レビュー

“小型スピーカー作りの天才”が手掛けた約8.8万円「AIRPULSE A60」。カワイイだけじゃない超実力派

AIRPULSE(エアパルス)「A60」とPCなどをつなげて、音楽を愉しんでみませんか?

小さいのにイイ音がするスピーカーに出会うと嬉しくなりませんか? それが入手しやすい価格だったりすると、不肖は思わずニコニコしてしまいます。AIRPULSE(エアパルス)の新型機「A60」は、きっと誰もが頬が緩んでしまう1台。だってフレッシュな良音を奏でながら、実勢価格は88,000円前後なのですから。手元に置いたら毎日がちょっと楽しくなること間違いナシな本機をご紹介します。

AIRPULSE A60はどんなスピーカー?

AIRPULSE A60

A60は、126×216×223mm(幅×奥行き×高さ)というコンパクトなボディの2ウェイ・パワード型スピーカー。こんな小さなボディに、USB入力対応D/Aコンバーターと4チャンネルのクラスDパワーアンプを詰め込んだというから恐れ入ります。

スピーカーユニットは、90mmアルミニウム合金コーン・ウーファーと新開発のフラットダイヤフラム・ツイーターの組合せ。注目のツイーターの磁気回路には強力なネオジム磁石が用いられており、腕時計など金属製品を近づけると吸い寄せられるから注意が必要です。でも安心してください。振動板表面には保護ネットがありますから。

90mmアルミニウムコーン・ウーファー。ボイスコイル口径は30㎜で、ロングストローク設計を採る
AIRPULSEブランド初となる平面ダイアフラムツイーター。振動板自体にボイスコイルをプリントしているため、高速レスポンスと歪みの少ない音が愉しめるという
平面ダイアフラムツイーターの構成図

右チャンネルスピーカーの背面をみると、プッシュ式の入力セレクターを兼ねたボリュームノブのほか、低域、高域のレベル調整ノブを配置。入力はUSB-C、光デジタル、同軸デジタル、BluetoothにRCAアンバランスと3.5mmミニフォーン端子を装備。さらにサブウーファー出力を用意していますから、2.1chシステムアップもカンタンにできます。ちなみに右スピーカーとは専用のケーブルで結びます。

スピーカー背面のようす。バスレフポートは上部に配置
右チャンネル側の端子部
付属する左右チャンネル接続ケーブル

コンパクトゆえ置き場所にはあまり困らないでしょう。試しに27型のPCモニター横に置いてみると、良い感じに収まりました。この時のスピーカー間はツイーター中央部で約80cm程度。ですから幅1m程度の机があれば、モニターとスピーカーなどを綺麗に配置できると思います。

27インチモニターの両脇にA60をセットしてみました

試しに13.3インチのノートPCのすぐ横に置いても、あまり違和感を覚えませんでした。ただ、MacBook NeoのUSB端子は左側、A60のUSB端子は右側ですので、ケーブルの取り回しがちょっと煩雑になるかもしれません。

MacBook Neoの隣に置いてみました

底面を見ると、四隅に小さなゴム脚がついているほか、仰角だけでなく接地面に対する振動低減に効果があるスポンジフォームが用意されています。デスクトップで利用する際、机に振動が伝わりづらくなるなどの効果がありますので、セッティング時に活用されるとようでしょう。

底面四隅にゴム脚がついています
付属するスポンジフォーム製スタンド
使ってみると角度がつきます

まずはBluetooth接続で、音のクオリティをチェック

まずは気楽にスマホとBluetoothで接続。Qobuzアプリで色々聴いてみると、フレッシュなゴキゲンサウンドが飛び出してきたではありませんか。

スマホとBluetooth接続して試聴開始!

低域は大きさなりのところは仕方ないのですが、それゆえリズムが小気味よく決まってとても気持ち良いではありませんか。楽曲をえり好みする傾向はありませんが、明るく陽性の音色ですので、小気味よさと相まって、特にポップスやロックを好む方には歓迎されることでしょう。

なかでも驚いたのが、今年3月アイドル激戦国である韓国に乗り込み、人気音楽番組に出演するや彼の地に「カワイイ旋風」を巻き起こした7人組アイドルグループCUTIE STREET(きゅーすと)の代表曲「かわいいだけじゃだめですか?」。カワイイスピーカーの間にカワイイ彼女たちが入れ替わり立ち代わりと現れるのですが、これが実に楽しくて仕方ない! まさに“ここが世界一の場所!”と言いたくなるほど。ヘッドフォンやサウンドバーで聴くのも良いですけれど、やっぱり音楽はスピーカーで鳴らしたほうが“倍の倍の倍の倍”で愉めるなぁ、と改めて実感。「自分にカワラボ好きの年頃の子供がいたら、ヘッドフォンではなくAIRPULSE A60を買い与えたい!」と、聴きながら思ったのでした。あ、不肖は、子供はおろかパートナーもいません……。

「かわいいだけじゃだめですか?」「いーよー!」

本格的なオーディオ機器とも組み合わせられる実力

この「かわいいスピーカー」をデスクトップだけで使うのは勿体ない! Hi-Fiなパワードスピーカーとしてはどうなのか? ということで、場所を移動してA60の実力を試してみることにしましょう。

スピーカースタンドが手元にないので、パラゴンの上に置いてみました

ソース機器はAurender(オーレンダー)のデジタルファイルプレーヤー「A1000」を使用。これならアナログ入力(RCA)のほか、USBデジタル出力の両方が確認できますからね。

買っちゃった!新しいオーレンダーなのだ

まずはスマホを使ってセッティング場所を探すところからスタート。どうやらスピーカーの間隔は1.7mが良さそうで、これより拡げると、ちょっと音像が散漫になるような気が。指向性は強めで、振り角にはかなり敏感な傾向がありそうです。ヴォーカル物は思いっきり内振りにした方が音像が立ってイイのですが、他の楽曲だとステージが狭くなる上に、持ち味のひとつである、開放的な愉しさが減じるような。ちょっと角度を緩め、試聴位置よりも後ろで音像が交差するイメージでセッティングしました。

A60のバスレフポート。フレアポート形状なのでポートノイズは少なめですが、結構な量の低音が放射されます

セッティングでもうひとつ。

A60はリアバスレフ機なので、背面と壁の位置関係が音質に大きく影響してきます。やや大きめの音で鳴っている時にポートに手をかざすと、結構空気の流れを感じます。デスクトップですと至近距離になりますので、それほど大きな音量を出す必要がないので大丈夫ですが、大きめの音量で壁に近づけると、低域がカブってきたりも。その時は位置を変えるか、右チャンネルスピーカー背面のBASSを下げて調整してみてください。なおポートに何かを詰めるというのは、スピーカーの中に入ると取り出せなくなるので、なさらない時が無難でしょう。

アストル・ピアソラで試聴してみました

チェックするソースは、アストル・ピアソラがアメリカン・クラーヴェに残した3部作の中から、彼の代表曲のひとつ「ミケランジェロ70」。バンドネオンのほか、ヴァイオリン、ピアノ、ギター、コントラバスの質感や描き分け、重なり具合は勿論のこと、ノリとリズムの良さが試聴のポイントです。

アストル・ピアソラ「ミケランジェロ70」

AIRPULSE A60とデジタル(USB)で接続した様子

まずはデジタル入力から。スッキリとしてクール、そして鮮度感とS/Nの高さが印象的。

静かさの中から音が鋭角に立ち上がり、中でもギターのボディヒットやスラム奏法の再現性やヴァイオリンの切れ味は見事なもの。ウッドベースにボディ感がシッカリとあり、カワイイだけじゃないぞ、このスピーカーは! と、ちょっと冷や汗が。

ですが人間とは欲張りなもので、イイ音を聴くと「もっとイイ音で」と思うもの。不肖の場合、「ちょっと肌合いがサラッとしているなぁ」、「もう少し音色に質量があるといいんだけど」、と望みたくなったりも。でも、それは値段が1ケタや2ケタ違う高級オーディオ機器と比べたらの話。10万円以下のパワードスピーカーで、ここまで出たら文句ナシでしょ、などと思いながらアナログ接続に切り替えた途端、不満感が綺麗に払拭! 音のレイヤーを感じさせる厚く深みのある表現に、思わず言葉を失ってしまいました。

Aurender A1000という飛び道具を使っているとはいえ、これはホントに凄い! オーディオの楽しさ、音楽を聴くことの楽しさを教えてくれる。AIRPULSE A60は、そんなことを言いたくなる1台です。

小型スピーカー作りの天才が手掛けたA60

さて、そんなスピーカーを作ったエンジニアは、どんな人なのでしょうか。その人の名前は、フィル・ジョーンズ。実はオーディオ界では知られた「小型スピーカー作りの天才」なのです。

フィル・ジョーンズさん

彼の名が知られるようになったのは、1980年代後半に仲間たちと興したアコースティック・エナジーのコンパクトスピーカー「AE1」から。音の良さがプロの世界にも伝わり、フュージョン/アダルト・コンテンポラリーで知られるGRPレコードのほか、アビー・ロード・スタジオにも採用されました。最初の作品が、いきなりアビー・ロード・スタジオに入ったって、とんでもない話です。

アコースティック・エナジー/AE1クラシック

不肖も以前、AE1クラシックというリバイバルモデルを聴くことがあったのですが、その音のことは今でも覚えています。フロントバスレフポートから放出された低域が、スピーカーから2m近く離れた不肖の顔に直撃して面食らいましたが、ホットでビターでスパイシー。ノリのよい音に聴いているうちにニコニコ。今思えばAIRPULSE A60と、鳴りっぷりの良さという点で似ていたことを思い出しました。

その後、移住先のアメリカでプラチナムを設立。ここでも小型スピーカーの傑作「solo」を創り上げます。さらに1996年には、全幅820mm、全高1,830mm、奥行き1.220mm/約400kgという弩級の4ウェイ・オールホーンスピーカー「エアー・パルス3.1」を発表。価格は当時としては破格のペア2,000万円! 彼の名は、誰もが識ることとなったのです。

奥様が中国籍だったことから、中国に移住したフィル・ジョーンズ。アメリカン・アコースティック・デベロップメント(AAD)ブランドでスタジオ用モニタースピーカーを、Phil Jones Bassブランドからベース用スピーカーをリリースします。一般的にベース用スピーカーは大口径ユニットを使うところ、彼は10cmそこそこのユニットを複数用いた独自の設計で話題を集めたそうです。そして2010年後半、AIRPULSEブランドから立て続けに小型スピーカーが登場。今回に至るというわけです。

AIRPULSE A60

AIRPULSE A60は「小型スピーカー造りの天才が創り出した良作」といえるでしょう。スマホとPCと、アナログプレーヤーなどとA60をつなげ、左右2つのスピーカーが奏でる好きな音楽に耳を傾けてみませんか? もっと音楽が好きになって、人生がちょっと愉しくなると思いますよ。

栗原祥光

自動車評論家/オーディオ評論家。2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。オーディオ好きが昂じステレオサウンド社に潜り込み、そのまま編集部員へ。その後、KADOKAWAで東京ウォーカー等の情報誌の編集に従事した後、独立。現在はフリーランスとして活動している。自宅ではアルテック/DIGと、マルチアンプ化したJBL/パラゴンを愛用。 https://x.com/yosh_kurihara