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“ラジオ局が作る、本気のラジオ”「H!nt」。無指向性&BTスピーカー機能も

 ニッポン放送、Cerevo、グッドスマイルカンパニーの3社は、無指向性スピーカーを搭載し、Bluetoothスピーカー機能も備えたラジオ受信機「H!nt」(Hint/ヒント)を発表した。「ラジオ局が作る、本気のラジオ」をテーマにした製品で、クラウドファンディングサービスのCAMPFIREで支援を募集している。募集期間は7月20日~9月20日まで。価格は21,500円(税込)からで、支援コースによって価格は異なる。クラウドファンディングが成立した場合、遅くても今年度内に手元に届くようにするという。

H!ntの使用イメージ

 筒状の筐体を採用したラジオで、FM受信に対応。ワイドFM(AM補間放送)の受信にも対応する。さらに、Bluetoothスピーカー機能も装備。スマホなどと連携して、スマホ内の音楽やポッドキャストなどを再生する事もできる。

 外形寸法は80×287mm(直径×高さ)。重量は950g。上部に50mm径の無指向性スピーカーを搭載。上に向けて音を放出し、リフレクタで360度に拡散。部屋の何処に置いても、同じような聴こえ方を実現しており、ラジオの魅力である「気配」が伝わるようなサウンドを実現したという。また、ニッポン放送技術部が監修し、「人の声が心地よく聴こえる柔らかいサウンド」も目指している。

H!ntの試作機。実際の製品ではデザインが変更になる可能性がある

 底部にもリフレクタを備え、バスレフポートも用意。低音も拡散する機構になっている。最大出力は3W。上部にはディスプレイを搭載。周波数などを表示し、上部パーツをダイヤルのように回すとラジオのチューニングができる(アナログチューニングではない)。

上部。音を拡散するリフレクタが見える。上部のギザギザ部分がダイヤルで、回すとチューニングが可能(アナログチューニングではない)
底部にもリフレクタ

 ユニークな機能として、放送局が流すDTMF音(ピッポッパ、というような電話のダイヤル音)を感知する機能を装備。そのDTMF音に、インターネットのURLなどを変換して内包できるToneconnectという技術にも対応。H!ntは受け取ったURL情報を、BluetoothのBLE(Bluetooth Low Energy)を使い、周囲(半径5、6m)にあるスマートフォンに向けてURL情報を再配信する。

DTMF音に含まれるURLを、スマホに表示するまでの流れ

 これにより、例えばゲストとして登場したアーティストの名前が聞き取れなくても、アーティストのURLをスマホに表示したり、通販番組で販売ページのURLをスマホに表示させるといった事が可能になる。QRコードの“音声バージョン”のような技術となる。

 URLだけでなく、この機能を使って全国の「H!nt」が搭載するLEDを、同時に同じ色に光らせるといった事も技術的には可能だという。

 スマホ側がBLE経由でURLを受け取る仕組みは、GoogleのEddystoneを活用。対応するAndroidスマホ、もしくはブラウザのChromeをインストールしたiPhoneなどで、Bluetooth機能がONになっていると、通知エリアにURLを表示させる事ができる。

GoogleのEddystoneを活用。スマホの通知欄にURLを表示する

 なお、現在ニッポン放送ではこのDTMFを用いた放送は行なっていないが、将来的には実施を検討。H!ntの開発の発起人でもあるニッポン放送のアナウンサー・吉田尚記氏の番組などから放送していくイメージとなる。

 DTMF音にURLデータを内包して提供するToneconnect技術や、それを放送で使い、ラジオからBLEビーコンでスマホへ配信する技術は、吉田氏が代表取締役CMOを務めるトーンコネクトが特許を出願しているが、「同じような規格が乱立して複雑にならないようにするためで、それで大きく儲けようとは思っていない。もちろんこの技術を他の放送局さんが使いたいという場合も歓迎したい」(吉田氏)、「クローズドにするつもりはまったくなく、将来的には例えばソニーやパナソニックなどのラジオでも対応するような状態になるのが一番良いと考えている」(Cerevoの岩佐琢磨社長)という。

 内蔵バッテリで、約4~6時間の聴取が可能。充電所要時間は約3時間。ACアダプタ接続でも動作する。

上部にはラジオの周波数などを表示

「ラジオ局が作る、本気のラジオ」

 開発の発端は、ガジェットが大好きで、雑誌に連載も持っている吉田アナウンサーが、「カッコいいラジオが欲しい」、「ラジオ局がラジオを作ってみたっていいじゃないか」と考えた事。開発のキーワードは「ラジオ局が作る、本気のラジオ」。

 吉田氏は、フィギュアなどを手掛けるグッドスマイルカンパニーに話を持ちかけ、家電ベンチャー企業のCerevoも参加。3社で“新しいラジオ”を作り出す事になったという。

左からニッポン放送の吉田尚記アナウンサー、デザイナーのメチクロ氏、Cerevoの岩佐琢磨社長、グッドスマイルカンパニーの安藝貴範社長

 ニッポン放送が参加している事で、“ラジオの本質的な魅力”を堪能できる製品を目指しているのが特徴。ラジオでは、仕事や勉強など、何かをしながら耳で楽しむ、いわゆる“ながら聴き”ができるのが特徴だが、生活に寄り添うように、部屋のどこにいても同じように聴こえる無指向性スピーカーを採用したのも、そうした魅力をリスナーに感じてもらいたいという想いからだという。

ニッポン放送の吉田尚記アナウンサー

 受信部分には、海外では採用製品も多い高性能なDSPチップ、SILICONE LABSの「Si4735」を採用。音質などを追求すると共に、ラジオの魅力である“シンプルさ”も維持。電源をONにすると、すぐに受信し、音が出るスピーディーさも追求したという。

 デザインは、SF incの代表でデザイナーのメチクロ氏が担当。無指向性である事や、生活に溶け込みつつ、“カッコよさ”もあるといった要素を追求。「(ラジオの)電波塔のようなイメージも含んでいる」という。

 開発を担当したCerevoの岩佐琢磨社長は、「(最初にラジオを作ると聞いた時に)なぜ、今ラジオなのか? と思った」と笑う。しかし、Cerevoはアニメ「PSYCHO-PASS」に登場する特殊な銃「ドミネーター」を電動フル稼働モデルとして商品化しており、「よく考えてみると、Cerevoは昔からある銃のオモチャを、現在の技術を使い、電動で変形させ、スマホと連携させたりしている。“古いものがあるからこそイノベーションもある”と考え、なんだかこれは面白そうだぞと、参加する事にした」と経緯を説明した。

Cerevoの岩佐琢磨社長

 吉田氏は、「掃除の時にラジオをBGMにすると、音楽の時よりもはかどる」というエピソードを交え、生活に寄り添うラジオの魅力を解説。さらに、「リスナーから“この番組は生放送なのか?”という問い合わせがラジオ局には沢山来る」とし、パーソナリティがリアルタイムにリスナーに語りかけ、全国のリスナーもそれを同じ時間に楽しむという、同じ時間を共にしているような感覚もラジオの特徴と紹介。そうした魅力を楽しみやすい製品として開発したH!ntのこだわりを説明した。

 なお、クラウドファンディングでは、21,500円(税込)の支援コースで約500人が集まり、1,300万円に到達すれば製品化が実現する。21,500円を超えるコースもあり、Hintに刻印を入れられたり、シリアルナンバー入り限定カラーのシャンパンゴールドモデルなども用意する。通常カラーはフロストシルバー。

 さらに30万円のコースでは、Hint×2台(フロストシルバー/シャンパンゴールド)に、シリアルナンバー、文字の刻印が入るほか、15分程度のミニラジオ番組をニッポン放送が作り、音源を購入者にプレゼント(放送はされない)。その番組内で、吉田アナが購入者の名前、もしくはラジオネームを「◯◯さんの提供でお送りしました」と、提供クレジットとして読み上げる。

 さらに、ニッポン放送スタジオ見学会への参加や、ニッポン放送で実際にオンエアするHintラジオの告知CMに声で出演できる。

 プロのラジオディレクター、放送作家が参加し、吉田アナと購入者が2人で、対談形式で15分規模のラジオ番組を作る事も可能という(オンエアはされない)。