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第309回:VLSC回路搭載のUSBオーディオ「SE-U55SX」を試す
〜 S/N比115dBを実現。音質もSE-200PCIとソックリ 〜



 2008年最初の記事は、「SE-U55SX」を取り上げる。発売から2カ月が経過しているので、出遅れ感はあるが、やはりONKYOのオーディオインターフェイス製品はチェックしておきたい。



■ SE-200PCIのコンセプトを元に設計されたUSBオーディオ

 ご存知の通り、ONKYOではWAVIOシリーズのオーディオインターフェイスとして「SE-200PCI」などのPCI接続製品と、このSE-U55SXなどのUSB接続製品の大きく2ラインナップがある。USBタイプの新製品として11月6日に発売されたSE-U55SXは2004年7月に発売された「SE-U55GX」の後継機種となるもの。

 ただ、ONKYOの発表によるとSE-U55GXをちょっと手直しして作ったというよりも、同社のヒット製品となっているSE-200PCIのコンセプトをそのままに、USB製品として設計し直したものだという。確かにSE-200PCI、再生専用のSE-90PCIの音はオーディオ再生用としてはなかなか高品質だ。

 まず、実際のシステムや音質の前に、見てちょっと驚いたのがそのフォルム。前機種である黒でシックなSE-U55GXのデザインとはまったく異なり、白地の縦置きで、変わった凹凸があってそこに3つのツマミが並ぶ不思議な形状。


SE-55SXの外観は黒基調のSE-U55GXとは異なり、白地ベースのモダンなデザイン SE-U55GXと並んで置いたところ

 液晶ディスプレイの後方に配置することを主眼としてデザインしたもののようで、後ろに置いたまま操作ができるデザインなのだ。また、液晶と並行して配置するだけでなく、直角に配置したり、脚部分を留めているネジを2つドライバではずせば、横置きも可能となる。


ディスプレイの後方にぴったりと配置できる 脚部分はネジで留められており、簡単に着脱が可能 脚部分を外して横置きも行なえる

 本来、このロゴが入り、ツマミを操作する面をフロントと呼ぶのだろうが、ここでは便宜上この右サイドをフロントパネル、左サイドをリアパネルとする。フロントパネルにマイク入力、ヘッドフォン出力、光デジタル入力が3つ並び、リアパネルにアナログ(RCA)の入出力がステレオで1組ずつ、光デジタルと同軸デジタルの入力が1つずつ、同じく光デジタル出力が2つ用意されている。結構な数の入出力を揃えている。


右サイドにはマイク入力、ヘッドフォン出力、光デジタル入力を備える 左サイドはアナログ音声(RCA)入出力を各1系統、同軸/光デジタル入出力を各1系統装備

 ただし、DTM・デジタルレコーディング系のオーディオインターフェイスとはまったく異なり、それぞれを同時に使えるというわけではなく、スイッチで切り替えて、いずれか1つを使うというのがSE-U55SXの基本コンセプト。INPUTというセレクタースイッチには、MIC、USB、LINE、DIGITALという4つの項目があり、それぞれを切り替えて使えるようになっている。


USBバスパワーには対応せず、利用には付属のACアダプタが必要

 また実は、PCと接続しなくても、オーディオ機器のセレクターとして利用できるというのも、ちょっと便利なところ。そもそもUSBバスパワーでは動作しないため、ACアダプタが必須ではあるが、電源さえ入れてあれば各入力からの信号を切り替えて利用することができる。

 ただ、ここで1つ疑問に思ったのは、計3つもあるS/PDIFの入力をどう切り替えるかということ。実際に試してみたところ、端子によって優先度があり、優先度が高い信号が入っていれば、それに切り替わるという仕組みになっている。具体的にはフロントのオプティカル、リアのオプティカル、リアのコアキシャルの順で優先度が高く、リアの接続で鳴っていても、後からフロントのオプティカルに入力があれば、自動的にそちらに切り替わる。

 一方、出力はオプティカルが2つとライン出力、ヘッドホン出力の計4つがあるが、いずれも同じ信号が出るだけなので、優先度を気にする必要はない。

 ただし、マイク入力だけは、なぜかS/PDIFへの出力はされない。不思議に思うのだが、マニュアルにもそう書いてあるので、仕様として納得するしかない。



■ S/Nは115dBを実現。音質もベスト

 PCとの接続という点では、Vista対応したという点も大きい。ご存知の通り、登場して1年も経過したが、Vistaで利用できるオーディオインターフェイスはまだ少ないというのが実情。各社とも少しずつ対応するドライバの公開が進みつつあり、2007年11月にはONKYOもようやくSE-200PCI、SE-90PCI、SE-150PCIのVistaドライバをリリースし、12月にはSE-U55GXのVista対応有償アップデート(7,350円)の提供が開始された。

 SE-U55SXでは、ドライバのインストールは不要で、接続すればすぐに認識されて使える。もちろん、XPにおいてもまったく問題なく使うことができる。ただ、標準ドライバということもあって、利用できるのはMMEドライバのみで、当然ASIOドライバは使えない。試しにドイツのPolytecのUSB-AUDIOドライバを使ってみたが、うまく認識することはできなかった。


ドライバのインストールは不要で、接続してすぐに利用できる Windows XPでも同様に動作する

 さて、ここでカタログ上も「SE-200PCI譲り…… 」とされているSE-200PCIとスペック上の比較をしてみよう。まあ、実はここで書かれているのは「SE-200PCIをUSBで再現した」といことではなく、あくまでも「デジタルノイズを除去する特許技術VLSC回路」が「SE-200PCI譲り」ということのようで、仕様は大きくことなる。

 まずSE-200PCIが24bit/192kHz対応(出力のみで入力は24bit/96kHzまで)であるのに対して、SE-U55SXは24bit/96kHzまで。また7.1chのサラウンド出力ではなく、あくまでも2chのステレオ出力であるというのも大きな違いだ。それに伴い、当然端子の数や形状も異なっている。

 ただし、S/Nを115dBにしたという点では共通。S/Nで115dBを実現したのはONKYOのWAVIOシリーズのUSBデバイスでは、これが初とのことだが、それを実現するために、基板上に完全に左右独立でシンメトリー配置し、左右の信号バランスを完全にシンクロさせたVLSC回路を搭載しているのだ。このVLSC回路に並んでいるチップを見ると、SE-200PCIと同じOPアンプであるTIの「NE5532AP」が使われている。またOS-CONが搭載されていたり、AUDIOコンデンサを多数配置しているという点でもよく似ている。ただし、基板の面積が広くなったため、部品の密度は低くなっているようだ。
内部基板 独自のアナログ波形生成技術「VLSC」用回路は、L/Rchで独立させ、200PCIと同様にシンメトリに配置している 200PCI(上)との比較。基板の面積が広くなったため、部品の密度は低くなっている

 一方、DAC、ADCはPC-200PCIとは異なるチップが搭載されているようだ。SE-200PCIでは、DACにWalfsonの「WM8740」を、ADCに「WM8776」を搭載していたが、SE-U55SXではDACにバーブラウン(TI)の「PCM1796」、ADCにAKMの「AK5385BVF」を搭載しているのだ。その意味では、音質は変わってきそうではあるが、実際に聴いてみると非常によく似た音がする。


OS-CONやコンデンサなどを多数配置 バーブラウン製DAC「PCM1796」


SE-55SXのサイン波

 実は、インプレスジャパンのDOS/Vパワーレポート2月号の特集記事において、最近のオーディオインターフェイスを使ったCDの聴き比べをしてみた。その結果、確かにSE-200PCIとSE-U55SXはソックリな音であり、比較した9機種の中ではベストの音質であったのだ。

 また、あくまでもCDレベルの音の再生品質を比較するという主旨から、16bit/44.1kHzの1kHzサイン波を再生させた音を、EDIROLのUA-1000で取り込んで、WaveSpectraで分析するという手法も使ってみたところ、S/NではSE-U55SXがダントツのNo.1という結果になった。それと同じ実験を再試したものが右のグラフだ。

 ここで、いつものようにRMAAを使ったテストをしてみたいところだが、SE-U55GXでもそうだったが、SE-U55SXもSE-200PCIなどとは異なり、その仕様上、録音と再生を同時に行なうことができず、RMAAでのループテストができないのだ。USB 2.0ではなくUSB 1.1を使っているため、そのような制限をしているのだろう。

 確かにオーディオ再生を目的にしているのであれば、録音と再生を同時に行なう必要はないので仕方がないところ。その意味でもDTM用途で使うオーディオインターフェイスではないわけだが、オーディオ再生用として見れば、かなりいい音質の製品であると断言できる。

□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www2.jp.onkyo.com/what/news.nsf/view/SE-U55SX?OpenDocument
□製品情報
http://onkyo.jp/wavio/se_u55sx/index.htm
□関連記事
【2007年10月30日】オンキヨー、24bit/96kHz対応のUSBオーディオI/F
−「SE-200PCIのUSBオーディオ版」。実売19,800円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071030/onkyo1.htm
【2006年12月11日】【DAL】PCIオーディオボード「SE-200PCI」開発者に聞く
〜 S/N比115dBを実現した設計のこだわりとは? 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061211/dal262.htm
【2004年7月5日】【DAL】オンキヨー製USBオーディオ「SE-U55GX」
〜 オーディオメーカーならではの高音質化アプローチとは? 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040705/dal152.htm

(2008年1月7日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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