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世界初のアニソン定額配信サービス「ANiUTa」。月額600円で5万曲以上
2017年3月24日 15:30
アニメソングを取り扱うレコード会社・関連企業が集まり、新会社のアニュータを設立。世界初のアニソン定額配信サービス「ANiUTa(アニュータ)」を発表した。3月24日からサービスを開始しており、スマートフォン向けアプリの提供も開始している。月額600円(税込)で、5万曲以上を用意。2017年度末までに海外での展開も目指している。
参加会社はフライングドッグ、エイベックス・ピクチャーズ、KADOKAWA、サンライズ音楽出版、東映アニメーション音楽出版、東宝、フロンティアワークス、ポニーキャニオン、マーベラス、ランティスなど。
ストリーミング形式での配信で、音質は128kbps、320kbpsが選択可能。楽曲をスマホのストレージにキャッシュし、通信を抑えながら再生する事もできる。詳細は後述する。アプリの対応OSは、Android 5.x~7.0、iOS 9.x~10.x。App Store、Google Playの定期購読システムを用いた継続課金となる。
サービスは現時点でスマホアプリ向けのみ実施しており、PCなどからは利用できない。新しいスマホに変える場合は、データの引き継ぎが可能。
有料会員は全楽曲が聴き放題で楽しめるほか、ライブやイベントの会員限定チケット先行応募や、会員限定プレゼント企画への参加もできる。無料ユーザーもアプリは利用できるが、配信楽曲の検索と試聴のみとなる。
楽曲は5万曲以上を用意するが、その内約2万曲はサブスクリプション初解禁の楽曲。アニメソングだけでなく、ゲームやボーカロイド、特撮関連の楽曲も用意する。主な楽曲は「ガールズ&パンツァー」、「マクロスΔ」、「ラブライブ!」、「おそ松さん」など。
テレビアニメ放送とリンクした先行配信、声優コラボレーション楽曲などのオリジナルコンテンツの配信も予定している。
作品名から曲を探す。端末にキャッシュも可能
アプリは軽快な操作にこだわって開発されており、大量の楽曲をストレスなくザッピングできるという。
また、通常の音楽配信サービスでは、アーティスト名や曲名から検索を行なうが、アニソン専門の配信サービスならではの機能として、アニメの作品名で楽曲検索が可能。
さらに、例えば「三森すずこ」という声優の名前で検索すると、彼女の楽曲がヒットするだけでなく、彼女が演じたキャラクターである「アウトブレイク・カンパニー」というアニメのミュセル・フォアランや、「結城友奈は勇者である」というアニメのキャストで結成されたユニット・讃州中学勇者部も検索結果に登場。その声優が演じるキャラクターのキャラクターソング、参加しているユニットの楽曲も聴く事ができる。
こうした機能は、楽曲に付与するタグ情報によって実現するが、アニメに詳しい人でないと作るのは難しい。発表会の司会を担当した、ニッポン放送の吉田尚記アナウンサーによれば、「非常にアニメに詳しい人が分類などの作業をしている」という。
ストリーミング配信のサービスだが、楽曲データを再生すると、そのデータを端末にキャッシュし、次に聴く時は通信の発生を抑える機能を用意。キャッシュ容量は1GB、2GB、4GB、8GB、16GBからユーザーが選択できる。
楽曲によっては、歌詞情報が付与されているものもあり、再生しながら歌詞も楽しむ事ができる。歌詞付きの楽曲は今後も増加していく予定。
ユーザーによるプレイリスト作成も可能。声優やアーティスト、アニメに詳しい著名人などが作ったプレイリストがアプリ内で公開されており、それをユーザーが楽しむ事も可能。将来的には、ユーザーが作成したプレイリストを、他のユーザーとマッチングして提示するといった機能も検討されている。
ANiUTaのライブも開催
サービスの魅力を高めるために、アニソンが楽しめるだけでなく、ANiUTa独自のプレミア楽曲も用意。
25周年記念シングルとなるALI PROJECT「卑弥呼外伝」、40周年記念アルバムから、影山ヒロノブ「Beginning」、「青鬼 THE ANIMATION」エンディングの志方あきこ「隠れ鬼 movie ver.」、「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」主題歌、GRANRODEO「Glorious days」などがプレミアム楽曲で、今後も続々と登場するという。
会員向けのライブチケット提供も24日から受付開始しており、「-おれパラ- 10th Anniversary ~ORE!! SUMMER~」、「Pile Birthday Party !!! 2017」を先行ラインナップ。
ANiUTaのライブイベントも決定。「ANiUTa LIVE2017 『あにゅパ!!』が、5月13日に国立代々木競技場 第一体育館にて開催される。出演者は、Aqours、ALI PROJECTPROJECT、Wake Up, Girls!、May'n。
「お客様は、僕達と同じアニソンが好きなフレンズなんだね!」
アニュータの社長には、フライングドッグの社長でもある佐々木史朗氏が就任する。佐々木社長はサービスのキッカケについて、「ランティスの井上社長さんらと、“メーカーを横断して何かやりたいね”という話はしていた。その中でサブスクリプションというアイデアが出て、1年、2年かけてようやく実現した」という。
定額制の音楽配信サービスは他にも存在するが、ANiUTaの立ち位置について佐々木社長は、「従来のサブスクリプションサービスを全国チェーンの総合ショップと例えるならば、ANiUTaは専門店。専門店ならではの品揃え、サービス、専門性、そして“アニソンへの愛”が売りになると信じており、可能性のある事業だと確信している。“お客様は、僕達と同じアニソンが好きなフレンズなんだね!”(という気持ちでサービスを行なっていく)」という。
専門店ならではのこだわりとして佐々木社長は、アニメ作品から楽曲を検索できる機能などを挙げ、「例えばマクロスΔの曲を聴いてから、マクロスFの曲に触れ、そこから中島愛の曲を聴くといった使い方もできる。'70年台の作品の曲もあるので、若い人達には、生まれる前にあったアニソンを聴いてみるといった事もできる」とアピール。
また、「アニソンは世界で通用するものなので、海外でも展開していきたい。システムを作るには半年ほどはかかるが、その後はできる国からスタートしていきたい。ずれは、ANiUTa主催の“アニソンワールドツアー”ができるといいなと考えている」と、展望を語る。
さらに、プラットフォームを活かして、アニメ関連のラジオやオーディオブックなどの配信にも展開していく可能性を聞かれると、「そういう事もできるのがANiUTaだと考えている。ラジオ番組も流したり、オーディオブックもできる。アニソンに特化しているからこそできることでもあるので、(そういったことも)どんどんやっていきたいと思っている」とした。
一方、ANiUTaでアニソンを楽しむ人が増えると、アニソンのCDが売れなくなってしまうのではという危惧もある。佐々木社長は、「世界的に見ると、CDがまだ売れているのは日本くらいで、世界的にはサブスクリプションが主流。(CDが売れなくなるのではという)怖さは持ったまま事業をはじめてはいるが、今の10代はそもそもCDをあまり買わなくなってきている。しかし、アニメが嫌いなのかというとそうではなく、良く見ているし、ライブにも行ったりしている。我々としては、アニメが好きな人の人口が減る事が怖い。その点で、ANiUTaによってライトなファンを広げることができると考えている。また、ANiUTaで聴いて好きになった曲をCDで買う、今まで知らなかった、聴いていなかった曲やアーティストをANiUTaで知るといった展開もあるだろう」と語る。
アーティストへの還元については、「例えば、他のサブスクリプションサービスでは3,000万曲を揃えるといったところもある。ANiUTaは5万曲。しかし、他のサブスクリプションサービスの中でアニソンの割合は0.01%など。ANiUTaは全部アニソン。会員数にもよるが、還元できる配分率は、(他のサブスクリプションサービスよりも)多くなる事もあるだろう」とした。
佐々木社長は、「30数年、アニメ音楽に携わってきたが、ここまで来れたのはアニメとアニソンのおかげだと思っている。何らかのお返しがしたいと思っていた。そのお返しになるかどうかはわからないが、今、現場で必死でアニメや音楽を作っている若い世代に残せる事業になればと思っている」と語った。
声優・アーティストにとっても便利なサービス
発表会には声優、アーティストの代表として、吉岡茉祐さん、三森すずこさん、鈴木みのりさん、諏訪ななかさん、駒形友梨さんも参加。
実際にANiUTaを使ってみた彼女達からは、「新しいアニメソングと出会いたい時に、まずアニメを探して、それを見て、アニソンを聴いてという流れだったけれど、アプリでまとまっているのでANiUTaは探しやすく、試聴もしやすい。沢山の曲に触れられる」、「携帯で音楽を聴いているけれど、(ストレージの)容量がパンパンになっていて新しい曲が入れられないので、とても助かる」といった感想が。
さらに、声優ならではの感想として、三森すずこさんは「ラジオ番組でゲストの方が来てくださる時に、その方の曲を下調べしておくといった事が、凄く簡単にできるのが便利で嬉しい。ライブのコラボ企画として、自分の曲じゃない曲を歌うような時も、歌詞が出る楽曲もあるので便利」だという。
また、彼女達が歌った曲や、好きなアニメソングなどを取り入れたプレイリストをそれぞれ発表。このプレイリストは、ANiUTaの中でも公開されるという。