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地道に進歩した高音質/高機能プレーヤー バーテックスリンク 「iAUDIO 5」 |
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発売日:2月1日 標準価格:オープンプライス 実売価格:18,000円(256MB) 23,000円(512MB) 28,000円(1GB) |
■ “shuffleショック”以降のフラッシュプレーヤー
iPod shuffleの登場後、フラッシュオーディオプレーヤー市場にも大きな変化が訪れている。まずは、この10日間以内にクリエイティブ、アイリバー、バーテックス リンク、Rio、アドテックと、主要メーカーが相次いでフラッシュプレーヤーの値下げを発表。改めてiPod shuffleの価格(512MB 10,690円/1GB 16,980円)のインパクトを感じさせる。
そうした「shuffleショック」の最中に発表されたのが、バーテックス リンクの「iAUDIO 5」。高音質で定評のあるiAUDIOシリーズの新モデルで、昨年2月に発売されたiAUDIO 4の後継機種となる。
内蔵メモリの違いで3モデルが用意される |
なお、iAUDIOブランドのシリコンオーディオプレーヤーは充電池採用の小型モデル「iAUDIO U2」と単3電池採用の「iAUDIO G3」が用意されているが、このiAUDIO 5は単4電池を採用している。
iAUDIO 4といえば、バーテックス リンクがCOWONのiAUDIO製品を扱い始めた第1弾製品で、高音質と大型液晶が魅力のプレーヤーだった。後継機ではiAUDIO 4の基本機能を引き継ぎつつも、OGG Vorbis対応やインターフェイス周りの使い勝手を向上させるなどの機能強化を図っている。
価格は256MBが18,000円前後、512MBが23,000円前後、1GBが28,000円前後とiPod shuffleと比べると割高。もっとも液晶ディスプレイ付きでMP3ライン録音、ボイス録音などの機能を充実させていることを考えると、shuffleよりは、一斉に値下げを行なった各社のハイエンドフラッシュプレーヤーが直接の競合製品となるだろう。
ボディカラーは256MBモデルがルビーレッド、512MBモデルがブルートパーズ、1GBモデルがプラチナブラックとなる。今回は1GBモデルを使用した。
■ 高級感と扱いやすさを増した新筐体
同梱品 |
同梱品は、ヘッドフォンやネックストラップ、ラインケーブル、USBケーブル、USB接続ジャック、本体ケースなど。
アクリルを配したフロントパネルは高級感があり、角を残したスクエアなデザインのiAUDIO 4よりだいぶスタイリッシュになった。外形寸法は35×18×76.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は28g(本体のみ)と、最近のオーディオプレーヤーとしてはさほど小さくも無いが、背面の角をスッキリと落としたことにより、手に取ったときやポケット収納時の収まりはかなり良い。
液晶は128×64ドット表示の大型のもので、左側に再生曲名やビットレートなどのファイル情報を表示、右側に再生レベルや曲数、再生モードなどの再生情報を表示する。iAUDIO 4の最大の特徴ともえいる大画面を継承しながら、新たにバックライト点灯のカラーバリエーションを、124色から1,000色以上に増やしている。iAUDIO 4の発売から約1年経つが、情報の一覧性においては間違いなく現在もトップレベルといえるだろう。
操作ボタンは、本体上面に曲送り/戻りと、再生/一時停止操作が行なえるジョグボタンを備えるほか、MODEボタン、RECボタン、HOLDスイッチを装備。iAUDIO 4ではシーソーボタンを採用していたが、ジョグボタンとなったことで曲送り/戻しなどの操作感はわかりやすくなった。また、底面にはMENU/ボリューム用のジョグボタンを備えている。
ヘッドフォン出力端子のほか、ライン入力端子も装備。マイクやFMチューナも内蔵している。キャリングケースは透明な素材を利用したもので、雨合羽のようなデザインだったiAUDIO 4よりは大幅な進化が感じられる。
iAUDIO 4を踏襲した4行表示の大型液晶 | MENUボタンはボリューム兼用となっている | MODEや再生停止ジョグボタンなど |
ヘッドフォン出力とライン入力を装備 | 電源は単4アルカリ電池 | カバーを外すとUSB 2.0端子があらわれる |
背面。角が取れて持ちやすくなった | クリア素材を使ったキャリングケースを採用した |
iPod shuffle(左)、iriver iFP-890(右)との比較 |
■ 大型液晶は魅力的。操作体系には若干古さも感じる
ボタン形状は変更されたが、基本的な操作体系やメニューの基本構成はiAUDIO 4とほぼ同一。モードボタンを押すと、「MP3 Player」、「FM Radio」、「VoiceRecorder」、「Line-In Recorder」の4つのモードが表示される。音楽再生を行なうときは、MP3 Playerを選択する。
モード選択画面 | JetShell |
オーディオプレーヤーとしては、MP3/WMA/WAVEのほか、新たにOGG Vorbisに対応した。ビットレートはMP3が8~320kbps(VBRは 平均48~256kbps)、WMAが20~192kbpsをサポートし、WMA DRMにも対応する。
USBストレージクラスに対応しているので、iAUDIO 5のMUSICフォルダにデータを転送すればオーディオデータの転送が行なえる。新たにUSB 2.0になり転送速度も向上したほか、iAUDIO 4では電池ケースを開けなければ接続できなかったUSB端子が、下部のフタを開けるだけでアクセスできるようになったなどPCとの接続性は大幅に向上した。また、付属のソフトウェア「JetShell(英語版)」やWindows Media Player 10などからのオーディオ転送にも対応する。
英語版ということもあり、個人的には特にJetShellを使う必然性を感じないが、Windowsのエクスプローラ的なインターフェイスで、フォルダの一覧性などはなかなか高いので、好みに応じて使い分けるといいだろう。
再生画面 |
128×64ドットの液晶ディスプレイを搭載し、音楽再生時には、液晶ディスプレイの左半分に再生曲名やビットレートなどのファイル情報を表示、右側に再生レベルや曲数、再生モードなどの再生情報を表示する。
フラッシュメモリプレーヤーのみならず、HDDプレーヤーを含めても表示情報量はトップクラスといえるだろう。また、バックライトもFM再生時やライン録音時、音楽再生時などに、それぞれにカラー設定可能で、一目でステータスがわかるという意味では面白い試みだ。
RGBの各レベルが10段階で設定可能なほか、バックライト設定もRGB各色のレベル設定ができるなどやたらマニアック。さらに、再生時にさまざまな色に点滅するモードも用意しており、「RainbowRunnner」と、「Shooting Star」の2つのモードが選択できる。改めて開発元のCOWONらがこの大型液晶をアピールしようと力を入れているのかが伺える。
再生時やFMラジオ、録音時、MENU画面、ナビゲーション画面、曲変更時などでそれぞれバックライト色を設定できる | バックライトのRGB調節も可能 |
しかし、操作体系については、わかりにくい部分もある。まず、初期状態でアルバム/曲選択のためにフォルダ階層メニューを出すには、再生中にMENUボタン(液晶下部)の長押しする。しかし、この押す時間が短いとJetEffectやPlaymodeなどの設定用のMENU画面になってしまう。
MENUボタンなので、設定メニューが出るのは当たり前なのだが、MENU操作よりはフォルダ移動操作の方が多く使うはず。それを知ってか、メニュー画面のGENERAL-MENU Bottonの項目で、押し込むとフォルダモードに、長押しでMENU呼び出しにも切り替えることもできる。
また、フォルダ移動時に液晶上の再生停止ボタンの左右ジョグが階層移動、液晶下のMENUボタンの左右ジョグが同一階層内の移動と割り当てられているののもやや疑問を感じる。慣れれば操作自体には問題はないが、2系統のボタン操作を考えながら直感的に操作を行なうというのは非常に難しい。特に混雑した電車などでは操作できそうにない。
フォルダ階層表示が可能 |
iAUDIO U2やiAUDIO G3などの製品では「5Direction Key」と呼ばれるキーに全ての操作をまとめることで、シンプルでわかりやすいインターフェイスを実現していた。iAUDIO 4のレビューでも「5D Keyの導入で、iAUDIO4のスイッチ式キーよりも使い勝手ははるかに向上している」と書いたが、iAUDIO 5でまたiAUDIO 4と同一の操作体系を採用してしまうとなると、時代が前に戻ってしまった印象が残る。
もっとも、5DKeyを省いてまで大画面液晶にこだわった製品、というのがiAUDIO製品ラインナップにおける、iAUDIO 5という位置づけなのかもしれない。
本体内でプレイリストを作成する[Dynamic Playlist]機能も搭載する。ナビゲーション画面で曲/フォルダを選択し、MENUボタンを押すとメニューが現われる。ここで[Add to List]から曲を追加していくと、パソコンを利用せずにプレイリストの作成が行なえる。なお、プレイリストをPCに書き戻すことはできない。
Add to Listで曲を登録し、DyanamicPlaylistとして読み出しできる |
■ 音質は非常に良好。BBEも効果を発揮
付属のイヤフォン |
音質はiAUDIO製品の大きなウリのひとつでもあるが、iAUDIO 5でも従来モデルと同様にBBEやMach3Bassなどの高音質化機能を搭載している。まずは、全ての機能をOFFにして素の音を聞いてみたが、バランスよく中高域の解像感も十分。付属のイヤフォンの性能も良く、買ってきてすぐに音のよさは確認できるだろう。
付属のイヤフォンは、後部が出っ張ったデザインのもので、おそらく従来製品と同じCresyn製と思われる。イヤーパッドをつけないとやや外れやすいのが難点ではあるが、目立ったクセもなく、しっかりとした音場表現が気持ちいい。
また、高音質化機能「BBE」など6つのサウンドエフェクト機能を搭載。再生画面からMENUボタンを押し、[JetEffect]画面から、7モードのプリセットモードを備えた「5 Band EQ」と、中高音を補い位相補正を行なう「BBE」、低域の末端周波数を補う「Mach3Bass」、MP3圧縮時のロスを補完する「MP Enhance」、擬似サラウンドの「3D Surround」、「Pan」などが選択できる。このあたりはiAUDIO 4とまったく同じだ。
新たに対応したOGG VorbisでもBBEなどは適用できる。ただ、高音質化機能をOFFにしていても、曲スキップしたときなどに曲頭がコンマ何秒か聞こえにくいことがある。このあたりはほかのフォーマットと比較するともう少し改善を要すところかもしれない。
BBEは10段階のレベル設定が可能となっているが、比較的低レベルでも、明らかな高域の伸びと解像感の向上が確認できる。特にチャンネルセパレーションの向上は目を見張るものがあり、クッキリとした音像を求める人には非常に面白いだろう。ただ、かけすぎると原音を大きく損なうこともあるので注意が必要だ。
個人的にはBBEとMach3Bassを2~5、もしくはBBEを弱めにかけつつ、MP EnhanceをONという設定がどんなソースでも満足いくクオリティで楽しめると感じた。
いわゆるギャップレス再生については対応していないようで、ライブ盤などは若干曲間が開いてしまう。ただし、曲間はほかのギャップレス再生非対応のプレーヤーに比較して短めではある。
BBEなどの各種高音質化機能を搭載 |
ライン録音画面 |
また、ボイスレコーディングやライン録音、FM再生/録音にも対応。モードセレクト画面で、「FM Radio」、「VoiceRecorder」、「Line-in Recorder」などのメニューから各機能を呼び出すことができる。
「VoiceRecorder」では、内蔵マイクによりMP3形式での録音が可能。10段階のマイク感度設定が行なえ、ビットレートは96/112/128kbps。マイク感度も悪くなく十分使えるだろう。
「Line-in Recorder」も同様に96/112/128kbpsのMP3と、8/11/16/32kHzのWAVでの録音に対応。音声をもモニタしながら入力感度を設定できるほか、トラック間の空白を自動検出し、個別ファイルにするAuto Sync機能も搭載。0(OFF)から8までのレベル設定が用意されているなど機能的には十分。MP3 128kbpsの録音品質もリアルタイムエンコードとしては十分満足いくものと感じた。
FM Radioは、オートスキャンで自動選局が行なえ、簡単にFM受信が可能。ライン入力録音などと同様に、96/112/128kbpsのMP3形式で録音もできる。
電源は単4アルカリ電池で、バッテリ駆動時間は20時間。実際に連続再生したところ19時間弱で再生停止した。
■ 高機能/大画面が魅力のフラッシュプレーヤー
地道なアップデートといった印象で、1年前にiAUDIO 4を触ったときのような鮮烈なインパクトは無い。しかし、USB端子の改善などで使い勝手は向上しているし、堅実なアップデートという印象を受けた。
しかし、他社製品はもとより、iAUDIOシリーズに限ってもシリコン系だけでもiAUDIO U2/G3というラインナップがあり、その中でiAUDIO 5だけの決定的なアドバンテージといえば液晶画面ということになるだろう。iAUDIO 4のユーザーや大きな表示画面に魅力を感じるユーザーにとっては、音質の良さや機能の豊富さも含め、相変わらず魅力的な製品と感じる。
個人的にUSB充電/充電池の製品が用途に合っているということもあるが、操作体系も含めてiAUDIO U2の方が好みではある。多くの競合製品の中、大型液晶や音質をどこまでアピールしていくかが、製品の売れ行きを左右するポイントになりそうだ。
また、多機能なiAUDIO 5の操作をしてみると、先週レビューした「iPod shuffle」の潔いまでのシンプルさが懐かしくも感じられた。iAUDIO 5のように「ユーザーにアクティブにアクションを起させる」ということは、それだけ多くの情報を提示し、それにアクセスする手段をしっかり提供しなければならないということでもある。慣れれば操作は苦痛ではないのだが、「1ボタンでとりあえずアクションが起こせる」という点が、オーディオプレーヤーに重要な要素だと改めて感じた。そういった意味ではiAUDIO 5のインターフェイスにはもう少し洗練されたものになって欲しいと感じる。
もっとも、シリコンプレーヤーで最大級の液晶を搭載し、フル機能を装備したiAUDIO 5は単機能なiPod shuffleの対極にある製品といえる。そうした意味では2極化する市場を表す象徴的な製品のひとつといえるのかもしれない。
□バーテックスリンクのホームページ
http://www.vertexlink.co.jp/
□iAUDIOホームページ
http://www.iaudio.jp/
□製品情報
http://www.iaudio.jp/product/iaudio_5/
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(2005年1月28日)
[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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