アキュフェーズ、78万円のチャンネルデバイダ「DF-55」

-高速・高精度DSPでノイズ低減。4ウェイまで対応


デジタル・チャンネル・デバイダ「DF-55」

 アキュフェーズは、マルチアンプ方式でスピーカーをドライブするためのデジタル・チャンネル・デバイダ「DF-55」を1月下旬に発売する。価格は787,500円。

 チャンネル・デバイダは、プリアンプから出力された音楽信号を任意の帯域に分割して、各帯域の増幅を担当するパワーアンプに受け渡すユニット。大型のスピーカーをマルチアンプ駆動する際や、帯域ごとに分離・設置したユニットで再生するマルチスピーカーシステムなどで利用する。

 同社は‘76年からアナログのチャンネル・デバイダを発売しているが、‘99年にフル・デジタル処理が行なえる「DF-35」を発売。2005年に「DF-45」が発売され、「DF-55」はその後継機となる。

 DF-45と比べ、より高速・高精度なDSPを搭載。演算誤差のより少ない、高次のフィルタ特性を実現したという。具体的には中枢部のデジタル・フィルタに、仮数部32bit、指数部8bitの浮動小数点演算タイプのDSPを採用し、ダイナミック・レンジを拡大。48dB/octaveや96dB/octaveという急峻なフィルタを実現している。

 また、DACにはESSテクノロジー製の「ハイパーストリーム DAC」(ES9008)を4回路並列駆動で採用。⊿∑型DACを複数個並列接続することで性能改善を図る独自の「MDS++変換方式」に応用しており、残留ノイズを大幅に減少させている。

 デバイダ・ユニットは標準で4個を搭載。通常はステレオポジションで使用するが、出力モードをモノポジションに変え、モノフォニック仕様にする事も可能。その場合は、各ユニット内のL/R 2回路のDAC出力を加算して並列駆動(MCS回路を構成)が可能になり、さらに残留ノイズを低減できる。

 1つの帯域を1つのデバイダ・ユニットが受け持ち、信号を分割するフィルタ、減衰スロープ特性、ディレイやディレイ・コンペンセーター、レベル・コントロール、位相切替などを全てデジタル処理で実現している。

 ディレイはタイム・アライメントを揃えるための機能で、同一バッフル面に取り付けたスピーカーや、ホーンシステムでは実現が難しいタイム・アライメントを、デジタル信号処理の電気的な遅延で簡単かつ正確に補正できるという。

 ディレイ・コンペンセーターは、信号がフィルタ回路を通過する際に出力信号が遅れ、ステップ応答やインパルス応答に乱れが生じる減少に対応するもので、遅延時間を理論的に計算。自動的にディレイ補正するもので、複雑な音楽でも原音を忠実に再現できるという。

 アナログ方式のデバイダと異なり、隣接する帯域のクロスオーバー点のカットオフ周波数(59ポイント)や、減衰スロープ特性(6種類)を、独立して自由に設定できるのも特徴。これにより、各ユニットの能力を引き出せるという。

 ライン/バランス入力端子を備え、入力オプション・ボードを増設せずに、直接アナログ・プリアンプに接続可能。基本構成は4チャンネル(4ウェイ)が標準だが、入力信号の送り出しデジタル端子により、DF-55を複数台使い、5ウェイ以上に拡張する事もできる。

 入力端子は同軸デジタル×1、光デジタル×1、HS-Link×1、アナログバランス×1、アナログアンバランス×1。出力はHS-Link×1、アナログバランス×4、アナログアンバランス×4。消費電力は29W、外形寸法は465×396×151mm(幅×奥行き×高さ)。重量は14.7kg。



(2011年 1月 18日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]