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第336回:クリエイティブの“日本向け高音質”Sound Blaster
~ 「Professional Audio」と、最上位「Fatal1ty」をテスト ~



高音質モデル「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Professional Audio」

 先日、クリエイティブメディアからSound Blasterの新シリーズ、PCI Express Sound Blaster X-Fi Titaniumシリーズ3製品が発表され、まもなく発売される。

 その名のとおり、PCI Expressに対応したモデルであり、DSPコアにはこれまでのX-Fiシリーズとほぼ同等のチップが搭載されているという。中でも注目したいのが日本側からの要請で作られ、現状日本のみの発売となっているX-Fi Titanium Professional Audioという高音質モデルだ。今回はこのモデルを中心にどんな製品なのかを紹介していこう。


■ 本体にEMIシールドを採用

 今回発売される3製品は、上から順に「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Series」、「X-Fi Titanium Professional Audio」、「X-Fi Titanium」。いずれもオープンプライスではあるが、直販サイトであるクリエイティブストアの価格が22,800円、17,800円、12,800円となっている。

最上位モデルの「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Series」

 3モデルとも最高で24bit/192kHzのステレオ出力、または24bit/96kHzの7.1chの出力に対応し、入力は最高で24bit/96kHzのステレオ。仕様上はS/Nは109dBとなっており、スペック上は従来機種であるSound Blaster X-Fiシリーズと同様だ。もっとも正確にはX-Fi Platinum Fatal1ty Champion Seriesなどは、現行製品。接続バスがPCIであり、今回のシリーズとは異なることから、当面は併売される予定だ。

 Fatal1ty Champion SeriesとProfessional Audioの2モデルにおける既存製品と見た目上の大きな違いは、サウンドカード本体にEMIシールドが施されていることだろう。最近この手のシールドを搭載した機材をよく見かけるようになってきたが、ついにSound Blasterもこれに対応したわけだ。どちらがいいのかはよくわからないが、 Fatal1ty Champion SeriesとProfessional Audioでは、そのシールドの素材が異なっている。

 試しに、それぞれのシールドを取り外してみると、ほとんど違いはなさそう。唯一違いがわかったのは右側にあるHDMIの端子がProfessional Audioに搭載されていることだ。これはHDMIヘッダ端子であり、内部デジタル入力端子を持つグラフィックボードに接続することで、グラフィックボードのHDMI出力から映像とオーディオを同時に出力することが可能になる。

シールドを取り外したところ。左がFatal1ty、右がProfessional Audio

 チップ名を確認してみると「CA20K2」と書かれている。Creative X-Fi Xtreme Fidelityなどに搭載されていたものとはちょっと違うようだが、調べてみるとPCI Express 1.1のインターフェイス機能などが搭載されているようで、対応サンプリングレートとしては192kHzはもちろん、最高で384kHzまで対応しているもののようだ。

 一方、ボードに搭載されている端子は両モデルとも同じで、ステレオのライン入力兼マイク入力および7.1chの出力がすべてステレオミニの端子で並んでいる。今回はこの2モデルを借りたのだが、最大の違いはFatal1ty Champion SeriesにはX-Fi I/Oドライブというものが付属していること。5インチベイに入るものだが、外側のシャーシを取り外すと3.5インチベイにも収まるのが面白いところ。

 ただしRCAピンプラグの端子はなくなってしまう。また、フロントドア付のパソコンケースでも邪魔にならないようにボリュームノブは埋め込み式になっている。これを付属のケーブルでX-Fi Titanium本体と接続するわけだが、この端子はProfessional Audioにもあるので、X-Fi I/Oドライブが単体発売されれば、接続することが可能になる。


Fatal1ty(左)とProfessional Audioの入出力端子部

Fatal1tyにはX-Fi I/Oドライブが付属している ボリュームノブは埋め込み式

Professional Audioにはステレオミニ-RCAアナログのケーブルが4本付属

 それに対してProfessional Audioにはステレオミニ-RCAアナログのケーブルが計4本付属している。このケーブルには結構こだわったようで、従来の安いケーブルではなく、しっかりとシールドされたケーブルで金メッキが施されたプラグになっている。長さ的には4本とも2mのケーブルであり、ちょっとしたプレミアム感はある。

 前述のとおり、現在のところ、このProfessional Audioは日本のみの製品。ご存知のとおり、クリエイティブはシンガポールのCreative Technologyが本社であり、米国のCreative Labsとともに製品の開発を行なっている。そのため、基本的には海外から来た製品が国内で発売されるという流れになっていた。しかし、Professional Audioは日本からの要望で作られたものであり、特に音にこだわりのある日本人が満足できるようにと設計されたものだ。最上位機種であるFatal1ty Champion Seriesではなく、その次の製品がより高品質に作られているというのは、ちょっと面白いところだ。


■ バンドルソフトにも違い

 Fatal1ty Champion Seriesと、Professional Audioの違いはバンドルされているソフトウェアにもある。USB Sound Blaster Digital Music SX、およびUSB Sound Blaster Digital Music LXにバンドルされていたCreative Media ToolboxがProfessional Audioにもバンドルされているのだ(Fatal1ty Champion Seriesには体験版のみバンドルされており、オンライン購入で正規版へのアップデートも可能)。

 このCreative Media Toolboxは、主にアナログレコードやアナログテープなどの素材をデジタル化するためのツール群。音楽の録音用ツール、ノイズリダクションツール、ノーマライザ、ファイルフォーマット変換ツールなど計11のツールが集まったものなのだ。ちょっと面倒であったのは、インストールするにあたり、オンラインでのアクティベーションが必要なこと。計3回までしかアクティベーションすることができず、それ以上の場合には、クリエイティブへ連絡をして解除してもらう必要がある。

 こんなプロテクトをかけるくらいなら、ハードウェアをチェックしてドングル代わりに使えるような仕組みを作っておいてほしかったところではあるが……。機能的にはまずまず。個人的には波形編集ソフトを使って操作したほうが正確で細かな処理ができていいように感じたが、初心者にとってはわかりやすくていいかもしれない。


Creative Media Toolboxにあるアナログ素材のデジタル化ツール 録音用ツール ノイズリダクションツール

ノーマライザ ファイルフォーマット変換ツール

 実際にドライバ類をインストールして使ってみたところ、基本的には従来からあるSound Blaster X-Fiシリーズと同様であり、エンタテインメントモード、オーディオクリエイションモード、ゲームモードの3つを切り替えて使うようになっている。また今回、特にテストはしていないが、CDやMP3サウンドを高音質化するというX-Fi Crystalizer、EAX、またグラフィックイコライザなどの機能も搭載されている。


エンタテインメントモード、オーディオクリエイションモード、ゲームモードを用意 X-Fi Crystalizer グラフィックイコライザ

 DTM用途で使いやすいオーディオクリエイションモードにおいては、インプット、マルチチャンネルWave、3DMIDI、ASIOのそれぞれの設定がミキシングコンソール風にできるようになっており、コーラス、フランジャー、リバーブ……といったエフェクトもインサーション、およびセンド・リターンのエフェクトとして利用できるようになっている。

インプット マルチチャンネルWave 3DMIDI
ASIO フランジャー リバーブ



■ PCI Express製品の選択肢として

 では、実際その音質を測定するため、いつものようにRMAA Proを利用してテストした。方法としては、ステレオミニジャックのフロントL/Rの出力とラインインのL/Rの入力を短いケーブルで直結して、そのループ信号を測るというものだ。ドライバはカーネルミキサーなどの影響を受けないように、ASIOを用いている。

 まずProfessional Audioから試した。24bit/48kHzと24bit/96kHzのそれぞれで行なってみたが、かなりいい結果が出ているのが見て取れる。いわゆるS/Nを見るTHD+Noiseが-87.3dB、-88.5dBという結果で、評価はGoodと出てしまっているが、実測でこれだけ出ていればかなりいいだろう。

 次にFatal1ty Champion Seriesを試してみたところ、ほぼ同様の結果が出た。しかし、こちらはTHD+Noiseが-90.2dB、-90.3dBと若干ながらProfessional Audioよりもいい結果となり、評価もVery goodになっている。この辺は誤差のうちかもしれないが、いずれにせよ、Professional Audioがいいとはいえ、カード単体でいえば、Fatal1ty Champion Seriesと比較して際立っていいというほどではなさそうだ。

RMAA結果。左から順に、Fatal1tyでの24bit/48kHz、24bit/96kHz、Professional Audioでの24bit/48kHz、24bit/96kHz

 以上、新しいPCI Express Sound Blaster X-Fi Titaniumについて検証したが、気がついてみると、最近のデスクトップマシンは拡張バスがPCIからPCI Expressへと移り変わってきており、オーディオインターフェイスも内蔵ならばPCI Expressという時代になってきたようだ。今後内蔵のオーディオインターフェイス/サウンドカードを選ぶのであれば、これら製品は性能的、機能的、また価格的に見てもなかなかいい選択肢のひとつといえそうだ。


□クリエイティブメディアのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12967
□関連記事
【7月16日】クリエイティブ、PCI Express接続のSound Blaster X-Fi
-カード部をEMIシールド。日本企画のオーディオモデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080716/creative.htm

(2008年8月4日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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