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第62回:[CES特別編]おもしろネタ探訪編
~ Optomaの1080p対応DLP、ソニー55V型SXRDリアプロなど ~

 映像機器関連に限定すれば、今年のInternational CESのキーワードの筆頭は間違いなく「フルHD」だろう。とにかく、液晶も、プラズマも、リアプロも、フロントプロジェクタも「フルHD化」を前面に押し出している。

 そんなInternational CESで見つけた大画面ネタを、今回の一連の特別編の締めくくりとしてお送りする。


■ Optoma、フルHD 1080p対応単板式DLPの安価モデル「HD81」登場

Optomaブース

 シャープが1080pリアル対応の単板式DLPプロジェクタ「XV-Z20000」を発表したことで、何となくその陰に隠れた感じになってしまっていたが、その実力はシャープ以上という呼び声もあるのがOptomaの「HD81」だ。価格も10,000ドルを予定しており、フルHDフロントプロジェクタとしては、最安になりそうだ。

 HD81も映像生成パネルに画素単位の迷光低減技術である「Darkchip3」技術適用の0.95型DMDチップを採用する。

 光源ランプには300Wの高出力タイプを使用し、1400ANSIルーメンの高輝度性能を絞り出す。カラーホイールはNDグリーンフィルタを含んだ7セグメントタイプを採用し、色再現はRGBだけでなくCYMの補色光を絡めたBrilliant Color技術を利用しているという。ランプ駆動は5段階の輝度調整機能を搭載。公称コントラストでは6,000:1を達成。

 オールインワンの従来のOptoma製品と異なり、HD81ではプロジェクタ本体とデジタルビデオプロセッサ部分が分かれているのも特徴的。プロジェクタとデジタルビデオプロセッサは一本のケーブルで接続されるが、各AV機器とはこのデジタルビデオプロセッサと接続することになる。

OptomaのフルHD対応単板式DLPプロジェクタHD81。価格は10,000ドルを予定。発売時期は第二四半期を予定している 接続インターフェイスを集約させたビデオプロセッサ部。HDMI端子は3系統を装備

 実際に映像を見てみたが、1080pリアル対応からくる高解像感もさることながら、息を飲むようなハイダイナミックレンジ感溢れるハイコントラスト画質が素晴らしかった。暗部階調の描写力も単板式のわりにはがんばっている。日本でも、シャープのXV-Z20000よりも早く、そして安価に発売されれば、そのコストパフォーマンスの高さが評価されてかなり人気が出るのではないかと思う。

ハイダイナミックレンジ感あふれるコントラスト感と1ピクセル1ピクセルが描き出す高解像感がなかなか感動的。XV-Z20000の強力なライバルとなるはず


■ ソニーの82V型液晶TVの真ん中に継ぎ目があるってほんと?

 ソニーは、82V型のフルHD(1,920×1,080ドット)解像度のS-LCDパネルと「Triluminos」RGB-LEDバックライトシステムを組み合わせた82V型液晶HDTVの試作機を展示していた。

 この試作機は、すでに第一報で報じられているように、「xvYCC」準拠の色域に対応した最初の液晶TVとして紹介されている。ただ、展示されている試作機を注意深く見ていると、なにやら完成度の低さというか、いくつかの不自然さに気が付いた。

 1つ目は、中間色の発色が芳しくなく、階調表現に二次輪郭が出てしまうという点。色域は広いのかもしれないが階調解像度は極めて低いという、完成度が低いといわざるを得ない画質なのだ。

 2つ目は、画面中央を縦に突き抜けるような光線(見る角度によっても異なるが、中央からは緑色の線)が見えてしまう点。見ようによっては継ぎ目に見えてしまっていた。これらには理由があるのだという。

 まず1点目の色階調が今ひとつな理由は、Triluminosの最適化が十分ではないためだという。今回の82V型の液晶のTriluminosに実装においては、40V型のQUALIA005であるKDX-40Q005用のものを田の字状に配置して改造しただけのものであり、液晶ドライバとの連携の最適化が不十分であるというのだ。この82V型の液晶HDTVの試作機が製品化ということになれば、これは改善されるとのこと。

写真でも見える真ん中に走る緑色の縦線。これは実は偏光板の継ぎ目だった

 もう一点の「継ぎ目?」については、実際に偏光板に継ぎ目があることを明らかにしてくれた。液晶パネル自体は82V型の一枚液晶パネルで、カラーフィルタも82型に合わせたものを貼り合わせているのだが、透過型の液晶パネルで必要となる、パネルの表と裏にそれぞれ貼り付ける透過位相角を90度ずらした偏光板については82V型の一枚板を用意できなかったという。そのため、実際にこの偏光板については継ぎ目があり、この継ぎ目からLEDバックライトが漏れることで光線が見えてしまっていた。

 試作機とはいえ、ソニーの大型液晶HDTVの行く末を心配してしまったのだが、杞憂だったようだ。しかし、大勢の目に触れる技術デモとして、悪い方に誤解されるような展示するというのも、どうかとは思うが……。

LEDバックライトらしい赤表現の鮮烈さは既に高い完成度を誇る 色域の広さは体感できるのだが、その階調解像度の低さが目立っていた 左が従来の色域、右が従来の1.8倍もの色域を再現できる「xvYCC」基準の色表現。この例では中央の看板の赤の艶やかさの違いにその際を見ることが出来る。従来の色表現系では赤が朱色により気味となっていた


■ ソニー55V型SXRDリアプロ試作機

 ソニーは自社製反射型液晶デバイス「SXRD」をRGB三枚分映像生成エンジンに使用した55V型SXRDリアプロHDTVの試作機を展示していた。

 採用パネルは既発売の50V型、60V型のSXRDリアプロ、グランドベガにて採用されたものと同じ1,920×1,080ドットの1080pリアル対応0.61型SXRD。コントラストはプラズマを超える1,0000:1。応答速度は2.5msを達成しており、動きの速いアクション映画やスポーツ中継、プレイステーションなどの3Dゲームも残像を全く感じることなく楽しめるという。

 発売や価格に関しては全く未定だが、50V型と60V型が既にリリースされているのでそれらに準じた設定が行なわれる見込みだ。

液晶らしい滑らかな階調性と反射型液晶ならではのハイコントラスト感の両立は試作機ながらも高品位に実現されていた リアプロTVの弱点ともいわれる奥行きの深さは、構造のリファインにより、同社同型リアプロTVと比較して30%も薄型に成功したという


■ EPSON、LIVINGSTATIONからチューナ/スピーカを省略した高画質モニタ「CrystalPRO」

展示されていたのは上位モデルの65V型「LS65HD1」。Gシリーズとは異なり、スピーカが省略された関係で、映像表示面側部の額縁が大幅に細くなった

 エプソンブースでは12月20日より発売が開始された1080pフルHD解像度の「LIVINGSTATION Gシリーズ」からチューナ部やスピーカ部を省略したディスプレイモニタ「CrystalPRO」が展示されていた。

 筐体は新デザインとなり、Gシリーズ同様に55V型「LS55HD1」と65V型「LS65HD1」が用意され、価格は55V型が4,000ドル、65V型が4,500~5,000ドル程度になる。だいたい日本の同型LIVINGSTATIONよりも20万円ほど安いイメージだ。

 公称コントラストは、動的アイリスを組み合わせ時に5,000:1を達成。液晶パネルはD5世代。そのためか中明色の領域が覆う映像では、D5パネル採用のフロントプロジェクタ時のような縦縞の模様が見えることがある。


しっとりした液晶画質は健在。表示面のスクリーン材質の関係か、視聴位置によっては映像に妙なギラツキ感を感じることも


■ LEDプロジェクタ続々

 RGB-LEDを光源に採用したリアプロTVについては前回紹介したが、実は、RGB-LEDを光源にしたフロントプロジェクタも今年のInternational CESでは多く展示されていた。

 RGB-LED光源フロントプロジェクタの最初の流派ともいうべきは単板式DLPプロジェクタ。テキサスインスツルメンツ(TI)ブースに展示されていたのは東芝「Pocket Prjector」、三菱「PK10」、Samsung「Pocket Imager」の3機種。

●東芝「TDP-FF1A」

 東芝のTDP-FF1Aは重さ500gの手の平サイズの単板式DLPフロントプロジェクタ。バッテリによる連続2時間の投射が可能となっている。解像度は800x600ドット。発売時期は2006年1月を予定。価格は1,000ドル以下を想定しているという。

基本的にはPCを接続してその映像を投射するプレゼン用途向き 映像入力はPC接続用のアナログRGB入力の他、ビデオ機器接続用のコンポジットビデオ入力も装備。内蔵モノラルスピーカからの音声再生のために音声入力もある USBコネクタも装備されており、USBメモリ内のJPGデータをスライドショー的に再生する機能も搭載されている

●三菱「PK10」

 三菱「PK10」も東芝のものと同スペックのRGB-LEDバックライト搭載型の小型単板式DLPフロントプロジェクタ。こちらも解像度は800×600ドット。RGB-LED光源は電源を投入後数秒以内に映像が表示できる高速起動性がウリになっている。まだ、RGB-LED光源の出力は低く、その輝度は100ANSIルーメンにも満たない。

三菱「PK10」。価格は東芝よりやや安価な800ドル以下を想定

●Samsung「Pocket Imager」

 こちらも大きさ、解像度が同スペックのもの。3機種ともDMDチップは0.55型のものを採用している。ロータリーカラーホイールはなく、RGB-LEDを高速に明滅させることでカラーホイール相当の時分割色フルカラー再現を実現している。一般的な単板式DLPプロジェクタでは必須だったカラーホイールがないことが本体サイズ小型化に大きく貢献している。

サムスン「Pocket Imager」。こちらは発売時期は未定で、価格は1,000ドル以下を想定


■ エプソンも超小型手の平、RGB-LED光源採用、透過型液晶プロジェクタ

 「RGB-LED光源フロントプロジェクタはなにもDLPだけではない」といわんばかりの展示を行なっていたのは、エプソンが強力なリーダーシップをとって結成した液晶プロジェクション企業団体の3LCDグループのブース。

本体重量は約500g。価格は未定で発売時期も未定。あくまでコンセプト展示とのこと

 エプソンが開発したRGB-LED光源フロントプロジェクタ(型番未定)は、大きさ138×103×40mm(幅×奥行き×高さ)という、まさに手の平サイズでありながら透過型液晶を3枚使った3板式(3LCD)。

 採用液晶パネルは800×600ドット解像度の0.55型で、光源はRGBのLEDを一個ずつ、対応する液晶パネルに照射する設計。「3板式でここまで小さくできる」というのがこの展示に込められた一番のメッセージだ。

 LED寿命は2万時間以上とされており、RGB-LED光源ブロックは交換不要というコンセプト(逆に言えば交換不可)。消費電力はわずか20Wだが、輝度は20ANSIルーメン(以上)と、かなり暗い。RGB-LED光源フロントプロジェクタはDLP方式もまだまだ暗く、まだまだ改良の必要性がありそうだ。


実際のデモンストレーション風景。投射映像はまだまだ暗い。プレゼン用途であればあと20倍は明るくないと辛い。これは同じRGB-LED光源を使ったDLPフロントプロジェクタにも言えることだ


■ 日本ビクター、56V型画面サイズで奥行きわずか25cmの次世代1080pD-ILAリアプロ

 日本ビクターは、独自の反射型液晶パネルD-ILAチップを用いた1080pリアル対応の3板式リアプロTVの次世代試作機を公開した。その特長は、画質を維持したまま、圧倒的な背の低さと奥行きの低減を実現したことにある。

56V型で奥行きわずか25cmの衝撃

 リアプロTVでは映像生成エンジン側より投射された映像を、背面の斜めの内壁のミラーで反射させて正面の表示面に映像を映し出す。薄型にするためには、この内壁のミラーの角度やその投射映像の歪み等を最適化する必要がある。この試作機では奥行き薄型化に最適化した特殊画像処理を行ない、投射系においても新開発の光学系を開発したという。

 その薄さは56V型という大画面からは想像しがたいわずか25cm。ほとんど薄型TVといっても差し支えないレベルだ。画質に関しても、ランプ出力を従来と同じものにしたまま、D-ILAパネルの偏光板の改良を推し進め、迷光をさらに低減させることで黒の沈み込みをさらに推し進めた。その甲斐あって、最大輝度はそのままに、コントラスト比はネイティヴで驚きの約10,000:1を達成したという。

 実際、本体の薄さよりも、プラズマを凌ぐすさまじいまでのハイコントラスト感に強く感銘を受けた。この技術は次期モデルに適用されるとのことだが、発売時期や価格は未定だという。


コントラスト感はいうこと無し。ただし、色に関しては赤が朱色によりがちで、もうすこし練り込みが必要と感じた


■ サンヨー、世界初の2,048×1,080ドットの透過型液晶シネマプロジェクタ「PLV-HD2000N」

本体価格は70,000ドル。投射レンズは設置環境に応じて最適なものが選べるオーダーシステムになっており、ズーム倍率や焦点距離によって価格は異なるがだいたい2,000~4,000ドル程度だという

 サンヨーはエプソン製2,048×1,080ドット解像度の透過型液晶パネルを3枚用いた3板式業務用液晶プロジェクタ「PLV-HD2000N」を発表した。DCIが規定する業務用デジタルシネマ仕様を満たすために開発されたもので、1,920×1,080ドットではなく、2,048×1,080ドットという解像度もその要求条件に対応するため。

 なお、画素数の縦横比が16:9ではないが画素形状は正方画素系で、投射するコンテンツによってスクリーンからクリップアウトしてオーバースキャン表示するので特に問題にならない。

 さすがは業務用、光源ランプは300Wのものを四灯搭載し、これを一括点灯して7,000ANSIルーメンという輝度を実現する。コントラスト比はネイティヴ1,000:1を実現。

 4灯ランプは業務用の高輝度出力のための意味合いもあるが、ランプが一個破損しても投射が続けられるというフェイルセーフの意味合いもある。


192インチ画面に投影されている映像を約50cmまで近づいて300mm相当で拡大撮影。投射距離が10m以上あるのにもかかわらず、画素一つ一つの描画はぶれることなくしっかりしていた

 サンヨーブース内シアターでは192インチ伸すクリーンに対しての投射デモを行なっていた。200インチ近い大きさへの投射でも、自発光とも思えるほどの明るい映像を出力していた。四灯パワーの力強さは伊達ではないようだ。

 解像感もさることながら、発色もかなりよい。色処理もデジタルシネマの要求仕様であるRGB各12ビット処理を行なっており、大画面で見ていてもカラーグラデーションに破綻は見あたらない。


実際の投射映像を撮影。7,000ANSIルーメンで透過型液晶ともなれば黒浮きがすさまじいはずなのだが、最大輝度が高いおかげで相対的に暗部が沈んで見えるため非常にハイコントラストに見える


□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/default_flash.asp
□関連記事
【1月8日】【大マ】[CES特別編]「DLPプロジェクタ最新事情」
~シャープ、リアル1080p「XV-Z20000」発表、など ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060108/dg60.htm
【1月5日】TI、1080p対応DLPリアプロにLED光源を採用
-新チップセット搭載TVはサムスンより2006年中に北米で発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060106/ti2.htm

(2006年1月10日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1,000を超える。

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AV Watch編集部

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