■ PSX改訂版? 昨年クリスマスに、まさに「鳴り物入り」でデビューを果たしたPSX。だがマスコミの反応はミョーに冷ややかであったのを記憶している。筆者も実際に当時の下位モデル「DESR-5000」をレビューしたが、VRフォーマットの扱いに疑問はあったものの、全体的には好印象を持った。またソフトウェアのアップデートで進化する、新しいタイプの家電として、今後どうなっていくのか注目もしていたのである。 ただ売上的には、当初の予測よりも大幅減であったとか、実はスゴ録のほうが売れたとか、一部では製造休止といった情報も流れるなど、風当たりが強いマシンであったことも事実。 そんな折、PSXの新モデルが7月1日に発売になった。型番はそれぞれ100増えて、DESR-7100とDESR-5100。ハードウェアとしての変更点はないが、ソフトウェアによりAV機能が強化されたという。言うなればソフトウェアアップデートにかこつけたリニューアルで、書籍で言えば改訂版といったところだろうか。 ではさっそく新PSXの真価を探ってみよう。
■ デザインは継承 いつもなら外観チェックから入るところだが、ハードウェア的にはそれほど変更点はないということで、いつもより軽めに行こう。 今回は上位モデルの「DESR-7100」をお借りしている。新PSXの下位モデル「DESR-5100」には、ホワイトとシルバーの2タイプがあるが、上位モデルには色のバリエーションはない。
前回のレビューでは下位モデルを見ているが、これが全体的に樹脂製の四角い箱であったのに対し、上位モデルでは外装にアクリルパネルを施し、透明感プラス立体感のあるデザインとなっている。天版部のアクリルも厚みが5mmほどあり、高級感はあきらかにこちらの方が上だ。購入者は「安いんじゃなくてイイ方を買った」という満足感が得られるだろう。 また前作で不評だったRFのスルー端子のない点に関しては、地上波とBS用それぞれに分配器が同梱され、RFケーブルも4本付くというフォローがなされている。 分配器は「Waka」というメーカー製で、市販では見たことがないものだ。おそらくプレイステーション 2のAVケーブルなどを製造している関係から、ワカ製作所のものではないかと思われる。RFケーブルはかなり細身で、長さは1.5m。こちらはメーカーなど不明だ。
もう1つ、明るい場所や直射日光が当たる場所でリモコンが効きにくいという問題があったのか、赤外線受光部に貼る遮光シールも同梱されている。まさに至れり尽くせりだ。
■ 大幅に「普通」になった? DVDまわり では機能強化されたというソフトウェアを順に見ていこう。まずゲーム関係では、ネットワーク情報サービスの「PlayStation BB」が閲覧できるようになった。ただしPSX上では新作ゲームなどの情報がチェックできる程度で、ゲームのダウンロードなどには対応していない。以前からPSXにはネットワーク端子が付いていたが、これまではアップデート用ぐらいしか用途がなかった。ゲームがダウンロードできないのは残念だが、多少はネットワークが繋がっている意味が出てきたかなと思う。
今回の大きな変更点は、DVDの書き込み系が充実したところだ。初期のPSXでは、DVD-RWで一応VRモードが使えるものの、追記できない、編集結果が反映されない、二カ国語に対応できないと、一応動くんだけどあまり使う意味のない機能になってしまっていた。今回はこれらの部分がすべて解消され、追記、編集、二カ国語すべてに対応した。
ダビング機能では、再エンコードによるレート変換ダビングも可能になった。設定できるレートはPSXで採用してるプリセットの録画モードのみで、メディア1枚にピッタリ収めるJUSTモードなどはない。さらにスゴ録で採用しているような2passエンコード機能もない。昨今のレコーダとしてはもう一工夫欲しいところだが、少なくともこれでようやく普通のレコーダとしての体裁が整ったことになる。
メディアの対応では、今年3月のアップデートで、既にDVD+RWに+VRモードで書き込めるようになっている。DVD+RW対応レコーダは、今まで国内ではスゴ録だけであったが、これにPSXが加わった形だ。
また今回のバージョンでは、+VRモードでも同じく追記も可能になっている。+VRは-VRと違ってDVDビデオと同等のメニューが付けられるわけだが、このメニューも再オーサリングされる。ただし別レコーダなどでコンテンツを部分消去したときは、その空き部分には映像は追記できない。だがDVD-RWのVRモードでは、空いた部分は再利用できるという。 ちょっと前までPCの世界では、-RWのほうが空き容量を再利用できず、+RWのほうはできるとしてアドバンテージがあったわけだが、新PSXではそれが逆転している恰好だ。なお、そのほかのメディアについても再生互換性をチェックしてみた。結果は下表の通り。
オーサリングに関しては、メニュー画面に使用できるデザインテンプレートが50種類と大幅に増えた。特徴的なのは、CGで作った背景だけでなく、実写を効果的に使ったデザインが多いことだ。こういう部分に、デザインを重視するメーカーとしての強みが出ている。今までのレコーダにありがちな、所詮色違い程度のバリエーションしかないメニューに飽き飽きしていた人には、新鮮に映るところだろう。
■ 意外に使える外付けキーボード 初期バージョンではサポートしておらず、今年2月のアップデート以降使えるようになったのが外付けキーボードだ。ソニー的には「PlayStation 2 対応USBキーボード」が推奨なのだが、試しにそこらへんに転がっていたPS/2コネクタのPC用のキーボードを、PS2-USB変換ケーブルを経由して前面のUSBポートに繋いでみたところ、あっさり使えるようになった。 これができるレコーダは意外に少ない。東芝のRDは、LANで繋がったPCから入力するという手が使えるぐらいで、筆者の記憶では、ダイレクトにキーボードが繋がるものはたぶんなかったと思う。 PSXは名前を入力できる部分が多い。まずよく使うのはキーワード検索だろう。画面キーボードは、リモコンを使って誰でも入力できるが、既にキーボードがバリバリ使える人にとってはかったるい。ここでキーボードが使える利点は大きいだろう。
また、番組名も予約するときに変更できるようになっている。PSXではGガイドを使っている割には、番組名に「GG」の文字が入らないのでそういう修正はないだろうが、ドラマなどを日付や話数で管理したい人には便利だ。
また写真やCDの取り込みでは、アルバム名を入力できるが、このときもキーボードがあれば素早く入力できる。余談だがPSXの漢字変換機能では、ソニーの社長、安藤国威氏の「威」などの難しい字も「くにたけ」一発で出てくる。これもATOK搭載によるものかと思い、試しに「くたらぎけん」で変換したところ、「久夛良木健」と一撃で変換する。あのATOK17を持ってしても、「くたらぎ」の第一候補は「久多良木」だ。ソニーおそるべし。
話は変わるが、VAIOの新GUI「Do VAIO」では、音楽CDを再生しておいて写真のスライドショーを行なうと、音楽を聴きながらスライドショーを楽しめるという裏技のような機能がある。PSXでも同じようなことができるかと思ってやってみたが、残念ながらスライドショーを再生すると音楽が止まってしまうようだ。 先日のWalkman25周年パーティで撮った、安藤社長の勇姿を音楽付きで楽しもうと思ったのだが、実に残念だ(と、このぐらい書いとけば次回のバージョンで採用されるかも)。
■ 総論 PSXの最終的な着地点がどこなのかまだはっきり掴めないが、それでも今回レコーダとしての機能も水準に到達した。それ以外にもゲームはできるわ音楽や写真はとりこめるわで、ハイブリッドレコーダの中でもひときわユニークな存在となったわけだ。 考えてみればPSXは、あまりにも最初の期待感が大きすぎたのだ。筆者が思うに、おそらく事前の露出や予定スペックの情報公開が早すぎたのではないかと思う。これがちょっと昔ならは、ユーザーの情報源は雑誌や広告などのメディアが中心となるため、比較的動きが遅い。ユーザーが他社へ流れる牽制効果もあるだろう。 だがハイブリッドレコーダのようなIT商品は、情報源も今やWebが中心となりつつあり、ニュースリリースが出てからユーザーに行き渡るまでの動きが異常に早い。期待感の持続期間が、賞味期限切れになってしまったのではないかと思う。 また今回紹介した新機能は、旧ユーザーにも7月15日から開始されるアップデートにより、同機能になるという。このような旧ユーザーもなるべく同じところまで一緒に連れて行くという考え方は、今まで半年単位の新モデルリリースで「売り切り」としてきた家電製品とはまったく違ったアプローチで、ビジネスモデルとして非常に面白いやり方だ。 以前はPCであるVAIOですら、世代ごとにソフトウェアが差別化されてきたことを考えると、こういうセンスが久夛良木流というわけなのだろう。ユーザーにしてみれば、いつハードウェアを買っても大丈夫という安心感に繋がる。ハードウェアの売上だけではなく、メーカーとして得るものは少なくないはずだ。
美しいデザインとわかりやすい操作、HDD容量から考えれば価格的にも高くない。もちろん、最もお勧めのレコーダとまではいわないが、周りのレコーダをよーく見回してみて、PSXはもう一度、きちんと再評価されるべきだろう。
□ソニーのホームページ (2004年7月7日)
[Reported by 小寺信良]
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