~ ゲームやDTMにも生かされる高い処理能力 ~ |
Creative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサを採用 |
クリエイティブの「Sound Blaster」シリーズが4年ぶりのメジャーモデルチェンジとなった。2001年に「Live!」から、「Audigy」になって以来、「Audigy2」、「Audigy4」とマイナーチェンジを重ねてきたが、今回DSPに「Creative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサ」を採用し、新たな「Sound Blaster X-Fiシリーズ」として登場した。
メーカー直販価格で42,800円の最上位モデルから、15,800円の下位モデルまで4ラインナップが揃っており、Audigyの機能を踏襲しつつも、新たな機能が数多く加わった。そこで、このX-Fiについて2回に分けて紹介する。今回は主にそのハードウェア面を検証した。
Sound Blaster X-Fi Elite Pro(42,800円) | Sound Blaster X-Fi Fatallty FPS(29,800円) |
Sound Blaster X-Fi Platinum(22,800円) | Sound Blaster X-Fi Digital Audio(15,800円) |
Elite Proのパッケージ |
今回は最上位モデルであるElite Proを借りてレビューする。なお、4モデルともCreative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサを搭載したPCIカードを中心に構成されたシステムとなっているが、PCIカード自体は同じものというわけではない。
PlatinumとDigital Audioのみは共通のものを使っており、計3種類のカードが存在し、カードによって微妙に端子が違ったり、S/Nが異なる。また、Digital Audioのみは海外にはない日本オリジナルの製品となっている。
メーカー資料によれば、Elite Proのアナログ出力のS/Nが116dB、Fatallty以下3製品は109dBとなっており、いずれも7.1chをサポートしている。また、高性能なサンプリングレートコンバータのエンジンを搭載しているのも、X-Fiの大きな特徴のひとつで、THD+Nで136dBを実現しているという。
また、そのサンプリングレートコンバータを介さないBit-Accurate(ビットアキュレート)デジタル入出力にも対応しているので、デジタルソースに関しては劣化させずに取り込むことも可能だ。
今回のSound Blaster X-Fiの最大のポイントである、Creative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサは5,100万を超えるトランジスタを搭載し、1秒間に100億回以上の処理を可能にしたというプロセッサだ。IntelのCPUでいうと、3.4GHzプロセッサをオーディオ専用に組み込んだのに相当するパワーを持っているという。また従来のAudigyプロセッサと比較すると24倍以上のパワーを持っている。
とはいえ、「サウンドカードにそんなすごいDSPを積んで何をするんだ? 」という疑問もある。実際DSPといえるプロセッサなど搭載していない高性能オーディオインターフェイスも数々ある。
その答えは、やはりX-Fiの多機能性にある。単なるオーディオインターフェイスではなく、ゲーム用、オーディオリスニング用、デジタルレコーディング用などいろいろな用途で利用できるマルチカードであり、そこで利用するさまざまな機能にCreative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサが利用されているのだ。
具体的にいえば、数多く搭載されているエフェクトやサラウンド再生のためのCMSS-3Dテクノロジー、また、ドルビーデジタル/ドルビーデジタルEXや、DTS/DTS-ESのデコーダ、そして次回詳しく解説する予定の「24bit Crystalizer」などに、この演算パワーが利用されている。
ブレイクアウトボックスは従来よりもかなり大きい |
今回手元に届いたSound Blaster X-Fi Elite Proのパッケージを開けてみてまず驚くのが、ブレイクアウトボックスである「X-Fi I/Oコンソール」の大きさ。従来のLive!やAudigy時代のブレイクアウトボックスよりもかなり大きく、1Uラックマウントの約4/5というサイズ。
外形寸法は325mm×51mm×230mmで約1,700g。横置きのほか、付属のスタンドで縦置きも可能になっている。これとPCIカードの間を「AD_EXTケーブル」というちょっと太めのケーブルで接続する。
付属スタンドで縦置きも可能 |
X-Fi Elite ProとX-Fi FatalltyのPCIカード上には、ゲームアプリケーションが使用する、オーディオ処理専用のメモリ「X-RAM」64MBが搭載されている。
OSが管理するシステムメモリ領域とは別にX-Fi上に専用メモリを搭載することにより、ゲームオーディオのデータをCreative X-Fi Xtreme Fidelityオーディオプロセッサが直接処理。大量のデータであっても、スムーズかつ取りこぼしなく、再生をすることを可能にしている。
近年のゲームでは、そのアプリケーション自体がかなり重くなっている一方で、さまざまな効果音とBGMがサラウンドで再生され、しかもその音が重要性を持っている。決して、音が途切れたり、遅れが出てはならないものであるが、PCのCPUパワーだけではなかなか処理が追いつかないのが実情。それをX-RAMを利用することで解決しようというわけだ。
もうひとつ、カード上に見つけたのがAKMのA/Dコンバータ「AK5394AVS」。これはアドバンスト・マルチビット方式という⊿Σ変調器を採用し、216kHzまでのサンプリングレートに対応した24bit128倍オーバーサンプリングの2chA/Dコンバータだ。
ちなみに、X-Fi Fatallty FPS以下3製品ではWolfson MicroelectronicsのWM8775が採用されている。ブレイクアウトボックスであるX-Fi I/Oコンソールには、別途A/DおよびD/Aコンバータが搭載されているはずだが、ボックスを分解していないので確認はしていない。
出力端子のうち2つはステレオミニではなく、3ch出力が可能な4ピン端子 |
PCIカードには、X-Fi I/Oコンソールと接続するためのD-Sub端子のほかに、ライン/マイクイン兼用のミニジャック1つと、7.1ch出力のためのミニジャックが3つ搭載されている。出力端子のうち2つはステレオミニではなく、3ch出力が可能な4ピン端子になっているようだ。なお、X-Fi I/Oコンソールに搭載されているアナログ出力はヘッドホン端子のみ。
ステレオ出力だけでもRCA端子のものがあるとよかったが、従来のSound Blasterと同様そうした端子は用意されておらず、あくまでもPCIカード上のミニジャックのみになる。ただし、入力のほうは充実しており、フロントに標準ステレオジャックの入力が2つ、リアにRCAのステレオ入力がひとつ搭載されている。フロント入力は、LINE IN2/MIC IN2のライン/マイクイン兼用と、LINE IN3/Hi-Zというラインインとギターなどと接続のためのハイインピーダンス対応になっている。
ブレイクアウトボックスの背面 |
一方リアのはAUX IN2/PHONO INとなっていて、トグルスイッチで切り替えることができる。つまりフォノイコライザが内蔵されている。リアにはそのほかにも、S/PDIFのオプティカル、コアキシャルそれぞれの入出力、MIDIの入出力、Creativeのサラウンドスピーカーと接続のためのDIN端子のそれぞれが並んでいる。
フロントのコントローラとしてはミュートスイッチ付きのボリュームコントローラのほか、3DMIDI、EAX、CMSS-3D、24-bit Crystalizerの4つのつまみがならび、それぞれを押すことでオン/オフの切り替えができ、レベル調整が可能となっている。
ゲームユーザーにとって最も気になるのがEAX周りについて、X-FiではEAX ADVANCED HD 5.0というものがサポートされ、とくに3Dゲームにおいてリアリズムを実現しているとのこと。これはユーザー自身が使うのではなく、ゲーム開発会社が利用する機能ではあるが、主なものをあげると以下の6点だ。
ゲームモード | エンターテインメントモード | オーディオクリエーションモード |
オーディオクリエーションモードはDTM用で、モードを切り替えることにより、X-Fiの機能も変わる |
名前からも想像できるとおり、ゲームモードはゲーム用、エンターテインメントモードは主にオーディオのリスニング用、オーディオクリエーションモードはDTM用で、モードを切り替えることにより、X-Fiの機能も変わる。このモード切り替えは、画面上で簡単にできるのだが、切り替えるとリレースイッチが“カチッ”と鳴り、数秒後に各モードの画面になる。どんなときに、どのモードに切り替えるのかを考える必要があるという面では多少わかりづらいかもしれないが、ある意味必然的になっているので、それほど戸惑うことはないだろう。
たとえば、Sound Blaster X-FiではWDM、DirectXドライバに加えてASIOドライバが利用可能だが、ASIOが利用できるのはオーディオクリエーションモードのみなので、ASIOのレベル調整をする場合はこのモードに切り替える必要があるといった具合いだ。
ちなみに、このASIOドライバは、基本的にAudigy2やEMU 1820mなどと同様のもののようだが、バッファサイズをさらに小さくできるようになっており、44.1kHz/48kHzならレイテンシーは最小で1msecにまで設定できる。ただ、Peintium 4 2.4GHzのマシンでSONAR4を使い、44.1kHzのサンプリングモードで動かしたところ1msecに設定すると、音が若干途切れてしまい、2msecで安定した。
早速、いつものように入出力を直結しての測定を行なった。今回、Sound Blaster X-Fi Elite Proを使ってはいるが、X-Fi I/Oコンソールに入出力が揃っていないこともあり、PCIのカード内で入出力をステレオミニジャックで接続した。また、オーディオクリエーションモードで、使わない入出力をミュートするとともに、CMSSやEAX、24bit-Crystalizerなどはすべてオフの状態で実験した。
まず最初に行なったのは1kHzのサイン波の波数分析。ミニプラグでの接続なのでどうかと思ったが、これを見る限り、S/Nが非常によく、高音質といえそうだ。また、この直結時に何も音を再生しない場合のノイズレベルも非常に小さい。ここにおいても、かなりハイグレードのオーディオインターフェイスに匹敵する結果となっている。スウィープの結果も同様で、高域までしっかりフラットに出ているようだ。
1kHzのサイン波を周波数分析したものを見てもS/Nは良好 | 直結時に何も音を再生しない場合のノイズレベルも非常に小さい | スウィープ結果を見ても高域までしっかりフラットに出ているようだ |
またRMAAのテストについても行なった。X-Fiの場合、出力は192kHzにまで対応しているが、入力は96kHzまでなので、24bit/48kHz時と24bit/96kHz時の2通りで実験した。結果的には両方ともすべての項目がExcellentという好結果となった。
しかし実験を始めた当初、あまりいい結果にならなかった。その理由はマスターサンプリングレートの設定にあった。Audigyなどと同様、X-Fiにもマスターサンプリングレートの設定があり、48kHzと96kHzのいずれかを選択できる。通常、サンプリングレートコンバータが効くので、とくに意識する必要はないが、キッチリした再生、録音を行なうためには、これを設定しておく必要がある。当初ここの設定が適していなかったため、いい結果が出なかったようだ。しかし適切に設定すると、まさに最高の性能を発揮してくれた。
【お詫びと訂正】
記事初出時に、誤ったマスターサンプリングレートの設定で行なった実験結果を掲載しておりました。お詫びして、訂正いたします。
24bit/48kHz | 24bit/96kHz |
次回は各モードの使い勝手や24bit-Crystalizerの実力、また各種ユーティリティの使い勝手などについても検証する予定だ。
□クリエイティブメディアのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12186
□関連記事
【9月7日】クリエイティブ、新DSP「X-Fi」搭載のサウンドカード
-1,980円の「SB5.1」などラインナップを一新
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050907/creat1.htm
(2005年10月3日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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