【バックナンバーインデックス】



24時間駆動/ギャップレス再生対応の新nano
地味ながら確実な機能強化
アップルコンピュータ 「iPod nano」
9月13日発売
AppleStore価格:23,800円(4GB)



■ mini+nano=第2世代iPod nano?

 2005年最大のヒットモデルで、オーディオプレーヤー市場におけるAppleの地位を盤石のものにした「iPod nano」がいよいよモデルチェンジ。9月13日に第2世代iPod nanoが発売された。

 2005年9月7日に発売された初代nanoは、発売から約1年間売り上げ上位をキープし続けた。従来よりiPodが強かったHDDだけでなく、フラッシュメモリモデルのシェアも獲得。ポータブルオーディオプレーヤー市場での圧倒的なシェアを占めた。その最大の要因といえるのが、発売時の価格は2GBが21,800円、4GBが27,800円と、当時としては相場の半額近い、破格の価格設定。

合計5色のカラーバリエーションを用意

 第2世代となる新iPod nanoでは、新たに8GBを追加したが、AppleStore価格は17,800円(2GB)/23,800円(4GB)/29,800円(8GB)と、現在の相場としては安価ではあるもののインパクトはない。8GBモデルは相場から見るとかなりお手頃だが、2/4GBモデルは、クリエイティブのZEN V 2GB(14,800円)やZEN V PLUS 4GB(21,800円)など、競合製品のほうが安価で、初代iPod nano発売時の他社製プレーヤーを一掃するような価格設定とはいえない。

 今回のAppleの提案としては、むやみな低価格化を目指すのではなく、カラーバリエーションや、デザインなどで差別化を図る方針のようで、ボディカラーは2GBがシルバー、4GBモデルはシルバーに加え、ブルー、ピンク、グリーンを用意。8GBモデルはブラックのみとなる。

 カラーバリエーションかつアルミ筐体といえば、iPod miniを思い出すが、2代目nanoでは初代の薄型/軽量を踏襲しながら、miniで提案したデザイン性、ファッション性をもう一度前面に出して、アピールしていくようだ。iPodの基本カラーともいえるホワイトが無くなったのは残念だが、今回は4GBのシルバーモデルを購入した。

 パッケージもユニークで、片手で握れる程度のサイズのアクリルケースを採用し、中央にiPod nanoが収納されている。iPod nanoの“小ささ”を強く印象づけてくれるとともに、店頭で並んだ際にはカラーバリエーションを確認できるなど、新nanoの5色展開を活かすデザインといえるだろう。

 最初にこの小型パッケージを見たときに「どうやってCD-ROMを収納しているのか? 」と疑問に思ったが、結論から言うとiTunesを収録したCD-ROMなどは付いていない。つまり、「ネットからダウンロードする」ということ。取扱説明書なども付属せず、「クイックガイド」が付属するのみ。

 完全にネット接続を前提とした製品、ということになるが、圧倒的なシェアトップのiPodシリーズでこうした取り組みをスタートさせたことは、興味深い。ただ、オーディオプレーヤーに慣れた人や、買い増し/買い換えユーザーであれば問題は無いかもしれないが、初心者にとってはどうだろうか? 裾野が広がったオーディオプレーヤー市場だけに、戸惑うユーザーも多いのではと心配に思うのだが。


小型のパッケージを採用。CD-ROMは同梱されない 同梱品


■ デザイン一新した新nano

 付属品はイヤフォンと、USBケーブル、Dock接続用の新nano専用アダプタのみ。非常にシンプルだ。

初代iPod nanoより液晶輝度を向上している

 外形寸法は40×90×6.5mm(幅×縦×厚み)、重量は約40g。初代nano(40×90×6.9mm/42g)と並べて比較すると、ほぼ同サイズに見えるが、手に取ってみると新iPod nanoのほうが若干小さく感じる。旧nanoでは前面のアクリルパーツ部の角が立っていたが、新nanoでは一枚のアルミを折り曲げたようなラウンドシェイプのため、掌によりフィットしやすいためかもしれない。

 また液晶は、解像度こそ従来モデルと同じ176×132ドットだが、輝度を40%向上させているという。比べてみると輝度にも違いが感じられるが、色にじみも減っており、フォントの表示も新nanoのほうが見やすい。顕著な差というわけではないが、地道な前進を感じさせるのは嬉しいところだ。

 クリックホイール部の操作感が、若干新nanoのほうが堅く、プラスチック的な質感が安っぽくも感じるが、操作には問題ないだろう。イヤフォン端子やDockコネクタを本体下部に備えるのも、初代nanoと共通だ。

 また、新iPodシリーズでは、イヤフォンも一新されている。柄の部分が長くなっているほか、ユニット部の処理も丸みを帯びて耳にフィットしやすい。ただし、新nanoではイヤーパッドが省かれている。

前面に1.5型カラー液晶を装備する 側面。厚みは6.5mmで角がラウンドしており手にフィットする
上部にHOLDスイッチを装備 ヘッドフォン出力とDockコネクタを備える 背面

初代iPod nanoと比較


■ 機能を大幅強化した「iTunes 7.0」

iTunes 7

 楽曲データの転送にはiTunes 7.0を利用する。iTunes 7.0ではインターフェイスを一新。また、従来の3ペインのブラウザ画面に加え、アルバムアートを確認しながら検索できる画面や、音楽を再生しながらアルバムカバーなどを大きく表示する「Cover Flow」画面が用意され、右上部の検索窓左のボタンで切替可能となった。

 さらにビデオや映画配信などが強化されたiTunes Store(iTunes Muisc Storeから改名)のアカウントを持っていれば、アルバムアート(ジャケット写真)を自動取得する機能も備えている。

 試してみたところ、洋楽ではかなりの確率でジャケット写真が取得できる。ただし、邦楽についてはiTunes Store登録楽曲が少ないためか、取得できない場合が多いようだ。Windows Media Player 11βでも洋楽については取得確率が高いが、邦楽はほとんど取れなかった。日本の音楽配信の盛り上がりがまだまだ、ということなのかもしれないが、iTunes Store内での邦楽の充実を期待したい。


アルバムアートを中心とした検索画面を搭載 楽曲を選択して、アルバムのアートワークを入手を選択するとiTunes Storeからジャケット写真を取得する Cover Flow画面

 アルバムアートを基調にした検索画面はWindows Media Player 11によく似た印象もあるが、見やすくて使いやすい。また、Cover Flow画面は左右のカーソルキーで、アルバムアートを滑らかに移動しながら検索できるなど、かなりユニークなUIになっている。検索の容易さという点では、従来の画面のほうが使いやすいこともあるが、気分に合わせて画面を変えられたり、好みの画面を選べるようになったことは歓迎したい。

 特にCover Flow画面はジャケット画像の表示や、下部のスクロールバーを左右に動かした際の滑らかな描画などの美しさも魅力的。ただし、起動やジャケット付きのアルバム表示などの動作で、レスポンスが悪くなったと感じることもあったほか、転送時などにフリーズすることも何度かあった。今までのiTunesは安定性も魅力だっただけに、早々のアップデートを期待したい。

 また、iTunesにiPod関連機能をどんどん取り組む方針のようで、iTunes 7をインストールすると、同時にApple Software Updateというプログラムもインストールされる。従来iPod Updataerとして提供されていたiPodのファームウェアアップデートも、このプログラムを介してインストールされる。

iPodを接続するとファームウェアアップデートを促す Apple Software Update

 なお、購入直後の第2世代iPod nanoも同プログラムを用いて、Ver.1.01にアップグレードされた(購入時にはVer.1.0)。また、第5世代iPod(2005年10月購入)もiTunes 7と接続すると、自動的にファームウェアを取得し、アップデートの実行を促された。アップデータを適用すると、第5世代i(2005年10月購入)Podでもギャップレス再生機能などが追加された。

 なお、iTune 7とiTunes Storeは、新たにビデオダウンロードに対応したことが大きなトピックなのだが、現在のところ日本でのサービスは行なわれておらず、北米のみでの提供となっている。北米以外の地域でのサービス開始については、2007年となる予定。


■ 新検索モードを搭載。日本語対応は……

クリックホイールは新タイプ

 楽曲検索のメニューは従来のiPod nanoとほぼ共通。ただし、クリックホイールの少しツルっとした感覚は、従来のiPodシリーズのユーザーは違和感を覚えるかもしれない。

 クリックホイールにはホイール状のタッチパッドと、押しボタンを統合しており、指先でなぞってホイール操作で楽曲検索などを行ない、上下左右と中央部分のボタンを押し込むことで、メニューの選択や取り消し、再生/停止などの操作が行なえる。

 ミュージックモードでの楽曲検索は、プレイリスト/アーティスト/アルバム/曲/ジャンル/作曲者/検索などを用意。iPodユーザーはもとより、初めて使う人でもわかりやすく、楽曲検索は容易だ。


楽曲検索方法として[検索]を追加

 新たに追加されたのが[検索]モード。ミュージックモードに[検索]という項目が用意され、選択すると[a-z]、[0-9]までの数字が画面下のバーに表示される。クリックホールを回転させることで、任意の英数字を選択できる。

 この英数字の選択画面は、いわゆるインクリメンタルサーチになっており、例えば[B]と入力するとBを含む楽曲やアルバム、アーティストを表示、[Be]と入力するとBeから始まる楽曲やアーティストなどを表示する。

 また、この検索画面では特にアルバムやアーティスト、楽曲名などを区別せずに、とにかく条件にマッチした情報を一括して表示する。曲名の場合は、検索結果は単に曲名が表示されるだけだが、アーティスト名がマッチした場合は人物のアイコン、アルバムがマッチした場合はディスク状のアイコンがタイトルの前に付与され、判別可能となっている。


下のバーで英数字を選び、[a]、[au]と文字を入れるごとに絞り込み検索を行なう。アーティスト名は人物調のアイコン表示 アルバム名は円盤調のアイコンで確認できる

 なかなかユニークな機能なのだが、不満点もある。その最たるものは日本語での検索ができないこと。[検索]画面で、検索できるのはアルファベットと数字のみで、カナ検索はできないのだ。ウォークマンA/SonicStage CPの組み合わせでは、ジャストシステムのモジュールを利用して、漢字の楽曲にも読み仮名を追加して、プレーヤーで50音順での検索が行なえる機能を備えているが、今のところiPod nanoの絞り込み検索においては、日本語が利用できない。

楽曲再生画面

 開発が北米中心なので、こうした言語や地域の習慣などを、グローバルなサービス/製品に当てはめると、行き届かないところも残るのは仕方がないのかもしれない。しかし、せっかくの新機能だけに残念に思う。

 プレイリスト再生や、本体のみでプレイリストを作成する「On the Go」も引き続き搭載している。また、初代nanoと同様に、ジャケット写真表示機能も搭載。iTunes上で設定したジャケット写真をそのままnanoの液晶でジャケット写真が表示できる。また、再生中にクリックホイールの中央部を2回押すと、ジャケットのみの表示も可能だ。



■ 音質は良好。ギャップレスの効果は大きい

iTunesライブラリで、「ギャップレスプレイバック設定」を実施

 再生フォーマットは、AAC、MP3、WAV、Apple Lossless、AIFFとAudible。音楽再生面での最も大きな進歩といえば、ライブ盤などの曲間を意識させずに再生する「ギャップレス再生」に対応したことだろう。

 初代nanoでも、ギャップはさほど大きくなかったが、ライブ盤再生時には曲間ギャップが確実に存在した。新iPodシリーズでは、iPod/iPod nanoでギャップレスを実現したという。

 iTunes 7へのライブラリ登録時に「ギャップレス・プレイバック情報を決定」というステータス表示が行なわれ、全ライブラリに対してギャップレス再生情報を付与しているようだ。

【訂正】
 記事初出時に、新iPod shuffle(第2世代)がギャップレス対応としていましたが、アップルによるとiPod shuffleではギャップレス再生非対応とのことです。お詫びして訂正いたします。(10月24日追記)

 初代iPod nanoでギャップが知覚できてしまったLed Zeppelinの「How the West Was Won」を再生したところ、確かに曲間の空白という意味のギャップは全く無くなった。ただし、曲が完全につながっている箇所では、前の曲の音と次の曲が微妙に被るように感じるなど、少し違和感を感じたこともあった。それでも、違和感は大幅に減少しており、歓迎すべき改善といえるだろう。トップシェアのiPodがギャップレスを実現したので、まだ、対応できていないメーカーのがんばりにも期待したいところだ。

 新nanoのほか、新iPodもギャップレス再生に対応している。正直、シャッフル再生時にはギャップレスに意味は無いのでは? と考えていたが、nanoでシャッフル再生してみたところ、曲間ゼロで次々と選曲されていくと、従来とは違った感動がある。

 曲間がまったく無くなり、前後の曲がスムーズに繋がることで、新たな驚きがある。ハウスから突然フリージャズの豪快なサックスが立ち上がったり、ジャズの演奏が終了すると、ロックのライブ盤にスキップしオーディエンスの拍手が見事に繋がるなど、「この繋がりを残しておきたい」という発見があって面白い。

 なお、iTunes 7と初代nanoの組み合わせではギャップレスとならなかった。どういったテクノロジを利用しているのかは不明だが、新nano側の機能でギャップレスを実現しているようだ。なお、第5世代iPod(2005年モデル)は、最新ファームウェアの適用でギャップレス対応となった。

新イヤフォン

 イヤフォンも一新。柄の長くなり、ユニット部が丸みを帯びたデザインになった。装着時の感触が良くなったほか、旧イヤフォンでは、持ち運び時などで左右のハウジングがぶつかる際にカチカチと安っぽい音を立てていたが、素材の変更のためか新イヤフォンでは安っぽさは払拭された。ただし、イヤーパッドが同梱されなくなったので、耳にあわない人は別途イヤフォンを買い求めたほうがいい。

 音質面では旧イヤフォンと同傾向だが、高域のセパレーションなどに違いが感じれれ、新イヤフォンの方が好印象。本体の再生性能も良好で、基本的な音作りは共通ながら、ダイナミックレンジが若干広くなったように感じる。

 イコライザはAcoustic/Jazz/Danceや、Vocal Booster Spoken Word、SmallSpeakerなど24のモードを備える。ただし、カスタムモードは用意されない。


新イヤフォン(手前)ではユニット形状も異なっている イコライザ


■ バッテリ駆動時間向上が嬉しい

 その他、従来モデルと同様にフォトビューワや世界時計、ストップウォッチ、Outlookと同期したカレンダー機能、ゲームなどを備えている。

ストップウォッチ 世界時計も内蔵する

 フォトビューワ機能は従来と共通で、iTunesから転送したフォトデータをメインメニューの[写真]から閲覧できる。なお、ゲーム機能については、iTunes Storeで新たにスタートしたゲームダウンロード配信には対応せず、従来と同じ[パラシュート]など4つのゲームが内蔵されている。

 また、大きな強化ポイントは、バッテリ駆動時間が初代nanoの14時間から、24時間に強化されていること。約12時間連続でシャッフル再生しても、バッテリは半分以上残っており、カタログ値に近い再生時間が期待できそうだ。

 短期の出張や小旅行であれば、バッテリの心配なく活用できそうだ。通勤時の利用でも、同期回数を減らすことができるなど、この10時間の差は大きい。


■ 隙の無いマイナーチェンジ。日本でのサービス拡充に期待

 デザイン面以外での大きな機能強化はないが、細かな機能改善など、成熟期に入ったと感じられる。iPodシリーズ待望のギャップレス再生対応など、欠点をつぶしてきて、ますます隙のないプレーヤーになっている。

 価格も手頃で、製品としての競争力は非常に高い。間違いなく、年末商戦に向けてオーディオプレーヤーの購入候補の一番手に挙がる製品だ。ハードとサービスの両面の完成度は、やはり抜きに出ている。

 しかし、今回の検索機能など「日本市場」における対応という点では、まだ、機能向上の余地は残されている。ソニーのウォークマンAで搭載している「漢字対応50音順表示」などは、開発が日本主導でなければ実現が難しい機能だろう。さらなる機能強化とともに、他社の奮起にも期待したい。

 また、iTunes Storeの映画配信についても、日本はまだ蚊帳の外。専用セットトップボックスの「iTV」など、ネットワークサービスとホームネットワーク機器の新しい魅力的な提案も行なわれているだけに、日本市場でのさらなるサービス拡充と、価値あるソリューションを提供して欲しい。またそこに、他社が逆転する余地が残されているとも言えるだろう。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□ニュースリリース
http://www.apple.com/jp/news/2006/sep/13nano.html
□製品情報
http://www.apple.com/jp/ipodnano/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060913/apple2.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050909/dev128.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050908/apple1.htm

(2006年9月19日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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