ニュース

パナソニックTV用液晶パネル生産撤退も「TV事業に影響ない。世界4強へ」

 パナソニック アプライアンス社 社長の本間哲朗代表取締役専務は、テレビ事業の取り組みになどについて説明する中で、同社姫路工場において、2016年9月末を目処に、テレビ用液晶パネルの生産から撤退、その影響について「すでに姫路工場の液晶パネルは採用していない。テレビ事業への影響はない」とした。

パナソニック アプライアンス社 社長の本間哲朗代表取締役専務

 また、2018年度に社内目標として掲げている年間1,000万台のテレビ出荷計画についても、「コミットメントの中には、1,000万台という数字は入れていない」とし、「テレビはあくまでもリスクをコントロールする領域であり、コストを割いてチャレンジする領域ではない」と位置づけた。

 パナソニックは5月18日に、アナリストを対象にした説明会を開催。報道関係者を対象にしたラウンドテーブルも開催し、その中で本間社長がコメントしたもの。

「テレビ事業への影響はない。そもそも自社で使ってない」

 液晶パネル生産のパナソニックの姫路工場は、2010年に稼働した8.5世代のマザーガラスによるIPS液晶パネルの生産設備を備えており、稼働以来、パナソニックの液晶テレビ向けにも、パネルを供給してきた。今年9月には、テレビ用の液晶パネルの生産を終了し、今後はデジタルサイネージなどの産業用途向けに液晶パネルを生産していくことになる。

パナソニックの姫路工場

 本間社長は、「私が2011年に、AVC社の企画担当常務の時に、液晶事業の方向づけに自ら携わってきた経緯があるが、その時から、姫路工場は、同工場が持つ特性を生かした産業用や車載向けにシフトすることを決めており、いよいよその時期が来たということに過ぎない。いわば、既定の事実である。姫路工場は、大変すばらしい技術を持った液晶工場であり、高精細、高輝度、高コントラストを生かした顧客価値を提供できる液晶事業に転地してきたと理解している」とし、「現実的に、いまのパナソニックでは、姫路工場の液晶パネルは採用していないため、テレビ事業への影響はない」と語った。

 一方、8年ぶりに黒字化したテレビ事業において、創業100周年を迎える2018年度に、年間1,000万台の社内計画があることについて回答し、「投資家向けのコミットメントの中には、1,000万台という数字は入れていない。テレビはあくまでもリスクをコントロールする領域であり、コストを割いてチャレンジする領域ではない。経営を預かるものとしては、そうした観点で事業を見ることになる」と発言。2016年度は、前年並みの年間640万台を計画に打ち出すなど、台数を追わない姿勢を改めて強調した。

 テレビを含むAV事業は、「収益改善事業」に位置づけており、収益体質へのシフトを最優先する。

 アプライアンス社全体の2015年度の営業利益率が2%であるが、「これは、利益率が上がりにくいテレビなどのデジタルAV分野を内包しているのが要因。アプライアンス社には、12事業部があり、その中をさらにを35カテゴリにわけて、中期的な戦略を検討した。

 テレビやオーディオなどのデジタルAVは課題事業であるのは間違いないが、方向性ははっきりしてきた。国内のテレビ市場は、歴史的ともいえる市場規模にまで縮小している。地デジへの完全移行時の買い換え需要の反動が続いているのが原因。だが、2020年の東京オリンピックに向けて回復はあると考えている。それはしっかりと取り込みたい」とも語った。

高付加価値テレビの世界4大ブランドへ

 また、「テレビ事業は、以前は、全世界でプラズマテレビ、液晶テレビの両方を手がけ、セットも、デバイス(パネル生産)もやる、というフル展開の体制であった。しかし、それでは収益を確保できなくなった。そこで、パナソニックは、顧客価値提案が反映できるマーケットに絞って事業を展開することに決定した。

 ターゲットとするのは、日本、アジア・大洋州、欧州、中南米。これ以上は、再度、地域を広げていくということは考えていない。また、OEMやODMで生産するだけの手法で、テレビの事業をやろうということも考えていない。米国と中国は欠けてしまうが、それ以外の地域ではしっかりやっていく。

 改めて感じるのは、テレビを娯楽の中心としている国は決して少なくないということ。そうした国において、娯楽の中心としてのテレビを提案できる余地が、パナソニックには多々あると考えている。展開するマーケットを絞り、提案した価値を受け入れてもらえるビジネスを行なう」としたほか、「いま、そうした提案ができるメーカーはいくつあるのか。サムスン、LG電子、ソニー、そしてパソナニックの4社だけである。なんとか、4つのブランドのなかに滑り込むことができた」と述べた。

 また、「テレビ事業の継続については、コスト力の強化がある。液晶モジュールの組み立てにおいては、ガラス板を外部から購入し、あとは全部自分たちで組み立てるオープンセルを、世界8つの工場で開始できるようにした。さらに、複数のメーカーのオープンセルを取り付けることができるマルチセル化を推進している。同じ機種のテレビでも、複数のセルで作ることができる。技術の力によって、購買を管理し、コストコントロールすることで、粗利を確保するという手法を導入していく」と語った。

パナソニックらしい有機ELテレビを全世界に

 有機ELについても言及した。パナソニックでは、社内開発していた有機EL事業に関しては、ソニーと開発部門を統合して、2015年からJOLED(ジェイオーレッド)をスタート。一方で、2105年秋から欧州で発売した有機ELテレビの「CZ950」は、LG電子からパネルを調達して製品化している。

IFA 2015で披露された、有機ELテレビ「CZ950シリーズ」

 本間社長は、「有機ELパネルの調達先とは、2011年度からパートナーシップを組んで、画質を作り込み、製品に仕上げてきた経緯がある。欧州市場に投入した有機ELテレビは、一朝一夕にできたものではない。パナソニックは、有機ELテレビについては、2012年度から2013年度にかけて、垂直統合ではやらないことを決定した。だが、自分たちで有機ELの開発を進めてきた経緯があること、プラズマディスプレイで自発光の輝度制御技術を持っていることで、有機ELテレビにおいても、独自の回路開発、独自のソフトウェア開発によって、パナソニックらしいテレビを作ることに成功した。そうしたテレビを出せることがわかったので、欧州で有機ELテレビの販売をスタートし、これを全世界にも届けたいと思っている。画づくり、テレビづくりにおいて、我々がやりたいことを十分に提案できる」と語った。

 なお、JOLEDについては、「直近の開発成果や技術の進捗については、聞いている。これを横目にみつつ、パナソニックは製品を展開していくことになる」と述べるに留まった。