シネックス、米Westoneの最上級イヤーモニター「ES5」発表

-コンシューマ市場に本格展開。高級市場でシェア30%へ


カスタムインイヤーモニター「エリートシリーズ」のハイエンド「ES5」

7月1日発売予定

 イヤフォンメーカー米Westoneの国内総代理店を1月から担当しているシネックスは15日、Westoneの新製品発表会を開催した。プロミュージシャンやハイエンドイヤフォンユーザーをターゲットとした、カスタムインイヤーモニター「エリートシリーズ」のハイエンドモデルで、型番は「ES5」。米国では6月28日に発売され、日本では7月1日頃から発売される予定。発表会に合わせて、本国からプレジデント兼CEOのLynn Kehler氏らが来日した。

 価格はケースによって異なるが、耳型作成まで含めて、15万円を切る価格を想定。耳型を本国に送り、製品が届けられるまでの期間は2週間程度になるという。ミュージシャンに向けた販売がメインとなるが、通常のユーザーからの注文も受け付ける。どの程度の受注数に対応できるかは、耳型を作成する業者と交渉中だという。 

写真のES5にはイヤーピースが付いているが、これは試聴用のモデルで、実際はユーザーの耳型をもとにハウジングが作られるため、イヤーピースは使わないケーブルは着脱可能なタイプとなっている

 バランスドアーマチュアユニットを採用した、カナル型(耳栓型)のカスタムインイヤーモニター。5個のドライバーを内蔵しており、帯域分割は3ウェイ。ウーファを1ユニット、ミッドレンジを2ユニット、ツイータを2ユニットが担当する。

 ハイエンドのイヤーモニターでは、例えば6個のドライバーを使ったUltimate Earsの「Ultimate Ears 18 Pro Custom Monitor」(UE18 Pro)や、8個使ったJHAudioの「JH 16Pro」などが登場しており、ユニットの数を競うような状況になっている。 

インターナショナル営業マネージャーのHank Netherton氏
 「ES5」で5ドライバーに抑えた理由として、インターナショナル営業マネージャーのHank Netherton氏は「市場では6個や8個など、ドライバが増える傾向にあるが、ドライバを追加していくことで音質を今以上に向上させていく事は難しく、逆に音質が低下する場合もあると考えている。ES5は5ドライバー、3ウェイのモデルだが、より多くのドライバーを採用した製品と同等か、それ以上のサウンドクオリティ、透明感、周波数レスポンスの良さを実現しており、さらに価格も抑えている」と魅力を紹介した。

 

ケーブル。Y型で長さは128cm入力プラグはステレオミニ

 再生周波数帯域は8Hz~20kHz。入力感度は120dB/mW。インピーダンスは20Ω。遮音性は25dBを実現する。ケーブル長は128cm。入力端子はステレオミニ。携帯用ケースやクリーニングクロス、内耳塗布用潤滑オイル、ワックスループなどを同梱する。

 「ワインの色にインスパイアされた」(Hank Netherton氏)というカラーバリエーションを持ち、メルロー、ピノ・ノワー、ホワイトジン、シャルドネ、シャンパンから選択できる。 

ワインをイメージしたカラー展開で、写真はピノ・ノワールこちらはホワイトジンというカラー

 

ES5ではないが、写真のように様々なデザインやカラーを注文する事ができるのもカスタムインイヤーモニターの特徴でもある

■ 国内コンシューマ市場に本格展開
 

Lynn Kehler CEO
 Lynn Kehler CEOは「日本での知名度はまだ低いが、非常に深い歴史を持っています」と前置きした後で、'59年の創立以来、コロラドのスプリングスで耳栓など、聴覚保護やヒアリングヘルスケアビジネスを長年手掛けてきたことを紹介。'80年代前半には、ロックバンドに参加していた従業員が一日中補聴器を作った仕事の後で、イヤフォンの研究に没頭。'90年代前半に、大物アーティストに最初のカスタムインイヤーモニターを提供したという。

 他メーカーとの関係も深く、Ultimate Earsの共同創業者であるJerry Harvey氏とともに、イヤーモニターを開発した事や、Shureの「E1」や「E5」のデザイン・製造をWestoneが手掛けた事もあるという。

 その後はプロ向けモニターだけでなく、コンシューマ向けでは世界で初めて3ウェイを実現した「Westone3」など、コンシューマ向けモデルも拡充。「品質よりも量をとる事になるのではないか? という社内の議論もあったが、iPodなどに向けたモデルを開発していく事になった」(Lynn Kehler氏)という。ほかにも、自身を含めて楽器の演奏を行なう従業員が多く、どのような音が理想なのか身を持って理解している人材が多い事、10年以上勤務しているベテラン従業員が多く、密接なコミュニケーションや蓄積された経験・知識をもとに、新しい製品を生み出している事などを紹介した。 

ミュージックプロダクトのディレクター、Jeff Kwiatkowski氏。背後のWestoneの垂れ幕は音楽イベントで掲示していたもので、アーティスト達のサインが書き込まれている

 ミュージックプロダクトのディレクター、Jeff Kwiatkowski氏はTwitterやFacebook、MySpaceなどのサービスを活用し、同社のオンライン上での存在感や認知度向上を図る取り組みを説明。

 また、海外での販売に関しては、日本のように、地域毎にマスターディストリビューターと協力して販売していく事で、その地域に合ったマーケティング活動や、サポート体制を構築していく姿勢も強調した。


 

シネックスの取締役でCE事業部長の中村明氏
 シネックスの取締役でCE事業部長の中村明氏は、今後の目標として「イヤフォンにおけるプレミアムプロダクトと表現している300ドル以上の製品のマーケットにおいて、Westoneのシェアは現在やっと2桁という状態。これを、新製品の投入などで年内に2倍(20%程度)、1年後には30%のシェアにまで高めたい。それが実現すれば、プレミアムの中でナンバーワンのシェアになるだろう。名だたる強豪メーカーに追いつき、追い抜きたい」と抱負を語る。

 そのための施策として、コンシューマ向けモデルを大手量販店の店頭試聴スペースに設置できるよう各店舗と話し合いを進めているほか、扱ってもらうモデルの種類も拡充。店頭ポップでのアピールなども強めていく計画を説明した。


 

店頭ポップの例。製品の背後のパネルにWestoneの説明が書かれているWestone3
Westone2Westone1

(2010年 6月 15日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]