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ウォークマンで「走る」
日本でもスポーツ仕様プレーヤーの時代?
ソニー「NW-S203F」
9月15日発売

標準価格:オープンプライス
実売価格:15,000円前後



■ 日本では珍しい? 「スポーツモデル」

 ポータブルオーディオ製品で、日本と米国市場の大きな違いといえば、「スポーツモデル」の位置づけだろう。米国では、フィットネスやジョギング需要を見込んで、かなり早期からスポーツタイプのプレーヤーが発売されていた。

 既に撤退してしまったがRioなども、早期からスポーツモデルを導入していたが、実際に北米の販売店に行くとプレーヤーはもとより、ヘッドフォン売場でもかなりのスペースをスポーツタイプが占めている。

 各社ともに北米モデルでは製品ラインナップに必ずと言っていいほどスポーツモデルを用意しているが、日本ではあまり見かけない。もっとも最近のフラッシュメモリタイプのプレーヤーは小型化が進んでおり、大抵のモデルはスポーツへの応用が可能ではあるが……。

 そんな中、米国では今夏にAppleが「Nike+iPod Sport Kit」を発売。Nikeの対応スニーカーと、iPod nanoを組み合わせて、ジョギングの距離や消費カロリーなどを記録できるなど、オーディオプレーヤーをベースにしながらも新たな機能を搭載したプラットフォームとして注目を集めている。他社との差別化という視点からも、単に「軽くてヘビーデューティーなプレーヤー」から、よりエクササイズや健康増進に役立つような製品が求められるようになっているようだ。

シルバー/ピンク/ブラックの3色を用意

 そこに、ソニーが9月15日に発売するのが、新ウォークマン「NW-S203F」だ。

 「NW-S203F」では、オーディオプレーヤー機能に加え、JIS防滴II型(JIS CO920 IPX2)対応の防滴性能、さらに、本体に「Gセンサー」を内蔵し、プレーヤーの揺れから運動量を検出する仕組みを導入している。

 同センサーを利用して、歩数や歩幅から、消費カロリーや走行距離を検出。音楽を聴きながらジョギングできるほか、消費カロリーや走行距離を設定し、運動負荷の目標を立てながら音楽を楽しめる。

 多くのスポーツ仕様プレーヤーと同様に、基本的にはジョギングやスポーツジムでのランニング利用を想定しているようだ。

 実売価格は1GBモデルで約15,000円。ソニーによれば、同製品は米国市場向けに企画したとのことだが、日本と北米の市場の違いに基づき、発売製品では各地域に仕様を若干変えているという。


ソニースタイルモデル「NW-S205F/B」

 例えば、北米モデルでは耳掛け型のイヤフォンを採用しているが、日本モデルでは、「音質を重視した」とのことで、上位シリーズ「ウォークマンA」と同じ「MDR-E0931」が付属。さらに、アームバンドも別売とし、ブラック/ピンク/シルバーのカラーバリエーションを用意するなど、日本向けではスポーツ性だけでなく、デザイン性や音質で訴求していく考えのようだ。

 また、SonyStyle限定モデルとして北米仕様の耳掛け型イヤフォンや専用のアームバンドを同梱し、内蔵メモリを2GBにした「NW-S205F/B」も発売する。北米で展開中の「S2 Sports」ブランドの製品を日本仕様にしたモデルで、直販価格は2万円。



■ ソニー伝統の円筒デザイン

JIS CO920 IPX2対応の防滴仕様

 アルミの素材感を活かした円筒形のボディデザインを採用。ボディはJIS防滴II型(JIS CO920 IPX2)に対応し、汗をかいた手で触るなどしても、問題なく利用できるという。ただし、激しい雨の中や、水中落下は当然保証外となる。

 本体前面に1行表示の有機ELディスプレイを備えるほか、ディスプレイ右脇に表示を切り替えるDISPボタン、ボリュームボタン、再生/停止ボタンを装備。その右脇にジョグシャトルを備え、このジョグシャトルと再生/停止ボタンだけで、本体の基本操作が全て行なえる。

 また、円筒の上部にはヘッドフォン出力と、ネックストラップホールを装備。下部のロックを外すとUSB端子が現れる。防水用のためのゴムリングなどが実装されているのが確認できる。USB端子は防水仕様のためか、かなり奥の位置に設置されている。そのため、端子は通常のUSBミニBコネクタなのだが、一般的なUSBミニケーブルでは奥まで差し込めず、PCと同期できないこともある。付属のケーブルではコネクタ周辺が細くなっており、奥まで差し込めるようになっている。

 外形寸法は15×15×96.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は26g。最近のオーディオプレーヤーとしてはやや長めではあるが、手に持っても軽く、ネックストラップで吊るしたり、胸ポケットに入れるなど、取り回しは比較的容易だ。

 かつては、ソニーのCDプレーヤーやMDプレーヤーの多くで、こうした円筒形の「リモコン」が付属し、プレーヤーをバックに入れ、リモコンを外に出して操作するというスタイルが同社のオーディオプレーヤー製品の特徴でもあった。それらのリモコンと比べるとやや大きめではあるが、同意匠の筐体の中に、ほぼ全てのプレーヤー機能が収まっていると考えると、なかなか感慨深いモノがある。

 付属品はイヤフォンとクリップ、CD-ROMなど。

前面に有機ELディスプレイと操作ボタンを装備。右端にはジョグシャトルを備える 有機ELディスプレイを備える 上面にヘッドフォン出力を装備
LOCKを解除するとUSB端子が現れる。端子がやや奥に引っ込んでいるので、ケーブルによってはパソコンと連携できないこともある 付属のクリップ利用時

付属品 ソニーの薄型MDプレーヤー「MZ-E10」のリモコンと比較。ソニー伝統のデザイン iPod nanoと比較


■ 選曲は基本「シャッフル」

SonicStage CP

 まずは、オーソドックスなオーディオプレーヤーとして利用してみよう。楽曲の転送ソフトは「SonicStage CP」が付属し、SonicStage上の楽曲やプレイリスト、Moraで購入した楽曲の転送が可能となっている。

 対応オーディオ形式はATRAC3/MP3/WMA/AAC。著作権保護されたWMA/AACの再生はサポートしない。

 パソコンとUSBで接続して転送するが、前述のようにUSBミニB端子が本体のかなり奥にあるので、付属のケーブル以外の普通のミニB-A型のUSBケーブルが使い回せないことがあるので、注意されたい。


楽曲再生画面(アーティスト名) 楽曲再生画面(アルバム名)

基本の再生モードは[ALL SONGS]。DISPボタンの長押しでモード切り替え画面を表示する

 電源を投入すると、[ALL SONGS]というモード名の楽曲再生画面が表示される。名前の通り、同モードの初期設定[Normal]では、100曲転送したらその100曲中の30曲目、といった具合に、楽曲の管理が行なわれる。

 ここで、ジョグシャトルを上下に倒すと、曲のスキップ/バックが行なえ、楽曲を検索できる。選曲後、再生ボタンを押すと再生開始される。再生中は、Normal設定の場合、選択した楽曲から最後の楽曲まで再生される。もちろん、選択したアルバムやアーティストの再生が終わると再生停止する[Folder]モードも設定画面から選択可能だ。

 楽曲のソート方法は、設定メニューからアーティスト名順/アルバム名順/アーティストごとのアルバム名順の3タイプが選択でき、ディスプレイに表示されるアイコンで確認できる。

 アルバム名やアーティスト順の検索モードも用意されている。DISPボタンを長押しすると「ホーム画面」が立ち上がる。ここで、ジョグシャトルの上下で操作モードを選択可能で、虫眼鏡マークの「Search」を押すと楽曲検索モードとなる。Searchモードでは、アルバム名/アーティスト名/楽曲名での楽曲の絞り込み検索が行なえる。また、同様にプレイリスト再生やスポーツモードもホーム画面から選択する仕組みだ。


ホーム画面から検索モードへ アルバムで絞り込み検索


 shuffleを除くiPodやウォークマンAでは、まずアルバムやアーティスト検索から始まるが、「NW-S203F」では基本はALL SONGの再生となる。積極的にプレーヤーで選曲して聞くというよりは、好きな曲を選んで転送し、シャッフルやプレイリスト再生を楽しんで欲しい、という設計思想なのだろう。

 また、再生中に2秒間に3回強く振るとシャッフルモードなどに切り替わる「シャッフル・シェイク」機能も搭載する。Normal再生モードの場合は全曲シャッフルに、Folderモードの場合はフォルダ内シャッフルモード再生を行なう。なお、同機能を利用するためには「Gセンサー」をONにしておく必要がある。

 iPod shuffleとは異なり、能動的に選曲したいときにはきっちりと検索できる仕組みが用意されているが、ジョギング時にいちいち楽曲検索などしていられない。そうした点からも、基本的には好きな曲をランダムに再生するプレーヤーとなっている。

 アルバムやアーティストの選曲を意識させるよりは、スポーツのBGMとして如何に使い勝手を向上させるか、ということを強く意識して設計されているように感じる。また、ジョグシャトルが左右にスライドし、左側(再生/停止ボタン側)に寄せるとHOLDになるなど、片手でもしっかり操作性できる点もスポーツ利用を考慮してのことだろう。

付属イヤフォンは「MDR-E0931」

 音質については、最近のソニー製プレーヤーらしく、帯域バランスの整った勢いのあるサウンド。クリアでセパレーションが良く、気持ちよく音楽を楽しめる。付属のイヤフォンのクオリティも良く、高水準のプレーヤーといえるだろう。ただし、イヤーパッドが付属しないのは残念なところ。

 また、Heavy/Pop/Jazzの3モードのプリセットとカスタムモードを備えたイコライザも装備。音量レベルを均一にする「Dynamic Normalizer」も備えている。



■ ユニークだが活用幅は限られる? スポーツ機能

 Gセンサーを利用し、プレーヤーの揺れから運動量を検出する機能を搭載。カロリー消費量や距離、歩数をリアルタイムに表示できるカウンター機能も備えており、再生画面でDISPボタンを押すと、各運動量が確認できる。

スポーツモード

 特徴とも言えるスポーツモードの利用も、ホーム画面の設定から行なう。

 SPORT MODEアイコンを選択すると、Set Target/Set Playlist/MusicPacerの各モードが現れる。Set Targetを選択すると、目標の距離や消費カロリーを設定して、その目標を達成するまで音楽再生を続ける。MusicPacerは、速度にあわせて走っている時の「RUN」、歩いているときの「WALK」と再生するプレイリストを切り替える機能となっている。

 なお、これらの機能を利用する前に設定の[ADVANCED MENU]から、体重と身長を入力しておく必要がある。単位がcm/kgのほか、inch/libが用意されているあたり、海外企画製品らしさが感じられる。

 また、歩幅(Walk Stride)、走っている際の歩幅(Run Stride)も設定可能。初期設定ではWalk Strideが身長×0.5、Run Strideが身長×0.7になっているが、任意の数値に変更可能だ。


身長、体重を設定。身長は最高250cmまで設定可能 Set Target

Set Targetで目標を3kmに設定

 Set Targetを選択すると、目標を設定後、再生を開始すると、目標達成まで音作再生を続ける。目標は時間/走行距離/消費カロリーの3タイプが用意される。なお、距離についてはkm設定のほか、マイル設定が可能で、それぞれ0.5km/ml単位で設定できる。時間は1分単位、カロリーは10kcal単位で設定できる。

 つまり、今日は5km走る、と設定したら、その目標を達成するまではひたすら音楽再生が続き、目標に到達すると再生を終了、ユーザーに目標達成を知らせるという仕組みだ。ジョギング時などにはかなり活用できそうだ。

 なお、正しい計測結果の出力のため、付属クリップや別売アームバンドを利用するように推奨されている。とりあえず、Tシャツの胸ポケットに放り込んで走っても、計測されていたが、きっちりとトレーニング結果を管理したい人は注意されたい。

 もっとも、スポーツジムなどに導入されている最近のトレッドミル(ランニングマシン)では、消費カロリーや距離などを表示するものが多く導入されている。おそらくそれらの方が精度は高いと思うので、ジムでの利用となると結構微妙な気もする。最大7日分の履歴が保存できるので、運動の記録用と考えたほうがいいのかもしれない。


 ジムよりは、公道を走るときには気持ちよく利用できそうだが、イヤフォン利用だと外部の音が聞こえなくなるので危険だ。公園など安全な場所で、適切なボリュームで利用するよう心がけたい。

消費カロリーも確認できる 歩数も表示可能

MusicPacer

 「MusicPacer」は、走る速度に合わせて再生する音楽を切り替える機能。SonicStageで転送したプレイリストを[Set Playlist]画面で走る際の[RUN]、歩く際の[WALK]の各プレイリストに割り当てられる。

 SetTargetで目標を決めた後、MusicPacerのON/OFFを選択する。走り始めると「Please Enjoy Running Music」とのメッセージがアナウンスされ、RUNプレイリストの再生がスタートする。

 RUNとWALKの切替速度は時速8kmぐらいとのことで、WALKからRUNは走り始めて数歩で移行する。一方、RUNからWALKについては切替までの時間を長くとっているという。走っていて、歩き始めて大体10秒以上立つと、Please Enjoy Walking Musicとアナウンスされ、WALKプレイリストに切り替えられる。ちょっとアナウンスが鬱陶しいのと、走っているつもりで、WALKに切り替えられると頭にくるが……。

 なお、Mora上ではWALK/RUNの各プレイリスト用のお奨め楽曲も配信している。今のところ邦楽の楽曲単位での販売になっているようだが、今後プレイリストごとの販売にも期待したいところだ。

 また、消費したカロリーの履歴機能も搭載。7つまでの履歴が登録可能だ。本体内の時計機能を利用して、1日ごとの歩数なども確認できる。ただし、この消費カロリーや歩数の履歴をパソコンに転送し、管理するといった機能は備えていない。このあたりが実現できると、健康増進ツールとしての活用幅も広がると思うのだが。

 ストップウォッチ機能を内蔵。9時間59分59秒まで利用できるのだが、逆に1秒以下の数字はカウントできない。また、FMチューナも内蔵している。

消費カロリーや歩数の履歴。7日分の履歴が保存できる ストップウォッチ機能

 バッテリは内蔵リチウムイオンで、USB充電に対応。最長約18時間の連続再生が可能で、3分充電で約3時間の連続再生が可能な急速充電機能も備えている。


■ スポーツ機能をどこまで訴求できるか

 1行表示のディスプレイ採用ということもあり、ユーザーに積極的な選曲を求めるものではなく、SonicStage CPであらかじめ選択したお気に入り楽曲をランダムに利用する、といったプレーヤーだ。選曲を重視する人はウォークマンAなどの上位モデルを、スポーツ機能を重視するユーザーには「NW-S203F」という提案のようだ。

 基本的なプレーヤーとしての機能や、音質には不満はない。シャッフル・シェイク機能もユニークだ。スポーツ用途を前提とするならば、有力な選択肢になるだろう。あとは、運動履歴の管理機能やMoraのRUN/WALKプレイリストなど、周辺サービスの強化でその特徴の魅力を増していくことを期待したい。

 確かなコンセプトと、それに基づいて機能をうまくまとめ上げているプレーヤーという印象。ただ、このスポーツ機能がどこまで日本市場で訴求され、受け入れられるのかは未知数だ。新プレーヤーの投入とともに、積極的に新しい利用スタイルを提案していって欲しいと感じる。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200608/06-0831/
□ニュースリリース(ソニースタイルモデル)
http://www.jp.sonystyle.com/Company/Press/060831.html
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【8月31日】ソニー、スポーツ仕様のスティック型ウォークマン
-アルミ/円筒形の防滴仕様。消費カロリーを確認
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060831/sony.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060809/sony1.htm

(2006年9月8日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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