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7月12日公開の「攻殻機動隊 2.0」が今冬にBlu-ray/DVDビデオ化
−押井監督「今後のアニメを占う試みが隠されている」


左から人形使いを演じた榊原良子さん、押井監督、草薙素子役の田中敦子さん、バトー役の大塚明夫さん
7月12日公開


 8月2日から公開される、押井守監督最新作「スカイ・クロラ」。その公開に先立つ7月12日、押井監督のもうひとつの“新作”が封切りされた。それが「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0」だ。

新宿ミラノ

 「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」と言えば、'95年に公開され、押井監督の名を世界に知らしめた、代表作。それが13年経った2008年、3DCGやビジュアルエフェクトを駆使して、全カットをバージョンアップ。音声も従来のアナログ4.0chからデジタル6.1chへと再構築。キャストによるアフレコも収録し直すという、まさに“新生”「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」と言って良いリメイク作として完成した。

 上映館は東京・新宿ミラノ、渋谷TOEI2、サロンパス ルーブル丸の内。大阪・なんばパークスシネマ、名古屋・ミッドランド スクエア シネマ、福岡・ユナイテッド・シネマ キャナル・シティ13、札幌・シネマフロンティア。公開初日の12日、押井監督に加え、草薙素子役の田中敦子さん、バトー役の大塚明夫さん、そして、2.0で新たに人形使いを演じた榊原良子さんが、新宿ミラノで舞台挨拶を行なった。

 また、劇場で販売されたパンフレットでは、同作品が2008年冬にBlu-rayとDVDで発売されることもアナウンスされている。


■ 「映画館で観たことがない人が意外に多い」

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0

 映画の舞台は、デジタルネットワークが高度に発展した2029年。人間の脳は電子化(電脳化)され、直接ネットワークに接続し、意思やデータを誰もが簡単にやりとりできる時代が到来していた。だが、その技術進歩と共にコンピューター犯罪やサイバーテロも高度化、凶悪化。それに対抗すべく、政府は草薙素子(くさなぎ もとこ)を隊長とする、精鋭サイボーグによる非公認の超法規的特殊部隊・公安9課、通称“攻殻機動隊”を組織した。

 そんな中、防壁を突破し、人間の脳をハッキングして人々を操り人形のようにしてしまう凄腕のハッカー“人形使い”が日本に出現する。調査を進める公安9課は、その姿無きハッカーの正体が、ネットワーク上で情報を収集する一種のプログラムであることを突き止める。だが、攻殻機動隊の前に現れた“人形使い”は、自らが「電脳の海で発生した生命体だ」と告げるのだった……。

3DCGでリニューアルされた、冒頭の素子のダイブシーン。全体の色調がイノセンスに似ているのも2.0の特徴だ
(C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 緻密なSF的世界観を下敷きに、“人間とは? 生命とは?”という壮大なテーマも内包。“これを人間の手で描いたのか”と驚くほどの作画とアクションシーンは今見ても斬新だ。

 今回のリメイクにあたっては、続編とも言える「イノセンス」との繋がりを想定し、作品全体のトーンを、従来のグリーンからオレンジ(琥珀色)に変更。冒頭のダイブシーンなどに3DCGを使用。川井憲次による音楽もコーラスや弦の大編成を録音し直し、全曲をリミックス。そして、スカイウォーカーサウンドによる6.1chサラウンド化など、オーディオ面でも聴き逃せない作品に仕上がっている。

攻殻機動隊を率いる素子 素子の相棒、バトー 正体は謎に包まれているハッカー、人形使い
(C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

バトー役の大塚明夫さん

 また、リメイクの中身だけでなく、“押井版・攻殻機動隊が劇場で観られる”というだけでもファンにとっては見逃せない機会。舞台挨拶が行なわれた回では、遠くは鳥取から駆けつけたファンの姿もあった。バトー役の大塚明夫さんもファンと同じ心境のようで「押井さんの作品が劇場で観られるということで、観ないと損だと思っています」とアピール。

 13年ぶりに演じたGHOST IN THE SHELLのバトーについては、「その間の役者としての積み重ねを、アレコレと詰め込むのはあえてやらずに、自然体で演じました。13年で素子との関係も、嫉妬心が少なくなるなど変わっているので、意識的に変えようとしなくても、勝手に変わるだろうと思って演じたことが大きいですね」と振り返る。

 演技の“姿勢”は、素子を演じた田中敦子さんにも通じるところがあったよう。「最初は以前の演技を超えなくてはならないという気負いもあったのですが、リハーサルをしたり、13年前の台本を出してきたりしているうちに“とやかく考えるのはやめよう”という気持ちになりました。相手役は大塚さんだし、榊原さんだし、山寺さんだし、長くシリーズをやってきた仲間達。当日はアフレコを楽しめました」と振り返る。

草薙素子役の田中敦子さん

 そんな田中さんにとって、素子というキャラクターは「長く付き合っているだけれど、なかなか本性を見せてくれない恋人」だという。「手の中からするりと抜け出して、遠くへ行ってしまうような“危うい”存在。でもS.A.C.やイノセンスのように必ず私の元に戻って来てくれる。耳元で“私の帰るところはあなたの所よ”と囁いてくれているような感じですね」と笑顔を見せた。

 逆に、今回のリメイク版で初めて“人形遣い”を演じたのは、押井作品ではお馴染みの榊原良子さん。オリジナルの方では、「世界・ふしぎ発見」のナレーションや、「ナウシカ」のクロトワでお馴染みの家弓家正さんが演じ、“女性の義体”の中に入ったプログラムである“人形使い”が、男性の声で自らが生命体であることを宣言する様が、“性別を超えた新しい何か”という大きなインパクトを与えた。今回、外観と同じ女性の榊原さんが人形使いを演じたことは、リメイク版の大きな変化ポイントと言える。

 「難しい役で、3週間くらい前から稽古を続け、煮詰まると“存在の意義”みたいな哲学書を読んで準備していた」と語る榊原さん。やはり強烈なインパクトのある家弓さんのイメージを振り切るのに時間はかかったという。「私なりの解釈で演じたつもりです。はたして私の意図したことが伝わっているかどうか不安でならないのだけれど……」と語ると、鑑賞を終えた会場からは大きな拍手が起こり、榊原さんが胸をなで下ろす一幕も。「難しい役を演じられることは光栄。今後も命を掛けて演じていきたい」と語った。

人形使いを演じた榊原良子さん

 「自分の新作(スカイ・クロラ)の公開前に、違う作品の初日を迎えるというのは、もの凄く複雑な感じ」と笑うのは押井監督。「攻殻を作った当時は、生活に困って作ったのだけれど(笑)、作った途端に色んな騒ぎになって、この作品に振り回された時期もあった」と振り返る。

 「リメイクは基本的にやらないし、今後もやらない」というのが監督の基本スタンス。それを覆すキッカケになったのは、スカイ・クロラの打ち合わせで、スカイウォーカーサウンドに行き、ランディ・トム、トム・マイヤーズというサウンドデザイナーに出会ったことだという。「“攻殻を観たか?”と聞いたら、“もちろん観た”と言われたので、“あんたが音付けるとどうなる? もし音を付け直したいと言ったら、やる?”と聞いたら “もちろん”と応えてくれたのが直接のキッカケ」だという。

 「自分にとって色々なことを起こした作品だけど、公開当時はコケたとは言えないけれど……という程度で、イマイチ受けなかった。後にDVDなどで観てくれた人がほとんどで、スクリーンで観た人が意外に少ないと思い出したのも理由の1つ」という。また、先日ファイナルカット版として再公開されたブレードランナーの動向にも影響されたという。

押井守監督

 しかし、今回の2.0は単純に“過去を振り返る”だけのものではない。「これから自分がどんな映画を作っていくかに対する、“架け橋”」という重要な意味も隠されているという。「日本のアニメは今後、ますます変わっていく。この作品には、今後のアニメを占う演出上の試み、現時点で僕が考えていることの一部が隠されている。そういった意味で、未来を見据えた仕事」と説明。

 「(オリジナルとリメイクと)どちらの作品が将来まで残るのかはわからない。けれど、映画にオリジナルは存在しない。映画はお客さんに観られ、上映されることで映画たりうると思う。僕の作品の中でも淘汰されるもの、生き残るものがあるだろう。これからもそういうつもりで映画を作り続けていきたい」と締めくくった。

 なお、前述の通り、劇場で販売されたパンフレット(1,500円)には、バンダイビジュアルの広告として、2.0が2008年冬にBlu-rayとDVDで発売されることがアナウンスされている。詳しい発売日や価格は不明で、正式発表はもう少し先になるようだ。ちなみに、オリジナル版は2007年8月にBDとDVDのセット商品(BCXA-0005/10,290)として既に発売されている。また、バンダイビジュアルが初期にDVDとセット販売したBDビデオは、2008年7月25日にBD単品版として各8,190円で再発売されることが決定しているが、この単品版の中に“攻殻”は含まれていない。今回の2.0 BD/DVD化に合わせて、「攻殻 新旧Blu-rayセット」なども用意されるかもしれない。いずれにせよ今冬のリリースが待ち遠しいところだ。

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【4月28日】バンダイビジュアル、DVDとセット販売していたBDを単品化
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■ 「スカイ・クロラは作っていて楽しかった」

今回の上映は、スカイ・クロラのプロモーションの一環でもある

 押井監督は「イノセンス」を作り終えた後「もうやり尽くした、やめよう」という消耗/脱力感を味わったという。「今までの映画でも同じような感じで、自分の中から絞り出すようにして映画を作るので、とても消耗する作業。頭は禿げるし、胃が痛むし、苦労してるのにストレスで悲しく太っていく」と笑う。しかし、スカイ・クロラの場合は、今までとまったく違ったという。

 「体調が良く、人生が楽しくてしょうがないという時期に入った。もちろん大変な事もあったけれど、脱力するような疲れはほとんど無かった。“誰のために何を作るのか”が明快だったからかもしれない。スカイに関してはコケたらどうしようか考えず、何事も前向きに思えるようになれた。その心境の変化が作品にも現れていると思う」と語る。

 また、変化は心境だけでなく、アニメ製作の体制や手法にも及んでいる。「基本的に自分の作った映画は観返さないのだけれど、リニューアルするために攻殻を久しぶりに見て、改めて“アニメのピークの時代に作ったものだな”と感じた。 今これだけの作画力はどこの現場にも存在しない。証拠に、関わったアニメーターの6〜7割は監督になっている。今後も作画の力でここまで持って行けるのは、僕の作品では無いだろう」と振り返る。

遠くは鳥取から、熱心なファンで会場は満員となった

 しかし、スカイ・クロラの製作に入る際「今後もアニメを作り続ける」と、あえて宣言して入った押井監督。前述の“新しい演出上の試み”と合わせて「僕の作品の今後を占う意味でも、攻殻2.0とスカイを同時にやることは、後で振り返ると象徴的な出来事かもしれない」と語った。

 ちなみに、自作の公開初日に映画館でお客さんの反応を確かめることはしないという押井監督。「昔、オンリー・ユー(劇場版うる星やつら オンリー・ユー)で懲りちゃった。意外と気が小さいんですよ(笑)。スカイに関しては、今はもう淡々とした心境ですが、もう少し経つと焦りが出てくるかもしれない」と笑う。すかさず大塚さんが「皆さんの総力を挙げて、押井さんが焦らないように協力してください」とフォローすると、会場は笑いと拍手に包まれた。

□新宿ミラノの上映情報
http://www.tokyucinemas.net/shinjuku/index.html
□スカイ・クロラのホームページ
http://sky.crawlers.jp/

(2008年7月14日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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