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Netflixドラマ「地獄に堕ちるわよ」を大殺界中に一気見! 結果、気にせず生きることにした
2026年5月5日 08:00
かつて、「地獄に堕ちるわよ」や「大殺界」などのパワーワードで一世を風靡した占術家・細木数子。その半生を元にしたNetflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」が4月27日に配信スタートした。
配信前の予告時点でもかなり話題になっていた作品だが、配信後もやっぱり超話題だ。10代から60代までの本人の姿を、俳優・戸田恵梨香が演じている。
なお、実在の人物がモデルになる作品ではあるが、筆者個人はこのパターンは、独立したフィクションと捉える派だ。作品として成り立たせるため脚色も多いだろうし、どこからどこまでが事実かイチ視聴者の自分には判断できないので、とりあえず全部に騙されたいスタンスでいる。その点、本作は非常にイイ感じだった。
ちなみに筆者は、細木先生が提唱した占い「六星占術」でいうと「天王星人マイナス(-)」。2026年は、3年間続く「大殺界」の最後の年<減退>を迎えている身である。
まさか2年前から運気が悪かったとはつゆ知らず過ごしてしまい、今年のやり方を間違うと地獄に堕ちる可能性が高まるかもしれないので、心して本作を視聴した。あまりに心しすぎて、配信開始した27日の16時から、全9話を9時間ぶっ続けで一気見した。
以下、そんな大殺界真っ只中のライターが、個人的に感じた本作の見どころをネタバレしない範囲でご紹介したい。
先に結論だけ言うと、このドラマを観て思ったのは、「大殺界に気を取られず生きよう」ということだ。あくまでもその点に限っては健全(?)なドラマだった。観て良かった。
女ビジネスマンの物語、あるいはNetflixが描く昭和・平成の風景として
筆者が観た感じ、ドラマ本編は、細木数子本人が書いた自叙伝「女の履歴書―愛・富・美への飛翔」と、作家・溝口敦のルポルタージュ「細木数子 魔女の履歴書」の両方を参考に取り混ぜつつ、脚色してまとめるような形で進行する。
人によって様々な見方があると思うが、たぶん最もスタンダードなのは、戦後の混乱期から成り上がるピカレスクもの。そして最終的に占いを事業として成立させるに至った、マーケター・数子のビジネスマンとしての姿だろう。
物語は、2005年当時の日本から、敗戦時の日本を振り返って始まる。1938年生まれの細木数子は、当時小学生。焼け野原になった東京からのスタートだ。
10代で家業の飲食店を手伝っているが、この“家業”や“実家”という要素が、伝え聞く噂の中でマイルドな方の設定になっているのは、色々と配慮した結果なのだろう(幼少期の環境は、その後の仕事観に大いに影響する重要ポイントだとは思うが)。
で、ドラマの中の細木数子はその後キャバレーで働き、今で言うテイクアウトの軽食屋(コーヒースタンド的な)を出店するところから経営者側に立ち位置を変える。
そこから、弱冠10代(実際は20歳を超えていたとの説も)にして軽食屋事業をM&A(売却)し、新橋の高コスパクラブ運営を経て、銀座・赤坂に高級クラブやナイトクラブ、ディスコを出店。さらに飲食経営にとどまらず、時代の風を掴みながら芸能事務所、そして占いビジネスへと次々にピボット(路線変更)していく流れだ。
メンターとなっていた投資家と若さゆえの判断ミスで決別するとか、詐欺に遭って背負った巨額の借金の返済のために、自身の商才を他者に搾取され続ける不遇の時代を送るとかの展開は、ビジネスドラマ目線で見て色々沁みる人も多かろう。
あともうひとつの見方は、昭和〜平成へ移り変わる東京のビジュアル再現。ヒット作が多いNetflixの日本オリジナルドラマの中でも、「全裸監督」「浅草キッド」「極悪女王」「This is I」など実在の人物をモデルにした作品を観るとき、「日本のどんな時代のどんな風景が楽しめるのか?」はひとつの楽しみだと思っている。
村西とおるやビートたけし、ダンプ松本、はるな愛が当てはめられてきたこの軸に、細木数子を当てると……終戦直後の混乱期から、復興、朝鮮特需、高度経済成長、東京オリンピック特需、そしてバブル崩壊から平成へと至る日本・東京の変遷をざっくり辿ることができるわけだ。そういう時代の縦軸に、水商売とか芸能界とか裏社会とか複数の横軸が加わる。
特に予算ががっつりかけられているネトフリドラマの強みで、終戦直後から高度経済成長期の銀座まで、時代が古いほど当時のビジュアル再現がスゴい。これは確実に本作の見どころのひとつだと思う。
配信前から話題の「どこまでズバリ描くのか」
本作は配信開始前から、どこまでのエピソードに踏み込むのかが注目されていた。基本的には、「霊感商法疑惑」「島倉千代子」「安岡正篤(と思われる人物)」「神熙玲(と思われる人物)」「反社との関係」あたりのポイントは、深度の差はあるが、一応ひと通り触れられている。
この辺は、戦後や昭和という時代が少しずつ記号化しつつある今だからこそ、エンタメシーンのひとつとして昇華できた領域も含まれるのかもしれない。もちろん事実と脚色の境界を詮索するものではなく、“こういうドラマ”として楽しむのが正解だろう。
微笑ましいところでは、レイザーラモンHGが本人役で出演している。かつてバラエティ番組「ズバリ言うわよ」で彼女に激怒されたシーンをセルフパロディ的に再現しており、当時を知る世代には嬉しいサービスだろう(ちなみに筆者も毎週観ていた)。
細木数子は誰に支持されていたのか
あと個人的には、本作を観て、“占い師・細木数子は誰に支持されていたのか”=誰をターゲット層にしていたのか、という根本的な部分が実感できたのが地味に良かった。
上述のルポルタージュ「細木数子 魔女の履歴書」で書かれている言葉をお借りすれば、“壮年、熟年、老年の代弁者という位置づけ”だ。
ドラマの後半で、講演会に立った細木数子が「今日来ているお客さんの中には私と同年代も多いね(意訳)」的なことを語りかける部分がある。2000年代前半に学生だった自分にとって、当時の細木数子は“怖い占いおばあちゃん”という印象だったが、一方で敗戦後の混乱期という時代の記憶を共有する世代にとっては、力強い代弁者にもなっていたのだな……と。
それを踏まえた上で、本作の最終話で彼女が放つ言葉には、ある種の清々しさがあった。あくまでも“戸田恵梨香が演じる細木数子”が発したセリフだが、わりと大事な占いの基本スタンスを表していた。上述の件と合わせて噛み砕くと、占いは老年の代弁者になる上での有力ツールでもあった……ということだろう。
そんなわけで、自分が2026年「大殺界」<減退>でこのドラマを完走したのは、なかなか良いタイミングだった。占いを信じる人も信じない人も、ぜひ今年のGWは、この女傑のバイタリティをネトフリの鮮明な映像で浴びてみてほしい。













