~ 24bit/96kHzアップサンプリング機能の実力は? ~ |
X-Fi Elite ProのPCIカード(左)とブレイクアウトボックス(右) |
24-bit Crystalizerを有効にし、度合いを0~100%の間で設定 |
これはX-Fiが持つ3つのモード、つまりゲームモード、エンターテインメントモード、オーディオクリエーションモードのいずれでも利用することが可能で、その設定はいたって簡単。24-bit Crystalizerを有効にするとともに、その度合いを0~100%の間で設定するだけ。
ただ、このように設定するだけで、添付のプレイヤーソフトであるMediaSourceプレイヤーでも、Windows Media Playerでも、WinAmpでも24-bit Crystalizer機能を利用できるようになっている。ただ、ここで最初に疑問に感じるのが0~100%の設定って何だ? ということ。これについて特に明記されていないのだが、24-bit Crystalizerの効き具合、つまり「補完をいかに強力に行なうか」ということのようだ。
そこで、さっそく手持ちのCDを再生して、24-bit Crystalizerを有効にし、設定を0~100%までいろいろと試してみた。結果はというと、確かに音が変化するのだが、滑らかになるというよりも、イコライザをかけているような感じだ。
かける曲にもよるが、設定具合としては50%か、それ以下くらいが無難。この程度のレベルで適用すると、確かに聞き心地がよくなったように感じる。しかし、100%など強めに設定すると、イコライザで作った音といった感じで、多少違和感を感じる面もあった。
「再生リダイレクト」の音を録音可能 |
この24-bit Crystalizerでは、いったい何が行なわれているのだろうか? ちょっと実験してみた。前述したとおり、これを有効にすると、すべての再生音に対して24-bit Crystalizerが掛かる。その音はSound Blaster X-Fiのアナログおよびデジタル端子から出力されるので、これをキャプチャすることで、結果の信号をとらえることができる。
もっとも、そうした端子を使うまでもなく、従来からSound Blasterシリーズには「再生リダイレクト」の音を録音するという機能があり、これを用いれば、もっと簡単に効果をかけた音を捉えることができる。
一方、CDに限られるが、MediaSourceオーガナイザーというジュークボックスのライブラリ管理ソフトには「スーパーリッピング」というものが用意されている。このスーパーリッピングではCDの音をリッピングする際に、16bit/44.1kHzのWAVファイルやMP3ファイルを作るのではなく、24-bit Crystalizerを利用して24bit/96kHzにしたり、CMSS-3Dを用いて5.1chのサラウンドサウンドに仕上げることができる。また、その結果はWAVのほか、Windows Media Audio LosslessやWindows Media Audio Professionalなどで保存することが可能になっている。
スーパーリッピングでは、CDの音の24bit/96kHz化や、CMSS-3Dを用いた5.1ch化が行なえる | Windows Media Audio LosslessやWindows Media Audio Professionalなどでの保存も可能 |
これを利用して、WAVファイルなどを作成してしまえば、あとはX-Fiがなくても24-bit Crystalizerの効果を楽しむことができるというのがポイント。また再生リダイレクトを使うと、どうしてもSound Blaster X-Fiのミキサーを経由することによる音質変化の可能性が出るが、スーパーリッピングならそうした心配もなさそうだ。ただし、スーパーリッピングにおける24-bit Crystalizerの設定は高、中、低の3段階しかない。
4kHzのサイン波で実験 |
というわけで、実際に波形がどのように変化するのか、スーパーリッピングを利用して試してみることにした。素材としては、サイン波を利用し、その波形変化などを見た。まず、サイン波を16bit/44.1kHzのステレオで生成し、それを音楽CDとして焼く。その後、スーパーリッピングを用いて24-bit Crystalizerをかけて、WAVファイルに保存し、その波形を確認した。
サイン波の周波数をいくつか設定してみたが、波形編集ソフトで見た際、ドットの打たれ具合いが非常に粗くなる4kHzあたりが分かりやすそうなので、これで実験した。
まず、これをスーパーリッピングでリッピングする際、24-bit Crystalizerを有効にするとともに、「高」に設定し、24bit/96kHzのWAVファイルとして出力。それをSoundForgeで表示した結果、確かに非常に滑らかな波形になっている。試しに、24-bit Crystalizerを無効にした場合でも24bit/96kHzで保存されるので、それも同様に表示した。しかし、この2つを見比べてもほとんど差はわからない。とくに24-bit Crystalizerを使わなくても、それなりに波形はキレイに処理されるようだ。
24-bit Crystalizerを「高」に設定 | 24-bit Crystalizerを無効にした場合 |
SoundForgeのリサンプリング機能などで24bit/96kHz化してもキレイに処理される |
ちなみに、このSoundForgeのリサンプリング機能などを用いて24bit/96kHz化しても、やはり同様にキレイに処理され、16bit/44.1kHzでのギクシャクした感じはなくなる。この結果もスーパーリッピングで処理したものと、見た目上違いはわからない。もっともSoundForgeのこの機能は定評のあるもので、かなり高精度なリサンプリングであるといわれている。
では、24-bit Crystalizerを有効にした場合と無効にした場合について、直接波形で見るのではなく、周波数分析して、成分を調べると面白い結果になった。有効にすると、4kHz以外の周波数成分がいろいろと含まれている。やはりこの結果からも、波形を滑らかにつなぐというよりも、聴感上、聞き心地がよくなるように、なんらかの処理がされているようだ。つまり24-bit Crystalizerはひとつのエフェクトであると捉えたほうがいいのかもしれない。
24-bit Crystalizer「有効」 | 24-bit Crystalizer「無効」 |
なお、この実験をする上で、ちょっとしたトラブルがあった。それは、スーパーリッピングで生成したWAVファイルを、そのままSoundForgeをはじめとする波形編集ソフトで開くことができなかった。ただWindows Media Playerでは再生できたので、独自のコーデックになっていることがわかった。
そこで、X-Fi標準バンドルの波形編集ソフト、WaveStudioで開くと、うまく読み込むことができ、これを通じて通常のWAVファイルほか、別のフォーマットへ変換することができた。そのため、一旦、WaveStudioを介して、SoundForgeへと読み込ませて実験を行なった。
しかし、ここにきて、ようやくSoundFont機能が強化された。従来のものと互換性を保ちつつ、24bit化がなされ、高音質でのプレイが可能になった。
もっとも、見た目上はそれほど違いは認識できない。SoundFontを読み込むためのSoundFontManagerは見た目こそ多少変わったものの、機能自体は従来のものを踏襲している。同様に、SoundFontを作るためのVienna SoundFont StudioはVer 2.4となっているが、やはり基本はほとんど変わっていないようだ。ただし、ともに24bitのサンプリングデータの扱いが可能になっているのがX-Fiの特徴といえる。
SoundFontManagerの機能は従来のものを踏襲 | Vienna SoundFont StudioはVer 2.4となったが、基本はほとんど変わらない |
では、これらSoundFontを使った音源はというと、従来どおり、Synth AとSynth Bの2系統、つまり16ch×2のデバイスを利用できるのだ。しかし、ここでちょっと面白いのが、この2つのシンセサイザともに、3DMIDIという機能に対応しており、2chであっても立体的に、どこから音を出すのかを設定することができるようになっている。
といっても扱い自体はいたって簡単。まず、オーディオクリエーションモードで、3DMIDIのタブをクリックするとその16ch×2=32chのパラメータが表示される。ここで3Dと書かれたところをクリックすると3Dパンが現れ、音の出る位置を調整できるようになっている。5.1chなどのサラウンドスピーカーを用いている場合は、まさに立体的な音となるし、2chスピーカーやヘッドホンの場合でも、CMSS-3Dを利用して、前後左右、好きな方向から音を出すことができる。
Synth AとSynth Bの2系統を利用できる | 3DMIDIのタブをクリックするとその16ch×2=32chのパラメータが表示される | 3Dパンで、音の出る位置を調整可能に |
このオーディオクリエーションモードは見てもわかるとおり、従来のAudigyなどと比較すると、かなり強力なレコーディング機器として利用可能な設計になっており、EMU1820MやEMU0404のミキサーコンソールとも近い感じだ。もっとも、実際に触ってみると、ミキサーコンソールの機能としては、EMU1820Mなどのほうが自由度は高く、それらを超えるものにはなっていない。とはいえ、X-Fiの強力なDSPを用いたエフェクトが10種類用意され、ユーザーインターフェイスもAudigyのものに比較すると大きく向上している。
X-FiのDSPを用いたエフェクトが10種類用意され、ユーザーインターフェイスもAudigyに比べ大きく向上 |
そして、これらを各チャンネルごとに設定してかけることも可能になっている。なお、最上位機種であるSound Blaster X-Fi Elite Proには、音楽制作ソフトとして、Steinberg Cubase LE、Steinberg WaveLab Lite、IK Multimedia Amplitube LEの3ソフトがバンドルされている。
Steinberg Cubase LE | Steinberg WaveLab Lite | IK Multimedia Amplitube LE |
Audigy2まではDAWソフトとしてCubasisVSTがバンドルされていたが、限定販売だったAudigy4以降、このCubase LEに変わっている。Cubaseをご存知の方なら、ユーザーインターフェイスを見ればわかるとおり、これはCubase SX 1.0をベースに機能を削減したり、プラグインの数を減らしたもの。CubasisVSTと比較すると、圧倒的に使いやすくなるとともに、機能的にもかなり強化されている。
また、WaveLab Liteは2.6というバージョンであり、従来のものとあまり大きくは変わらない。そして、Amplitube LEは真空管アンプシミュレータとして人気の高い、Amplitudeの機能限定版。これはCubase LEでもWaveLabでも利用できる。
以上、Sound Blaster X-Fiについて見てきたがいかがだっただろうか? X-FiはEAX 5.0というゲーム用の強力なAPIを持っていたり、CMSS-3Dというユニークなサラウンド機能を持っていたり、DVD-Audioの再生機能を備えるなど、紹介できていない機能も数多くあるまさにオールラウンドなサウンドカードだ。
オーディオインターフェイスではなく、多機能サウンドカードとしては、いまやSound Blaster以外に新しいものは存在しないことを考えてもX-Fiは新たなデファクトスタンダードとなることは間違いないだろう。
□クリエイティブメディアのホームページ
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□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12186
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(2005年10月17日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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