■ 5インチドライブ搭載可能な「MOVIE COWBOY」 「DIGITAL COWBOY」ブランドが世に登場してもうすぐ1年が経つ。今やiPod周辺機器など豊富なラインアップを揃える同社だが、最初に発売したのは、HDDプレーヤー自作キットの「MOVIE COWBOY DC-MC35UL」だった。 そして、もうすぐ1周年のこの時期に発売するのが、HDDプレーヤー自作キット「MOVIE COWBOY」の最新モデル「DC-MC50U2」だ。 最大の特徴は5インチベイを備えたことで、DVDドライブを接続してDVDメディアプレーヤーとしての利用が可能なほか、HDD用のリムーバブルフレームを搭載できるようになっており、これまでのキットとは一線を画した製品に仕上がっている。なお、今回はネットワーク機能が省略されている。 また、再生性能も大幅に強化。デコーダチップにSigma Designの「EM8621L」を搭載しており、新たにWMVやWMV HD、MPEG-2 TSなどのHD画質の映像ファイルに対応する。これまではDViCOの「TViX HD M-5000U」くらいしか対応製品がなかったので、新たな選択肢が登場したというわけだ。 価格は実売24,800円前後で、他のキットと比べるとやや割高ではあるものの、実売40,000円前後のTViX HD M-5000Uと比べれば半額に近く、WMV HD再生に対応する機器として見れば購入しやすい価格と言える。
■ 多彩なストレージデバイスが接続可能 付属品は、マニュアル、リモコン、3.5インチHDD用マウンタ、USBケーブル、ACアダプタ、コンポジットケーブルなど。コンポーネントケーブルやDVIケーブルについては付属しないので、別途用意する必要がある。
外観は肉厚のアルミを採用したブラック一色の重量感のあるデザイン。実際の重量も約1.87kgとノートPC並みの重さで、片手で持つとかなりずっしりとくる。そのため、手軽に持ち運ぶにはちょっと厳しい印象を受けた。 ドライブ類の取り付けは背面の手回しネジを外してから、背面パネルをスライドすることで行なう。ドライブの固定は、事前に5インチベイ固定用のマウンタを引き出してからドライブを固定、その後ドライブを挿入する。背面パネルの出し入れ時には、底面のCPUヒートシンク部が筐体とすれるのが気になる。冷却目的のため、密着していないと困るのは確かだが、頻繁に出し入れするうちに外れてしまいそうで心配だ。 また、前面のLEDと連動するフレキケーブルが背面パネルに繋がっていて、出し入れ時に引っかかるのが気になった。 従来のキットと同じように3.5インチHDDを取り付ける場合には、HDDに付属のマウンタを取り付けてから再度5インチベイ用のマウンタを固定する。今回は容量80GBのSeagate製HDD「Barracuda ATA IV」で試した。
■ フルHD解像度に対応、WMV HDやMPEG-2 TSファイルが再生可能 映像の出力については、DVI-I(HDCP非対応)、コンポーネントのほか、Sビデオ映像やコンポジットに対応。解像度は最大1,920×1,080ドットでの出力が可能だ。今回はD4入力に対応するDELL製の19型ワイド液晶テレビ「W1900」で利用。コンポーネント接続やDVI接続を試してみたが、いずれも問題なく表示できた。出力先は自動で認識して切り替わるので特に調整の必要はない。手動で切り替える場合には起動後に本体の設定で変更を行なうか、リモコンに備える「映像出力切替」ボタンで変更する。 起動時間は15秒前後とやや長め。これはDVDドライブなどHDD以外のデバイスを接続した場合でも同様だった。15秒前後の間、画面に何も表示されないため、本当に動作しているのかが心配になった。早い段階で画面に何か表示するなどの工夫をしてほしいところだ。 起動後のメインメニューは「VIDEO」「AUDIO」「PHOTO」「SETUP」の4種類。再生したいファイルの種類を選択することで、指定した種類のみをソートして表示する。またリモコンにはそれぞれの種類に対応したボタンが用意されており、ワンボタンでファイルの種類を変更できるので便利だ。 再生可能なファイルも増えている。まずは映像ファイルの定番と言えるMPEG-1/2/4、DivX、XviDなどについて試したが、いずれも問題なく再生が行なえた。DivX 6以降で採用している新たな拡張子「.divx」もリネームせずに認識、再生が可能。また、ISO準拠のMPEG-4に対応しており、最近ではPSPやiPodなど対応機器も多いので、うれしいところ。
また、静止画としてJPEG/PNG/BMP、音楽ファイルはMP3/WMA/WAVEに加えてAACファイルの再生も可能。ただしAACの拡張子についてはiTunesで作成した「.m4a」のままだと正常に認識されず、拡張子を「.mp3」など本体が認識可能なものに変更する必要があり、不便だった。ファームのアップデートなどでの対応を期待したい。 新たに再生が可能になったHD画質のWMVファイルやMPEG-2 TSファイルの再生については、特に問題はなく非常に快適に再生が行なえた。これらのファイルをPentium 4 2.53GHz搭載のPC上で再生しようとしたところ、開始後すぐにコマ落ちが発生してしまい正常に再生ができなかった。 また、通常のWMV9ファイルも再生可能だったが、WMV7/8ファイルは再生が行なかった。この現象については、同じデコードチップを採用するTViX HD M-5000Uでも同じ現象が起こっていたので、チップの問題と言えるだろう。 再生中のファイル情報などは、リモコン上の「ファイル情報」ボタンで表示する。ただしコーデック情報が不足しているらしく、正しい情報が表示されるとは限らないので信頼性は低い。たとえば、MPEG-4ファイル再生時のファイル情報では、「DivX5」として表示したり、MPEG-1をMPEG-2として表示したりする。
その他にもISOイメージファイルや、DVDビデオフォルダ内のVOBファイルの直接再生も可能。ISOイメージファイルの字幕や音声切り替えについては問題なく利用できるが、VOBファイル再生時には、副音声の切り替えができなかった。 その他のフォーマットとして、OGMやMKVといった複数のオーディオや字幕を取り込んだファイルについては、「.ogm/.mkv」の拡張子のままでは認識すらされず、拡張子をAVIなどに変更しても再生は行なえなかった。なお、MPEG-4/AVC(H.264)にも対応していない。
■ リムーバブルフレームは対応製品の購入が無難、USBホスト機能は良好 5インチサイズのドライブが取り付け可能とのことで、まずはDVD-Rドライブを取り付けてみた。試したのはパイオニア製の記録型DVD±R/RWドライブ「DVR-111BK」。 DVDドライブを接続した外観はちょっと無骨なDVDプレーヤー。そのため通常のDVDプレーヤーのような動作を期待したいが、実際のところは単なるHDDプレーヤーのHDDがDVDドライブに置き換わっただけで、メニュー内のアイコン以外は特に変化を感じない。 残念なのは、著作権保護の施されたDVDソフトの再生に対応しないこと。自作のDVDビデオを入れた場合でも、「VIDEO_TS」フォルダ内のVOBファイルを手動で選択して再生を行なえるのみなので、光学ドライブを取り付ける意味はあまりないと言える。 もちろんDivXなどの圧縮した映像ファイルをバックアップしたDVD-Rであれば、HDDと同様の操作で利用が可能なので、そういったメディアを大量に所持するようなユーザーであれば使い道はあるだろう。 また、USBでPCと接続すると外付けの光学ドライブとして認識されるので、今回のように記録型ドライブを接続した場合にはPC上でDVD書き込みなども行なえる。ただし書き込み動作に関しては、メーカーは一切サポートをしていない点には注意が必要だ。
リムーバブルフレームは、手元にあったサンワサプライ製「TK-RF40N」を使った。内部ドライブの着脱については、フレームそのものの出来が悪く、本体側に接続したフレームとHDDを内蔵したインナーケースの接点がうまくかみ合わず、着脱に苦労した。また、フレームに設けられた固定用のネジ穴の位置がDC-MC50U2の備えるマウンタときれいに合わないため、一見するとしっかり入ったように見えても、フタがうまく閉まらなくなったり、インナーケースの出し入れ時にDC-MC50U2側のフレーム部と干渉したりした。 なお、同社が対応をうたうリムーバブルフレームは、Ratoc製「IDE-MDK1N/IDE-MDK1A」シリーズ、Owltech製の「OWL AF80IA」、「OWL AF80IP」、「MRS27A-UAE/133」。これらについては、同社で検証を行なっているため、インナーケースの着脱も快適に行なえるという。
その他の機能として、同社では正式にサポートしていない機能だが、USB2.0のホスト機能も備える。PC接続用とは別に用意された背面のUSB端子に、USBマスストレージ対応機器を接続すると、起動したままでデバイスを認識。一度強制的にメインメニューに戻された後、ファイル表示画面にくると、メニュー左にUSBアイコンが追加される。これを選択することで、USB機器内の対応ファイルを表示したり、再生が行なえる。試しに手元にあったUSB接続のHDDなどを接続してみたが、いずれも問題なく利用できた。
■ 価格も妥当、ネットワーク対応モデルに期待 一通りDC-MC50U2の機能をチェックしてたが、5インチベイを採用した大柄なボディは持ち運び用途には向かないが、自宅で据え置いて利用するユーザーにとっては、様々なデバイスが接続できるので魅力的。ただ、DVDドライブ接続時の仕様については、ただのデータDVD-ROMドライブとしてしか利用できなくて残念。もし可能なら、今後ファームウェアのアップデートなどでDVDプレーヤー機能にも対応してほしいところだ。 HDD接続時の利用については、再生対応ファイルも豊富で、必要十分の機能を備えていると言える。特に利用ユーザーの多いWMV9やMPEG-4に対応したのは重要だ。ただ、残念なのはネットワーク機能が省略されてしまったことだ。ネットワーク機能を搭載したい新モデルの登場に期待したい。 現時点ではPCでのデジタル放送などHD録画環境の整備が進んでいないため、HD画質のWMV HDやMPEG-2 TSファイルの再生が不要なユーザーもまだ多いだろう。しかし、HDVカメラの登場、大型液晶テレビやプラズマテレビが増えてきた現状を考えると、今後DC-MC50U2は魅力的な選択肢になると言えるだろう。 □DIGITAL COWBOYのホームページ (2006年6月23日) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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