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ジブリの「海がきこえる」が7月Blu-ray化。ジブリ長編全22作のBD化完了

海がきこえる Blu-ray
(C)1993 氷室冴子・GN

 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンは、スタジオジブリの長編アニメ「海がきこえる」を7月17日にBlu-ray化。6,800円で発売する。この作品のBD化をもって、'84年公開の「風の谷のナウシカ」から、2014年公開の「思い出のマーニー」まで、スタジオジブリ長編全22作のBDが出揃う事となる。

 日本テレビ系列で、'93年にテレビスペシャル番組として放送された長編アニメ。「社内の若手スタッフに何か1本制作を任せてみてはどうだろうか」、「紅の豚」のダビング作業中の宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーの会話の中から生まれた作品で、土佐・高知の男女高校生がたどる青春の軌跡を描いている。

 原作は氷室冴子。「月刊アニメージュ」で23回(1990年2月号〜1992年1月号)にわたって連載、「魔女の宅急便」の作画監督であった近藤勝也による挿し絵とともに人気を集めた。アニメのキャラクターデザインと作画監督は近藤勝也、監督には細やかな人物表現と克明な日常表現の演出で定評のあった望月智充(きまぐれオレンジ☆ロード〜あの日にかえりたい 監督)があたっている。

 BD化にあたっては、4K解像度でフィルムをスキャンする4Kデジタル・リマスターによりマスターを作成。「劇場用作品と同様に35mmフィルムで制作された、この作品が本来持つ高いクオリティーを再現した色彩、映像がお楽しみいただける」という。

 最大36bitの高階調映像を実現するパナソニックのMGVCにも対応。対応するBDレコーダで再生することで、最大36bitの高階調映像を再生できる。

 片面2層の本編ディスクを収録。映像特典として、アフレコ台本、予告編集、絵コンテ形式によるレイアウト集(本編映像とのPinP小画面収録)、制作スタッフ座談会「あれから10年 ぼくらの青春〜ここからすべては始まった!〜」も収めている。

タイトル 仕様 音声 品番 価格
海がきこえる
Blu-ray
片面2層
MPEG-4 AVC
MGVC
16:9
1080p
日本語字幕
英語字幕
リニアPCMステレオ VWBS-8234 6,800円

あらすじ

 東京の大学に進学した杜崎拓(もりさきたく)は、吉祥寺駅の反対側ホームにある人影を見た。中央線下り列車に姿を消したその人影は確かに武藤里伽子(むとうりかこ)に見えた。だが里伽子は高知の大学に行ったのではなかったのか。高知へと向かう飛行機の中で、拓の思いは自然と里伽子と出会ったあの2年前の夏の日へと戻っていった。

 里伽子は勉強もスポーツも万能の美人。その里伽子に、親友の松野が惹かれていることを知った拓の心境は複雑だった。拓にとって里伽子は親友の片思いの相手という、ただそれだけの存在だった。それだけで終わるはずだった。高校3年のハワイの修学旅行までは……。

プロデューサー (スタジオジブリ 鈴木敏夫プロデューサー 2015年4月)

 企画というモノは、いつだって、誰かの不純な動機から始まる。今作の場合、それは徳間書店の編集者だった三ツ木早苗である。彼女は最初から目論んでいた。当代の大人気作家だった氷室冴子さんに本を書かせ、その原作を元にジブリで映像化する。なにしろ氷室さんは、当時、集英社のお抱え作家で、そこへ徳間が食い込むことは至難の業だった。それをジブリを餌に実現したのだから、見事という他は無い。

 彼女の得意技は、大酒を飲んでも酔っぱらわないこと。お酒が大好きだった氷室さんに、彼女はこの得意技を大いに発揮するはずだった。しかし、ぼくの記憶だと、酔っぱらって前後不覚になった三ツ木早苗を自宅まで送り届けたのは、いつだって氷室さんの方だった。だが、氷室さんという人は、そのことを意に介さない。どういうことかといえば、いつも接待づけで下にも置かない編集者たちにうんざりしていたのだろう。はじめてジブリを訪れた氷室さんは、心底、嬉しそうにこの逸話を語った。

 というわけで、三ツ木早苗が氷室さんを伴ってジブリに登場したときは、氷室さんはすでに彼女の手中にあった。作家と編集者の立場の逆転。作家は、時としてマゾになって、そのことを喜びとする。訳の分からないことを口走る三ツ木早苗のフォローをするのは、もっぱら、氷室さんの役割だった。

 事はどんどん速やかに順調に進んだ。最近の映画の主人公は不良ばかり。優等生を主人公にすると、いま、どうなるのか? 舞台は土佐の高知。地方都市を舞台に、やがて、都会へ出て行く高校生たちの青春群像。卒業の時、高知は東京へ行く人と関西へ行く人に分かれる。そこがおもしろいと氷室さんは、一気に話した。それを傍らでニコニコしながら、頷き、相づちを打つ三ツ木早苗。タイトルは、海がきこえる。

 その後、アニメージュで連載が始まるが、間を置かず、映像化の話も同時進行する。日本テレビでの放映もあっという間に決まった。祝日の午後の特別番組。となると、いつものメンバーがジブリに集まってくる。気がつけば、すべての関係者が三ツ木早苗の掌の上で踊っていた。そういえば、魔女の宅急便の時、三ツ木早苗は、すでに氷室さんと宮崎駿の対談をモノしていた。

 あれから22年、その間に氷室さんは若くして亡くなった。三ツ木早苗は、その後も徳間書店で編集の仕事を続けた。彼女の名前は、映画の中で大きくクレジットされたわけでは無い。しかし、この逸話でおわかりのように、彼女こそがこの映画の真のプロデューサーだった。

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海がきこえる
Blu-ray

(山崎健太郎)