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第330回:M-AudioのPCMレコーダ新モデル「MicroTrack II」
〜 24bit/96kHz対応。豊富な入出力が魅力 〜



MicroTrack II

 M-Audioから24bit/96kHzのリニアPCMレコーダ「MicroTrack II」が5月17日に発売された。価格は29,800円。

 2005年にリリースされたMicroTrack 24/96の後継にあたり、基本的にはMicroTrack 24/96の機能を踏襲しつつ、入力ゲイン幅を拡張するとともに、アナログの入力リミッターを装備し、データの転送速度も向上させているという。実際どんな製品なのか、試してみた。


■ マイクは外付け。標準フォンジャックも装備

 前機種のMicroTrack 24/96をご存知の方は、新しいMicroTrack IIを見れば、その形状がほとんど何も変わっていないことに気づくはずだ。大きさや形、重量、また端子の形状や位置、ボタン類の位置なども含めて何も変わっていない。ただ、色が従来のシルバー基調のものから、つや消しの黒基調のものになっているのとともに、本体左側面のスイッチのひとつが、従来のL・M・Hの3段階でのマイクゲイン設定から、バックライトの強・弱・オフに切り替わっている。

 とはいえ、MicroTrack 24/96を使ったことがない人も多いと思うので、改めて新機種のMicroTrack IIを紹介していこう。

 大きさ的にはRolandの「R-09HR」とほぼ同サイズで、24bit/96kHz対応。この24bit/96kHzへはMicroTrack 24/96でいち早く対応したことで、話題になった。もちろん、サンプリングレートは44.1kHz、48kHz、88.2kHzも選択できるほか、量子化ビット数も16bitが選択できる。また、MP3でのレコーディングも可能となっている。


左側面のスイッチ R-09HR(左)とほぼ同サイズ24bit/96kHzに対応 サンプリングレートは44.1/48/ 88.2kHzも選択できる

記録メディアはコンパクトフラッシュ

 電源はリチウムイオン電池を内蔵。USB端子経由で充電するタイプで、PCからの充電のほか、付属のACアダプタでも充電できる。スペック上はフル充電で4〜5時間のレコーディングができるとのことだ。また、記録メディアはコンパクトフラッシュ。最近はSDカードや、miniSD/microSDが主流で、コンパクトフラッシュ使った製品が少なくなってきた。メディアの価格もSDカードと比較すると割高で、MicroTrack IIではメディアが付属していない。

 ほかの主なリニアPCMレコーダと大きく異なるのは、KORGの「MR-1」と同様にマイクを内蔵していないということ。そのため、本体のみでレコーディングする場合には、付属のマイクを使う必要があるのだが、MR-1と異なり、マイクジャックに直接取り付けられる形状になっているのがユニークな点でもある。このマイク、比較的単純な構造で、T字型となっており、ステレオミニジャックのマイクジャックに挿して使う。

 直径5mm程度の小さなコンデンサマイクが2つ埋め込まれており、そこにウィンドスクリーンが被さっている。これを取り付けると、全体のサイズはちょっと大きくなり、力が加わると折れてしまわないか気になるところ。また、マイクにL/Rの表記がされていないのも難点ではある。


マイクはT字型の外付け ウィンドスクリーンも付いている

 MicroTrack IIのユニークな点は、さまざまな入力端子を装備していること。付属のマイクを取り付けるステレオミニジャックのほかに、1/4インチのTRSフォンジャックがL/Rの2つ、RCAピンのラインインがL/Rの2つ、さらにコアキシャルのS/PDIF入力も装備している。どの入力を用いるかは、メニュー設定の入力ソース切替で行なう。このうちTRSフォンジャックを用いた場合は、ファンタム電源も利用できるため、レコーディング用のコンデンサマイクも使えるのが大きな特徴だ。


TRSフォンジャック(左)や、同軸デジタル入力(右)も装備 入力ソース切替の画面

メインメニュー

 そのほか、いくつか設定項目をいじってみたが、使い勝手はなかなかいい。左サイドのMENUボタンを押すとメニューが表示され、右側のNAVホイールで選択、決定を行なう。階層構造も1つしかないし、項目もそれほど複雑なものがないため、特にマニュアルを見る必要もなく使うことができた。


メニュー項目の例



■ 外部マイク/ミキサー利用のレコーディングに

モニタリングON/OFFの設定画面

 さて、今回は、付属のマイクを使うことにするが、まずはいつものように、近所で野鳥の声を録るところからはじめてみた。24bit/96kHzに設定した上で、ヘッドフォンを装着。この時点でRECボタンを押すと、デフォルトの設定でモニタリングがオンになっているため、マイクからの音がヘッドフォンで聴こえてくる。音量調整はフロントのレベルボタンで行ない、左右別々に設定できるが、デフォルトではL/Rがリンクされているので、片方のボタンだけで同時に調整可能だ。また、設定はかなり細かく、グラフィック表示で数値は出ないものの、数えてみると0〜72の段階で設定できるようだ。

 モニタリングしてちょっと気になったのが、ノイズの多さ。といってもS/Nが悪いのではなく、ファンの音や雑踏などを強く拾ってしまうのだ。後で調べてみたところ、録音された結果では、とくに気になるものではなかったので、内蔵のヘッドフォンアンプの周波数特性のせいかもしれない。


録音サンプル
野鳥の声 bird.wav
(16.9MB)
編集部注:録音ファイルは、24bit/48kHzで録音したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 風が比較的少なかった日だったからかもしれないが、風切り音などはほとんど入らなかった。またマイクの位置が離れているためなのか、グリップノイズなども気にならなかった。結果的にほとんどカラスの声という感じではあったが、ステレオ感もそれなりにある音が録れている。音量を大きめに設定してモニタしていたせいか、録音している際は、あまり大した音質ではないのではと思っていたが、PCで再生してみると、かなりキレイに録れていていた。いったんノーマライズをかけた結果を掲載しておくので、聴いてみてほしい。

 また、今回は新規搭載のリミッターは使わなかったが、確かにしっかり効いてくれることは確認できた。もうひとつ用意されたのがマーカー機能。これはレコーディング中にMENUボタンを押すと、そのタイムコードにマーカーを打っていくというもので、何度でもマーカーを打つことは可能なため、長時間録音する場合などに役立つ。このマーカーはBWF(Broadcast WAVE Format)の規格に準する形で記録され、保存したWAVファイルをBWF対応の波形エディタなどで読み込むとマーカーが確認できるようになっている。


リミッターの設定画面 録音中にMENUボタンを押すとマーカーを打つことができ、BWF対応の波形エディタなどで読み込める

録音サンプル : 楽曲(Jupiter)
【音声サンプル】(6.93MB)
楽曲データ提供:TINGARA
編集部注:録音ファイルは、24bit/48kHzで録音した音声にノーマライズをかけた後に、アンチエイリアスをかけて44.1kHzにリサンプリングし、ディザーをかけて16bitにしています。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 では、次に、CDのサウンドをスピーカーで鳴らした音を録る実験も行なってみよう。いつものようにTINGARAのJUPITERを使わせていただいている。

 MicroTrack IIには三脚用の穴などは装備されていないので、台の上に置く形で設置し、24bit/96kHzでレコーディングしてみた。さっそく周波数分析してみた。聴いた感じで、とくに違和感はなかったが、波形で見ると10〜16kHzあたりの中域がやや弱めの感じではある。

 もともとが16bit/44.1kHzという音であるため、24bit/96kHzでそのまま掲載しても、あまり大きな意味はないため、いったんノーマライズをかけた後に、アンチエイリアスをかける形で、44.1kHzにリサンプリングし、最後にディザーをかけて16bitにした音を掲載しておこう。

 以上、M-AudioのMicroTrack IIを試用してみてたが。前機種とそう大きく変わりはないが、価格的にも性能的にもなかなか、完成度が高い製品といえそうだ。内蔵マイクでない点が気になる人も多いとは思うが、外部マイクでのレコーディングや、ミキサーコンソールなどに接続してのレコーディングを基本で考えている人であれば、逆に使いやすい製品といえそうだ。メディアとしてコンパクトフラッシュが割高なのが気になるが、SDをコンパクトフラッシュに変換するアダプタなどを1つ持っていれば、そうした問題も解決できるはずだ。


□M-Audioのホームページ
http://www.m-audio.jp/
□製品情報
http://www.m-audio.jp/products/jp_jp/MicroTrackII-main.html
【5月16日】M-Audio、24bit/96kHz対応のステレオPCMレコーダ
−外部マイク対応。デジタル入力も装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080516/maudio.htm
【ポータブル リニアPCM/DSDレコーダ一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080228/pcmrec.htm

(2008年6月16日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
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