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第43回:2005年「大画面世界一選手権」の勝者は? 【Samsung/LG電子編】世界最大の102型プラズマ、など |
毎年、恒例となった感もある、フラットテレビの大画面サイズ競争。今年のInternational CESでも「世界一」のキーワードが乱舞する熱い戦いが繰り広げられた。
■ LG電子~“出荷済み”の「世界一」!
● 現在入手可能な最大にして、唯一のフルHDプラズマTV「MW-71PY10」
「Available Now」が強調される「MW-71PY10」展示セクション。この文字はブースの入り口付近にも張り出されていた |
LG電子は今年の「大画面サイズ選手権(?)」にも当然参戦。「プロトタイプや試作機の大画面サイズ競争は不毛だ」と言わんばかりに、「Available Now(発売中!)」の文字を前面にアピールし、同社のフラッグシップモデルであり最大画面サイズの71インチのプラズマTV「MW-71PY10」の出展を行なった。
「売れもしない実験室出たての最大画面サイズや、売ってもいない“量産品で最大画面サイズ”には意味がない」と担当者は熱く語り、MW-71PY10は受注生産ながらも既にオーダーを開始したことを強調。LG電子特約店から注文が可能で順次納品を開始しているとのこと(出荷は3月以降という情報もあり)。価格は75,000ドル(日本円換算で約770万円)。
MW-71PY10は、そのサイズだけでなく、現在発売中のプラズマTVとしては唯一のフルHD解像度(1,920×1,080ドット)に対応した製品としてもアピールされた。昨年末までの発売中のプラズマTV製品としての最大画面サイズは松下の「TH-65DX300」が65インチであったが、解像度は1,366×768ドットの720pリアル解像度対応止まりであった。
プラズマTVの場合、各画素の発光効率の問題、各画素セルの隔壁の薄さの物理的限界などから50インチ前後の「売れ筋の大画面サイズ域」でのフルHD解像度(1,920×1,080ドット)の実現が難しいとされている。つまり、MW-71PY10も、現行技術の延長線でフルHD解像度のパネルを作ったからこそ70インチオーバーとなってしまっただけなのだ。
そこはそれ、「発売中のプラズマVとして最大画面サイズ」と「発売中のプラズマTVとしては唯一のフルHD対応製品」というキーワードを添えた、売り方の巧さが際だつ製品なのだ。
画作りとしてはプラズマTVらしく、明るさとコントラスト重視の傾向でまとめ上げられており、スポーツ中継や南国の風景などがハマる。発色の鮮烈さが物足りないがそういう向きの製品ではないのかもしれない。なお、去年のInternational CESにて参考出品となった76インチのモデルについてはラインナップ上から姿を消していた。
身長170センチ前後の米国女性が両手を広げたところ。これだけ大きい | 発売中のPDPでは唯一のフルHDにして最大画面。値段も最大級だが |
【MW-71PY10の基本スペック】
● 昨年同様液晶のフラッグシップはフルHD対応55型「55LP1D」
明るさのダイナミックレンジは幅広いので、出力映像自体にパワーはある。調整の追い込み次第では期待できそうだ。解像感についてはなかなかのレベルだ |
液晶TVの方でも毎年画面サイズを数インチずつ大きくしていたLG電子だが、2005年のフラッグシップは昨年から引き続き55インチサイズ止まりとなった。
解像度は当然のごとくフルHDの1,920×1,080ドットに対応。発売時期は2005年9月を予定。価格は未定。
液晶パネルはLG電子製の横電界駆動方式のS-IPS方式タイプを採用。視野角が非常に広く、明るさも圧倒的だが黒が若干浮き気味でコントラスト感に乏しく、色再現性にはさらなる調整を要する感じだ。量産試作機の形を取ってはいるが、詰めるところはまだまだありそうな印象を持った。
左右スピーカは15W+15W出力でSRS TruSurroundに対応する。北米仕様モデルはアナログNTSCチューナの他、ATSC/QAMのデジタルチューナを内蔵する。
【55LP1Dの基本スペック】
■ サムスン~「世界最大」の称号を今年も死守! 今年は100インチ超え!
● 100インチオーバーのフルHD対応プラズマTV「Z102」
ここ数年、「とにもかくにも世界最大」にこだわるサムスンは、ついに3桁の大台に乗る102インチプラズマTVの展示を行なった。
今年のInternational CESで混雑度が最大級となったSAMSUNGブース。とにかく身動きするのも大変 |
画面寸法は横約2.2m×縦約1.2m。画面解像度は1,920×1,080ドットのフルHD解像度対応。ここまで大きくすればさすがにPDPでもフルHD解像度(1,920×1,080ドット)の解像度を持てるわけで、結局のところ、一般公開されたプラズマTVとしては「世界最大サイズにして最大解像度」ということになる。
自発光の1枚映像パネルで100インチサイズは、まさに圧巻の一言。一般にPDPの場合、画面サイズを固定にしたままで高解像度化を行なうと画素セルのギャップや発光効率の悪さが目立ってくるのだが、大きさ方向に制限が設けられていないため、そうした問題は起こらない。画素サイズは大きくとれているのですさまじく明るいし、画素ギャップはあるにはあるが、102インチという大きさと自発光の強みからくる眩さによって、相対的に気にする余地がないほど。まさに大排気量エンジンによる高馬力出力ならではの醍醐味だ。
大きさを具体的にイメージさせるために、サムスンでは「50インチプラズマTVを“田”の字に4枚並べた大きさを思い起こして欲しい」というプレゼンを展開。画素サイズをイメージするには、ローエンドのプラズマTV製品でよく見かける、43インチ前後の856×480ドット製品の画素よりもやや大きいものを想像するといい。
これまではマルチビジョンでしか実現できなかったこの画面サイズを単一パネルで実現した意義は大きい |
Z102は「RGB各12ビット、フルプロセスによる687億色の色再現性」という触れ込みだが、これはあくまでサムスンのDNIe映像エンジンの内部演算精度であり、パネルの色の再現幅を表すものではない。しかし、これを、もし、色表現のダイナミックレンジ制御にも活かせるような映像エンジンに仕上げられれば、かなり面白いものになりそうだ |
画質性能面でのスペックは未公開となっているが、担当者の話によれば、後に紹介する80インチタイプの製品に準じた値か、あるいはそれ以上になる見込みだとのこと。発売時期および価格は未定。
画作りの傾向なのか、デバイスそのもののパワーが溢れているためなのかはわからないが、とにかく明るさが際だつ画作りなのが印象的。馬力を最大に活かしきったハイコントラスト性能のおかげで映像の立体感はすごい。ただし色再現性については、こちらもまだまだ工夫の余地ありという印象だ。しかし輝度方向のダイナミックレンジはすさまじいので、調整次第では幅広い色表現域の達成も夢ではないだろう。
【Z102の基本スペック】
● 昨年の世界最大モデル「HP-R8082」の価格と発売時期がついに決定
2004年のInternational CESの時点では「世界最大かつ唯一のフルHD対応のプラズマTV」として参考出品された80インチのプラズマTVだが、ついに具体的な発売スケジュールが決定された。
価格は50,000ドル(約513万円)。発売開始は7月を予定。LG電子の71インチプラズマTV「MW-71PY10」よりも画面サイズが大きいのに200万円以上安いのが、訴求ポイントとなる。
画面サイズが80インチ、解像度が1,920×1,080ドットということから、各画素サイズの大きさ、画面サイズのイメージは、ローエンドクラスの856×480ドット解像度の43インチプラズマだいたい4枚分を想像してもらえばいいだろう。
画質の傾向はZ102と似ているが、さすがに発売される製品の最終試作機ということもあり、映像そのもの完成度はHP-R8082の方が上だ |
【HP-R8082の基本スペック】
● 液晶の最大は57型に据え置いた「LN-R570D」。発売される製品では世界最大
プラズマTVは100インチの大台に乗せたサムスンだが、液晶TVの方は昨年と同じ57インチのフルHD(1,920×1,080ドット)対応モデル「LN-R570D」がフラッグシップで、レコードの更新はならなかった。なお、一般公開された液晶TVで、世界最大画面サイズ&フルHD対応を両立させたものは、CEATEC2004にて公開されたシャープの65インチ液晶TV(試作機のため型番なし)ということになる。
シャープの65インチ液晶TVは製品としての投入予定がなく、サムスンは「市場投入される製品としては」という限定条件付きで、LN-R570Dを「世界最大」宣言した。
価格は15,999ドル(約164万円)。発売時は6月頃を予定。輝度性能がすさまじく、明るいシーンは目に光の鋭い圧力を感じるほど。液晶TVとしては業界トップクラスの輝度性能600cd/m2は伊達ではない。この輝度性能に伴いコントラスト性能も高く、透過型の液晶TVとしては最大級の1,000:1以上を達成している。明暗のはっきりした映像では、かなりの立体感を感じ取ることができる。
液晶パネルはMVA方式液晶のサムスン独自改良版であるS-PVA方式を採用。液晶画素の応答速度は最良ケースで約8ms、最悪ケースでも約16ms以下となり、60fpsの表示応答速度に十分なポテンシャルを持つ |
【LN-R570Dの基本スペック】
● RGB-LEDバックライトのフルHD液晶TV「LN-R460D」を発表
このほかサムスンでは、RGBの3原色のLEDアレイをバックライトに採用した46インチ液晶TV「LN-R460D」の展示も行なった。これは仕様的に丁度ソニーのQUALIA005「KDX-46Q005」と拮抗する製品となる。
液晶パネルはQUALIA005で採用されサムスン製の同型液晶パネルを採用していると推測され、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応となっている。
色純度の高い、赤、青、緑、それぞれのLEDをマトリクス配置させたバックライトを光源とするこのシステムでは、各原色の表現幅を広く取れる特徴がある。そのため、各色の発色帯域を多少制限しても十分な色ダイナミックレンジが取れるため、任意の色温度設定でハイダイナミックレンジな色再現が行える。
ただし、新しくまだ少数派であり、こなれていないためにコストが高くつくというデメリットがある。また、数十~数百個のLEDをマトリクス配置させる製造コストもあり、一般ユーザには縁遠いものとされてきた。今回のこの仕組みを、コストダウン実現の上手い韓国メーカーがいち早く採用してきたことは、今後の液晶TVの動向を左右するものとして注目に値する。近い将来、大型液晶TVのかなりの割合がLEDバックライトシステムを採用するような業界動向を導いてくれるかもしれない。期待したいところだ。
価格は12,999ドル(約133万円)。発売時期は5月を予定している。
通常のCCFLバックライトの液晶とは違った、鋭い赤や鮮烈な緑の発色傾向が印象的な画作りとなっている。やや色温度が高めな感じで人肌の発色に冷たさが残るが、色温度調整の自由度こそがLEDバックライトシステムの醍醐味であり、これは調整可能範囲のはずだ |
【LN-R460Dの基本スペック】
□2005 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2005 International CES レポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ces2005.htm
【2004年1月9日】大画面☆マニア in CES 2004 その1
~ フラットディスプレイの大型化競争が加熱 ~
80インチ/1080pのPDP、57インチ/1080pの液晶TV
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040109/dg29.htm
(2005年1月8日)
[Reported by トライゼット西川善司]
= 西川善司 = | 遊びに行った先の友人宅のテレビですら調整し始めるほどの真性の大画面マニア。映画DVDのタイトル所持数は500を超えるほどの映画マニアでもある。現在愛用のプロジェクタはビクターDLA-G10と東芝TDP-MT8J。夢は三板式DLPの導入。 本誌ではInternational CES 2004をレポート。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化している。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。 |
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