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■ ボーダフォンのワンセグ端末は「AQUOSケータイ」 4月1日のワンセグ放送開始以来、対応端末のリリースが相次いでいる。当初は携帯電話が先行してたものの、その後はDVDプレーヤーや、カーAV製品、パソコンのほか、オーディオ/ビデオプレーヤーでもワンセグ対応の「gigabeat V」が発表されるなど、徐々に広がりを見せている。 先陣を切って対応が始まっている携帯電話だが、ワンセグ対応端末となると、いまのところ各キャリア1~2モデル程度。注目度は高いのだが、上位クラスのプレミアムモデルという位置づけとなっている。 その中でも注目株となるのが、ボーダフォン初のワンセグ対応端末「905SH」だ。型番からも分かるようにシャープ製の端末だが、愛称が「AQUOSケータイ」というあたりに、シャープ/ボーダフォンの本気が伺える。AQUOSブランドということからも分かるようにテレビ機能を重視し、画質や録画機能など強化したケータイとなっているようだ。 2.6型/400×240ドットのモバイルASV液晶を搭載し、新たに横位置表示が可能な「サイクロイドスタイル」という視聴スタイルを提案するなど、テレビっぽさ、そして、機能的にも非常にユニークな製品になっている。また、miniSDカードへの録画機能も装備。ワンセグケータイで外部メモリへの録画機能を搭載したのは、905SHが初となる。 マクロミルの調査レポートによれば、モバイル用途だけでなく、サブテレビ的な使い方でも注目をあつめているワンセグ。こうしたセカンドテレビとして考えた際には、録画機能の充実も大きなセールスポイントとなるだろう。 5月27日に発売され、現在の市場価格は新規契約で3万円前後。月額の料金が必要となるが、モバイルテレビと考えると比較的安価だ。早速「AQUOSケータイ」の実力を検証してみた。
■ ユニークな「サイクロイドスタイル」 付属品は、CD-ROMのほか、マイク付のイヤフォンアンテナ、ACアダプタなど。外形寸法は約49×105×27mm(横×縦×厚み)、重量は140g。最大の特徴はシャープの代名詞といえる液晶へのこだわりで、「AQUOS」の技術を応用したという2.6型モバイルASV液晶を搭載。解像度は400×240ドットで、最大26万色表示に対応。視野角は上下左右160度。コントラスト比は300:1。肌色をきれいに表示するという「色彩強調回路」や、屋外で鮮やかな色を再現するための6色フィルターを備えている。 また、この液晶部が縦横に90度回転する「サイクロイドスタイル」という機構を搭載し、ワンセグ放送視聴時には16:9ワイド画面でのテレビ視聴が行なえる。操作ボタンはテンキーのほか、液晶下部の4方向キーや、各種ショートカットキーを装備。テレビ機能をワンタッチで呼び出すボタンなども備えている。
左側面にはヘッドフォン出力とDC入力。右側面にはボリュームボタンや録画ボタンを備えるほか、miniSDカードスロットを装備する。背面には202万画素のCMOSカメラを内蔵する。 W-CDMAに対応した3G端末となるが、国際ローミングには非対応。音楽再生機能やおサイフケータイのほか、ほぼ全てのボーダフォン提供3G向けサービスなどに対応する。連続待受時間は360時間、連続通話時間は180分。
■ 高品位な液晶表示性能。縦/横異なる操作性
メインメニューを起動すると、各種メディアやメールなどの機能が選択可能となる。テレビ関連のほか、メディアプレーヤー機能や、Vアプリ、FMラジオ、データフォルダなどの各種機能も用意されている。 テレビ関連の機能はメインメニュー下に、TV/TVプレーヤーとまとめられているが、メインメニューを起動せずに、10キー下のTVボタンを押すだけでもテレビ画面の起動が可能だ。また、メニューを閉じて、液晶を回転し、サイクロイドポジションとすると、テレビ機能が自動的に起動する。 ワンボタン/アクションで、テレビ機能を呼び出せるというのは、“AQUOS”を名乗るケータイらしい特徴だ。画面は通常の縦画面表示(オープンポジション)のほか、横画面(サイクロイドポジション)の何れでも、視聴できる。ワイド画面でワンセグ放送をフルに楽しむのであれば、横画面が見やすいが、データ放送の表示は縦画面時のみとなる。
ワンセグ放送のほか、地上アナログ放送の受信も可能。初回起動時にはチャンネル設定を行なう必要がある。ワンセグ放送開始地域であれば、基本的に都道府県などの地域を選ぶだけで、設定が完了する。 携帯電話のような移動体端末では、視聴位置も都度変わる可能性がある。905SHでは自動的にその場所の放送をスキャン/追従する機能は備えていないが、複数の地域設定を登録し、その設定を編集できるチャンネルリスト機能を装備している。例えば、東京と大阪など、ユーザーの利用頻度の高いチャンネルリストを登録することが可能となっている。 なお、受信感度が悪い場合は、付属のホイップアンテナを調整してみれば、ある程度の改善は可能だ。また、付属のイヤフォンマイクはアナログ放送用のテレビアンテナとしても利用できる。
テレビで利用するボタンは上部の4方向キーと周囲の4つのボタン、4方向キーの3つのボタンなど。10キーもチャンネルのダイレクト選局に利用できる。また、右脇のボリュームボタンで音量調整が行なえる。 右上のボーダフォンマークのボタンを押すと情報パネルが表示され、現在視聴中のチャンネルや番組名、受信感度、放送の種類などが確認できる。4方向キーの左右、もしくはテンキーでチャンネル切替を行ない、同じく方向キーの上下はデータ放送の項目選択などに利用する。データ放送の[戻る]操作は、中央のCLEAR/BACKボタン。録画機能の詳細は後述するが、右脇のボリュームボタン下のボタンを押すと、視聴中の番組の録画が開始される。 テレビ機能の操作に関しては、ボタンの割り当てを覚えるまで若干戸惑った。というのも、横位置ではデータ放送が見えず、操作もできないので、縦位置では動いても、横位置では操作を受け付けないボタンが出てくる。そのためか、説明書を読んでから、縦位置と横位置時の表示可能項目を理解するまで、直感的に操作できなかった。
チャンネル切替のタイムラグは4~5秒程度。若干待たされる印象があり、最近のデジタルテレビのチャンネル切替と比較しても遅いと感じる。他のワンセグ端末と比べてもやや遅く感じたが、すごいストレスを感じるという程は遅くない。「遅いな~」と思った頃に切り替わる、という印象だ。 メニューボタンを押すと、設定メニューが現れる。横画面の場合、字幕表示/字幕位置/音声切替/アナログTVに切替/録画開始/詳細設定/TV終了の各項目が現れる。縦画面の場合は、字幕表示/音声切替/データ放送全画面表示/アナログTVに切替/録画開始/チャンネルリスト切替/チャンネル選択/編集 /チャンネル保存/詳細設定の各項目を選択可能となる。 横表示の場合は字幕位置の設定が可能で、縦位置表示の場合は、データ放送の表示機能設定や、チャンネル設定関連の項目が用意される。ワンセグというか地上デジタル放送では字幕データが充実しており、特にニュース番組などではかなりの情報が字幕で確認できるので、イヤフォンを忘れてしまった場合などでも活用できるのはありがたい。
ワンセグの受信感度は良好で、千代田区のビル内の編集部でもほぼ問題無く放送の受信が可能。また、通勤に利用する京王線でも大きな乱れは感じられなかった。ただし地下鉄に入ると全くダメで、駅構内でも受信はできない。このあたりは、ワンセグの環境整備が整うまでは仕方がないだろう。 ワンセグ受信中に、右下の音符マークのボタン長押しで、アナログテレビにも切り替えられる。だが、ワンセグ受信エリアであれば、わざわざアナログ放送を選ぶメリットは感じない。 ワンセグ放送の画質はさすがに良好。液晶サイズが大きく、解像度も400×240ドットと高いため特に止め画が多い映像であれば、かなりしっかり細部まで確認できる。色再現性も非常に良く、携帯電話で見ているとは思えない程。肌色の発色が良く、暗部の階調潰れもほとんど感じない。時折ブロックノイズが散見することはあるものの、ニュース番組のスタジオ内映像や、アニメ、動きの少ないドラマでの画質は、携帯電話とは思えない程。 ただし、スポーツ視聴では、不満がないわけではない。FIFAワールドカップの映像は、かなりのブロックノイズが発生するほか、ワンセグ放送のフレームレートが15fpsと低いこともあり、動体ブレが印象に残ってしまう。 もちろんユニフォームのカラーや、ポジションは確認できるが、引きの画になるとボールがどこに行ったのか分からなくなってしまうことも。これは端末側だけの問題ではないが、動きのあるスポーツはやはり相性が良くない。 ただ、映像に埋め込まれた字幕データも確認でき、現在のスコアなどはしっかり判別できるし、クローズアップであれば選手の表情もきちんとわかる。スポーツ以外では、画質には非常に満足でき、「AQUOS」ブランドらしい「画質へのこだわり」が感じられた。 基本的なテレビ視聴機能に大きな不満はないが、現在放送中の番組データを瞬時に確認できないのがやや残念なところ。特に905SHの場合、チャンネル切替に時間がかかるので、現在放送中の番組を一覧してから切り替えたいのだが、放送経由でEPGを一覧する画面は用意されておらず、通信経由で取得する。 一度テレビ画面を終了して、メインメニューのTVから[番組表]を選択するか、もしくは縦位置表示時にボーダフォンマークのボタンを長押しすることで、ナノメディアによる[TVnano]画面が現れて、各局の番組情報が確認可能となる。これらのデータ自体は充実しており、録画予約に活用できるのだが、起動から番組表の閲覧までは数十秒かかる。瞬間的な番組の一覧/検索性という意味ではあまり使い勝手が良くない。各番組の表示時には番組データ(タイトル)を取得できているので、これらを素早く一覧表示する機能が欲しいと感じた。 なお、テレビ視聴中に着信があった場合でも、通話ボタンを押すことで電話を受けられる。通話終了後は自動的にテレビ画面に戻る。また、サイクロイドポジション時は、テレビを見ながら通話も可能となっている。メール受信時には、画面の1行目に受信メッセージを表示する。
■ miniSDに最大5時間録画。追っかけ再生に対応 905SHの特徴としてはワンセグの録画機能も挙げられるだろう。従来の携帯電話では、「W33SA」や「W41H」など内蔵メモリへの録画には対応していたものの、外部メモリへの録画はできず、録画時間は数十分程度に留まっていた。
しかし、905SHでは、miniSDへの録画に対応。録画した番組はPCなどへにコピーして視聴することはできないが、最大1GBのminiSDカードに対応するため、1時間番組なども問題なく録画可能となった。また、追加のminiSDカードを利用すれば、さらに多くの番組を録画できるわけで、録画環境としてかなり実用的になっている。 録画予約は、メインメニューの[TV]から、[番組表]を選択し、通信経由でTVnanoのEPGを起動する。ここで番組選択を行なうだけで、録画予約が可能となる。このあたりは、放送と一緒に送られるEPG情報を利用する12セグの通常放送録画時と異なっており、携帯電話ならではの利用感覚だ。 著作権保護処理を伴うものの、基本的にはストリームをそのまま録画するので、記録モードなどは用意していない。そのため予約画面は非常にシンプルだ。ただ、TVnanoには、番組検索や番組表移動、切替、お気に入りなどの機能も備えており、絞り込み検索などかなり充実した録画予約設定が行なえる。 録画予約件数は最大5件までで、1件当たりの設定可能な録画時間は約4時間。256MBのminiSDカード利用時では、約80分の録画が可能。1GBカードの場合は、約5時間強という計算だ。 なお、バッテリ駆動時のワンセグの連続視聴時間は約4時間。録画時間は約3時間となるので、1GB miniSDの利用時にはむしろバッテリ残量に注意したい。
905SHの録画形式はSD-Video規格の「ISDB-T mobile Video profile」という形式とのこと。SD-Videoの暗号化技術を利用して、データ/メモリーカードの間の暗号化/復号化処理を行なっているようだ。同規格に対応した機器であれば、録画番組が再生できるようだが、ケータイWatchのインタビューによれば、いまのところ規格自体がまだ決定したばかり。今後の対応機器の充実にも期待したいところだ。 ともあれ、他のワンセグ端末と異なり、miniSDカードに録画データを保存でき、実用的な録画環境を実現できるというのは、「905SH」の大きなアピールポイントとなるだろう。また、データ放送の詳細設定では、録画設定で[映像+データ放送]のほか[映像のみ]の録画も可能。miniSDカードの容量が少ないなどの場合は、活用の機会が広がりそうだ。なお、予約録画時に、miniSDカードの残量を見て、録画できない旨を警告する機能は備えていない。 暗号化が施されているため、PCに録画したデータをコピーしても、再生不能。また、他のminiSDカードにフォルダごとコピーすると、905SHで認識でき、番組タイトルなどが表示されるが、再生はできなかった。
メインメニューから[TVプレーヤー]を選択すると、録画番組が一覧できる。ワンセグとアナログテレビのそれぞれの録画番組が検索可能で、番組名と録画日時が確認できる。ここで、任意の番組を選択すると、再生が始まる。 録画番組の画質は、通常の番組視聴時と変わらない。また、音声付きの1.33倍早見/早聞き再生のほか、2/10/30/120倍速の早送り/戻しが可能となっている。ただし、この倍速表示は縦画面時のみにしか確認できず、サイクロイド時にはスキップ速度がわからないのが残念だ。 なお、これらテレビ機能を利用するには携帯電話の契約が必要。そのため購入後に契約を解除したり、SIMカードを外している状態では、テレビ機能は利用できない。また、ワンセグ放送映像の外部出力機能などは備えていない。
ワンセグ関連機能のほかにも、メディアプレーヤー機能を搭載。miniSDカード上の3GPやASFファイルも再生可能となっている。 また、音楽プレーヤーとしてはSD-Audioと、AACの再生に対応。iTunesで作成したAACファイルを、\PRIVATE\VODAFONE\My Items\Music以下に転送したところ、認識され再生も可能だったが、アーティスト情報などのタグ情報が表示できなかった。
■ 機能/画質が充実のポータブルテレビ/レコーダ テレビ機能の作り込みや画質など、AQUOSブランドに違わぬクオリティと、使い勝手が実現されている。ワンセグを積極的に活用したい、携帯電話をポータブルテレビとして活用したい、という要望に、現状では真っ先に選択肢に挙げたい製品に仕上がっている。もっとも、携帯電話なので、ボーダフォンユーザーでなければ、複数回線もしくは乗換などの手間が発生するので、そのあたりは考えどころではあるが……。 ワンセグ視聴時のバッテリ駆動時間は約4時間、録画時は3時間と、携帯電話のワンセグ機能としては長時間。実際に1時間番組を録画しても、インジケータは減っておらず、通勤/通学用途では十分利用できそうだ。 画質面でのアドバンテージはもちろん、miniSDという外部メモリの採用でレコーダとしても積極的に活用できる点も重要だ。1時間番組でも安心して録画でき、積極的にタイムシフト機能を活用できることで、利用シーンも広がることだろう。 また、携帯電話での採用率の高いminiSDを利用した録画ということもあり、将来的な拡張性や、民生用レコーダなどとの連携など、対応機器の広がりにも期待したい。そうした意味では、他メーカーはもちろんテレビやレコーダなど、AQUOSシリーズ全体のビデオソリューションとして、miniSD録画/再生を推進して欲しいものだ。 □ボーダフォンのホームページ http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/interview/29687.html 【6月15日】AQUOSケータイで眞鍋かをりがW杯をワンセグ観戦 -ブラジルに勝ったら、ビキニでカーニバルやります! http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060615/vodafone.htm (2006年6月16日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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