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ソニーから1万円以下のノイズキャンセルヘッドフォンが登場
NCヘッドフォン入門に最適な耳栓型とオープンエアー型
ソニー 「MDR-NC11A」、「MDR-NC6」
発売日:10月21日発売
価格:7,350円(MDR-NC6)
    9,870円(MDR-NC11A)


■ なぜか人気が高いNCヘッドフォン

 世間的な認知度自体は、あまり高くないと思われるノイズキャンセリングヘッドフォン(NCヘッドフォン)。しかし、AV Watch読者にはなぜか人気があり、レビューもソニー「MDR-NC10」、松下「RP-HC100」、ソニー「MDR-NC11」、Sennheiser 「PXC 250」、ソニー 「MDR-G94NC」、BOSE「QuietComfort2」など多数掲載している。

 そこで、今回取り上げるのはソニー製のNCヘッドフォン「MDR-NC11A」と「MDR-NC6」だ。10月21日発売と告知されていたが、実際のところ17日には新宿の量販店で販売していた。購入価格はMDR-NC11Aが7,896円(ポイント還元あり)、MDR-NC6が5,880円(同)。

 MDR-NC11Aは、従来モデルMDR-NC11のリファインモデルと思われる耳栓型。MDR-NC6はオープンエア型となっている。ともに、ノイズ成分に逆相成分をミックスし、ノイズを抑えるノイズキャンセリングヘッドフォンだが、1万円を割る価格帯のものは珍しい。

MDR-NC11Aのパッケージ MDR-NC6のパッケージ



■ 耳栓型とオープンエアー型の2モデルを用意

 両モデルの基本仕様は以下のようになる。

・MDR-NC11A

MDR-NC11Aの同梱品

 耳栓型のイヤフォンで、密閉ダイナミック型のイヤフォン部とNCユニット部で構成される。同梱品はイヤーピース(S/M/L)とキャリングポーチ、ホルダー、航空機用プラグアダプタなど。

 ドライバ径は9mm。最大入力は50mWで、インピーダンスは20Ω(NC ON時/1kHz)/8Ω(OFF時1kHz)。音圧感度は102dB/mW(ON)、98dB/mW(OFF)。再生周波数帯域は10Hz~22kHzで、ノイズカット周波数帯域は50~1,500Hz。電源は単4乾電池1本で、電池を含む重量は47g。

 左右のイヤフォンユニットの背面に集音マイクを装備し、マイク部分が膨らんだ独特の形状。NCユニット部には単4乾電池を収納可能で、NC ON/OFFボタンとボリュームボタンを装備する。

 前モデル「MDR-NC11」との比較をしてみると、スペック的にはまったく同じ。しかし、価格はNC11の標準価格11,550円、実売約9,000円から、NC11Aでは標準価格9,870円、実売8,000円弱と若干安くなっている、カラーもホワイト(W)/ブラック(B)/ブルー(L)が用意されるあたりが変更点になる。

イヤフォン部とNCユニットから構成される イヤフォン部。左右にマイクを装備した独特の形状となっている
NCユニットにON/OFFボタンを装備 ボリュームコントローラも装備 NCユニット内に単4乾電池を収納


・MDR-NC6

MDR-NC6の同梱品

 オープンエア型のヘッドフォン。同梱品は延長コード、キャリングポーチ、航空機用プラグアダプタなど。

 ドライバユニットは38mm径のドーム型で、最大入力は100mW。インピーダンスは20Ω(ON時/1kHz)、65Ω(OFF時1kHz)。音圧感度は106dB/mW(ON)、104db/mW(OFF)。再生周波数帯域は30Hz~15kHzで、ノイズカット周波数帯域は40~1,500Hz。電源は単4乾電池1本で、電池を含む重量は約150g。

 ドライバユニットは回転し、平型にしてキャリングポーチなどに収納できる。左右ハウジングにマイク部を搭載、右ハウジング上部に単4乾電池ケースを備えている。


MDR-NC6。左右側面にマイクを備えている ドライバユニットが回転し、平型にして収納できる

右ハウジングに電源ボタンを装備 右ハウジングの上に単4電池ケースを装備する


■ 音質やNCの効果をチェック

 主にiPodを利用して地下鉄や室内で両機をテストしてみた。

・MDR-NC11A

MDR-NC11Aの利用時

 MDR-NC11Aの装着感は、普通の耳栓型イヤフォンとほとんど同じで、耳穴の大きさに合わせてS/M/Lのイヤーピースから好みのサイズを選択できる。イヤーピースによって若干音も変わってくるので、いろいろ試しながら好みのものを選択するといいだろう。

 ステレオミニプラグからイヤフォン部の間にNCユニットを配しているのだが、ケーブルが長くトータルで1.5m程度あるので、取り回しには工夫が必要だ。

 ノイズキャンセルのON/OFFはNCユニット部のスイッチで操作する。耳栓型なので、そのまま耳に装着するだけで、かなりの遮音能力がある。そのため、電車の中でON/OFFにしても、最初はさほど変化が無いようにも感じた。聞き込んでいくと、エアコンのファンノイズはほぼ全てカットされ、モーター音などもかなり低減しているのがわかる。とはいえ、もともとの遮音性が高いので、効き具合具合はややわかり難い。

 また、NCヘッドフォンでは、車体の軋みなどの非連続なノイズやノイズキャンセル周波数(NC11Aでは50~1,500Hz)の圏外にはあまり効果がない。編集部内で利用してみても、エアコンやパソコンのファンノイズなどはバッサリとカットされ、話し声や電話、キーボードの打鍵音などはしっかり聞こえる。また、電車内などではさほど気にならないが、静かなところで利用すると“サー”というホワイトノイズはそれなりに感じられる。

 音質については、NC OFFの場合、全体的に情報量が不足し、特に中域はかなり薄いので迫力を感じられない。また、能率が低いためか、iPodでの利用時にはiPod側のボリュームを最大値にして、さらにヘッドフォン側のボリュームも最大まで上げないと物足りない。パイオニアの耳栓型ヘッドフォン「SE-CL30-J1」(標準価格:3,000円)と比較してみても、情報量は下回っている印象た。

 NCをONにすると高域は明確に落ちるものの、ダイナミックレンジが圧縮されるのか、中域のボリューム感が出る。そのため、ボーカルものなどでは、かなり聞きやすくなる。低域の量感は十分だが、切れがイマイチな印象。しかし、ほとんどのソースでNC OFFの時より好印象だ。

 もともとONでの利用を想定して開発していると思われるので、通常はNC ONで利用するべきだろう。なお、オートパワーオフの機能は備えていないので、利用後に必ずOFFにしておかないと、次回利用時に電池が切れてしまうので、注意が必要だ。

 また、耳栓型なので歩きながら使用すると、ケーブルの擦れ音や風切り音などを拾いがち。電車の中や室内でパソコンで作業をしながらだと問題は無いだろう。携帯電話との干渉は皆無。バッテリ駆動時間はカタログ値で40時間(アルカリ電池)/20時間(マンガン電池)。15時間ほど利用したが、特にNC効果が減少するようなことはなかった。

・MDR-NC6

MDR-NC6の利用時

 オープンエア型のヘッドフォン。右ハウジングの上に電池ボックスを備えているが、装着時の重量バランスは良く、電池の存在を意識するようなことは無い。

 本体はハウジングにアクリルパネルを配するなど、遠目には結構雰囲気があるが、触ったり装着してみると、プラスチッキーで高級感は感じない。

 ヘッドバンドはプラスチック素材に表面加工を施したもの。イヤーパッド部もクッションがやや固めだ。側圧は控えめながら、ホールド性能的には不満は無い。ただし、固めのヘッドバンドとイヤーパッドで支持するので、高級ヘッドフォン的な包み込むような装着感を求める向きには物足りないだろう。

 ノイズキャンセルのON/OFFは右ハウジングのスイッチで行なう。こちらもオートパワーオフは付いていないので、使用後にはスイッチを切り忘れないよう注意が必要だ。

 音質は、NC ON/OFF時ともに低域が若干寂しいものの、目立ったクセもなく素直な印象だ。飛びぬけた特長もないが、特にNC OFFの時にはソースを選ばず再生でき、実売5,000円台のヘッドフォンとしてはなかなかいい。

 NCをONにすると「MDR-NC11A」同様に低中域をイコライザで持ち上げて、電車内などのノイズが多い環境下でボーカル成分などが聞き取りやすくなる。ダイナミックレンジは狭くなるものの、こうしたNCヘッドフォンでは、飛行機内での映画視聴なども念頭においていると思われる。セリフの聞き取りやすさなどを考慮すれば、こうしたアプローチは納得がいくところ。

 ただ、室内など比較的静かな環境でNC ONにすると、NC11Aよりも補正幅が大きいようで、ソースによっては中域の不自然な厚みも気になった。また、ノイズキャンセル用の逆相成分だと思われるホワイトノイズも、NC11Aよりかなり多く、静かな環境で利用すると酔いそうになる。バッテリ駆動時間はカタログ値で30時間(アルカリ電池)/15時間(マンガン電池)。

 なお、ソニーではMDR-NC11Aでは、「デジタルアンプ搭載のプレーヤーでは利用できない場合がある」としており、ソニー製のMDプレーヤー「MZ-E10/E720/E710」と併用しないよう呼びかけている。

 試しに、MZ-E10にNC11Aを接続してみたところ、特に問題は無さそうだったが、メーカーが利用しないよう強く呼びかけているので、これらの機器のユーザーは利用を避けたほうが無難だろう。

【訂正】
記事初出時に、「MDR-NC6」も“デジタルアンプ搭載プレーヤーで利用できない場合がある”としておりましたが誤りでした。また、MDR-NC11Aについても非対応機種に誤りがあり、訂正いたしました。


■ 低価格NCヘッドフォンの新たな選択肢

 両モデルともに飛びぬけた特長は無いものの、現行のNCヘッドフォンで価格的に競合となりうる製品は同じくソニーの「MDR-G94NC(実売6,500円程度)」ぐらい。1万円以下クラスのNCヘッドフォンの選択肢が増えたことは、素直に歓迎したい。

 耳掛け型のMDR-G94NCに比べると、通常のヘッドフォンとしての性能も高く、飛行機などの長距離移動には「MDR-NC6」、電車通勤などには「MDR-NC11A」など、自分の使用用途によって選択するとよいだろう。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報(MDR-NC6)
http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=18589&KM=MDR-NC6
□製品情報(MDR-NC11A)
http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=18590&KM=MDR-NC11A
□関連記事
【10月1日】ソニー、ノイズキャンセリングヘッドフォンの新モデル
-折りたたみ型ヘッドフォンとインナーイヤー型を発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041001/sony1.htm
【2003年11月5日】ソニー、ネックバンド式ヘッドフォン3機種
-ノイズキャンセリングモデルもラインナップ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031105/sony2.htm
【2002年4月2日】【魁】ノイズキャンセリングイヤフォンの新製品
前モデルからナニが変わったの?「ソニー MDR-NC11」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020402/saki56.htm

(2004年10月22日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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