【バックナンバーインデックス】



第255回:今後のアニメはキャラも3D化?
新サウンドだけでも買う価値あり。高いけど
「攻殻機動隊 2.0 Blu-ray BOX」

 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 「2.0」ってなんですか


GHOST IN THE SHELL/
攻殻機動隊 2.0 Blu-ray BOX
(初回限定生産)

(C)1995・2008士郎正宗/
講談社・バンダイビジュアル・
MANGA ENTERTAINMENT
価格:13,440円
発売日:2008年12月19日
品番:BCXA-0101
収録時間:約84分(本編)×2
     約42分(特典)
映像フォーマット:MPEG-4 AVC
ディスク:片面2層×2枚 + 片面1層×1枚
画面サイズ:ビスタ
音声(2.0版):
 (1)日本語 6.1ch(ドルビー TrueHD)
 (2)日本語 ドルビーサラウンド(リニアPCM)
音声(旧版):
 (1)日本語 ドルビーサラウンド(リニアPCM)
 (2)英語 ドルビーサラウンド
販売元:バンダイビジュアル株式会社

 今年の夏にバンバンCMが流れ、押井監督が「笑っていいとも!」にまで出演してなんとも微妙な気分になった「スカイ・クロラ」。公開は8月だったが、それに先立つ7月12日に、押井監督のもうひとつの“新作”が封切りされたことはご存知だろうか。それが12月19日にBlu-ray発売された「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0」である。

 もはや説明不要の感もあるが「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」と言えば、'95年に公開され、押井監督の名を世界に知らしめた代表作。ビルボードの1位を獲得したことは「ジャパニメーションが世界で人気に!!」という説明をする時の枕詞のように使われているので、「観たこと無いけど名前は知ってる」という人も多いだろう。

 最近ではテレビアニメ版「STAND ALONE COMPLEX」シリーズも作られ、難解とマニアックと爽快アクションを煮詰めたような映画のエッセンスを踏襲しつつ、わかりやすいポリスアクションという側面も併せ持たせることで、幅広い層から支持を集めた。監督は押井氏の愛弟子とも言える神山健治氏だ。

 そんな「攻殻ムーブメント」の最初とも言うべき「GHOST IN THE SHELL」が、13年ぶりに3DCGやビジュアルエフェクトを駆使して、全カットをバージョンアップ。音声も従来のドルビーサラウンドから6.1chサラウンドへと再構築。キャストによるアフレコも収録し直され、まったく新しいリメイク版として作られたのが「2.0」である。

 上映館が限られていたので、「気になっていたけれど観ていない」というファンも多いだろう。直接的な繋がりが無いので「テレビ版を観て興味を持ったけど、映画は観ていない」という人もいるだろう。旧版と2.0ではどこが違うのか? 、2.0をいきなり最初に観ても大丈夫か? などを中心にレビューしてみたい。

 ソフトラインナップとしては、2.0のBDビデオ単品版(8,190円)、2.0と旧版をセットにしたBOX(13,440円)が用意されており、旧版のBDビデオ単品版は無い。旧版BDは2007年8月にDVDをセットにしたバージョンが10,290円で発売されている。2.0のBOXに付いている旧版BDは、2007年のDVDセット版のBDと同じものである。今回は2.0と旧版をセットにしたBOXを購入した。


■ ものすごく便利そうな未来社会

 舞台は、デジタルネットワークが高度に発展した2029年。人間の脳は電子化(電脳化)され、直接ネットワークに接続。意思やデータ簡単にやりとりできる時代が到来していた。だが、その技術進歩と共にコンピューター犯罪やサイバーテロも高度化。政府はそれに対抗すべく、草薙素子(くさなぎ もとこ)を隊長とする、精鋭サイボーグによる非公認の超法規的特殊部隊・公安9課、通称“攻殻機動隊”を組織する。

 機械で作られた眼や腕など、体に義体(ぎたい)を組み込んだ隊員達は、常人を上回る戦闘/運動能力を持っているのが特徴。それ束ねる素子は、全身を擬体化した戦闘マシーンとも言える女性だ。

 ある日、防壁を突破し、人間の脳をハッキングして人々を操り人形のようにしてしまう凄腕のハッカー“人形使い”が日本に出現する。調査を進める公安9課は、その姿無きハッカーの正体が、ネットワーク上で情報を収集する一種のプログラムであることを突き止める。だが、義体の中に入り、攻殻機動隊の前に現れた“人形使い”は、自らが「電脳の海で発生した生命体だ」と告げるのだった……。

攻殻機動隊を率いる素子 素子の相棒、バトー 正体は謎に包まれているハッカー、人形使い
(C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 超人的な能力を持ったキャラクター達による、SFポリスアクションのように思えるが、半分くらいは“生命”の根源に迫る哲学的な内容が占める。登場人物達のテンションは低く、銃撃シーンも織り交ぜつつも、淡々と物語が推移。漂う雰囲気はハリウッドアクションというよりヨーロッパ映画のようで、悪い意味での“アニメっぽさ”はまったく無い。13年前に作られたとは思えない先進的な内容は、後に続く多くの作品に影響を与えている。

 物語の舞台は、頭の中に無線LANや携帯電話を埋め込み、思っただけで相手と会話したり、ネット検索できたりするようになった世界だ。脳みそだけ取り出して機械の体に乗せ代えることもOK。そしたら義体にプログラムしか入ってないロボットが「私も生命体だ」と主張。「お前は生命じゃないだろ」と突っ込みを入れたら、「じゃあ生命ってなんだよ。情報を集めて処理するのが生命なら俺も生命じゃん」と聞き返され返答に詰まるという内容だ。

 明確な答えが出ない、禅問答のような内容でもあるが、この“主題”が映画の中央をしっかり貫いていることで、単純なドンパチSFアクションとして消費されず、現在までも人気を保つ普遍的な内容を内包している。続く「イノセンス」は、そんな時代の“男女の関係”や “肉体が持つ意味” という一歩先を描いた作品であり、どちらも難解だが、続けて鑑賞すると理解度が深まるだろう。

 ちなみに士郎正宗氏による原作漫画「攻殻機動隊2」は、そこから3歩くらい先に行ってしまい、「三叉樹と呼ばれる宇宙構造概念の1イメージで、通常64階層の不可逆的要素が3本の枝を移動し……」みたいな説明が普通に出てくるコミックになった結果、私のようなファンでも「すんません。頑張って最後まで読みましたが意味がまったくわかりません」というような内容になっている。ので、“生命ってなんだろね”ぐらいのレベルで留めていただけるとありがたいのだが……。

 ビルの上にジャンプで飛び乗るような義体アクション、周囲の光景を表示する服を着込むことで透明人間になれる“光学迷彩”など、ギミック的な面白さや、それを使ったアクションシーンの独自性は今観ても色褪せていない。主題は重要だが、この作品が世界で熱狂的に受け入れられたのはやはりこのアクションあってこそだ。

 押井作品らしい、銃器へのマニアックなこだわりも外せない。サブマシンガン(UZI)で強装弾(火薬を増量した特殊弾)を撃ち、腰だめで構えているのに反動で体が後ろにスライド。クモのような多脚戦車に素子がアサルトライフルで挑む無茶な戦闘シーンでは、戦車のガトリング砲を見事な狙撃で破壊した後、使った弾丸が特殊でライフルのバレルが磨耗したのか、慌てて戦闘中にバレル交換を行なうなど、銃器マニアがニヤリとする描写を、何の説明もなく挿入する不親切さが心憎い。

 銃器は架空のものもあるが打ち出すのはあくまで鉛弾であり、ビーム光線が飛び交うほど未来ではない。現実世界との接点が、絵空事のSF世界に現実味を与える。こうした細かいディティールを積み重ね、映像/セリフ/音声のあらゆる面で洪水のように情報を放出し、観客を圧倒する。“映画は世界観”を信条とする押井監督ならではの手法だ。

 また、驚異的とも言える作画クオリティも忘れてはいけない。その後に続く押井作品だけでなく、日本のアニメ全体を支えるアニメーターが大勢参加しており、今では1つの作品にこれだけのスタッフを集めるのは不可能だと思えるほど。特に冒頭の沖浦氏が手掛けたオープニングパートは「すみません、これは人間が手で描いた映像ですか」と聞きたくなるほどのクオリティ……なのだが、ここには2.0になって大胆なアレンジが加えられている。


■ 2.0になって変わったこと

 2.0を観てまず気付く変更点は画面全体を覆うカラーエフェクトだ。旧版は青みがかった緑をベースカラーとした、冷たさを感じる映像だったが、2.0では「イノセンス」と同じような赤みのある映像になり、寒暖のイメージが大きく変化。個人的には退廃的なマイナスイメージを感じる旧版と、未来への予感を感じさせる2.0という印象を受けた。

 また、冒頭の暗殺シーンや義体メンテナンスを受ける素子、登場するヘリ、遠景での街並みなど、各所に3DCGが取り入れられている。全体に赤味のエフェクトをかけることで3Dと2Dの映像を馴染ませる試みが行なわれており、ビルやヘリなど、人間以外の物体に関しては成功していると言っても良い。ただやはりキャラクター=素子の3DCG映像は正直言って“ツライ”。

 もちろんCGのクオリティが低いわけではなく、最新ゲームのプリレンダリング映像くらいの3D素子が登場。この映画の“顔”とも言える、冒頭部、ビルからの落下、暗殺、光学迷彩を着て空中に溶けるように消える……という一連のシーケンスを再現するのだが、後に登場する2Dの素子とあまりにマッチしない。

 なぜマッチしないのかと聞かれたら「3Dと2Dだから」と答えるしかない。「ヘリやビルはCGでも良くて、なんで人間はダメなんだ?」と聞かれたら「知らないけど変じゃん!」と、逆ギレするしかないほど理由はよくわからない。映像的には良くできているとは思うし、実験的な試みに賛辞も送りたいが、映画の流れがぶった切られている感覚はぬぐえず、観客としてはやはり“不要な変更”だと感じる。

 公開しない実験ならそれでも良いが、お金をとる完成映画として作品の流れをぶった切るのはNGだ。やるなら背景は2Dのままでキャラは3DCGに全部変更するか、映画そのものを全部3DCG化すべきだ。「それは攻殻機動隊3.0で」、「5.0で」と言われるのかもしれないが、観客には関係ない。個人的には今の中途半端なデキは「2.0」には遠く、せいぜい「1.3」くらいの“挑戦度合い”だと思う。「2.0」を掲げるのならば、思い切った失敗/成功をして欲しかったところだ。

オリジナル版、冒頭の素子のダイブシーン 3DCGでリニューアルされた2.0の同シーン。素子が3DCGで描かれているほか、全体の色調がイノセンスに近くなっている
(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT (C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 一方、新録のHDサラウンドには“最高”の一言を贈りたい。スカイウォーカーサウンドの手により生まれ変わったドルビー TrueHD 6.1chサラウンドは、旧版のドルビーサラウンドとはまさに別次元。どのシーンがどう変わったというレベルではなく、全編の音場の広さ、低音の迫力、銃撃シーンの鋭い高域の切れ込みなど、別の映画と言っていいほど印象が変わる。

 暗殺シーンで少佐がつぶやく「あらそう」や、人形使いに関して話し合う時のセリフなど、随所にリアチャンネルが活用され、かなり派手目のサラウンドデザイン。装甲バンの爆発シーンや、ヘリのタービンのうなりでサブウーファの筐体が振動する。中低域の音量が豊富なサラウンドはアクションシーンを何倍も楽しいものにしてくれる。博物館での戦車との戦闘シーンでは、残響による広さの表現も秀逸だ。

 ただ、多脚戦車のガトリングの連射音が遅くなり、動くときの「チュイー、チュイー」という可愛いモーター(?)音が無くなっていたのはショック。ガトリング砲(確か7.62mm)は、旧版では「ダララララーー!!!」という圧倒的な連射スピードだったが、今回は「ダンダンダンダン」と一発一発が重いが遅く、音だけ聞いていると50口径(12.7mm弾)のようにも聞こえる。背後に「ヴォーン」という弾丸供給システム(?)の稼動音が聞こえるのが2.0のカッコ良さだが、絵と音の連射スピードがイマイチ合ってないように見える。我ながら細かいことにイチャモンを付けているとは思うが。

 イチャモンついでに新録アフレコ。草薙素子(田中敦子)、荒巻(大木民夫)、バトー(大塚明夫)、トグサ(山寺宏一)、6課の中村部長(玄田哲章)と、メインキャラの配役はいつも通り。退廃的なけだるさが漂い大人っぽかった旧版と比べ、2.0の素子/バトーの演技はちょっとオーバー気味と感じるが、違和感を感じさせるほどではない。問題は“人形使い”を演じるのが家弓家正から榊原良子に変わったことだ。

 榊原良子は押井監督大のお気に入りベテラン声優で、宮崎アニメで言うところの島本須美(ナウシカ/クラリス/もののけ姫のトキなど)のような存在だ。旧版の家弓家正は、アニメで言えばナウシカのクロトワ、アニメに詳しくない人には「世界・ふしぎ発見!」のナレーションの声の人だ。榊原良子は、ナウシカの“クシャナ殿下”であり、ちょうどクシャナとクロトワのコンビが入れ替わった状態だ。

 劇中の“人形使い”は、女性の義体に入り、“生命の根源”や、“種としての進化”をと語る、神性の高いキャラクターとして登場する。寒気がするほどの美女が、初老の男性の朗々とした声で喋るという“気味の悪さ”が性別を超えた神秘性を漂わせていたのだが、女性(榊原良子)の声になると「なんか普通」に聞こえてしまう。素子と人形使いという女性同士のからみが2.0特有の艶っぽさを生んではいるが、個人的には旧版のインパクトが強すぎるというのが正直な感想だった。

 随所に登場する端役の声が変更されているのも気になる。ゴミを捨てようとしたオッサンの声が立木文彦に変わっていて思わず吹き出した。ただ、清掃局員が千葉繁から変更されていたのは納得いかない。押井作品でシゲさんの声が聞けないのはちょっと寂しかった。


■ 綺麗にまとめられた特典

 HDサラウンドの印象は既に書いてしまったので、映像面を。気になるのは旧版BDと、2.0の映像クオリティの違いだが、エフェクトが加えられた別の映像に生まれ変わっているため、正直言って比較が難しい。色味を抜きに観てみると、旧版はセルを撮影した質感がそのまま残っており、解像感が高く、1本の線の中にある太さの違いなどもクッキリと見分けられる映像だ。

 2.0は赤いエフェクトが加えられただけでなく、画面左上など、どこかの方向から光が差し込み、フレアっぽい効果が薄くかけられており、全体的に映像コントラストが低くなっている。若干解像度も甘くなり、シットッリとした描写に変わった。ゴミや染みは目立たないようになったが、撮影時の画面の細かい揺れは残っている部分もあった。“素材のアラもそのままの旧版”と“しっとり画質で雰囲気重視の2.0”と表現できそう。ビットレートは「2.0」が35〜40Mbpsを中心に推移、旧版は30〜35Mbps程度で2.0の方が高いように見える。どちらも大きな破綻は無い。

 BOXに付属するのは特典ディスクと、オリジナルサントラのダイジェストCD。2.0の単品版にはこれらのディスクは付属しない。特典ディスクには「REBORN」と題し、押井監督はどうしてリニューアルをしたのか、どのような工程で作業が進められたかをまとめた、42分のドキュメンタリーが収録されている。映像コンテンツはこれ1つだが、情報量が多く、必要な情報も得られるため、満足度は高い。

 リメイクにあたっては、全てのシーンを分解。繋がりなどを考慮してどこを3D化し、修正するかなど、細かいポイントを押井監督が指示。それを元に各スタッフが作業したという。冒頭にその指示書が大写しになるが、BDの解像度があると「素子のサイズもっと小さく」、「冒頭はイノセンスの冒頭くらい観念的に」など、指示内容を読み取ることができて面白い。

 CG担当の林弘幸氏によれば、イメージが崩れるため、キャラクターの3DCG化には最後まで反対していたという。同氏は押井監督の最新作「スカイ・クロラ」でもCGを担当しているが、キャラクターは2Dのまま。しかし、監督の「やってみよう」という強い意思に押され、一歩踏み出したのだという。

 エフェクトを担当したのが江面久氏。画面全体に赤味を加える色調整だけでなく、3DCGを2D部分と違和感なく馴染ませる重要な仕事を任されている。「フィルム時代の2D映像なので簡単には馴染まないだろう。3D映像をボカすなど、あえて劣化させて2Dに歩み寄らせることも考えていた」というが、林氏が仕上げた3D映像のクオリティが非常に高く「これをボカしたらカットそのものの意味が無くなってしまう」と考え、3Dの解像感やなだらかな色調を維持したまま融合させるという難しい道を歩むことになる。特典ではソニーPCLの試写室で実際の投写で色味をチェックしながら、追い込んでいく苦労の様子もとらえられている。

 音声面ではスカイウォーカーサウンドでの作業の模様が収録されている。面白いのはスタジオ側の外国人スタッフが「ハリウッドの監督はみんな自分が天才だと思っているので自分のアイデアは誰よりも優れていると信じている。でも押井さんは、お互いが良いアイデアを持っている事を知っているのでとても良いコラボレーションができる」と嬉しそうに語っている姿。「いつも我が強い監督とばっかり仕事して大変なんだろうなぁ」と妙に同情してしまった。


■ サラウンドだけでも買う価値あり。高いけど

 鑑賞後の素直な感想は「映像は昔のままで、音声だけHDサラウンド版を収録したバージョンがあれば……」というもの。ただ、「絶対そうして!」と言うよりも「できたら……」というニュアンスが強い。というのも、違和感があるのは素子の3DCGだけであり、ヘリや街並み、コンピューター画面など、そのほかのCG部分は過去の映像よりも良いと感じるからだ。

 HDサラウンドは文句なしに2.0の方が素晴らしいため、3D素子を気にしないならば2.0の方が断然オススメ。旧版のファンで、HDサラウンド対応のAVアンプを持っている人は、値段は高いがこのサウンドを聞くためだけでも2.0を買う価値はある。初めて攻殻機動隊を観るという人にも2.0の方が良いだろう。

 ただ、残念なのは旧版の単品BDがラインナップされていないことだ。旧版のBDは2007年8月にDVDをセットにしたバージョンが10,290円で発売されている。同時期に発売されたDVD同梱タイトルは、その後にBD単品版がリリースされているが、「攻殻」は外れており、今回の2.0で、初めて2.0の単品版(8,190円)、2.0と旧版をセットにしたBOX(13,440円)がラインナップされた。旧版には旧版の良さがあるため、旧版のBD単品版は欲しかったところ。それが新録音のサラウンドを収めたバージョンだったらな最高なのだが……。

 作品のタイトルが「2.0」とバージョン表記になっているのは、将来に向けてバージョンアップするぞという意思の現れだ。だが、その動機は必ずしも明るいものではないようだ。2.0公開時の舞台挨拶や、特典映像で押井監督は再三「アニメ業界を支える人材能力の低下」を口にしている。攻殻機動隊を作り上げた時のような画力を持つアニメーターは、その後大きく羽ばたいていったが、彼らがベテランの域に達する一方、その下の世代がなかなか育たない。新作を作ろうにも、大ベテランばかりを大量に集めることは難しくなっていることから、監督は「攻殻機動隊のような作品はもう作れない」と語る。

 キャラクターの3DCG化という革新に踏み切った理由は「アニメ製作の省力化に備えた新手法の確立」に他ならない。試行錯誤の途中であることは監督自信が特典の中で「2Dと3Dの融合は映像のジレンマだから解決しない。それを馴染ませるためのテクニックは、僕の現場が一番スキルが高いはず。それでも突破できないことはある」と認めている。その上で押井監督は「となると、新しい映像スタイルを作り出すしかない」と語り、状況を打開するスタイルを模索していることを明かしている。2.0は、“現時点での成果”と言えるわけだ。

 もちろん、毎年のように「3.0」、「4.0」と何作も作られるというわけではないだろう。ただ、将来新スタイルを監督が生み出した時、我々ファンはフル3DCGで再現されながら、従来のCG映画とは異なる、まったく新しい「攻殻機動隊」を目撃することになるだろう。時代を先取りしたような内容/映像で話題を集め、押井監督の名を知らしめた「攻殻」が、試行錯誤の題材として選ばれたのは偶然ではないはずだ。リメイク作品なので一見地味な作品だが、今後の押井作品やアニメ映画にとって大きな意味を持つ作品として、後々語られる作品になるかもしれない。

●このBDビデオについて
 購入済み
 買いたくなった
 買う気はない

前回の「Blu-ray版 ダークナイト」のアンケート結果
総投票数1,057票
購入済み
637票
60%
買いたくなった
379票
35%
買う気はない
41票
3%

□バンダイビジュアルのホームページ
http://www.bandaivisual.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.bandaivisual.co.jp/pdf/2008/pr080804.pdf
□関連記事
【Blu-ray/HD DVD発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/
【DVD発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/dvdship/
【8月4日】バンダイビジュアル、「攻殻機動隊 2.0」を12月19日にBlu-ray化
−オリジナル版をセットにした13,440円のBD-BOXなど
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080804/bandai.htm
【7月14日】7月12日公開の「攻殻機動隊 2.0」が今冬にBlu-ray/DVDビデオ化
−押井監督「今後のアニメを占う試みが隠されている」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080714/warner.htm
【4月28日】バンダイビジュアル、DVDとセット販売していたBDを単品化
−「オネアミス」や「パトレイバー」などが各8,190円に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080428/bandai2.htm

(2008年12月24日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.