ニュース

シャープ再建、鴻海と産業革新機構で未決定。「リソースは鴻海に」

 シャープは4日、同社の経営再建において、産業革新機構と鴻海精密工業有限公司の2社に絞って協議を進め、今後1カ月を目処に最終的な契約を締結できるよう協議すると発表。同日の決算会見で高橋興三社長が現状について説明した。

 NHKで「鴻海精密工業有限公司に優先交渉権を与え再建を目指す方針を決定した」と報道されたが、「まだ優先交渉権を与えたという事実はない」と説明。シャープはこれまで、液晶事業の構造改革など経営再建に向けた取組みについて、複数社と協議を行なってきたが、産業革新機構と鴻海精密工業に絞られた形となっており、「今後、開示すべき事実を決定した場合は、速やかに公表する」としている。

「リソースをかけているのは鴻海」。鴻海有利を示唆

 4日には「鴻海が優先交渉権を獲得」との報道が出たが、シャープ高橋社長は、「今日の取締役会は、どちらに決めるというものではない。現在の進捗を確認するためのものだった。1カ月程度で決めるが、両者とも非常に弊社にとって積極的な提案を頂き、非常にありがたく思っている。内容を精査して、全てのステークホルダー、シャープの社員、株主、多角的な面において検討していこうというのが本日の議論です。優先交渉権の決議はしていない」とした。

シャープ高橋興三社長

 ただし、「進行にあたり、いろいろな情報を精査しているが、その進捗は全く一緒ではない。情報精査にリソースをかけているのは鴻海である。これは単に進行上の問題だ。しっかり内容を吟味させていただいている段階」とコメントした。

 また、シャープ側の思いとして説明したのは、シャープのDNAを残す、雇用、技術流出への対応、条件の4点。DNAについては、「シャープのDNAを残す。各カンパニーごとに分解されるのは、むしろお互いにとってマイナスになる。いまの一体性を保ちながらやっていく。これについては両社ともご理解いただいている」とした。

 従業員については、「雇用の最大化をやっていただきたい。これも生産場所も含めて、両方の会社ともご理解いただいている」。海外技術流出については、「SDP(鴻海と共同運営の堺ディスプレイプロダクツ)をすでに3年やっているが、大型液晶の技術流出はなかった。そういうことはしないという話をしている」と説明した。また、4点目の条件については、「両社とも好条件を頂いている。決してお金だけではない」とした。

 高橋社長は、「シャープは、大きな2つの違う塊がある。かつては“プロダクツ”と“デバイス“の2つのビジネスだったが、今のシャープの電子デバイスは、一般的なデバイス事業ではなく、モジュール事業。巨額な投資を必要とせずプロダクツに近い。だから、今は“液晶“と“それ以外”の2つのビジネスで、その考えは、革新機構とも鴻海とも共有している」と説明した。

 想定されるシナジー効果については、鴻海については、「SDPをすでに共同運営しており、鴻海の他の工場との連携もできる。アッセンブリについては、最大のEMSなので当然強いプラスがある。製品についても、欧州のテレビブランド貸与やBtoBなどで連携できる」とした。

 産業革新機構については、「革新機構が株主になっている会社との協業は当然考えられ、技術のシナジーなどが得られる。技術面ではお互い強いものをもっていると認識している(注:ジャパンディスプレイを想定した発言)ので、より強いものができる。また、液晶以外の部分も、シャープのAIoTや、白物、通信に資金を入れば、成長にドライブをかけることができる」と語った。また、革新機構は家電再編を狙い、白物家電の切り離しなども意図していると伝えられたが、「白物を切り離すという提案はもらっていない」(高橋社長)と回答した。

(臼田勤哉/山崎健太郎)