ビクター、BD/HDD/ラジオ搭載新AV「RyomaX」
-「リョーマックス」。ラジオサイマル配信受信
「RyomaX」第1弾の「RY-MA1」 |
日本ビクターは、新ブランド「RyomaX」(リョーマックス)の第1弾モデルとして、Blu-rayレコーダやHDDレコーダ、FM/AMチューナ、デジタルアンプを集約し、ネットを通じてサイマル配信されるラジオも聴取できる一体型AVシステム「RY-MA1」を2011年2月上旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は16万円前後。
また、「RY-MA1」との組み合わせも想定したバー型のテレビ用スピーカー「SP-MA1」も2月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は15,000円前後。
RY-MA1。リモコンも付属 | ロゴマーク | 利用イメージ |
■ RyomaX「RY-MA1」
2009年9月に発表されたコンセプト「RYOMA(リョーマ)」を製品化したもの。発表当初は2010年春の発売予定としていたが、2011年2月上旬発売となった。BDレコーダ、HDDレコーダ、デジタルテレビチューナ、FM/AMチューナ、2chのデジタルアンプ機能を搭載し、新ネットワークサービス「MELINK」にも対応したAVシステム。
テレビ関連の機能として、地上/BS/110度CSデジタルチューナを各2基搭載し、デジタル放送の2番組同時録画が可能。DRモード録画以外に、MPEG-4 AVC/H.264でのAVCREC録画(AF~AEモード用意)も可能。最高5.5倍の長時間録画ができ、DRモードとAVCRECの同時録画も可能。
RY-MA1の前面にはシルバーのパネルが配置されている | パネルを下げると、BDドライブやSDカードスロットが現れる | 向かって右側にイジェクトボタン、パネルの右側にUSB端子やMELINKを受信しているときに光るランプを備えている |
HDDは500GB。BDドライブも備え、録画した番組をBDメディアに書き出す事もできる。なお、BDXL規格には対応しない。BDソフトも再生でき、HDMI端子から1080/24p出力も可能。ただしBlu-ray 3Dには対応しない。録画予約にはEPGが利用でき、G-GUIDEを採用。ジャンル/キーワード/人名/トピックス検索なども行なえる。
ラジオとの親和性が高いのが特徴で、アナログのAM/FMチューナを搭載。受信だけでなく、HDDに録音する事も可能で、予約録音も可能。ラジオのEPGを取得する機能は無いが、テレビのEPGのような横に放送局、縦に時間を示した予約一覧表を用意し、その項目を選びながら時間指定予約ができる。予約時に番組名などをリモコンからの文字入力で入れる事もでき、HDDに蓄積したラジオはUSBやSDメモリーカードに書き出す事も可能(USBメモリ書き出し時はファイル名8文字と拡張子3文字の制限付きだが、SDに制限は無い)。繰り返し録画なども指定できる。録音フォーマットはMP3/リニアPCM。
ラジオの録音予約画面。EPGには対応していないが、放送局と時間の一覧表で予約を管理・確認できる | 一覧から時間を選ぶと、詳細予約設定画面が現れる。番組名なども入力可能 | 毎週録音などをすると、番組でまとめて録音ファイルを管理できる |
なお、DRモードでテレビを録画している場合は、ラジオの同時録音も可能。ほかにも、音楽CDから内蔵HDDにMP3/リニアPCMでリッピングを行ない、ミュージックサーバーとして活用したり、カーオーディオやポータブルプレーヤー向けに音楽ファイルをUSB/SDカードに書き出すといった使い方も可能。DLNAのネットワークプレーヤー/サーバー機能は備えていないが、アクトビラには対応する。
テレビの予約一覧を確認しているところ | テレビの予約の詳細確認 | テレビの録画コンテンツを、番組ごとにまとめて表示しているところ。ラジオの予約や再生メニューと同じデザインを採用しており、使いやすさを重視したという |
■ MELINKに対応
大きな特徴として、Ethernetと無線LAN機能を内蔵し、新しいネットワークサービス「MELINK」に対応。これは、金沢工業大学虎ノ門事務室が事務局となる、新メディア・プラットフォーム協議会が実施するリスナー参加型の実証実験で、2つのネット配信サービスを組み合わせている。1つはラジオのサイマル配信で、音声だけでなく簡易動画やデータコンテンツなどの付加価値も付けて配信する「ラジオ サイマルチャンネル」、もう1つはプロモーションなどの独自の番組を配信する「専門チャンネル」。
MELINKのチャンネルメニュー | 東京FMのサイマル配信を受信しているところ。ライブカメラの映像も受信している | プロモーション用専門チャンネルの例 |
ネットを使ったサイマル配信だが、radikoとは異なるサービスで、radikoには対応していない。具体的な参加局や配信コンテンツは未定だが、RY-MA1の発表会ではデモコンテンツとして、FM東京と横浜FMがサイマル配信を実施。「専門チャンネル」では「フアッションTV」(JFCC)と「OH! Mikey」(エス・エス・エム)、ビクターエンタテインメントがコンテンツを提供した。2011年1月下旬よりプレサービスが開始される。
なお、ラジオのサイマル配信に関しては域特定技術が盛り込まれており、ラジオの受信可能地域でのみ、そのラジオ局のサイマル配信が受信できるようになっている。
コンテンツを提供する放送局などの判断に委ねられるが、機能としては「RY-MA1」でMELINKのサイマル配信を録音する事も可能。また、MELINKでサイマル配信を受信する際、ユーザーにとってのわかりやすさを重視し、あえてアナログラジオとMELINKのサイマル配信の違いをユーザーに意識させない工夫がされている。例えばFM東京をアナログFMで受信すると、同放送局はサイマル配信も実施しているため、受信や録音が自動的にMELINKのサイマル配信に切り替わる(MELINKでサイマル配信していない放送局はアナログラジオのまま)。
JVC・ケンウッド・ホールディングスの執行役員常務・新事業開発センター長の前田悟氏 |
「MELINK」についてJVC・ケンウッド・ホールディングスの執行役員常務・新事業開発センター長の前田悟氏は「radikoとは関係なく、8年ほど前から“ラジオをもっと楽しみたい”、“ラジオをテレビで楽しみたい”と考え、開発してきたもの。radikoが敵だとは思っていないが、家庭のテレビで楽しむ事が重要で、独自性がある」と言う。
MELINKの協議会の座長を務める金沢工業大学の北谷賢司教授はMELINKの展望について、「現在はまだ協議会で、非商業活動の研究段階。あと6カ月~8カ月すれば、おそらく事業会社化する事になるだろう。メディアプラットフォーム事業で、radikoとの統合は無いものと心得ている」。
「中心は“ビデオコンテンツを誰でも簡単にプラットフォームに乗せる事ができる”事で、例えば1つのチャンネルを持つ場合、エンコーダコストが月20万円弱、サーバーコストも20万円弱で維持できる。CS放送などでチャンネルを持つ場合と比べ、低価格で実現できるのが特徴。地方の観光協会や自治体など、コストが高すぎて映像を家庭に届けられなかった方にも提案できる。また、例えばQRコードを入れ込んだ配信を行ない、モバイル機器でコードを撮影し、Webからより詳細な情報を取得したり、通販サイトと連携させるなどのビジネスモデルも考えられる。そのあたりも、今後協議会で話しあっていきたい」とした。
■ そのほかの機能
「オーディオとビデオを一体にした」という新UIやリモコンを採用。リモコンでAキーを押すとオーディオ用メニュー、Vキーでビジュアル関係のメニューが表示される。ラジオや音楽再生、ラジオの録音予約などはAキーで、テレビの視聴、録画予約、動画再生はVキーのメニューから選択。MELINKはどちらのメニューからもアクセスできる。
付属リモコン。大きな「A」と「V」のキーが配置されているのが特徴。その間にある銀色の細長いボタンを押すとMELINKがダイレクトに呼び出せる | オーディオ用メニュー | ビジュアル用メニュー |
ビクターとケンウッドの高音質技術やノウハウを投入したというオーディオ機能も搭載。フルデジタルの2chアンプを備え、スピーカーターミナルも用意。別売のスピーカーを単体でドライブできる。また、2本のスピーカーでバーチャルサラウンド再生を行なう「3Dフォニック」機能も使用できる。最大出力は30W×2ch。
内部では最高24bitまでのビット拡張と、最大4倍のオーバーサンプリング処理を同時に行ない、音場の広がりや厚みの増加、信号帯域のノイズ低減も実施。ヘッドフォン用独立アンプも搭載している。また、BDソフトに採用されている、ドルビーTrueHDなどのHDオーディオのデコーダも搭載する。
外部入力端子として、S映像、コンポジット、アナログ音声を各1系統装備。出力はHDMI、D4、S映像、コンポジット、アナログ音声、光デジタル音声を各1系統用意。USB端子、SD/SDHCカードスロットも各1基搭載する。ネットワークはEthernet端子、IEEE 802.11b/g/nの無線LAN機能も内蔵する。
外形寸法(突起物含む)は440×235×85mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約5.3kg。
奥行きが235mmとコンパクトなのも特徴 | RY-MA1の背面 |
■ テレビ用スピーカー「SP-MA1」
「RY-MA1」との組み合わせを想定したバー型のテレビ用スピーカー。テレビラックの上に簡単に設置できるサイズを実現するほか、壁掛けにも対応できるのが特徴。
バー型のテレビ用スピーカー「SP-MA1」 |
2.5cm径のバランスドームツイータを2基、8cmのウーファを4基搭載した2ウェイ6スピーカータイプで、定格インピーダンスは6Ω。再生周波数帯域は70Hz~40kHz。出力音圧レベルは84dB/W・m。スピーカーケーブルは2mのものが付属する。エンクロージャはバスレフ。
RY-MA1と接続した場合は、RY-MA1側で専用モードを選択することで、SP-MA1に最適な音響特性でドライブが可能。外形寸法は900×107×98mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約3.2kg。
■ 「RyomaXワールドを広げていきたい」
JVC・ケンウッド・ホールディングスの執行役員常務・新事業開発センター長の前田氏は、現在のAVメーカーが手掛ける製品全般について「皆、他社と同じような製品を作っており、その製品自体も誰でも手に入るデバイスを使って作られている。また、大量生産により大量の在庫を抱える事になり、価格競争や価格下落に繋がっている」と分析。
さらに「製品の多機能化により開発コストは上昇している。例えばIPTVの機能を開発し、投入しても、その開発費用が価格転嫁できない。また、IPTVが本格化しても、コンテンツの収益がAVメーカーには入らない、売り切りビジネスになっている」と問題点を挙げる。
その上で、RyomaXが掲げるコンセプトとして、「オーディオ・ビデオ・テレビの区別を無くす」、「テレビとラジオのシームレス化」、「ホーム機器における新ネットワークサービス対応」を挙げる。
前田氏は「昔から、なぜテレビにオーディオ機能やラジオチューナが入らないのか不思議に思っていた。それはメーカーのビジネスブロックがテレビとオーディオで分かれており、テレビにオーディオ機能が入らないのが“当たり前”だったから。オーディオ市場はシュリンクしていると言われるが、ニーズが無いわけではないと考えており、テレビとラジオ、オーディオをシームレス化する、独創性のある製品を提供する事が需要」と説明。
また、新ネットワークサービスについては「(VOD)などのネット配信もあるが、レコーダにテレビ番組の録画が大量に蓄積され、それを観る時間が無いという人も多い。そんな状況で、まだ(新しい映像を)観たいという人は少ないのではないか。そうした状況を超えた、新しいネットワークが必要なのではないか」と語り、MELINKの今後のサービスについて期待を寄せた。
なお、参考出品として会場にはMELINK対応の小型「Tuner BOX」も登場。MELINKだけでなく、地デジ、FM/AMチューナも内蔵し、シンプルに使えるチューナになるという。
参考出品として会場にはMELINK対応の小型「Tuner BOX」も登場 | 日本ビクターの伊藤祐太社長 |
日本ビクターの伊藤祐太社長は、「RyomaX」について「ホームオーディオ文化の復活を目指した製品」と表現。「来年1月のCESでも展示を行ない、今後は海外展開も検討。JVCの事業の大きな1つの柱に育てていきたい。今後も革新的なアイデアで、RyomaXワールドを広げていきたい」と語り、続く製品として「モバイルシーンに特化した、新コンセプト商品」を市場投入する予定も発表。
前田氏は2009年9月の発表時に「RYOMA」としていた製品名を、「RyomaX」に変更した理由を「今後、様々なモデルに発展していく、いろいろなタイプの製品を出していきたいので、“X”をつけた」と語った。
(2010年 12月 16日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]