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USB Type-C搭載の8K/VR製品など開発早期化へ。VESAが「DP Certified」ロゴ

 映像機器関連の規格化作業を行なうVESA(Video Electronics Standards Association)は米国時間の8日、USB Type-Cコネクタで4Kなどの高解像度映像が出力できるDisplayPort Alt Mode規格において、適合性テストを円滑化して製品化までの期間短縮を図る早期認定プログラムを正式に開始したと発表した。

USB Type-C搭載スマートフォンや、DisplayPort装備のディスプレイなどを連携

 DisplayPort Alt Mode(Alternate Mode)は、USB 3.0/3.1の持つレーンのうち複数のレーンを利用することで、USB Type-Cコネクタ経由でDisplayPort出力が行なえるようになる技術。DisplayPort規格の1.2/1.3/1.4をサポートする。USB Type-Cで機能するDisplayPort Alt Modeでは、Type-Cの高速データ伝送と、電源供給機能を組み合わせている。これにより、スマートフォンから、ディスプレイやVRゴーグルなどへの出力に活用できる。

USB Type-Cの特徴
USB Type-C端子の割り当てなど

 DisplayPort Alt Mode規格に対応することで、4K以上の映像や、Super Speed USBのデータ転送、最大100Wの電源供給が機器間で行なえる。DisplayPortは、USB Type-C規格のコネクタとケーブルの両方で、規格化当初からサポートされている唯一のディスプレイインターフェイスとなっている。

 USB Type-Cを使った機器をメーカーなどが開発する際に、規格への適合性を確認する時間を短縮する「USB Type-C経由DisplayPort Alt Mode向け早期製品認定プログラム」をVESAが提供。これにより、製品開発サイクルの初期段階での互換性確保を円滑にすることを目指す。同プログラムで製品化された製品には、「DP Certified」ロゴが付与される。既に10製品程度のタブレット端末、ノートPC、ディスプレイ、が認定されている。認定ディスプレイのメーカーはIntel(Skylakeベースのリファレンスデザイン)、デル、ASUS、HP、LGエレクトロニクスなど。年内に、他にも数十機種の認定済み製品が発売される見通しだという。

コンプライアンステストのプラン
テストをクリアした製品にロゴを付与

 現在、DisplayPort over USB Type-Cのコンプライアンステスト仕様(CTS)が検討中で、これが完了する'16年半ばに正式公開される。主要テスト機関のアリオンラボと、グラナイト・リバーラボ(GRL)が早期認定プログラムの一つとして、テストを実行。VESAも米国と台湾でプラグテストイベントの組織化や後援を行ない、VESA加盟企業はこれらのテストに参加できる。'15年はプラグテストイベントを3回実施。次回は9月にカリフォルニアで行なう予定。

8KやVRなどUSB Type-C搭載機器の製品化をサポート

 DisplayPort規格では、Ver.1.2(DP 1.2)以上で4K映像に対応しており、DP 1.3/1.4では解像度5K×3K(60Hz/4:4:4)や8K×4K(60Hz/4:2:0)もサポート。伝送ビットレートは1レーンで8.1GbpsのHBR 3に対応。HBR 3対応の製品は、年内の登場が期待されているという。

 3月に発表された最上位のDP 1.4は、'16年下期からコンプライアンステストが開始される予定。1.4では8K/60Hz、4K/120Hzやハイダイナミックレンジ(HDR)信号に対応。「USB Type-Cコネクタの能力をさらに引き出すための新機能」として、映像圧縮技術のDisplay Stream Compression(DSC)をバージョン1.2に更新し、圧縮効率を向上。高品位な画質や音質が求められるハイエンド機器などへの採用を目指している。なお、著作権保護規格についてはHDCP 2.2も仕様上サポートするが、HDCPへの対応が必須でない点は、HDMIとは異なる。

DP 1.4の特徴
バージョン別の仕様比較

 オーディオは最高32ch、サンプリングレート1,536kHzまでサポート。「現行のあらゆる音声フォーマットへ対応可能」としている。音声仕様については、VESAのサブグループ内で検討されているという。

 DisplayPort Alt Modeが使えるUSB Type-Cの端子について、VESAのコンプライアンス プログラム マネージャー Jim Choate(ジム・チョート)氏は、薄さやリバーシブルで使えるといったメリットを改めて紹介し「今後20年間は市場で使われる」とした。

VESAのジム・チョート氏

 MacBook Airをはじめ、一部のスマートフォンなどではUSB Type-C対応が既に始まっているが、「従来のMini DisplayPortからUSB Type-Cへ置き換わっていくのか?」という質問に対してチョート氏は「ビデオではMini DisplayPortはスタンダードの一つになっている。今後USB Type-Cが追加で増えてくるとは思うが、置き換わるのは先のことだろう」と述べた。

 USB Type-C対応のスマートフォンやディスプレイなどを用いて、映像伝送/電力供給するデモも行なった。LGのスマートフォン「G5」からVRゴーグルへアプリなどの映像を出力したり、スマートフォンからDisplayPortアダプタを介して4Kディスプレイ「27UD88-W」に映像出力するといった例を紹介した。

スマートフォンのUSB Type-CからDisplayPortでディスプレイに出力
VRゴーグルへの出力も

 また、前述したテスト機関のGRLから、チーフ テクノロジー エンジニアを務めるMike Engbretson(マイク・エンベレッツオン)氏も来場。「USB Type-Cは、1ポートでビデオとデータが伝送できるシンプルなユーザー体験を実現するが、技術は複雑なため十分なテストが必要」として、オシロスコープと同社製ソフトなどを用いて、テストの手法を紹介した。

GRLのマイク・エンベレッツオン氏
USB Type-Cは「ユーザー体験はシンプルだが技術は複雑」
テスト中に発覚したという問題の例
コンプライアンステストのうち「Primary Tests」の項目
オシロスコープなどを使ってテストの例を紹介