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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第181回:こだわる人に向けた東芝の最上モデル「RD-X5」
〜 独自進化を続けるRDの「全部入り」 〜


■ 難しくなってきた高級機作り

 それにしてもデジタルレコーダの価格の下がりっぷりには、驚くものがある。既に旧モデルの普及機であれば5万円程度で買えるという状況になっており、その在庫価格を押し下げているのが、低価格な新モデルという恐るべき循環になっている。

 そんな状況だから、もはやハイエンドモデルでも実売で10万円代半ば前後ぐらいのところで作っていかないと、どんなにモノが良くても敬遠されるという世界に突入しつつある。作る方にとっては、いかに高画質とコストの折り合いを付けていくかで、頭が痛いところだろう。

 東芝RDシリーズこの冬モデルは、ハイエンドのXシリーズはX5、売れ筋のXSシリーズではXS46と36、入門機はXS34と24で勝負を賭ける。今にして思えば、Xから派生した普及クラスのXSシリーズを早くに立ち上げたのは、マーケティング的にはいい判断だった。単純に番号が大きい方がハイエンド、という漠然とした線引きではなく、あきらかにここから先はシロウトさんお断わりね、ハイハイこの線から出ちゃイケナイよ、という明確な区分けがある。

 ハイエンドモデルの位置づけを、価格と機能差で縦軸のてっぺんとして見せるのではなく、改良の歴史といった横軸で見せる戦略を取ることで、価値観の維持ができるわけだ。

 今回はそんな東芝のフラッグシップモデル、RD-X5を取り上げる。フルスペックを自認する、その実力を試してみよう。



■ 地味な部分に高画質のノウハウ

 まず外観だが、基本的には今年8月に発売された初のW録機、「RD-XS53」とよく似ている。フロントパネルの金型は同じだろう。ただ表面はメタルブラックのヘアライン仕上げになっており、精悍な印象を与える。ボディ部もXS53同様濃いグレーだが、フロントパネルとのマッチングもいいようだ。

 東芝フラッグシップモデルのボディデザインはX3以降、既に発売のモデルをそのまま踏襲する形で作られている。コストバランスの関係でそうなるのは仕方がないのかもしれないが、ハイエンドらしいありがたみというのが感じられないのは残念だ。

 DVDドライブは、自社製から松下製と思われるドライブに変更され、DVD-R 8倍速、DVD-RAM 5倍速、DVD-RW 4倍速と高速化されている。さらにDVD-RのVR記録、CPRMメディアにも対応している。VR記録についてはあとで試してみよう。

フロントパネルはメタルブラックのヘアライン仕上げ DVDドライブは松下製と推測される

リアパネルはステンレス製

 HDDは600GBの大容量で、300GBドライブを2台搭載している。考えてみれば、1週間分番組を録ると豪語するVAIO typeXの録画領域が500GBだから、もう十分過ぎる容量だろう。今回は振動対策として、HDDを浮かせておくインシュレータを従来のものよりも大型化したという。

 背面に回ってみよう。リアパネルは、ハイエンド機らしくステンレス製となっている。強度的にも優れ、長期に渡って酸化しないため、オーディオ出力の面で安定した素材ということで採用されたようだ。

 さすがにフルスペックを名乗るだけあって、端子類は充実している。チューナは地上波アナログとBSアナログを装備、AV入力は背面に2、前面に1。そのうち「入力3」は、D1の入力にも対応している。またこの「入力3」は、「出力1」にスルーされるようになっている。X5の電源が切れていてもスルーできるので、配線の合理化に役立つだろう。またスカパー! チューナと連動するための端子も備えており、このあたりの使い勝手がX5の目玉ともなっている。

 さてその出力は2系統のほか、コンポーネント出力、D2出力も備えている。デジタル音声は、光と同軸の両方を装備。もちろんWEPG搭載なので、LAN端子もある。出力系のDACなどは、X4のスペックを踏襲していて変化はないが、地上波チューナは2系統ともGRを搭載するなど、W録機初のスペックとなっている。

 また目に見えない工夫としては、X5のメイン基板にはガラスエポキシ両面基板が採用されている。多くのレコーダではコスト削減のため、紙をベースにした「紙フェノール基板」が使われているが、ガラスエポキシ基板は紙フェノールよりもグランド特性が優れているという。

入出力ともにフル装備だ リモコンはXS53から変更された新デザインのものだ


■ 若干チューンナップされたエンコーダまわり

 画質面での変化としては、3〜3.8Mbpsで録画したときの解像度が、従来の2/3 D1から3/4 D1(544×480)に変更された。またこれら画質モードによって解像度が変わるときに、解像度別のプリフィルタを用意することで、各解像度に最適なエンコードが可能になっているという。

RD-X5録画サンプル
画質モード 解像度 音声 サンプル
(DNR
ノイズリダクションOFF・3次元YC分離ON・GRT OFF
MN9.2 720×480ドット DD1(192kpbs)
ezsm01.mpg(25.7MB)
MN8.0 PCM
ezsm02.mpg(24.9MB)
SP DD1(192kpbs)
ezsm03.mpg(14.2MB)
MN3.8 544×480ドット
ezsm04.mpg(12.3MB)
LP 352×480ドット
ezsm05.mpg(8.07MB)
MN1.4 352×240ドット
ezsm06.mpg(4.94MB)
MN1.0
ezsm07.mpg(4.09MB)
ノイズリダクションON(弱)・3次元YC分離ON・GRT OFF
MN9.2 720×480ドット DD1(192kpbs)
ezsm08.mpg(24.6MB)
MN1.0 352×240ドット DD1(192kpbs)
ezsm09.mpg(4.07MB)
編集部注:DVデッキ「WV-DR5」で再生したRF出力し、CREATIVECAST Professionalの映像をRF経由で録画した。掲載した静止画のキャプチャは800×600ドットでキャプチャしている。(c)CREATIVECAST Professional

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

高画質録画時にビットレートを節約する「高画質レート容量節約」

 また今回は録画予約時の詳細設定で、「高画質レート容量節約」という機能が使えるようになっている。これは8Mbpsなどの高画質で録画するときに、常時8Mbps前後で録るのではなく、可能であれば6Mbpsぐらいまで落として、よりビットレート配分をダイナミックに動かすモードだ。上手く使えば、DVD保存時により効率よく記録できるだろう。

 映画で試してみたところ、基本画質自体は「容量節約」ONでも変わらない。なかなかうまいチューニングだと思う。ただ、フィルムに起因する粒子ノイズは、「容量節約」OFFに比べるとなくなってしまう感じだ。まあある意味うまく圧縮することで、S/Nが良くなったとも言えるが、素材への忠実度という意味では情報が落ちているとも言える。そのあたりをどう考えるかは、ユーザー次第だろう。


■ 「W」の使い分けがキモ

 X5の特徴は、もちろんX4譲りの高画質設計だが、X5、XS36、46共通の新機能もある。そのあたりを見ていこう。

 まずWEPGだが、これは東芝独自のインターネットEPG「iNET」に加え、今回新たにADAMS EPGも追加されたということである。EPGデータの取得はチューナ/エンコーダが2つあるので、どちらで受信するかを自分で決めることができる。今まで多くのレコーダでは、放送波のEPGを取得するときに本体電源がOFFでなければダメという制限があったが、X5ではその時間に指定のチューナが空いていればいい。これもWチューナのメリットの一つだろう。

 これは2つのEPGが「同時に」使えることがメリットではない。iNETのほうがカバーしている放送波が多いため、それが使える環境ならば、ADAMSは必要ないのである。だが常時接続ができない環境に設置することもあるわけで、そう言った意味では2つのEPGスタイルが選べる、と理解すべきだろう。表示される番組表には、ADAMSとiNETどちらから得た情報でも区別なく表示される。

ADAMS EPGの受信をどちらのチューナで行なうかも設定できる 番組表には2つのEPGの情報が一緒に表示される

チャンネル ADAMS iNET
アナログ地上波
BSアナログ
BSデジタル ×
スカパー! ×
CATV主要チャンネル ×
「映画全種」を選ぶと、大量のアニメ番組が見つかるのが難点か

 ただちょっと問題もあって、実はジャンル別表示で映画全種を選ぶと、映画ではないスカパー! のアニメ番組が大量に見つかってしまう。どうもこれは、「映画全種」の中に「洋画」、「邦画」のほかに「アニメ」が含まれているからのようだ。何か上手い回避対策があればいいのだが、映画ファンにはちょっとキビシイ。

 自前で番組表を持つということで、柔軟な運用が可能になるようだ。Gガイド採用したレコーダでは番組表で予約すると、番組名を削っても「GG」という文字が入ってしまう機種が多いが、そういうこともない。また手動で録画したものや、番組表を使わずに予約を入力したものにも、EPGとから自動的に番組名を入力してくれるのは便利な機能だ。

 番組表の表示も柔軟で、例えば番組表では2時間枠でも、後半の1時間だけ手動で予約を入れた場合は、番組枠全体が塗りつぶされることなく、その時間枠だけが塗りつぶされる。2つのエンコーダをやりくりする上では、こういった表示も重要になる。

 逆に手動で予約した結果が番組枠にハマっていないことが問題であったときは、番組表からその予約設定にジャンプして修正できる。番宣を見て予約を入れたときの確認などにも便利だ。

 2つのエンコーダを搭載したW録機能だが、エンコーダのR1とR2には、地上波以外を録画するときにはそれぞれ制限がある。BSアナログはR1のみしか録画できず、D1入力はR2でしか録画できない。その法則をふまえた上で、うまく使っていく必要があるのだ。ただし普通のコンポジットやS端子はどちらのエンコーダでも入力できるので、同時に外部入力2つを録る、ということもできる。

2時間の再放送枠の後半だけ予約しても、番組表にはきちんとその時間分だけが表示される 外部入力を2系統同時に録画予約できるところもポイント


■ 拡張された機能

 以前からネットに繋がったPCをリモコン代わりに使う「ネットリモコン」という機能があったが、今回はこれを拡張してモニター機能まで持たせた「ネット de モニター」となった。まずIEなどのブラウザから、このリモコン機能の設定を行なう。

 ネットリモコンは以前から、「通常リモコン」と、マウスホイールなどを編集時に使える「編集リモコン」という2種類が使えるようになっている。「ネット de モニター」は「編集リモコン」でのみ使用できる機能だ。

 リモコン画面内にあるモニタボタンをクリックすると、IEの別ウインドウが開いて、RDで出力されている画面がそのままモニタできる。テレビを付けずに、リビングにあるRDを完全に操作できるようになったわけだ。

ブラウザからネットリモコン設定を変更する 別ウインドウが開いて、RDの出力映像がモニタできる

 モニタ画面サイズは、最小180×120ドットから、最大1,080×720ドットまで可変できるが、実際にPCに送られてくる画面は、320×240ドットのQuicktime MPEG-1ストリームとなっている。つまり画面サイズを大きくしても、画像の解像度は320×240ドットから拡大されるだけなのである。

 今どきの機能としては、解像度の面でもの足りない限りだが、転送速度の関係でMPEG-2そのままは送信するのは難しいという判断だろう。またコストをかけずに下位機種まで同機能を載せることを考えると、MPEG-1を選択するしかない。レコーダに搭載されるMPEGエンコーダは、MPEG-2だけでなくMPEG-1もサポートしているからだ。

 限られたハードウェアリソースの中でよく頑張ったとは思うが、これで番組を鑑賞しようとなるとかなり辛い。またRDの画面操作も、解像度が低くて見にくいだけでなく、デフォルトで3秒間のバッファが設定してあるため、ボタンをクリックして反応が返ってくるまで約3秒かかる。編集はもはや不可能で、そのほかRDのメニュー画面を見ながらの操作もかなりキビシイといった使い勝手だ。

 もう一つの新機能、DVD-RのVR記録を試してみよう。従来VR記録はDVD-RWかDVD-RAMのリライタブルメディアでしか利用できなかったが、安価な-Rメディアで利用できる意義は大きい。基本的には現行のRメディアでも制作可能だが、デジタル放送を録画する場合にはCPRM対応が必須なので、専用メディアが必要になる。RメディアをVR記録するには、まず最初にメディアをVR用にフォーマットしなければならない。

メディアをVRモード用にフォーマットする

 あとは通常の高速ダビングなどで番組を書き込めばいい。ビデオモードにはない、VRモードの特徴としては、プレイリスト編集においてもフレーム精度の編集が可能になるという点だ。また二カ国語放送の番組も、そのままメディアに書き込んであとで再生を切り替えることができる。

 プレイリスト編集時においても、より正確な編集ポイントを設定するためのサポート機能がある。チャプタの位置をずらす「チャプター境界シフト」や、編集ポイントをGOP単位で確認するための「再生範囲拡大」といった機能だ。

チャプタの位置をフレーム単位やGOP単位でずらす「チャプター境界シフト」 正確な編集点の画像が確認できる「再生範囲拡大」

 またVRモードでは、たとえRであってもファイナライズ前であれば、チャプタポイントの追加や番組名変更などの編集も可能だ。ただし編集を行なうたびに記録領域を若干消費するので、メディアぎりぎりに録画したものでは編集できないケースもあるだろう。

 利点の多いVR記録のDVD-Rだが、再生環境がかなり限られる。X5で再生できるのは当然だが、一般のDVDプレーヤーではほとんど再生できない。またPCのDVD再生ソフトもまだ対応していないものが多く、現時点で対応しているものは、サイバーリンクの「PowerDVD 6」だけのようだ。今後の普及に期待したい。


■ 総論

 11月上旬には販売が始まったX5であるが、掲示板などではR2エンコーダで、オーディオがD1もしくはD2モードで録画した際に、音飛びがするということが問題となっているようだ。今回筆者がテストした機材でも同様の条件で録画してみたが、現象は確認できなかった。すべての機材で発生するわけではないようなので、なかなか状況が掴めないのだが、一刻も早い問題特定と解決が望まれる。

 なお、この件に関して同社の広報部では、「本件につき事実は認識しており、現在調査中です。近日中に結果などにつきお知らせできると思いますので、今しばらくお待ち下さいますようお願い致します」とコメントしている。

 東芝のレコーダのメリットは、どんなニッチなニーズにも大抵は応えられるという、隅々まで念の入った機能構成だ。いろんな放送波と組み合わせたい場合は、便利な機材である。ただ別のチューナなどとの組み合わせでは、設定箇所がかなり多いため、自分で設定したもののうまく動かないということも有り得るだろう。

 ハイエンドモデルというのは、とにかく全部入りといった印象が強いのだが、現在はいろいろな規格や方式が過渡期ということもあって、各社それぞれの考え方で方向性が違ってきているようだ。ソニーやパイオニアがいち早くHDMI出力を搭載したり、PanasonicがDLNA対応を打ち出したりといった、新しい規格への対応を積極的に行なっているのに比べると、X5では独自機能の充実に力を注いでいるといった印象を持つ。

 Wチューナ搭載機として競合するのは、PanasonicのDIGA「DMR-E330H」と「DMR-E220H」だが、これはハイエンドモデルではない。競合しつつも微妙な棲み分けが行なわれているわけで、買う方としてはなかなか悩ましいところだ。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2004_09/pr_j2803.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/dvd/j/lineup/hdd/rd-x5.html
□関連記事
【9月28日】東芝、GR機能付きダブルチューナを搭載した「RD-X5」
−DVD-RのVRモード録画に対応し、ネットワーク動画配信も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040928/toshiba2.htm
【4月27日】ハイブリッドレコーダ「RD-X4」の機能拡張キットを試す
−DEPGやフォルダ機能の追加でX4は真の姿に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040427/toshiba.htm
【2003年12月18日】【新プ】216MHzビデオDACを搭載するRDシリーズ旗艦
東芝 「RD-X4」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031218/npp61.htm

(2004年12月1日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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