■ ドキュメンタリー映画が盛り上がる中で
そんなドキュメンタリー映画が盛り上がる中で、2004年11月に日本公開されたのが、「スーパーサイズ・ミー」だ。この映画は、2004年サンダンス映画祭でドキュメンタリー部門賞受賞したほか、2005年アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネート。日本では、2004年12月に全国公開され、公開館は約80館を数え、ミニシアターの観客動員で7週連続の1位を記録したという。 とはいえ、単館系での公開だったので、観たくても観れなかった人もいるだろう。その意味でも期待されたDVD化だが、最近のハリウッド映画のDVD化のペースと比較すると遅めの2005年7月8日に、DVDがリリースされた。 価格は、特典ディスクとの2枚組みで3,990円と、ハリウッド大作ではない地味な映画のDVDとしてはお手頃な設定だ。ケースはAmary Double仕様となっている。また、「解毒メニュー レシピ ☆ブックレット」も同梱されている。 ちなみに今回、カメラ量販店に購入しに行ったところ、たまたま3,110円と約22%引きで、それにポイントが10%還元という、嬉しい誤算があった。
■ 30日間マックだけ食べると、かなり体調が悪くなるらしい 2002年、実家で感謝祭の休暇を過ごしていたモーガン・スローバックは、テレビニュースで、肥満症に悩む少女二人が「太ったのはハンバーガーが原因」とマクドナルド訴えたことを知る。 その訴えに、マクドナルドのスポークスマンは、「自社の提供する食品の栄養バランスと肥満との間に因果関係は全く無い」とコメント。さらに「我々の食品は非常に栄養価も高くヘルシーです」とも語る。そこでモーガンは、「そんなに栄養があってヘルシーならば30日間食べ続けても身体に害はないだろう」と思い、「どちらの言い分が正しいのか証明してみよう」と、「1日3食×1ヶ月間マクドナルドを食べ続ける」という実験を閃く。 まず、実験前の健康状態を記録。さらに、実験の最中も定期的に3人の医師の診断と、栄養士の指導を受けて体の変化を記録していく。彼の体に起こる変化を通して、肥満が深刻な社会問題となっているアメリカの現状と、現代食生活に潜む根深い問題に、独自のアプローチで疑問を投げかける。 今回の実験を行なうにあたって、以下の4つルールが設定された。
監督はモーガン・スパーロック、撮影監督はスコット・アンブロジー。内科医のダリル・アイザック、心臓と肝臓が専門のリサ・ガンジュ、心臓が専門のスティーブン・シーゲルの3人の医師が協力。さらに、モーガンの婚約者アレックス・リビングストンも登場する。アレックス・リビングストンはベジタリアン・シェフで、肉食を忌み嫌っているのが面白い。 最初は3人の医師も、せいぜい体重やコレステロール値が多少増えるだけのことだと考えていたのだが、どんどん検査値が悪化。ついには、ドクターストップがかかるが、モーガンは実験を続行する。モーガンは、ドクターストップを受けて兄に相談すると、「人々は、それを食べているんだ。あと9日間、食べ続けても死にはしない」。その言葉に納得して、続ける決心をする。その話を母親にすると、「勇敢と愚かは紙一重」といわれたが、「毎日、その境界線を歩いている」と答えたという。 本編の中で、ファーストフードのメニューのサイズがどんどんサイズが大きくなっていることが指摘される、1.9リットルのドリンクもあることに驚かされる。また、マクドナルドでは、週一回の利用者を「ヘビーユーザー」と分類し、全利用者の72%を占めるという。さらに、週3~4回の利用者を「スーパーヘビーユーザー」と呼び、全利用者の22%と示される。中毒性があることが伺える。 この映画では、30日間の実験を主軸に、米国の食生活の問題にも迫っていくのだが、そちらの方は、ムーア監督のような迫力はなく、腰砕け気味。つっこみの甘さが目立ってしまう。やりたいことはわかるのだが、実験か、当事者への直撃取材のどちらか一歩に絞った方が、主題がハッキリしたように思う。
■ 10週間放置でも買いたての「マックポテト」
DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4で見た平均ビットレートは5.63Mbps。片面1層ということもあって、最近のDVDとしては低めだ。映像はビスタサイズをスクイーズ収録。画質はビットレートが低めなことに加え、元の映像自体が、ノイズが多く、色もにじんでいる。一瞬フォーカスの外れたシーンもあり、劇場公開された映画とは思えない。DVの様な色のりの悪さと、フィルムの様な粒状感を併せ持っている画質だ。画質を期待するようなDVDではないだろう。 さらに映像には、ちょこちょこと傷が見られる。DVDの注意書きには、「映像や音声の一部に乱れが生じる箇所がありますがマスターテープに起因するものです」とあり、この点でも最近の映画とは思えない。 音声は、英語をドルビーデジタル4.0ch、日本はドルビーデジタル2.0ch(ドルビーサラウンド)。ビットレートは、それぞれ448kbps、192kbpsで収録されている。 音質の方も、評価するようなものではないが、4.0chという最近では珍しい形式。リアチャンネルもほどん使われていない上、センターチャンネルがないのでストレートデコードだと聞き取りづらい。一方で、日本語吹き替えは、ボイスオーバー形式なので、雰囲気を損なわなず、ドルビーサラウンドなので聞きとりやすい。これらの点から、日本語吹き替えでの視聴をお勧めしたい。 本編のチャプタ数は25。チャプタメニューが、何日目というカレンダー形式になっているのが面白い。
特典ディスクには、「DVDのイントロダクション」(約45秒)、「未公開シーン集」(4本、計約7分)、「インタビュー集~アメリカの現代食生活を考える~」(約45分)、「ドキュメント映像“恐るべきフライドポテト”」(約5分)、「監督来日記者会見」(約11分)、「オリジナル本国版劇場予告編」(約1分)を収録。 未公開シーン集(英語音声、日本語字幕)は、「ゴミ袋13個分」(20秒)、「モリー・カナディ(腹腔鏡手術経験者)」(約1分10秒)、「摂食障害者のための自助グループ」(2分34秒)、」ボブ&マイラ・バゥアー夫婦(マクドナルドグッズ収集家)」(約2分21秒)の4本。今回の30日の実験で、事務所にたまったゴミが13袋にもなったことなどが明かされる。 インタビュー集(英語音声、日本語字幕)は、「ファーストフードが世界を食いつぶす」の著者エリック・シュローサー(約25分)、スーパーマーケット顧問フィル・レンパート(約4分10秒)、体育教師のフィル・ロウラー(約7分)、ビッグマックマニアのドン・ゴースク(約3分)、デザイン集団マクドナルド・プロジェクト(約3分30秒)、なんでもフライにして提供するレストラン「チップ・ショップ」(約3分10秒)の6本。 エリック・シュローサーは、40~50の添加物が入っているシェイク、ハンバーガーのパテが、海外を含む数千頭の牛肉を混ぜ合わせたものであり、製造されてから冷凍され数ヶ月後に出荷されていることを指摘する。しかし、徹底的に研究されたファーストフードは“おいしい”と、警鐘を鳴らす。 本編にも登場する、ビッグマックマニアのドン・ゴースク(約3分)の職業は刑務所の看守。一日最高25個のビックマックを食べ、常に自宅にもビックマックを常備するビックマックマニア。ポテトはほとんど食べない。体はいたって丈夫。彼の妻は新婚当初は料理していたが、夫の食事をマックだけにしたいとの申し出を了承したという。 また、映像特典のなかで最も興味深かったのが、“恐るべきフライドポテト”(英語音声、日本語字幕)だ。ビックマック、フィレオフィッシュ、フライドポテトなどのマック商品と他社商品の腐敗していく状況を観察する。2日程度で変化していくモノもあり、1週間もすればほとんどの商品が腐敗。食事中には絶対見ないほうがいい映像が繰り広げられる。そんな中、なんとマックポテトは10週間を経ても、外見上は買ってきたままを保っている。比較に用意されたレストランのフライドポテトはすぐに腐ったのに、いったいマックポテトにはどんな技術が施されているのだろう……。 監督来日記者会見(英語音声、日本語字幕)では、本編にも登場する婚約者が同席。監督自ら被験者になったことには、「自分のやりたくないことを人に頼めない」と説明する。「解毒メニューは50日間続け、体の機能を戻すのに2ヶ月、体重を戻すのに14ヶ月かかった」と話し、実験の影響はかなり大きかったようだ。 現在、ドキュメンタリーが世界中で受けていることについては、「メディアが真実を伝えていないから。表現の自由が唯一の残されているのが、ドキュメンタリーの世界だ。世界中をこの映画の宣伝で回っているが、どの国でも僕を拒絶するメディアが必ずある。ハンバーガーやポテトを売っている会社が、情報を操作し、真実を隠す力を持っているのだ。他にも力のある企業が真実を隠しているだろう。スポンサーが許可する範囲で、表現の自由が許されているだけなのだ」と語る。
■ 観ておいて損はない 画質や音質は、いかにも個人で製作したようなレベルだが、3,990円とマイナー作品のDVDとしては買いやすい価格設定がされている。内容についてもも、当事者への迫り方が弱い部分もあるが、観ておいて損はない。実際、この映画が米国の食品業界に、大きな影響を与えたようだ。ただ当然ながら、この映画の内容もまた、モーガン監督から見た一面でしかないということには、気をつけたい。 モーガン監督は、この映画を50カ国以上で公開し、65,000ドル以上を稼いだという。今後は、この映画の続編のような、テレビシリーズを製作予定。毎回社会問題を取り上げるとしている。
□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ (2005年7月12日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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