【CEATEC 2011】スピーカー12台の「DTS Neo:X」を体験
-BD「ジュラシック・パーク」音声。TV向け技術も
取材に協力いただいた、dts Japanのフィールド・アプリケーション・エンジニアリング・マネージャーの堀江誠一氏(左)と、伊藤哲志マーケティング・マネージャー(右) |
DTSは、CEATEC JAPAN 2011開催に合わせて行なったプライベートデモにおいて、最新のAVアンプなどで導入が始まった「DTS Neo:X」の最大チャンネル数である11.1chシステムで再生するデモを行なった。
また、テレビ本体にDTSのデコーダを載せることを想定したデモも行なった。海外ではサムスンなどが既にDTS搭載テレビを発売しているが、国内でも導入を目指すという。
このほか、PCにおいても、世界で初めてDTSのハイエンドオーディオ技術「DTS Ultra PC II Plus」を搭載したモデルが富士通から発売される。詳細はPC Watchにてレポートしている。
■ 発売直前の「ジュラシック・パーク」BDをDTS Neo:Xの11.1chシステムで体験
今回のデモで用いたシステム |
デモルームには、オンキヨーの協力により、9.1ch AVアンプ最新モデル「TX-NA1009」をベースに、プリアウトを経由して2chアナログアンプで増幅するシステムを構築。スピーカーは、LINNのフロア型「MAJIK 140」をフロントに、センターには「MAJIK 112」、リアやフロントハイトなどに薄型の「CLASSIK UNIK」を8台、サブウーファに「MAJIK 126」を用いた、計12台で構成している。プレーヤーはPlayStation 3。
デモディスクとしては、10月26日に発売されるBlu-ray「ジュラシック・パーク アルティメット・トリロジー」の検証版ディスクを使用した。
DTS Neo:Xは、最大11.1chまでのサラウンド環境を構築可能とする技術。現在は市販Blu-rayでも11.1chという作品は存在しないが、dts Japanのフィールド・アプリケーション・エンジニアリング・マネージャーの堀江誠一氏によれば「元が7.1ch、5.1ch、ステレオしかない中で、どういう風に音が広がっているかということを解析して、そのうえで“自然な位置”に音を配置していく。例えば、ミキシングエンジニアが、レフトからレフト・サラウンドに動いていくようにミックスした場合には、当然、間にあるレフト・ワイドを経由する。また、全体を包み込むような音にしたい場合は、フロントハイトや、サラウンド系のスピーカーに配置していく」とのこと。
実際に聴くと、5.1chや7.1chのディスクリート再生のように「この音はレフトから」、「これは左のリアから」といったスピーカーの設置してある場所を強く意識することなく、自然なつながりを感じられる。「雨が車のルーフに当たる音」と、「恐竜たちが車の外で唸っている声」では音の広がりが全く違うように“音の鳴っている範囲”の違いがより分かる展示だった。
オンキヨーのDTS Neo:X対応AVアンプ「TX-NA1009」(右)に、2chアナログアンプ(左)を接続 | LINNのフロア型「MAJIK 140」(左)などを使用 | サラウンドスピーカーには、スマートに設置できる「CLASSIK UNIK」を使用 |
■ “輪郭がぼやけない”テレビ向けバーチャルサラウンド技術
PCとHDMI接続した「AQUOS LC-52L5」ベースの試作機から出力 |
「DTS Neo:X」はハイエンド機器向けの機能である一方で、より多くの人にDTSのサウンドを提供するというのが、テレビへの内蔵を想定した今回の技術デモ。
dtsは主にコーデック開発により音質向上を追求しているが、“ソースを良くする”という意味ではロスレスを採用することである程度完成されたという見方もできる。一方で、ハイエンドではない、限られた再生機器でも音質向上を目指すアプローチも進んでいる。それをテレビに載せた場合、どれだけ音が改善するかを検証するという、1つのショーケースとして提案している。
今回、デモにはWindows 7 PCと、シャープの「LC-52L5」をベースとした試作機を使用。この中に、DTSのポストプロセッシング技術を集めたAPOプラグインを搭載。PC上で再生する音源全てにDTSの技術が適用される形でHDMIから出力する。出力はステレオのPCM。
テレビはアンダースピーカーから再生。テレビに関しては、リモコンでできる範囲で、すべての特性をフラットにしている。また、L5は本体横にツイータが付いているが、デモのために、あえてツイータは使えないようにしている。今回、台湾の同社チューニングエンジニアが来日し、セッティングを行なった。
PCで「アイアンマン」を再生。DTS機能をONにすると、音の定位が明らかに上方に移動したことが認識でき、アンダースピーカーではなく、画面そのものから出ているという感じを受ける。音自体にも、OFFの状態に比べてこもりが無い。
音場を広げることを謳うバーチャルサラウンド技術では、広がり感こそ増すものの、音の輪郭が損なわれるという弊害も予想されるが、今回の技術では、センター音声を明確にする技術も合わせて搭載されており、映画のセリフがぼやけることもない。センター音声だけでなく、例えばアイアンマンのバトルシーンでは、金属がぶつかり合う音の“硬さ”も伝わる。
写真の設定画面よりも、かなり細かな画面が用意されており、そこで様々な調整を行なっている |
ナレーション音声だけのサンプルを聴くとその違いはさらに明確。この音声に映像はついていなかったが、OFFにするとナレーターが下を向いて原稿を見ながら話し、ONにすると正面を向いたような絵が浮かぶほど、はっきりと違いが表れた。
実際の処理は、様々なパラメータの調整により成り立っているが、今回のデモでは、全体の機能のON/OFF切替のみで、様々な変化が一度に感じられた。テレビのリモコンで音声のパラメータを細かく調整したいというニーズは少ないとみられることから、簡単な切替での搭載を想定している。なお、「映画」や「音楽」、「ゲーム」といった映像ジャンルによってパラメータの異なるモードに切り替える、というった機能についても検討しているとのことだ。なお、前述したPC向け技術「DTS Ultra PC II Plus」でも同様の処理を行なっている。
■ 11.1chデモ再生の一般公開も14日より実施
dtsは、10月14日~16日に、東京・表参道のAudi Forum Tokyoにて、DTS Neo:Xの11.1ch再生などを体験できる試聴イベントを実施。予約なしで自由に入場できる。
会場では、今回のデモと同様のシステムで「ジュラシック・パーク」をDTS Neo:Xの11.1ch再生で体験できるほか、「DTS Ultra Mobile」搭載スマートフォンや、「DTS Envelo」搭載のiPodドック、「DTS Ultra PC II Plus」搭載PCの試聴コーナーも設けている。さらに、評論家の麻倉怜士氏らによるトークセッションも開催予定。詳細はイベントページで案内している。
dts Japanの伊藤哲志マーケティング・マネージャーは、「ハイエンドオーディオ好きな方に、引き続きファンでいていただきたいとともに、より幅広い方々にも、DTSのロゴマークが入った製品の音の良さを感じていただきたい。今後もこういった活動を増やしていく」としている。
(2011年 10月 6日)
[AV Watch編集部 中林暁]