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第170回:「SYNTHESIZER FESTA 2004」レポート
~ MOTUのFireWireオーディオインターフェイスなど ~



 11月26日、27日の2日間、東京池袋のアムラックスホールで日本シンセサイザープログラマー協会(JSPA)主催のシンセサイザ関連のイベント「SYNTHESIZER FESTA 2004」が開催された。

SYNTHESIZER FESTA 2004は池袋のアムラックスホールで開催された

 DTM・デジタルレコーディング関連のメーカー、ベンダーが計18社も集結。さまざまな製品を展示していた。大楽器祭や、楽器フェアにしても、最近は企業のブース出展が減ってきており、多数の企業が一堂に集まる機会がほとんどなくなっているが、SynthsizerFesta 2004には久々に多くの企業が集結していた。


■ 18社の参加企業が新製品を展示

 SYNTHESIZER FESTAは、昨年は大阪、一昨年は東京・恵比寿で開催されていたが、今年はかなり大きな会場で行なわれ、来場者も増えたようだ。

メインステージではレトロシンセなども展示されていた

 メインステージで行われていたのは「バーチャル VS リアル! シンセサイザー聴き比べ!!」や、「松武秀樹、今明かすYMOの真実」など、なかなか濃い内容。また、例年どおり、「MoogIIIc」や「System700」、「Prophet-5」といったレトロシンセや「MC-8」、「MC-4」といった往年のシーケンサなどなどが展示され、参加した多くの人たちが見入っていた。

 ただ、やはり個人的に目がいくのは、目新しいものがいろいろと並んだ参加企業18社のブースである。

 SynthsizerFestaという名前からも、シンセサイザのイベントであるわけだが、実際ブースを出展している企業の顔並びを見ると、DTM・デジタルレコーディング関連のイベントと言っても過言ではない。その18社とはYAMAHA、Roland/EDIROL、KORGといった楽器メーカーはもちろん、Steinberg、M-Audio、digidesign、IDECS、MIDIA、musetex……と、この業界の企業が一通り顔をそろえている。主だったところで出展していなかったのは、HookUpとLogicの発売元となったAppleくらい。リスにはCAMEOもなかったが、Steinbergが出ていたので実質上は出展していたと言ってもいいだろう。

 各ブースはちょっと小さめであったため、主力製品を1、2点展示していた程度だが、初お目見えの製品も色々とあり、新ネタ満載のイベントであった。


■ musetex

Traveler

 今回の目玉ともいえるのが、musetexが参考出品という形で出していたMOTUのFireWire対応オーディオインターフェイス「Traveler」。24bit/192kHzに対応しており、既存製品である828と896の間に位置づけられる製品だ。

 これまでMOTUのオーディオインターフェイスのほとんどは、数字による製品名になっていたが、今回はTravelerという名前が付いている。FireWireからのバスパワーで動作するとともに、従来製品と比較してコンパクトであることから、この名前になったものと思われる。電源についてはバスパワーのほかに、バッテリパックとACアダプタの供給の3通りに対応している。

 スペックもなかなかのもので、24bit/192kHz対応のアナログの入出力がそれぞれ8系統あり、うち4入力についてはマイクプリアンプも内蔵している。また、デジタルも充実しており、adat opticalに加え、AES/EBU、さらにS/PDIFの入出力も利用できるという優れもの。まだ発売時期や価格については決まっていないが、米国では895ドルと発表されているから、日本では10万円前後という価格になるだろう。なお、展示されたプロトタイプは黒だったが、製品版は青になりそうとのことだ。


■ M-Audio

 同様にオーディオインターフェイスを出していたのがM-Audio。FireWireタイプでは「FireWire Audiophile」の1つ下のグレードとなる「FireWire Solo」で、24bit/96kHz対応で4IN4OUTのコンパクトな製品。フロントにはXLRのマイク入力とアンバランスのフォン入力そして、リアにもフォンのアンバランス入出力がステレオで用意されているほか、コアキシャルでのS/PDIF入出力を装備している。オープンプライスで、メーカー直販価格が27,300円となっている。

 さらに、USB 1.1の2IN、2OUTというオーディオインターフェイス「FASTTRACK USB」も発表。これはFireWire Soloよりも下のエントリーモデルという位置付け。入出力はアナログのみだが、入力にはXLRのマイク入力とフォンのアンバランス入力を装備し、24bit/48kHzがサポートされている。価格はやはりオープンプライスで、メーカー直販価格が15,750円となっている。

FireWire Solo FASTTRACK USB

 また、M-AudioはこれまでもBIASの「Peak」など、一部のソフトを取り扱っていたが、今後ソフトのデュストリビュータとして力を入れていくとのこと。その第1弾として、独WIZOOのソフトシンセをいくつか発売する。9月にワールドワイドの契約としてWIZOO製品をM-Audioが扱うことになり、それが国内でも実現するというわけだ。WIZOO製品はこれまでSteinbergが扱っていたが、今回からM-Audio扱いへの変更となる形だ。

 実際に発売される製品としては、「Virtual Guitarist」などに近いコンセプトのフレーズを作り出すソフトシンセで、ラテンアメリカ系のパーカッションサウンドの「LATIGO」、アラビア系のパーカッションサウンドの「Darbuka」の2つ。このうちLATIGOはVirtual Guitaristの開発チームとあのマイアミサウンドマシーンによる共同開発とのことである。2製品ともオープンプライスで、メーカー直販価格が29,400円となっている。

 WIZOOのほかにも、米Glaresoftというメーカーも扱う予定で、Macintosh用の「iDrum」という製品をリリースする。これはGarageBandにターゲットを絞ったステップシーケンサスタイルのドラムマシンで、AudioUnitsプラグインに対応させたもの。オープンプライスで、直販価格は6,300円だ。

Darbuka iDrum


■ メディアインテグレーション

Ivory-Grand Pianos

 次に目を引いたのが、メディアインテグレーションが発売したSYNTHOGYの「Ivory-Grand Pianos」というMacintosh用ピアノ音源。最近ピアノ音源はGigaSamplerのGigaPiano以降、大容量のサンプリングを使いHDDからのストリーミングで鳴らすものが話題を呼んでいるが、このIvoryもそのコンセプトで、さらに大容量化させたものだ。

 1音につきループなしの30秒以上のサンプリングを、88鍵で最大8段階のダイナミックレベルで行なっているという。その結果、そのサンプリングデータの総容量はなんと25GB以上。それで49,140円という価格はかなり安く感じる。

 またサスティンペダルを踏んだ時の共鳴をDSP処理でモデリングするというのもユニークな機能だ。現在のところMac OS X上で「AudioUnits」、「VSTインストゥルメント」、「RTAS」のそれぞれのプラグインで動作するが、近いうちにWindowsへも移植され、ハイブリッドで使えるようになるとのことだ。

 メディアインテグレーションでは、このIvory以外にもfxpansionのアコースティックドラム音源モジュール「BFD」(39,800円)、SPECTRASONICSのリアルタイム・グルーブ・モジュール「STYLUS RMX」(32,800円)などをリリースする。

BFD STYLUS RMX


■ IDECS

ARP2600 V

 ステージでも注目を集めていたARTURIAの復刻版ソフトシンセだが、ARTURIAがまた新たな製品を発表し、IDECSが発売する。今回登場したのは「ARP2600」の復刻版、「ARP2600 V」だ。

 そもそもARP2600はODYSSEYなどを出す米ARP社が'70~'81年に生産していた3VCOのモジュラーシンセで、当時国内でも100万円前後していた品だ。それを完全にソフトシンセとして復刻させたのとともに、LFOの波形を自分で書くことを可能にしたり、ステレオ・ディレイでMIDIとの同期を可能にするなど、さまざまな機能を追加してリリースする。12月中の発売だが、オープンプライスであり、実売がいくらくらいになるかは未定だという。

 一方、今回はLogicではなく、Native Instruments製品の展示に絞っていたMIDIAは「BATTERY2」と「ABSYNTH3」を発表。BATTERY2はご存知ドラムサンプラーBATTERYの新バージョンで、セルの数が大幅に増えている。

BATTERY2 ABSYNTH3

 3.5GBものサンプリングデータが標準搭載され、数多くのキットが用意されているが、面白いのは1つの音を複数のセルにアサインしているということ。もちろん、同じ音という意味ではなく、あるドラムのキック音を複数の位置にセットしたマイクで録った音であり、マイクのかぶりがあるサンプリングを切り替えたり、同時に使ったりすることで、面白い味が出てくる。

 ABSYNTH3は一般のシンセサイザーとは異なる音響合成技術を利用し、マルチ・シンセシス技術、グラニュラー・サンプリング技術などを用いてサウンド生成するというものだ。価格はどちらもオープンプライスだが、BATTERY2はすでに発売済みで実売31,800円前後、またABSYNTH3は年内から年始ごろに発売見込みで、実売価格は未定となっている。


■ そのほか

 先日のsonarsound tokyoで見かけた、BORNEMARK MUSIC SOFTWAREの「Broostic Bass」もいよいよ12月4日にMI7から発売になるとのこと。ユーザーインターフェイスも若干変わったが、総勢20種類のベースと100種類以上のスタイルおよびリフパターンが収録されており、なかなか使えそう。オープンプライスで、実売36,000円前後の見込みだ。

DRUMCORE

 またMI7からはSUBMERSIBLE MUSICの「DRUMCORE」というドラムサウンドメーカーも登場する。Mac専用ソフトとなっているが、簡単なセッティングでさまざまなドラムサウンドを作り出してくれる。基本的にはスタンドアロンで動作して、AIFFファイルを吐き出すものだが、ReWireにも対応しているので、各DAWと同期して動かすことも可能。こちらは来年初旬に発売の見通しで、オープン価格、実売36,000円前後となっている。

 展示はされていなかったが、MI7のブースで大きなニュースを得た。ついに「Reason3.0」登場に向けて動き出した模様だ。すでに、Propellerheadのサイトではベータテスターの募集が始まっている。目玉はコンビネーターという機能のようで、ソフトシンセやエフェクトなど複数のモジュールを組み合わせた状態を1つのモジュールとして保存して扱えるというもの。また新デバイスとしてはエフェクトがかなり増える見込みだ。また、詳細がわかってきたらレポートしたい。

 そしてHigh Resolutionは「Live4」をメインに展示する一方で、UltimateSoundBankの新製品を2つ投入。ひとつは「X-treme FX」というインスタント・サウンド・デザインツール。容量8GB以上、プリセット数5,000以上の効果音/アンビエントサウンドを中心としたバーチャルインストゥルメントで、価格は52,290円。またGarageBand用のAppleLoops集「SONICBOOM BOX」というものもリリース。こちらは15,540円となっている。

X-treme FX SONICBOOM BOX

MOTIF RACK ES

 このほかにも、YAMAHAが参考出品という形で「MOTIF ES」と同等のラックモデル、「MOTIF RACK ES」を展示していたり、インターネットが「Sound it! 4.0」のMac版を来年1月に発売するとアナウンスするなど、ニュースは豊富。

 さらに、EDIROLはSynthsizerFesta当日に発売になった「SONAR4」を大々的にアピールし、Steinbergも「Cubase SX3」を展示するなど、非常に活気のある会場が印象的だった。Cubase SX3は英語版でのデモだったが、12月末には日本語版が発売されるとのこと。こちらのほうも、登場を待ってレポートしたい。

□SYNTHESIZER FESTA 2004のホームページ
http://www.jspa.gr.jp/synthfesta/
□関連記事
【10月12日】第163回:「大楽器祭」、「sonarsound tokyo」新製品レポート
M-AudioやKORGがUSBキーボードを展示、Linuxベースの楽器も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041012/dal163.htm

(2004年11月29日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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