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世界初、耳では聞こえない超音波まで検出する「スピン型MEMSマイク」を東芝が開発

 東芝は世界で初めて、スピン型ひずみ検知素子を搭載した「スピン型MEMSマイクロフォン」を開発。人の耳では聞こえない超音波まで検出する事で、様々な機器の状態監視や故障診断への応用が期待できるという。台湾で現地時間の19日に開催される国際会議「Transducers 2017」で発表する。

開発されたスピン型ひずみ検知素子の性能と、従来ひずみゲージとの比較

 様々なものをインターネットに接続するIoT(Internet of Things)では、産業・車載機器、インフラ構造物などの状態管理や故障診断に用いるMEMSセンサーの技術開発が増加している。

 MEMSセンサーの多くは、外部からの圧力や音圧などの力でMEMS構造体が変形した際に、生じるひずみを電気信号に変換する「ひずみ検知素子」が使われている。そのため、ひずみ検知素子の高感度化が、MEMSセンサー自身の精度向上に寄与する。

 例えば、高感度なひずみ検知素子をマイクに搭載した場合、産業・車載機器から発生する微小な異常音も高精度に検知可能になる。そのため、既存の半導体ひずみゲージよりも高いひずみ検知感度の実現が望まれていたが、広帯域マイクでは、MEMS構造体に生じるひずみが小さく、十分な電気信号を得られず、微小な音の検出が困難だった。

 そこで東芝は、従来HDDヘッドやMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられているスピントロニクス技術(電子のもつ電荷とスピンの両方を利用する技術)を応用。新たなひずみ検知素子「超高感度スピン型ひずみ検知素子」を開発した。

 この素子は、従来HDDヘッドの磁界センサとして用いられてきたMTJ(Magnetic tunnel junction)素子に、ひずみによって磁性体の磁化の向きが変化する磁歪効果を応用し、ひずみ検知素子として機能させたもの。磁性体層に磁歪効果の大きいアモルファスの鉄・ホウ素合金材料を採用し、従来の金属ひずみゲージの2,500倍、半導体ひずみゲージの100倍以上と、ひずみ検知感度を大幅に向上させた。

 このスピン型ひずみ検知素子をマイクに搭載。人の耳が聞き取ることのできる音域を超えた超音波まで、広帯域で高精度に検出できる、動作実証に成功した。今後、技術の早期実用化に向け、性能を高めたスピン型ひずみ検知素子技術や、同技術を搭載したスピン型MEMSマイク技術の研究開発に取り組むという。

スピン型MEMSマイクロフォンの模式図と、動作実証結果