに持っているであろうVGAやQVGA解像度のDivXファイルは、再エンコードしないと視聴することができない。 これでは「DivX対応」のメリットを生かせず、使い勝手上では独自フォーマットを採用しているのとほとんど差がない。できれば、Portableプロファイル/QVGA程度の解像度までサポートして欲しかった。 しかし、この割り切りこそがPocketMXの低価格を生み出しているともいえる。その点に納得できるのであれば、低価格ビデオプレーヤーとしてお買い得感は高いだろう。 □RWCのホームページ (2004年5月7日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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